この記事では「複素数」とは何か、公式などをわかりやすく解説します。
\(i\) の \(2\) 乗の意味や計算問題の解き方なども説明しますので、この記事を通してぜひマスターしてくださいね!
目次
複素数とは?
複素数とは、数直線上に表せる数(実数)と表せない数(虚数)を合わせた数の概念です。
まずは、複素数を知る上で必要不可欠な「虚数単位 \(i\)」について見ていきましょう。
虚数単位 i(2 乗すると −1 になる数)
\(2\) 乗して \(−1\) になる数を「虚数単位 \(i\)」と定義します。
虚数単位 \(i\) とは、
\(\color{red}{i^2 = −1}\) または \(\color{red}{i = \sqrt{−1}}\)
を満たす数であり、\(i\) を含む数を虚数という。
どんな実数も \(2\) 乗すれば必ず \(0\) 以上になるので、\(i\) を含む数は確かに実数ではないですね。
複素数の定義
複素数は次のように定義されます。
実数 \(a\), \(b\) と虚数単位 \(i\) を用いて
\begin{align}\color{red}{ a + bi }\end{align}
と表される数を複素数という。
\(a\) を「実部」、\(b\) を「虚部」と呼ぶ。
複素数における実数と虚数
複素数は、実数よりも数の概念を拡張したものと考えてください。
次に示すように、複素数には実数・虚数が含まれます。
複素数 \(a + bi\)(\(a, b\) は実数)は、次のように分類できる。
- \(b = 0\) のとき
実数 \(\color{red}{a}\) - \(b \neq 0\) のとき
虚数 \(\color{red}{a + bi}\)
特に \(a = 0\), \(b \neq 0\) のとき
純虚数 \(\color{red}{bi}\)
実数でない数なんて必要あるのかなあ、と思うかもしれません。
しかし、現代の物理学のほぼすべての分野の発展に複素数は貢献しています。
(中でも光、音、電磁波、交流電流などの「波動」の分野)
電気や電波に囲まれた私たちの文明は、複素数に支えられていると言っても過言ではありません。
虚数で私たちの現実世界が成り立っているなんて、なんだか不思議で神秘的ですね。
複素数の四則演算の公式
複素数の四則演算(足し算・引き算・かけ算・わり算)の公式は次のとおりです。
\(a, b, c, d\) を実数とする。
- 複素数の加法(足し算)
\begin{align}\color{red}{(a + bi) + (c + di) = (a + c) + (b + d)i}\end{align} - 複素数の減法(引き算)
\begin{align}\color{red}{(a + bi) − (c + di) = (a − c) + (b − d)i}\end{align} - 複素数の乗法(かけ算)
\begin{align}\color{red}{(a + bi)(c + di) = (ac − bd) + (ad + bc)i}\end{align} - 複素数の除法(わり算)
\(a \neq 0\) または \(b \neq 0\) のとき、
\begin{align}\displaystyle \frac{c + di}{a + bi} &= \frac{(c + di)\color{red}{(a − bi)}}{(a + bi)\color{red}{(a − bi)}}\\&= \frac{(ac + bd) + (ad − bc)i}{a^2 + b^2}\\&= \frac{ac + bd}{a^2 + b^2} + \frac{ad − bc}{a^2 + b^2} i\end{align}
実数の四則演算と同様、複素数でも基本的に分配法則・結合法則・交換法則などが成り立ちます。
複素数特有の実部・虚部の扱いに注意しながら、それぞれのやり方を見ていきましょう。
複素数の足し算・引き算のやり方
複素数同士の足し算・引き算では、実部同士、虚部同士を足したり引いたりしたものがそれぞれ新しい実部、虚部となります。
\(a, b, c, d\) を実数とすると、
\begin{align}\color{red}{(a + bi) + (c + di) = (a + c) + (b + d)i}\end{align}
\begin{align}\color{red}{(a + bi) − (c + di) = (a − c) + (b − d)i}\end{align}
以下を計算せよ。
(1) \((1 + 4i) + (6 + i)\)
(2) \((3 + 5i) − (4 − 2i)\)
実部同士、虚部同士を計算します。
(1)
\((1 + 4i) + (6 + i)\)
\(= (1 + 6) + (4 + 1)i\)
\(= \color{red}{7 + 5i}\)
(2)
\((3 + 5i) − (4 − 2i)\)
\(= (3 − 4) + (5 − (−2))i\)
\(= \color{red}{−1 + 7i}\)
このように、足し算・引き算で \(i\) は文字のように扱うことができるのですね。
複素数のかけ算のやり方
複素数同士のかけ算のやり方を説明します。
\(a, b, c, d\) を実数とすると、
\begin{align}\color{red}{(a + bi)(c + di) = (ac − bd) + (ad + bc)i}\end{align}
左辺のかっこを展開すると右辺になります。
毎回律儀に展開してもいいですし、上記の公式をそのまま覚えてしまってもいいでしょう。
分配法則で式を展開した後、\(i^2 = −1\) の項が出てきて実部になります。
\((a + bi)(c + di)\)
\(= a \cdot c + a \cdot di + bi \cdot c + bi \cdot di\)
\(= ac + (ad + bc)i + bd \cdot i^2\)
\(= ac + (ad + bc)i − bd\)
\(= (ac − bd) + (ad + bc)i\)
(証明終わり)
以下を計算せよ。
\((1 + i)(1 − 3i)\)
公式通りに計算します。
\((1 + i)(1 − 3i)\)
\(= (1 + 3) + (1 − 3)i\)
\(= \color{red}{4 − 2i}\)
式が複雑になってくると符号を間違えやすいので、注意しましょうね!
