この記事では、「積の法則」と「和の法則」の違いや見分け方を実際の問題を通してできるだけわかりやすく解説していきます。
「場合の数と確率」の基礎となる法則なので、この記事を通してぜひマスターしてくださいね!
目次
積の法則・和の法則とは?
まずは積の法則・和の法則の定義をそれぞれ確認してみましょう。
積の法則
事象 \(A\) の起こり方が \(m\) 通り、そのそれぞれに対して事象 \(B\) の起こり方が \(n\) 通りあるとき、事象 \(A\) と事象 \(B\) が両方起こる場合の数は
\(\color{red}{m \times n}\) 通り
積の法則では「そのそれぞれに対して」というのがポイントです。
和の法則
\(2\) つの事象 \(A\)、\(B\) が同時に起こらないとする。
事象 \(A\) の起こり方が \(m\) 通り、事象 \(B\) の起こり方が \(n\) 通りあるとき、事象 \(A\) または事象 \(B\) が起こる場合の数は
\(\color{red}{m + n}\) 通り
和の法則では、\(2\) つの事象 \(A\)、\(B\) が「同時に起こらない」、つまり、「排反である」というのがポイントです。
以上が「積の法則」「和の法則」です。
文章だと難しく感じるかもしれませんが、どちらも当たり前のことなのでしっかり理解しておくようにしましょう!
積の法則と和の法則の違いと見分け方
積の法則と和の法則はどのように使い分けるのでしょうか。
- 積の法則
事象が段階的(同時)に起こるとき - 和の法則
事象が別々の場合に起こるとき(場合分けの結果をまとめるとき)
に使います。
これだけではピンとこないので、例題を通して実際に見ていきましょう。
例題①「シャツとズボンの組み合わせ」
\(5\) 枚のシャツと \(4\) 枚のズボンがあるとき、シャツとズボンの組み合わせは何通りか。
シャツの選び方が \(5\) 通り、そのそれぞれに対してズボンの選び方が \(4\) 通りあります。
シャツを選ぶという事象とズボンを選ぶという事象を、段階的に(同時に)行うのですね。
シャツを選び、かつ、ズボンを選ぶ。
このことから、この問題では「積の法則」を用います。
シャツの選び方が \(5\) 通り、そのそれぞれに対してズボンの選び方が \(4\) 通りあるので、シャツとズボンの組み合わせは積の法則で求められる。
したがって、求めたい場合の数は
\(5 \times 4 = 20\)
答え: \(20\) 通り
例題②「2 つのサイコロの目の和」
大小 \(2\) つのサイコロを投げるとき、\(2\) つのサイコロの目の和が \(5\) の倍数になるのは何通りか。
目の和が \(5\) の倍数ということは、\(5\) になる場合と \(10\) になる場合に場合分けが必要です。
また、「目の和が \(5\) になる事象」 と「目の和が\(10\) になる事象」は同時に起こりません。
目の和が \(5\) または \(10\) になる場合の数を求める。
このことから、この問題では「和の法則」を用います。
\(2\) つのサイコロの目の和が \(5\) の倍数になる、すなわち、目の和が \(5\) または \(10\) になる場合の数を求めればよい。
大小のサイコロの目の出方を \((\text{大の目}, \text{小の目})\) で表すと、
目の和が \(5\) になる組み合わせは、
\((1, 4), (2, 3), (3, 2), (4, 1)\) の \(4\) 通り。
目の和が \(10\) になる組み合わせは、
\((4, 6), (5, 5), (6, 4)\) の \(3\) 通り。
それぞれの事象は互いに排反である(= 同時に起こらない)から、和の法則より、求めたい場合の数は
\(4 + 3 = 7\)
答え: \(7\) 通り
なお、ここでは解答をかなりていねいに記述していますが、解答意図が明確に示されていれば「積の法則より」「和の法則より」といった文言は書かなくても問題ありません。
そのくらい、場合の数と確率の根幹をなす法則ということですね!
積の法則・和の法則の練習問題
最後に、練習問題を解いてみましょう。
練習問題①「トランプを順番に引く」
ジョーカーを除く \(52\) 枚のトランプから \(\mathrm{A}\) と \(\mathrm{B}\) の \(2\) 人が順にカードを引くとき、\(2\) 人ともハートのカードを引く場合の数は何通りか。
ただし引いたカードは戻さないとする。
\(\mathrm{A}\) がカードを引くという事象と、\(\mathrm{B}\) がカードを引くという事象が段階的に起こっていますね。
このことから、「積の法則」を用います。
\(\mathrm{A}\) がハートのカードを引く場合の数は \(13\) 通り。
\(\mathrm{A}\) がハートのカードを \(1\) 枚引いたあと、\(\mathrm{B}\) がハートのカードを引く場合の数は \(12\) 通り。
したがって、\(\mathrm{A}\) と \(\mathrm{B}\) の \(2\) 人がハートのカードを引く場合の数は、(積の法則より)
\(13 \times 12 = 156\)(通り)
答え: \(\color{red}{156}\) 通り
練習問題②「硬貨を投げて表が出る」
硬貨を \(5\) 回投げて \(4\) 回以上表が出る場合の数を求めよ。
「硬貨を \(5\) 回投げて \(4\) 回以上表が出る場合の数」は、
- 表が \(4\) 回出る場合
- 表が \(5\) 回出る場合
の \(2\) つの事象に場合分けできます。
この \(2\) つの事象が同時に起こることはなく、あくまでも考えられうる事象の場合分けです。
このことから、「和の法則」を用います。
求める場合の数は、以下の \(2\) つの事象の場合の数の総和となる。
(i) 表が \(4\) 回出る場合
(ii) 表が \(5\) 回出る場合
(i) 硬貨を \(5\) 回投げて \(4\) 回表が出る場合の数は
表→表→表→表→裏
表→表→表→裏→表
表→表→裏→表→表
表→裏→表→表→表
裏→表→表→表→表
の \(5\) 通り
(ii) 硬貨を \(5\) 回投げて \(5\) 回表が出る場合の数は
表→表→表→表→表
の \(1\) 通り
(i), (ii) は互いに排反であるから、求めたい場合の数は、(和の法則より)
\(5 + 1 = 6\)(通り)
答え: \(\color{red}{6}\) 通り
以上で練習問題は終わりです。
場合の数と確率の問題を解いているうちに、「積の法則」「和の法則」という言葉を意識しなくても使えるようになってきます。
両者の違いをしっかり押さえて、ぜひマスターしてくださいね!