この記事では、「三角関数のグラフの書き方」をどこよりも詳しく、そしてわかりやすく解説していきます。
三角関数の拡大縮小や平行移動のやり方、周期の求め方なども説明しますので、ぜひマスターしてくださいね。
三角関数のグラフの特徴
まずは、基本となる \(y = \sin \theta\), \(y = \cos \theta\), \(y = \tan \theta\) のグラフの特徴をまとめます。
\(y = \sin \theta\) と \(y = \cos \theta\) のグラフは波形になっています。
\(\sin \theta\) と \(\cos \theta\) の波形はまったく同じで、位相(\(\theta\) 軸方向の位置)がずれているだけです。
一方、\(y = \tan \theta\) のグラフは波ではなく、上下に無限に伸びる曲線ですね。
\(3\) つのグラフは、「対称性」と「周期性」をもつという特徴があります。
\(y = \sin \theta\) と \(y = \tan \theta\) は原点対称な奇関数で、\(y = \cos \theta\) は \(y\) 軸対称な偶関数です。
また、\(y = \sin \theta\) と \(y = \cos \theta\) の周期が \(2\pi\) であるのに対して、\(y = \tan \theta\) の周期は \(\pi\) であることも頭に入れておきましょう。
- 対称性
ある点または線に対してグラフがとる位置の性質。
特に、原点について対称なグラフは「奇関数」、\(y\) 軸について対称なグラフは「偶関数」と呼ばれる。 - 周期性
一定の周期で同じ形を繰り返す性質。
同じ形 \(1\) 回分の周期を「周期」と呼ぶ。
【基本】三角関数のグラフの書き方
基本的な三角関数 \(y = \sin \theta\), \(y = \cos \theta\), \(y = \tan \theta\) のグラフの書き方を説明します。
y = sin θ のグラフの書き方
\(y = \sin \theta\) のグラフを書くときは、以下の点だけ理解しておけばバッチリです。
- 値域: \(\color{red}{−1 \leq y \leq 1}\)
- 開始位置: \(\color{red}{(\theta, y) = (0, 0)}\)
- 周期: \(\color{red}{2\pi}\)
\(y = \sin \theta\) のグラフを書く手順を説明します。
まずは横軸(\(\theta\) 軸)を実線で、グラフの値域を示す横線(グラフが上下に接するライン)を点線で引きます。
\(y = \sin \theta\) の値域は \(−1 \leq y \leq 1\) でしたね。
グラフが通る次の点を打っていきます。
① 開始位置 \((0, 0)\)
② \(1\) 周期分の終点 \((2\pi, 0)\)
③ \(1\) 周期を \(4\) 等分する点
\(\sin \theta\) のグラフは「中央 → 山 → 中央 → 谷 → 中央」 と変化します。
縦軸をまだ書いていないので、場所は自分で調整できます。
開始位置を左寄り、終点を右寄りに書くのがオススメです。
\(1\) 周期分の位置が定まったので、波を書きます。
はじめに位置を決めた \(1\) 周期分を書き、同じ要領で左右に少しだけ延長します。
変にとんがらないように、なめらかな曲線にするのがポイントです!
開始位置に合わせて縦軸を書き込み、縦・横両方の値を入れていきます。
周期が \(2\pi\) なので、\(4\) 等分した一刻みは「\(\displaystyle \frac{\pi}{2}\)」です。
グラフの山・中央・谷には、すべて値を与えましょう。
最後に、関数名を忘れずに書き込みます。
これで、\(y = \sin \theta\) のグラフの完成です!
y = cos θ のグラフの書き方
\(\cos \theta\) のグラフを書くときは、以下の点だけ理解しておけばバッチリです。
- 値域: \(\color{red}{−1 \leq y \leq 1}\)
- 開始位置: \(\color{red}{(\theta, y) = (0, 1)}\)
- 周期: \(\color{red}{2\pi}\)
\(y = \sin \theta\) との違いは、開始位置が高さ \(1\) の点(山)であることですね。
それでは、\(y = \cos \theta\) のグラフを書く手順を示します。
流れは \(y = \sin \theta\) とまったく同じなので、詳しい説明は省きますね。
\(y = \cos \theta\) の値域も \(−1 \leq y \leq 1\) です。
① 開始位置 \((0, 1)\)
② \(1\) 周期分の終点 \((2\pi, 1)\)
③ \(1\) 周期を \(4\) 等分する点
\(\cos \theta\) のグラフは「山 → 中央 → 谷 → 中央 → 山」 と変化します。
\(\cos \theta\) の場合も、周期が \(2\pi\) なので刻みの間隔は「\(\displaystyle \frac{\pi}{2}\)」ですね。
最後に、関数名を忘れずに書き込みます。
これで \(y = \cos \theta\) のグラフの完成です!