ちなみに、複素数同士の積が \(0\) であればどちらか一方の複素数は必ず \(0\) です。
\((a + bi)(c + di) = 0\) のとき、
\(a + bi = 0\) または \(c + di = 0\)
すなわち
\(a = 0\), \(b = 0\) または \(c = 0\), \(d = 0\)
複素数のわり算のやり方(分母の実数化)
複素数同士の割り算では、分母の共役な複素数を上下にかけることで分母を実数だけにします。
これを、複素数の「分母の実数化」と呼びます。
\(a, b, c, d\) が実数で、\(a, b\) の少なくとも一方が \(0\) でないとする。
\begin{align}\displaystyle \frac{c + di}{a + bi} &= \frac{(c + di)\color{red}{(a − bi)}}{(a + bi)\color{red}{(a − bi)}}\\&= \frac{(ac + bd) + (ad − bc)i}{a^2 + b^2}\\&= \frac{ac + bd}{a^2 + b^2} + \frac{ad − bc}{a^2 + b^2} i\end{align}
考え方は、分母にルート(累乗根)を含む時の「分母の有理化」と同じです。
有理化のやり方をわかりやすく解説!複素数の問題や難問も!以下を計算せよ。
\(\displaystyle \frac{1 + i}{1 − i}\)
分母を実数化するために、分母 \(1 − i\) の共役複素数 \(1 + i\) を分母・分子にかけましょう。
\(\begin{align}\displaystyle \frac{1 + i}{1 − i} &= \frac{(1 + i)^2}{(1 − i)(1 + i)}\\&= \frac{(1 − 1) + 2i}{1 + 1}\\&= \frac{2i}{2}\\&= \color{red}{i}\end{align}\)
割り算でも \(i^2\) がよく出てくるので、符号には注意しましょう。
慣れれば簡単にできますよ!
共役な複素数の性質
\(a + bi\) と \(a − bi\) のように、虚部(\(i\) の項)の符号だけが異なる複素数同士を「共役な複素数」といいます。
\(a, b\) が実数のとき、\(\color{red}{a + bi}\) と \(\color{red}{a − bi}\) を互いに共役な複素数という。
共役な複素数同士の和や積は必ず実数となります。
\(a, b\) を実数とすると、
- 共役な複素数の和
\begin{align}\color{red}{(a + bi) + (a − bi) = 2a}\end{align} - 共役な複素数の積
\begin{align}\color{red}{(a + bi)(a − bi) = a^2 + b^2}\end{align}
特に、共役な複素数の積は複素数の分母の実数化において利用できます。
この性質は複素数の計算においてとても重要なので覚えておきましょう!
【発展】複素数の絶対値
\(z = a + bi\) とおくと、\(z\) の共役複素数 \(a − bi\) は \(\overline{z}\) と表せます。
共役な複素数の積 \(z\overline{z}\) について、次が成り立ちます。
\begin{align} z\overline{z} = a^2 + b^2 = |z|^2 \end{align}
(ただし、\(|z| = |\overline{z}|\))
そこで、\(\color{red}{|z| = \sqrt{a^2 + b^2}}\) は「\(z\) の絶対値」と定義されます。
複素数の絶対値は、数学III「複素数平面」の計算でよく登場します。
複素数の計算問題
複素数の計算問題の解き方を解説します。
計算問題①「複素数同士を足す、引く」
以下を計算せよ。
\((1 + i) + (−3 + 7i) − (2 − i)\)
複素数の足し算・引き算ですね。実部と虚部を明確に切り分けましょう。
\((1 + i) + (−3 + 7i) − (2 − i)\)
\(= (1 − 3 − 2) + (1 + 7 + 1)i\)
\(= −4 + 9i\)
答え: \(\color{red}{−4 + 9i}\)
計算問題②「複素数同士をかける」
以下を計算せよ。
\(i(1 − i)(2 + 3i)\)
\(i^2\) に注意しながら、かけ算してくださいね。
\(i(1 − i)(2 + 3i)\)
\(= (i − i^2)(2 + 3i)\)
\(= (i + 1)(2 + 3i)\)
\(= (1 + i)(2 + 3i)\)
\(= (2 − 3) + (2 + 3)i\)
\(= −1 + 5i\)
答え: \(\color{red}{−1 + 5i}\)
計算問題③「複素数の分数を有理化(実数化)する」
以下を計算せよ。
(1) \(\displaystyle \frac{1 + i}{i}\)
(2) \(\displaystyle \frac{2 − i}{(1 + i)(3 + i)}\)
分母の共役複素数を考えましょう。
(2) では、まず分母の複素数を展開してから実数化するとよいです。
(1)
\(\begin{align}\displaystyle \frac{1 + i}{i} &= \frac{(1 + i)(−i)}{i(−i)}\\&= \frac{−i + 1}{1}\\&= 1 − i\end{align}\)
答え: \(\color{red}{1 − i}\)
(2)
\(\begin{align}\displaystyle \frac{2 − i}{(1 + i)(3 + i)} &= \frac{2 − i}{3 − 1 + (1 + 3)i}\\&= \frac{2 − i}{2 + 4i}\\&= \frac{2 − i}{2(1 + 2i)}\\&= \frac{(2 − i)(1 − 2i)}{2(1 + 2i)(1 − 2i)}\\&= \frac{(2 − 2) + (−1 − 4)i}{2(1 + 4)}\\&= \frac{−5i}{10}\\&= −\frac{i}{2}\end{align}\)
答え: \(\color{red}{\displaystyle −\frac{i}{2}}\)
以上で問題も終わりです!
\(i\) の性質を理解しておけば、複素数の計算は難しくありません。
分母の実数化など慣れが必要な計算もあるので、しっかり練習しておきましょう!