この記事では「扇形(おうぎ形)」について、面積の公式や半径・中心角、この長さの求め方をできるだけ簡単に解説していきます。
また、弧度法(ラジアン)で解く計算問題なども紹介していきますので、この記事を通してぜひマスターしてくださいね。
目次
扇形(おうぎ形)とは?
扇形(おうぎ形)とは、\(\bf{2}\) 本の半径とその間にある弧でできた図形です。
円の一部と考えるとイメージしやすいです。
また、\(2\) つの半径で囲まれた角を「中心角」、半径同士を繋いでいる曲線部分を「円弧」といいます。
円周上の \(2\) 点が \(\mathrm{A}\), \(\mathrm{B}\) などと与えられている場合、「弧 \(\mathrm{AB}\)」または記号を使って「\(\color{red}{\stackrel{\Large\mbox{$\frown$}}{\mathrm{AB}}}\)」と表します。
ちなみに、円周上の点 \(\mathrm{A}\), \(\mathrm{B}\) を直線で結んだ部分は「弦 \(\mathrm{AB}\)」と呼びます。
扇形の面積の求め方
扇形の面積は、同じ半径の円の面積に中心角の割合をかければ求められます。
\begin{align}\text{(扇形の面積)} = \text{(円の面積)} \times \text{(中心角の割合)}\end{align}
(見切れる場合は横へスクロール)
中心角が度数法の場合も弧度法(ラジアン)の場合も、この考え方はまったく同じです!
まずはこの関係を覚えておきましょう。
扇形の面積の公式【度数法】
角度が度数法で与えられた場合、扇形の面積を求める公式は次のとおりです。
半径が \(r\)、中心角が \(\theta\) \(({}^\circ)\) の扇形の面積 \(S\) は
\begin{align}\displaystyle \color{red}{S = r^2 \pi \cdot \frac{\theta}{360^\circ}}\end{align}
「\(r^2 \pi\)」が円の面積、「\(\displaystyle \frac{\theta}{360^\circ}\)」が中心角の割合ですね。
扇形の面積の公式【弧度法】
角度が弧度法で与えられた場合、扇形の面積を求める公式は次のとおりです。
半径が \(r\)、中心角が \(\theta\) \((\mathrm{rad})\) の扇形の面積 \(S\) は
\begin{align} \color{red}{S = r^2 \pi \cdot \frac{\theta}{2\pi} = \frac{1}{2} r^2 \theta} \end{align}
弧度法では \(360^\circ\) が \(2\pi \ \mathrm{rad}\) に対応するので、中心角の割合は「\(\displaystyle \frac{\theta}{2\pi}\)」となります。
なお、「弧度法」については以下の記事で説明しています。

扇形の弧の長さの求め方
扇形の弧の長さを求める際も、考え方は面積と同じです。
同じ半径の円の弧の長さ、つまり「円周」に中心角の割合をかければ求められます。
\begin{align}\text{(扇形の弧の長さ)} = \text{(円の円周)} \times \text{(中心角の割合)}\end{align}
(見切れる場合は横へスクロール)
扇形の弧の長さの公式【度数法】
角度が度数法で与えられた場合、扇形の弧の長さを求める公式は次のとおりです。
半径が \(r\)、中心角が \(\theta\) \(({}^\circ)\) の扇形の弧の長さ \(l\) は
\begin{align}\color{red}{l = 2\pi r \cdot \frac{\theta}{360^\circ}}\end{align}
「\(2 \pi r\)」が円の円周、「\(\displaystyle \frac{\theta}{360^\circ}\)」が中心角の割合ですね。
扇形の弧の長さの公式【弧度法】
角度が弧度法で与えられた場合、扇形の弧の長さを求める公式は次のとおりです。
半径が \(r\)、中心角が \(\theta\) \((\mathrm{rad})\) の扇形の弧の長さ \(l\) は
\begin{align} \color{red}{l = 2\pi r \cdot \frac{\theta}{2\pi} = r \theta} \end{align}
中心角の割合が「\(\displaystyle \frac{\theta}{2\pi}\)」なので、\(2\pi\) が約分されてシンプルになりますね。
扇形の中心角の求め方
扇形の中心角を求めるには、先ほど説明した面積の公式または弧の長さの公式を利用します。
面積の公式、弧の長さの公式には中心角の割合が含まれていましたね。
扇形の中心角 \(\theta\) は
\begin{align}\theta &= \text{(中心角の割合)} \times (360^\circ \ \text{or} \ 2\pi)\end{align}
なお、
\begin{align}\text{(中心角の割合)} &= \frac{\text{(扇形の面積)}}{\text{(同じ半径の円の面積)}} \\&= \frac{\text{(扇形の弧の長さ)}}{\text{(同じ半径の円の円周)}}\end{align}
で求められる。
円に対する扇形の面積または弧の長さの割合は、中心角の割合に一致します。
面積の公式と弧の長さの公式を覚えていれば、わざわざ新しく覚えることはありませんね!
