この記事では、「有理化」のやり方や問題の解き方をできるだけわかりやすく解説していきます。
また、複素数における有理化についても解説していくので、ぜひこの記事を通してマスターしてくださいね!
有理化とは?
有理化とは、分母に根号( \(\sqrt{ }\) )を含む分数の式を変形して、分母に根号を含まない式にすることです。
分母を無理数から有理数に変換するので、「分母の有理化」と呼ぶのですね。
(例)
- \(\displaystyle \frac{1}{\sqrt{2}}\) → \(\displaystyle \frac{\sqrt{2}}{\color{red}{2}}\)
- \(\displaystyle −\frac{2}{\sqrt{3}}\) → \(\displaystyle −\frac{2\sqrt{3}}{\color{red}{3}}\)
有理化は単なる式変形であって、式の値が変わるわけではないことは覚えておきましょう。
有理化のやり方(例題付き)
有理化の公式と、例題を通して具体的な手順を説明していきます。
分母の項が 1 つの場合 \(\displaystyle \frac{b}{\sqrt{a}}\)
分母の項が \(1\) つの場合は、分母の根号の中身をできるだけシンプルにしたあと、それを分母と分子両方にかけます。
最後に、約分できるなら約分して式を整理します。
\begin{align} \displaystyle \frac{b}{\sqrt{a}} = \frac{b}{k\sqrt{a’}} \color{salmon}{\times \frac{\sqrt{a’}}{\sqrt{a’}}} = \frac{b\sqrt{a’}}{ka’} \end{align}
以下の例題で具体的なやり方を説明します。
\(\displaystyle \frac{3\sqrt{5}}{\sqrt{12}}\) を有理化しなさい。
分母の \(\sqrt{12}\) を上下にかけて…となるのはちょっと待ってください。
まずは、分母にある根号の中身を確認し、できるだけ小さくしておきます。
根号の中身が大きいまま進めてしまうと、後の計算が面倒になります。
\(\begin{align}\displaystyle \frac{3\sqrt{5}}{\sqrt{12}} &= \displaystyle \frac{3\sqrt{5}}{\sqrt{2 \cdot 2 \cdot 3}} \\&= \displaystyle \frac{3\sqrt{5}}{2\sqrt{3}}\end{align}\)
分母 \(2\sqrt{3}\) の根号部分 \(\sqrt{3}\) を分母と分子にかけます。
\(\begin{align}\color{gray}{\displaystyle \frac{3\sqrt{5}}{\sqrt{12}}} &\color{gray}{= \displaystyle \frac{3\sqrt{5}}{\sqrt{2 \cdot 2 \cdot 3}}} \\&\color{gray}{= \displaystyle \frac{3\sqrt{5}}{2\sqrt{3}}} \\&= \displaystyle \frac{3\sqrt{5}}{2\sqrt{3}} \color{salmon}{\times \frac{\sqrt{3}}{\sqrt{3}}}\end{align}\)
分母から根号がなくなれば有理化は成功です。
最後に約分するなどして、分母・分子を整理しておきましょう。
\(\begin{align}\color{gray}{\displaystyle \frac{3\sqrt{5}}{\sqrt{12}}} &\color{gray}{= \displaystyle \frac{3\sqrt{5}}{\sqrt{2 \cdot 2 \cdot 3}}} \\&\color{gray}{= \displaystyle \frac{3\sqrt{5}}{2\sqrt{3}}} \\&\color{gray}{= \displaystyle \frac{3\sqrt{5}}{2\sqrt{3}} \times \frac{\sqrt{3}}{\sqrt{3}}} \\&= \frac{3\sqrt{15}}{6} \\&= \frac{\sqrt{15}}{2}\end{align}\)
答え: \(\color{red}{\displaystyle \frac{\sqrt{15}}{2}}\)
この流れが、有理化の基本となります。
分母の項が 2 つの場合 \(\displaystyle \frac{c}{\sqrt{a} \pm \sqrt{b}}\)
分母の項が \(2\) つある場合は、単純に分母の項をかけるだけでは根号が外れないので、和と差の積 \((A + B)(A − B) = A^2 − B^2\) を利用します。
