この記事では、ドモルガンの法則についてできるだけわかりやすく解説していきます。
簡単な例題やベン図を通して具体的な使い方や問題の解き方も説明していくので、この記事を通してぜひマスターしてくださいね。
目次
ドモルガンの法則とは?
ドモルガンの法則とは、複数の集合の「和集合」および「共通部分」の補集合に関して成り立つ次の規則性です。
任意の集合 \(A\), \(B\) について、以下が成り立つ。
\begin{align}\color{red}{\overline{A \cup B} = \overline{A} \cap \overline{B}}\end{align}
\begin{align}\color{red}{\overline{A \cap B} = \overline{A} \cup \overline{B}}\end{align}
上記は \(2\) つの集合についての式ですが、ドモルガンの法則は集合の数が増えても成り立ちます。
任意の集合 \(A\), \(B\), \(C\), \(\cdots\) について、以下が成り立つ。
\begin{align}\color{red}{\overline{A \cup B \cup C \cup \cdots} = \overline{A} \cap \overline{B} \cap \overline{C} \cap \cdots}\end{align}
\begin{align}\color{red}{\overline{A \cap B \cap C \cap \cdots} = \overline{A} \cup \overline{B} \cup \overline{C} \cup \cdots}\end{align}
全体にかかっている補集合の棒を個々に分解して、記号の向きを入れ替える(\(\cup \iff \cap\))という規則性が共通していることに注目してください。
ドモルガンの法則のベン図
\(2\) つの集合におけるドモルガンの法則の意味をベン図で確認してみましょう。
\(1\) つ目の法則、\(\overline{A \cup B} = \overline{A} \cap \overline{B}\) の両辺をベン図で表してみると、このように両者が一致することがわかります。
式を言葉で表すと、「\(2\) つの集合 \(A\), \(B\) において、その和集合の補集合 \(\overline{A \cup B}\) は、\(A, B\) それぞれの補集合の共通部分 \(\overline{A} \cap \overline{B}\) と等しい」といえます。
\(2\) つ目の法則、\(\overline{A \cap B} = \overline{A} \cup \overline{B}\) についても、やはり両辺の示す領域が一致しますね。
言葉で表すと、「\(2\) つの集合 \(A\), \(B\) において、その共通部分の補集合 \(\overline{A \cap B}\) は、\(A, B\) それぞれの補集合の和集合 \(\overline{A} \cup \overline{B}\) に等しい」ということになります。
ドモルガンの法則の覚え方
ドモルガンの法則については、次の規則性を覚えておけば怖くありません。
ドモルガンの法則では…
- 全体にかかっている補集合の棒を個々に分解して、
- 記号の向きを入れ替える(\(\cup \iff \cap\))
実際に、ドモルガンの \(2\) つの法則を見比べると、和集合(\(\cup\))と共通部分(\(\cap\))を入れ替えただけなのがわかります。
- \(\overline{A \color{limegreen}{ \cup } B} = \overline{A} \color{skyblue}{ \cap } \overline{B}\)
(複数の集合の和集合の補集合は、それぞれの集合の補集合の共通部分になる) - \(\overline{A \color{skyblue}{ \cap } B} = \overline{A} \color{limegreen}{ \cup } \overline{B}\)
(複数の集合の共通部分の補集合は、それぞれの集合の補集合の和集合になる)
なので、どちらか片方の数式さえ覚えておけば、もう \(1\) つも簡単に思い出せますよ。
例題「\(\overline{A \cup B}\)、\(\overline{A \cap B}\) を求める」
以下の例題で、ドモルガンの法則を使う練習をしましょう。
全体集合 \(U = \{x \mid 0 \leq x \leq 7\) の整数\(\}\)、\(A = \{2, 4, 7\}\)、\(B = \{1, 2, 4, 5\}\) とするとき、\(\overline{A \cup B}\) および \(\overline{A \cap B}\) をドモルガンの法則を使って求めなさい。
ドモルガンの法則「\(\overline{A \cup B} = \overline{A} \cap \overline{B}\)」「\(\overline{A \cap B} = \overline{A} \cup \overline{B}\)」を使うと、個々の集合の補集合 \(\overline{A}\), \(\overline{B}\) を求めてからそれらの共通部分、和集合を考えることになりますね。
集合 \(A\), \(B\) の補集合は次のとおり。
\(\overline{A} = \{0, 1, 3, 5, 6\}\)
\(\overline{B} = \{0, 3, 6, 7\}\)
ドモルガンの法則より、
\(\begin{align} \overline{A \cup B} &= \overline{A} \cap \overline{B} \\ &= \{0, 3, 6\} \end{align}\)
\(\begin{align} \overline{A \cap B} &= \overline{A} \cup \overline {B} \\ &= \{0, 1, 3, 5, 6, 7\} \end{align}\)
答え:
\(\color{red}{\overline{A \cup B} = \{0, 3, 6\}}\)
\(\color{red}{\overline{A \cap B} = \{0, 1, 3, 5, 6, 7\}}\)
この例題では、各集合に含まれる要素が明らかなので、そのまま解くこともできます。
ドモルガンの法則を使った場合と比較すると、「和集合、共通部分」と「補集合」を考える順番が入れ替わることに注目してください。
目的:\(\overline{A \cup B}\) および \(\overline{A \cap B}\) を求める
【そのまま解く場合】
- \(A\), \(B\) の和集合、共通部分を求める
\(A \cup B = \{1, 2, 4, 5, 7\}\)
\(A \cap B = \{2, 4\}\) - 1 の補集合を求める
\(\overline{A \cup B} = \{0, 3, 6\}\)
\(\overline{A \cap B} = \{0, 1, 3, 5, 6, 7\}\)
【ドモルガンの法則を使う場合】
- \(A\), \(B\) の補集合を求める
\(\overline{A} = \{0, 1, 3, 5, 6\}\)
\(\overline{B} = \{0, 3, 6, 7\}\) - 1 の和集合、共通部分を求める
\(\overline{A} \cap \overline{B} = \{0, 3, 6\}\)
\(\overline{A} \cup \overline{B} = \{0, 1, 3, 5, 6, 7\}\)
問題で与えられている条件や既知の情報によって、どちらのほうが楽に解けるかが決まってきます。
和集合、共通部分、それらの補集合が絡む問題では、「もしかしてドモルガン使った方が楽かも?」と頭の片隅で意識しておくとよいですよ!
