数aの一大分野、「場合の数と確率」に関するさまざまな公式・法則をまとめていきます。
詳細記事へのリンクも載せていますので、気になる問題や解き方があればぜひ参考にしてくださいね!
目次
【準備】集合とその要素の個数
場合の数と確率を考えるには、「集合」への理解が必要です。
詳しくは以下の記事で説明しています。
集合とは?数学記号の読み方や意味、計算問題の解き方
場合の数の数え方
場合の数を数えるときは、抜け漏れ・重複なく数えることが重要です。
- 辞書式配列法
アルファベット順、あいうえお順など、辞書のように場合を並べる方法。 - 樹形図
各場合を、枝分かれの図で書き表す方法。
和の法則・積の法則
複数の事象の場合の数を数える際に利用する考え方です。
\(2\) つの事象 \(A\), \(B\) が同時に起こらないとする。
事象 \(A\) の起こり方が \(m\) 通り、事象 \(B\) の起こり方が \(n\) 通りあるとき、事象 \(A\) または事象 \(B\) のどちらかが起こる場合の数は、\(m + n\) 通りである。
事象 \(A\) の起こり方が \(m\) 通り、そのそれぞれに対して事象 \(B\) の起こり方が \(n\) 通りあるとき、事象 \(A\) と事象 \(B\) が両方起こる場合の数は、\(m \times n\) 通りである。
和の法則および積の法則については、以下の記事で詳しく説明しています。
積の法則・和の法則とは?違いや問題の解き方をわかりやすく解説
順列・組み合わせ
以下の記事ではそれぞれ、順列の公式と問題、組み合わせの公式と問題、順列と組み合わせの違いについて説明しています。
順列 P とは?公式や計算問題の解き方(重複ありなど) 組み合わせ C とは?公式や計算方法(◯◯は何通り?) 順列と組み合わせの違いと見分け方!公式や練習問題順列の公式
異なる \(n\) 個のものの中から異なる \(r\) 個を取り出して順番に並べる場合の数を \({}_n \mathrm{P}_r\) と表し、「順列」という。
\begin{align}{}_n \mathrm{P}_r &= \displaystyle \frac{n!}{(n − r)!}\\&= n(n − 1)(n − 2) \cdots (n – r + 1)\end{align}
円順列の公式
異なる \(n\) 個のものの円順列の総数は、
\begin{align}(n − 1)!\end{align}
じゅず順列の公式
異なる \(n\) 個のもののじゅず順列の総数は、
\begin{align}\displaystyle \frac{(n − 1)!}{2}\end{align}
重複順列の公式
異なる \(n\) 個のものの中から重複した \(r\) 個を取り出して \(1\) 列に並べる場合の数は、
\begin{align}n^r\end{align}
組み合わせの公式
異なる \(n\) 個のものの中から異なる \(r\) 個を取り出す場合の数を \({}_n \mathrm{C}_r\) と表し、「組み合わせ」という。
\begin{align}{}_n \mathrm{C}_r &= \displaystyle \frac{{}_n \mathrm{P}_r}{r!}\\&= \displaystyle \frac{n!}{r!(n − r)!}\\&= \displaystyle \frac{n(n − 1)(n − 2) \cdots (n − r + 1)}{r(r − 1)(r − 2) \cdots 1}\end{align}
同じものを含む順列の公式
同じものが \(p\) 個、\(q\) 個、\(r\) 個、…ずつ含まれ、全部で \(n\) 個あるとする。
この \(n\) 個のものすべてを並べる順列の総数は、
\begin{align}{}_n \mathrm{C}_p \times {}_{n − p} \mathrm{C}_q \times {}_{n − p − q} \mathrm{C}_r \times \cdots = \displaystyle \frac{n!}{p!q!r! \cdots}\end{align}
ただし、\(p + q + r + \cdots = n\)
重複組み合わせの公式
異なる \(n\) 個のものから重複を許して \(r\) 個を選ぶ組み合わせの総数は、
\begin{align}{}_n \mathrm{H}_r = {}_{n + r – 1} \mathrm{C}_r\end{align}
二項定理