\begin{align} \displaystyle \frac{c}{\sqrt{a} + \sqrt{b}} &= \frac{c}{\sqrt{a} + \sqrt{b}} \color{salmon}{\times \frac{\sqrt{a} − \sqrt{b}}{\sqrt{a} − \sqrt{b}}} \\ &= \frac{c(\sqrt{a} − \sqrt{b})}{(\sqrt{a})^2 − (\sqrt{b})^2} \\ &= \frac{c(\sqrt{a} − \sqrt{b})}{a − b} \end{align}
以下の例題で手順を確認しましょう。
\(\displaystyle \frac{3}{\sqrt{5} + 2}\) を有理化しなさい。
分母が \(\sqrt{a} + \sqrt{b}\) ならば \(\sqrt{a} − \sqrt{b}\) を、分母が \(\sqrt{a} − \sqrt{b}\) ならば \(\sqrt{a} + \sqrt{b}\) を分母・分子にかけてあげると和と差の積ができます。
この問題では、分母と分子に \(\sqrt{5} − 2\) をかければいいですね。
\(\begin{align}\displaystyle \frac{3}{\sqrt{5} + 2} &= \displaystyle \frac{3\color{salmon}{(\sqrt{5} − 2)}}{(\sqrt{5} + 2)\color{salmon}{(\sqrt{5} − 2)}} \\ &= \frac{3\sqrt{5} − 3 \cdot 2}{(\sqrt{5})^2 − 2^2}\end{align}\)
あとは計算できるところを計算し、分母・分子を整理してあげればOKです。
\(\begin{align} \color{gray}{\frac{3}{\sqrt{5} + 2}} &\color{gray}{= \displaystyle \frac{3(\sqrt{5} − 2)}{(\sqrt{5} + 2)(\sqrt{5} − 2)}} \\ &\color{gray}{= \frac{3\sqrt{5} − 3 \cdot 2}{(\sqrt{5})^2 − 2^2}} \\ &= \frac{3\sqrt{5} − 6}{5 − 4} \\ &= \frac{3\sqrt{5} − 6}{1} \\ &= 3\sqrt{5} − 6 \end{align}\)
答え: \(\color{red}{3\sqrt{5} − 6}\)
分母の項が 3 つの場合 \(\displaystyle \frac{d}{\sqrt{a} + \sqrt{b} + \sqrt{c}}\)
分母の項が \(3\) つある場合、\(3\) 項のうち \(2\) つをまとめて \(1\) つの項と見て、和と差の積を利用します。
\begin{align}\displaystyle \frac{d}{\sqrt{a} + \sqrt{b} + \sqrt{c}} = \frac{d}{(\sqrt{a} + \sqrt{b}) + \sqrt{c}} \color{salmon}{\times \frac{(\sqrt{a} + \sqrt{b}) − \sqrt{c}}{(\sqrt{a} + \sqrt{b}) − \sqrt{c}}}\end{align}
(見切れる場合は横へスクロール)
なお、このあともまだ分母に根号が残った形になるので、もう一度有理化が必要になります。
詳しい手順を例題で確認しましょう。
\(\displaystyle \frac{1}{1 + \sqrt{2} + \sqrt{3}}\) を有理化しなさい。
分母の \(3\) 項のうち、根号の中身が最も大きいもの以外の \(2\) つをまとめ、かっこでくくります。
\(1 + \sqrt{2} + \sqrt{3}\) の場合は \(\sqrt{3}\) が最も大きいので、\((1 + \sqrt{2})\) と \(\sqrt{3}\) に分けます。
\(\displaystyle \frac{1}{1 + \sqrt{2} + \sqrt{3}}\)
\(\displaystyle = \frac{1}{\color{salmon}{(}1 + \sqrt{2}\color{salmon}{)} + \sqrt{3}}\)
こうすることで中身が最も大きい根号が最初の有理化によって解消され、そのあとの計算が楽になります。
分母が和と差の積になるような多項式を分母・分子にかけて有理化します。
その後、計算できるところまで計算します。
\(\color{gray}{\displaystyle \frac{1}{1 + \sqrt{2} + \sqrt{3}}}\)
\(\color{gray}{\displaystyle = \frac{1}{(1 + \sqrt{2}) + \sqrt{3}}}\)