ドモルガンの法則の計算問題
それでは、ドモルガンの法則が使える計算問題にチャレンジしましょう。
計算問題①「2 つの集合とドモルガンの法則」
全体集合 \(U\) が \(1\) ~ \(20\) までの自然数であり、この全体集合の部分集合で、要素が \(3\) の倍数の集合を \(A\)、要素が \(5\) の倍数の集合を \(B\) とするとき、次の集合を要素を書き並べる方法で表せ。
(1) \(\overline{A} \cup \overline{B}\)
(2) \(\overline{A} \cap \overline{B}\)
ベン図を用いて愚直に要素を分類してもいいのですが、要素の個数が増えるほど書きもらすリスクも大きくなります。
また、倍数でない数(\(\overline{A}\) や \(\overline{B}\))を考えるよりも、何かの倍数(\(15\) の倍数 \(A \cap B\)、\(3\) または \(5\) の倍数 \(A \cup B\))を考えるほうが脳の負担が少ないですよね?
したがって、ここではドモルガンの法則を利用するとより簡単に求められます。
(1)
ドモルガンの法則より、
\(\overline{A} \cup \overline{B} = \overline{A \cap B}\)
共通部分 \(A \cap B\) は \(15\) の倍数の集合であるから、
\(A \cap B = \{15\}\)
求める集合はその補集合で、
\(\overline{A \cap B} = \{1, 2, 3,\) \(4, 5, 6,\) \(7, 8, 9,\) \(10, 11, 12,\) \(13, 14, 16,\) \(17, 18, 19, 20\}\)
答え:
\(\{1, 2, 3,\) \(4, 5, 6,\) \(7, 8, 9,\) \(10, 11, 12,\) \(13, 14, 16,\) \(17, 18, 19, 20\}\)
(2)
ドモルガンの法則より、
\(\overline{A} \cap \overline{B} = \overline{A \cup B}\)
和集合 \(A \cup B\) は \(3\) または \(5\) の倍数の集合であるから
\(A \cup B = \{3, 5, 6, 9, 10, 12, 15, 18, 20\}\)
求める集合はその補集合で、
\(\overline{A \cup B}\) \(= \{1, 2, 4, 7, 8, 11, 13, 14, 16, 17, 19\}\)
答え: \(\{1, 2, 4, 7, 8, 11, 13, 14, 16, 17, 19\}\)
計算問題②「3 つの集合とドモルガンの法則」
\(U\) を全体集合とし、\(A\), \(B\), \(C\) をその部分集合とする。
\(n(U) = 100\)、\(n(A) = 33\)、\(n(B) = 47\)、\(n(C) = 60\)、\(n(A \cup B \cup C) = 89\)、\(n(A \cap B \cap C) = 15\) のとき、\(n(\overline{A} \cap \overline{B} \cap \overline{C})\)、\(n(\overline{A} \cup \overline{B} \cup \overline{C})\) を求めよ。
\(n(\overline{A})\), \(n(\overline{B})\), \(n(\overline{C})\) を求めて…とすぐに考えるのは待ってください!
\(3\) つの集合の和集合 \(A \cup B \cup C\) および共通部分 \(A \cap B \cap C\) の要素の個数がすでにわかっています。ここでドモルガンの法則を思い浮かべれば、あっという間に解けますよ。
ドモルガンの法則より、
\(\overline{A} \cap \overline{B} \cap \overline{C} = \overline{A \cup B \cup C}\)
\(\overline{A} \cup \overline{B} \cup \overline{C} = \overline{A \cap B \cap C}\)
\(n(U) = 100\)、\(n(A \cup B \cup C) = 89\)、\(n(A \cap B \cap C) = 15\) であるから、
\(\begin{align}n(\overline{A} \cap \overline{B} \cap \overline{C}) &= n(\overline{A \cup B \cup C}) \\&= n(U) − n(A \cup B \cup C) \\&= 100 − 89 \\&= 11\end{align}\)
\(\begin{align}n(\overline{A} \cup \overline{B} \cup \overline{C}) &= n(\overline{A \cap B \cap C}) \\&= n(U) − n(A \cap B \cap C) \\&= 100 − 15 \\&= 85\end{align}\)
答え: \(n(\overline{A} \cap \overline{B} \cap \overline{C}) = 11\)、\(n(\overline{A} \cup \overline{B} \cup \overline{C}) = 85\)
以上で問題も終わりです。
ドモルガンの法則を使うことでグッと楽に解ける集合の問題は意外と多いです。
「ドモルガンで楽できないかな〜」という視点で問題を見て、ぜひドモルガンの法則を使いこなせるようになってくださいね!