y = tan θ のグラフの書き方
\(\tan \theta\) のグラフを書くときは、以下の点だけ理解しておけばバッチリです。
- 開始位置: \(\color{red}{(\theta, y) = (0, 0)}\)
- 周期: \(\color{red}{\pi}\)
それでは、\(y = \tan \theta\) のグラフを書く手順を説明します。
\(\sin \theta\), \(\cos \theta\) とは少し手順が違うので、注意してください!
横軸の真ん中より左側に、点 \((0, 0)\) を打ちます。
\(\tan \theta\) は波ではないので、上下のラインは不要です。
開始位置を起点に、横軸に等間隔の刻みを入れていきます。
細かすぎると大変なので、\(8\) ~ \(12\) 刻みあれば十分です。
開始位置から左右 \(2\) 刻みの位置に漸近線を点線で引きます。
ほかの漸近線も \(4\) 刻み間隔(\(1\) 周期)で引きましょう。
開始位置 \((0, 0)\) を通り、左漸近線に \(−\infty\)、右漸近線に \(+\infty\) で近づく曲線を書きます。
ほかの漸近線同士の間にも同様の曲線を書きます。
なめらかに書いてくださいね!
周期(漸近線の間隔)が \(\pi\) なので、刻みの間隔は「\(\displaystyle \frac{\pi}{4}\)」ですね。
刻みの位置の \(\theta\), \(y\) の値も入れてあげます。
最後に、関数名を忘れずに書き込みます。
これで \(y = \tan \theta\) のグラフの完成です!
三角関数のグラフを簡単に書くコツ
三角関数のグラフを手書きで簡単に書くコツをまとめると、次の \(2\) つです。
① 値域・開始位置・周期 を押さえる
(※ \(\tan \theta\) の場合は値域は不要)
三角関数のグラフは、細かく点をとろうと思えばいくらでもとれます。
例えば、三角比の値は \(\displaystyle \frac{\pi}{6}\) \((30^\circ)\) や \(\displaystyle \frac{\pi}{4}\) \((45^\circ)\) 刻みで調べることができますから、ていねいに書けば次のようなグラフが書けます。
ですが、毎回これは大変ですよね。
先ほど示した書き方のように、「値域」「開始位置」「周期」さえ押さえておけば、こんなに細かく値を調べる必要がありません。
\(1\) 周期を \(4\) 等分する \(4\) 点をとってあげれば十分です。
② 縦軸(y 軸)を最後に書く
縦軸を最初に書くと全体の位置が固定され、「グラフを動かす」ことになってしまいます。
そうすると、例えば平行移動したグラフを書く際に思ったよりも右寄りになったり左寄りになったりと、不恰好なグラフになる可能性があります。
縦軸を最後に書けば、グラフが拡大縮小または平行移動されても対応しやすくなります。
三角関数のグラフの変形(拡大縮小・平行移動)
三角関数のグラフは拡大縮小したり、平行移動したりと変形することができます。
\(y = \sin \theta\) を例に、関数とグラフのかたちの対応を確認しましょう。
y 軸方向の拡大縮小 (y = a sin θ)
まずは、縦方向の拡大・縮小です。
\(y = \sin \theta\) を \(y\) 軸方向に \(a\) 倍した関数は、
\begin{align}y = \color{red}{a} \sin \theta\end{align}
このとき、グラフの値域は \(\color{red}{−|a| \leq y \leq |a|}\)
\(|a| > 1\) の場合は拡大、\(|a| < 1\) の場合は縮小されます。また、\(a < 0\) になると、グラフが上下に反転します。
\(y = a \sin \theta\), \(y = a \cos \theta\) のグラフでは、\(a\) は「振幅」と呼ばれます。
θ 軸方向の拡大縮小 (y = sin kθ)
続いて、横方向の拡大・縮小です。
\(y = \sin \theta\) を \(\theta\) 軸方向に \(\displaystyle \frac{1}{k}\) 倍した関数は、
\begin{align}y = \sin \color{red}{k}\theta\end{align}
なお、周期は \(\color{red}{\displaystyle \frac{2\pi}{|k|}}\)
「\(k\theta\)」で「\(\displaystyle \frac{1}{k}\) 倍」ということに注意しましょう。また、\(k < 0\) になるとグラフが左右に反転します。
\(\theta\) 軸方向の拡大・縮小は「周期」に関わります。
「\(k\theta\)」なら周期は「\(\color{red}{\displaystyle \frac{1}{|k|}}\) 倍」になると覚えておきましょう!