例題を通して中心角の求め方を練習しておきましょう。
例題①「面積がわかっている場合」
半径 \(8\) \(\text{cm}\)、面積 \(16\pi\) \(\text{cm}^2\) の扇形の中心角を求めよ。
扇形の面積がわかっているので、同じ半径の円の面積に対する割合を求めればよいですね。
また、特に指定がなければ度数法、弧度法のどちらで答えても大丈夫です。
半径 \(8\) の円の面積は
\(r^2 \pi = 8^2 \pi = 64 \pi\)
であるから、中心角の割合は
\(\displaystyle \frac{16\pi}{64 \pi} = \frac{1}{4}\)
よって、求める中心角 \(\theta\) は
(度数法)\(\theta = \displaystyle \frac{1}{4} \cdot 360^\circ = 90^\circ\)
(弧度法)\(\theta = \displaystyle \frac{1}{4} \cdot 2\pi = \displaystyle \frac{\pi}{2}\)
答え: \(\color{red}{90^\circ}\) または \(\color{red}{\displaystyle \frac{\pi}{2}}\)
例題②「弧の長さがわかっている場合」
半径 \(6\)、弧の長さ \(4\pi\) である扇形の中心角を求めよ。
扇形の弧の長さがわかっているので、同じ半径の円の円周に対する割合を求めればよいですね。
半径 \(6\) の円の円周は
\(2\pi r = 2\pi \cdot 6 = 12 \pi\)
であるから、中心角の割合は
\(\displaystyle \frac{4\pi}{12 \pi} = \frac{1}{3}\)
よって、求める中心角 \(\theta\) は
(度数法)\(\theta = \displaystyle \frac{1}{3} \cdot 360^\circ = 120^\circ\)
(弧度法)\(\theta = \displaystyle \frac{1}{3} \cdot 2\pi = \displaystyle \frac{2}{3}\pi\)
答え: \(\color{red}{120^\circ}\) または \(\color{red}{\displaystyle \frac{2}{3}\pi}\)
簡単ですね!
扇形の半径の求め方
扇形の半径を求めるときも、面積の公式または弧の長さの公式を利用します。
公式にわかっている値を代入して、「\(\text{(半径)} = \) 〜」の形に書き換えていけばいいだけです!