組み合わせの考え方を使って多項式のべき乗を展開できます。
二項のべき乗で成り立つ等式を「二項定理」、複数の項のべき乗で成り立つ等式を「多項定理」といいます。
\((a + b)^n \\= {}_n \mathrm{C}_0 a^n + {}_n \mathrm{C}_1 a^{n − 1} b + {}_n \mathrm{C}_{n − 2} a^{n − 2} b^2 + \cdots\\ \,\, + {}_n \mathrm{C}_r a^r b^{n − r} + \cdots + {}_n \mathrm{C}_{n − 1} a^{n − 1} b + {}_n \mathrm{C}_n b^n\)
一般項(第 \(r + 1\) 項)は \({}_n \mathrm{C}_r a^r b^{n − r}\)
\((a + b + c)^n\) の一般項は
\begin{align}\displaystyle \frac{n!}{p! q! r!}a^p b^q c^r\end{align}
ただし、\(p\), \(q\), \(r\) は整数で以下を満たす。
\begin{align}p + q + r = n, p \geq 0, q \geq 0, r \geq 0\end{align}
確率の定義と性質
ある試行において、すべての事象の起こる確率が同様に確からしいとき、起こりうるすべての事象を \(U\)、ある事象を \(A\) とすると、 \(A\) が起こる確率 \(P(A)\) は次のように表せる。
\begin{align}P(A) = \displaystyle \frac{n(A)}{n(U)}\end{align}
- \(n(A)\):\(A\) の場合の数
- \(n(U)\):\(U\) の場合の数
ある事象 \(A\)、全事象 \(U\)、空事象 \(\emptyset\) について、
- \(0 \leq P(A) \leq 1\)
- \(P(\emptyset) = 0\)
- \(P(U) = 1\)
確率については、以下の記事で詳しく説明しています。
確率とは?公式、計算式の立て方と確率の求め方
和事象・積事象・余事象・排反の意味
「和事象」「積事象」「余事象」「排反」の意味をまとめました。
用語 | 意味 | 記号での表し方 |
---|---|---|
和事象 | \(2\) つの事象 \(A, B\) について、\(A\) または \(B\) が起こる事象(少なくともどちらか一方が起こる事象)を「和事象」という。 | \(A \cup B\) |
積事象 | \(2\) つの事象 \(A, B\) について、\(A\) と \(B\) がともに起こる事象を「積事象」という。 | \(A \cap B\) |
余事象 | 事象 \(A\) に対して、\(A\) が起こらない事象を「\(A\) の余事象」という。 | \(\overline{A}\) |
排反 | \(2\) つの事象 \(A, B\) が同時に起こらないとき、「\(A\) と \(B\) は互いに排反である」という。 | \(A \cap B = \emptyset\) |
和事象の計算公式
\(2\) つの事象 \(A\), \(B\) が排反かそうではないかによって、和事象の確率 \(P(A \cup B)\) の計算方法が異なります。
確率の加法定理
\(2\) つの事象が排反であるとき、それぞれの確率をそのまま足し算でき、「確率の加法定理」といいます。
事象 \(A\), \(B\) が互いに排反のとき、
\begin{align}P(A \cup B) = P(A) + P(B)\end{align}
和事象の確率
\(2\) つの事象が排反でないときは、和事象の確率の公式を用います。
事象 \(A\), \(B\) が互いに排反ではないとき、
\begin{align}P(A \cup B) = P(A) + P(B) − P(A \cap B)\end{align}
公式に異なる名前がついていますが、和事象の確率の公式において \(P(A \cap B) = P(\emptyset) = 0\) のときを「確率の加法定理」と呼んでいるだけですね。
余事象の計算公式
場合の数の問題でも、確率の問題でも、余事象の考え方を使うと楽に解ける場合があります。
- 場合の数
全事象 \(U\) のうち、事象 \(A\) が起こる場合の数を \(n(A)\) とすると、余事象 \(\overline{A}\) が起こる場合の数 \(n(\overline{A})\) は