(例)
- \(y = \sin 2\theta\) → 周期 \(\pi\)
- \(\displaystyle y = \sin \frac{\theta}{2}\) → 周期 \(4\pi\)
- \(y = \sin (−\theta)\) → 周期 \(2\pi\)
y 軸方向の平行移動 (y = sin θ + q)
続いて、縦方向の平行移動です。
\(y = \sin \theta\) を \(y\) 軸方向に \(q\) だけ平行移動した関数は、
\begin{align}y = \sin \theta \, \color{red}{ + \,q}\end{align}
\(q > 0\) なら上に、\(q < 0\) なら下にずれます。
θ 軸方向の平行移動 (y = sin (θ − p))
最後は、横方向の平行移動です。
\(y = \sin \theta\) を \(\theta\) 軸方向に \(p\) だけ平行移動した関数は、
\begin{align}y = \sin (\theta \, \color{red}{− \, p})\end{align}
移動量 \(p\) と関数での表記 \((\theta − p)\) で正負が反対になることに注意しましょう。
【応用】変形された三角関数のグラフの書き方
それではいよいよ、変形された三角関数のグラフの書き方を説明していきます。
縦横の拡大縮小、平行移動の情報をまとめると、次のようになります。
\(\color{red}{y = a \sin k(\theta − p) + q}\) は、\(y = \sin \theta\) のグラフを
- \(y\) 軸方向に \(\color{red}{a}\) 倍
- \(\theta\) 軸方向に \(\color{red}{\displaystyle \frac{1}{k}}\) 倍
- \(y\) 軸方向に \(\color{red}{+\, q}\) 平行移動
- \(\theta\) 軸方向に \(\color{red}{+\, p}\) 平行移動
したグラフである。
なお、
- 値域は \(\color{red}{−|a| + q \leq y \leq |a| + q}\)
- 周期は \(\color{red}{\displaystyle \frac{2\pi}{|k|}}\)
グラフが変形されても、「値域」「開始位置」「周期」を押さえればきれいに書くことができます!
y = a cos k(θ − p) + q のグラフの書き方
以下の例題で、変形された三角関数のグラフを書く手順を説明します。
関数 \(\displaystyle y = 2 \cos \left( \frac{\theta}{2} − \frac{\pi}{3} \right) + 1\) のグラフを書け。また、その周期を求めよ。
元の関数が \(sin\) でも \(\cos\) でも手順は同じです。
関数の情報を先に整理してからグラフを書くのがポイントです。
まず、角度が「\(\color{red}{k}(\theta − p)\)」となるように整理します。
\(\begin{align} y &= 2 \cos \left( \frac{\theta}{2} − \frac{\pi}{3} \right) + 1 \\ &= 2 \cos \color{red}{\frac{1}{2}} \left( \theta − \frac{2}{3}\pi \right) + 1 \end{align}\)
関数から「値域」「開始位置」「周期」の情報を取り出します。
- 値域:元の値域 \(\times\) (振幅 \(|a|\)) \(+\) (\(y\) 軸方向の移動量 \(q\))
- 開始位置:角度全体が \(0\) になるときの \((\theta, y)\)
- 周期:元の周期 \(\times \ \displaystyle \frac{1}{|k|}\)
値域は \(−1 \leq y \leq 3\)、開始位置は \(\displaystyle \left( \frac{2}{3}\pi , 3 \right)\)、周期は \(4\pi\) とわかりました。
あとは、基本のグラフと同じように書いていくだけです!