実際に例題を見てみましょう。
例題①「面積がわかっている場合」
中心角の大きさが \(90^\circ\)、面積 \(16\pi\) \(\text{cm}^2\) の扇形の半径を求めよ。
面積の公式にわかっている値を代入して、半径 \(r\) を求めます。
\(S = r^2 \pi \cdot \displaystyle \frac{\theta}{360^\circ}\) より、
\(r^2 = \displaystyle \frac{S}{\pi} \cdot \frac{360^\circ}{\theta}\)
\(S = 16\pi\)、\(\theta = 90^\circ\) より
\(\begin{align}r^2 &= \displaystyle \frac{16\pi}{\pi} \cdot \frac{360^\circ}{90^\circ}\\&= 16 \cdot 4\\&= 64\end{align}\)
\(r > 0\) より、
\(r = \sqrt{64} = 8\)
答え: \(\color{red}{8 \ \text{cm}}\)
例題②「弧の長さがわかっている場合」
中心角の大きさが \(120^\circ\)、弧の長さ \(4\pi\) である扇形の半径を求めよ。
弧の長さの公式にわかっている値を代入して、半径 \(r\) を求めます。
\(l = 2\pi r \cdot \displaystyle \frac{\theta}{360^\circ}\) より、
\(r = \displaystyle \frac{l}{2\pi} \cdot \frac{360^\circ}{\theta}\)
\(l = 4\pi\)、\(\theta = 120^\circ\) より
\(\begin{align}r &= \displaystyle \frac{4\pi}{2\pi} \cdot \frac{360^\circ}{120^\circ}\\&= 2 \cdot 3\\&= 6\end{align}\)
答え: \(\color{red}{6 \ \text{cm}}\)
なお、弧度法の公式を使えばより簡単に求められます。
\(l = r\theta\) より、
\(r = \displaystyle \frac{l}{\theta}\)
\(120^\circ\) は \(\displaystyle \frac{2}{3}\pi\) であるから
\(r = \displaystyle \frac{l}{\theta} = \frac{4\pi}{\frac{2}{3}\pi} = \color{red}{6 \ \text{(cm)}}\)
扇形の計算問題
最後に、計算問題に挑戦しましょう。
計算問題①「面積と弧の長さを求める」
半径 \(6\) \(\text{cm}\)、中心角 \(45^\circ\) の扇形の面積と弧の長さを求めよ。
扇形の面積と弧の長さは、公式を使って簡単に求められますね。
単位のある問題では、単位の書き忘れに注意しましょう!
扇形の面積は、
\(\displaystyle 6^2 \pi \cdot \frac{45^\circ}{360^\circ} = \frac{9}{2} \pi \ (\text{cm}^2)\)
弧の長さは、
\(\displaystyle 2\pi \cdot 6 \cdot \frac{45^\circ}{360^\circ} = \frac{3}{2} \pi \ \text{(cm)}\)
答え:
面積 \(\displaystyle \frac{9}{2} \pi \ \text{cm}^2\)、 弧の長さ \(\displaystyle \frac{3}{2} \pi \ \text{cm}\)
計算問題②「中心角と面積を求める」
半径 \(4\)、弧の長さ \(\displaystyle \frac{6}{5} \pi\) である扇形の中心角と面積を求めよ。
まずは弧の長さから中心角の割合を求めてみましょう。
中心角の割合を使えば、中心角の大きさ、面積は簡単に求められます。
扇形の弧の長さから、中心角の割合は
\(\displaystyle \frac{\frac{6}{5} \pi}{2\pi \cdot 4} = \frac{3}{20}\)
よって、扇形の中心角の大きさは
\(\displaystyle \frac{3}{20} \cdot 360^\circ = 54^\circ\)
また、扇形の面積は
\(\displaystyle 4^2 \pi \cdot \frac{3}{20} = \frac{12}{5} \pi\)
答え: 中心角 \(54^\circ\)、面積 \(\displaystyle \frac{12}{5} \pi\)
計算問題③「中心角と周りの長さを求める」
半径 \(7\) \(\text{cm}\)、面積 \(21\pi \ \text{cm}^2\) の扇形の中心角と周りの長さを求めよ。
扇形の周りの長さは、「\(\text{(弧の長さ)} + (\text{半径}) \times 2\)」であることを見落とさないようにしましょう。
扇形の面積から、中心角の割合は
\(\displaystyle \frac{21\pi}{7^2 \pi} = \frac{3}{7}\)
よって、中心角の大きさは
\(\displaystyle \frac{3}{7} \cdot 360^\circ = \frac{1080^\circ}{7}\)
また、弧の長さは
\(2\pi \cdot 7 \cdot \displaystyle \frac{3}{7} = 6\pi \ \text{(cm)}\)
半径は \(7\) であるから、この扇形の周りの長さは
\(6\pi + 2 \cdot 7 = 2(3\pi + 7) \ \text{(cm)}\)
答え:
中心角 \(\displaystyle \frac{1080^\circ}{7}\)、 周りの長さ \(2(3\pi + 7) \ \text{cm}\)
以上で問題は終わりです!
扇形への理解を深めて、さまざまな問題に対応できるようにしてくださいね。