\begin{align}n(\overline{A}) = n(U) − n(A)\end{align} - 確率
ある事象 \(A\) の確率を \(P(A)\)、その余事象の確率を \(P(\overline{A})\) とすると、
\begin{align}P(\overline{A}) = 1 − P(A)\end{align}
独立試行の確率
複数の試行を行う際、各試行が互いに独立であるときには次の公式が成り立ちます。
前におこなった試行の結果が次の試行にまったく影響を与えないとき、これらの試行は「互いに独立である」という。
\(2\) つの独立な試行 \(S\), \(T\) において、\(S\) では事象 \(A\) が起こり、\(T\) では事象 \(B\) が起こるという事象を \(C\) とすると、
\begin{align}P(C) = P(A)P(B)\end{align}
反復試行の確率
独立な試行を繰り返すときの確率についてに成り立つ公式です。
同じ試行を何回か繰り返すとき、各回の試行は独立である。この一連の独立な試行をまとめて「反復試行」という。
\(1\) 回の試行で事象 \(A\) が起こる確率を \(p\) としたとき、この試行を \(n\) 回行う反復試行の確率で、事象 \(A\) がちょうど \(r\) 回起こる確率は、
\begin{align}{}_n \mathrm{C}_r \times p^r \times (1 − p)^{n − r}\end{align}
独立試行と反復試行については、以下の記事で詳しく説明しています。
反復試行の確率・独立試行の確率とは?公式や見分け方
条件付き確率
ある事象が起きたという条件のもとで、もう \(1\) つの事象が起きる確率です。
ある事象が起きたという条件のもとでもう \(1\) つの事象が起きる確率を「条件付き確率」という。
事象 \(A\) が起きたという条件のもとで事象 \(B\) が起きる確率は \(P(B | A)\) または \(P_A(B)\) と表し、以下のように計算される。
\begin{align}P(B | A) = \displaystyle \frac{P(A ∩ B)}{P(A)}\end{align}
または
\begin{align}P_A(B) = \displaystyle \frac{P(A ∩ B)}{P(A)}\end{align}
積事象の計算公式
積事象の確率を求めるには、確率の乗法定理を利用します。
確率の乗法定理
確率の乗法定理は、条件付き確率の公式を変形することで得られます。
事象 \(A\) が起きたという条件のもとで事象 \(B\) が起きる確率を \(P_A(B)\) とすると、
\begin{align}P(A ∩ B) = P(A)P_A(B)\end{align}
確率の乗法定理は、事象 \(A\) と \(B\) が互いに独立(お互いの確率に影響し合わない)であっても、どちらかがどちらかに従属(片方の事象の有無に応じて他方の事象の確率が変わる)であっても成り立ちます。
独立な事象の乗法定理
確率の乗法定理において、事象 \(A\) と \(B\) が独立であるとき、つまり \(P_A(B) = P(B)\) のときには、次のように書き直すことができます。
\begin{align}P(A ∩ B) = P(A)P(B)\end{align}
上記の等式は、事象の独立性を示す定義式でもあります(等式が成り立てば \(A\) と \(B\) は独立)。
また、記号は異なるものの、「独立試行の確率」の公式と本質的には同じです。
期待値の公式
ある試行において、確率変数 \(X\) の取り得る値を \(x_1, x_2, \cdots, x_n\)、\(X\) がその値をとる確率をそれぞれ \(p_1, p_2, \cdots, p_n\) とすると、\(X\) の期待値は、
\begin{align}E[X] = x_1p_1 + x_2p_2 + \cdots + x_np_n\end{align}
ただし、\(p_1+ p_2 + \cdots + p_n = 1\)
期待値については、以下の記事で詳しく説明しています。
期待値とは?計算公式や求め方をわかりやすく解説!また、宝くじの期待値を計算してみた記事もあるので、気になる方はこちらからどうぞ!
宝くじの当選確率は?当選金額の期待値を計算してみよう!
以上が場合の数と確率の公式一覧でした!
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