今回は \(\cos \theta\) の手順がベースですね。
\(\theta\) 軸を基準に、値域の上下およびその中央のラインを点線で引きます。
今回は、\(y = −1, 1, 3\) の線ですね。
次の点を打ちます。
① 開始位置 \(\displaystyle \left( \frac{2}{3}\pi , 3 \right)\)
② \(1\) 周期分の終点 \(\displaystyle \left( \frac{2}{3}\pi + 4\pi, 3 \right) = \left( \frac{14}{3}\pi, 3 \right)\)
③ \(1\) 周期を \(4\) 等分する点
\(\cos\) のグラフなので、「山 → 中央 → 谷 → 中央 → 山」と変化します。
位置を決めた \(1\) 周期分を基準に、左右にも少し延長します。
\(\theta\) 軸方向の \(1\) 刻みは、周期 \(4\pi\) を \(4\) 等分した「\(\pi\)」ずつですね。
最後に、関数名を忘れずに書き込みます。
これで、\(\displaystyle y = 2 \cos \left( \frac{\theta}{2} − \frac{\pi}{3} \right) + 1\) のグラフの完成です!
この方法なら、わざわざ表を作ったり、グラフを重ねて書いたりするよりも簡単にグラフを書くことができます。
三角関数のグラフの練習問題
実際の問題で、グラフを書く練習をしましょう。
練習問題①「tan の変形グラフと周期」
関数 \(\displaystyle y = \tan \left( 2\theta + \frac{\pi}{4} \right)\) のグラフを書け。また、その周期を求めよ。
ベースは \(y = \tan \theta\) のグラフですね。
情報を整理して、グラフに落とし込みましょう。
\(\begin{align} y &= \tan \left( 2\theta + \frac{\pi}{4} \right) \\ &= \tan 2\left( \theta + \frac{\pi}{8} \right) \end{align}\)
\(\displaystyle 2\left( \theta + \frac{\pi}{8} \right) = 0\) のとき \(\displaystyle \theta = −\frac{\pi}{8}\) より、
点 \(\displaystyle \left( −\frac{\pi}{8}, 0 \right)\) を通る。
\(y = \tan \theta\) の周期が \(\pi\) であるから、 \(\displaystyle y = \tan 2 \left( \theta + \frac{\pi}{8} \right)\) の周期は \(\displaystyle \frac{\pi}{2}\)。
よって、グラフは次の通り。
答え:
周期は \(\color{red}{\displaystyle \frac{\pi}{2}}\)
練習問題②「sin の変形グラフと周期」
関数 \(\displaystyle y = \frac{1}{3} \sin \left( \frac{\theta}{3} + \frac{\pi}{6} \right) − 1\) のグラフを書け。また、その周期を求めよ。
ベースが \(y = \sin \theta\) のグラフです。
縦方向の平行移動もあるので注意しましょう!
\(\begin{align} y &= \frac{1}{3} \sin \left( \frac{\theta}{3} + \frac{\pi}{6} \right) − 1 \\ &= \frac{1}{3} \sin \frac{1}{3} \left( \theta + \frac{\pi}{2} \right) − 1 \end{align}\)
\(y\) のとりうる範囲は
\(\displaystyle −\frac{4}{3} \leq y \leq −\frac{2}{3}\)
(中央は \(y = −1\))
\(\displaystyle \frac{1}{3} \left( \theta + \frac{\pi}{2} \right) = 0\) のとき \(\displaystyle \theta = −\frac{\pi}{2}\) より、
点 \(\displaystyle \left( −\frac{\pi}{2}, −1 \right)\) を通る。
\(y = \sin \theta\) の周期が \(2\pi\) であるから、\(\displaystyle y = \frac{1}{3} \sin \left( \frac{\theta}{3} + \frac{\pi}{6} \right) − 1\) の周期は \(6\pi\)。
よって、グラフは次の通り。
答え:
周期は \(\color{red}{6\pi}\)
いかがでしたか?
要点を押さえれば、変形されたグラフもきちんと書けることが実感できたかと思います。
まずは基本の三角関数のグラフを手早く書く練習から始めてくださいね!