\(\displaystyle = \frac{1}{(1 + \sqrt{2}) + \sqrt{3}} \color{salmon}{\times \frac{(1 + \sqrt{2}) − \sqrt{3}}{(1 + \sqrt{2}) − \sqrt{3}}}\)
\(\displaystyle = \frac{1\{(1 + \sqrt{2}) − \sqrt{3}\}}{\{(1 + \sqrt{2}) + \sqrt{3}\}\{(1 + \sqrt{2}) − \sqrt{3}\}}\)
\(\displaystyle = \frac{(1 + \sqrt{2}) − \sqrt{3}}{(1 + \sqrt{2})^2 − (\sqrt{3})^2}\)
\(\displaystyle = \frac{1 + \sqrt{2} − \sqrt{3}}{1 + 2\sqrt{2} + 2 − 3}\)
\(\displaystyle = \frac{1 + \sqrt{2} − \sqrt{3}}{2\sqrt{2}}\)
まだ分母に根号が残っているので、もう一度有理化します。
この問題では \(\sqrt{2}\) を分母と分子にかければいいですね。
\(\color{gray}{\displaystyle \frac{1 + \sqrt{2} − \sqrt{3}}{2\sqrt{2}}}\)
\(= \displaystyle \frac{1 + \sqrt{2} − \sqrt{3}}{2\sqrt{2}} \color{salmon}{\times \frac{\sqrt{2}}{\sqrt{2}}}\)
\(\displaystyle = \frac{\sqrt{2} + 2 − \sqrt{6}}{4}\)
\(\displaystyle = \frac{2 + \sqrt{2} − \sqrt{6}}{4}\)
答え: \(\color{red}{\displaystyle \frac{2 + \sqrt{2} − \sqrt{6}}{4}}\)
このように、有理化を \(2\) 回以上行う場合もあることを認識しておいてくださいね!
有理化の計算問題
それでは、計算問題を通して分母の有理化を極めましょう!
計算問題①「\(\displaystyle \frac{2}{\sqrt{72}}\) の有理化」
\(\displaystyle \frac{2}{\sqrt{72}}\) を有理化しなさい。
有理化の前に分母の根号の中身を整理して小さくできますね。
それに気づけたらとても簡単な問題です。
\(\begin{align} \frac{2}{\sqrt{72}} &= \frac{2}{\sqrt{6^2 \cdot 2}} \\&= \frac{2}{6\sqrt{2}} \\&= \frac{1}{3\sqrt{2}} \\ &= \frac{1}{3\sqrt{2}} \cdot \frac{\sqrt{2}}{\sqrt{2}} \\ &= \frac{\sqrt{2}}{6}\end{align}\)
答え: \(\color{red}{\displaystyle \frac{\sqrt{2}}{6}}\)
計算問題②「\(\displaystyle \frac{\sqrt{15} − 3}{5 − 2\sqrt{6}}\) の有理化」
\(\displaystyle \frac{\sqrt{15} − 3}{5 − 2\sqrt{6}}\) を有理化しなさい。
和と差の積の公式を利用します。
分母に注目して、分母と分子にかける数を考えましょう。
\(\displaystyle \frac{\sqrt{15} − 3}{5 − 2\sqrt{6}}\)
\(\displaystyle = \frac{(\sqrt{15} − 3)(5 + 2\sqrt{6})}{(5 − 2\sqrt{6})(5 + 2\sqrt{6})}\)
\(\displaystyle = \frac{5\sqrt{15} + \sqrt{15} \cdot 2\sqrt{6} − 3 \cdot 5 − 3 \cdot 2\sqrt{6}}{5^2 − (2\sqrt{6})^2}\)
\(\displaystyle = \frac{5\sqrt{15} + 6\sqrt{10} − 15 − 6\sqrt{6}}{25 − 24}\)
\(\displaystyle = \frac{5\sqrt{15} + 6\sqrt{10} − 15 − 6\sqrt{6}}{1}\)
\(= 5\sqrt{15} + 6\sqrt{10} − 15 − 6\sqrt{6}\)
\(= 5\sqrt{15} + 6\sqrt{10} − 6\sqrt{6} − 15\)
答え: \(\color{red}{5\sqrt{15} + 6\sqrt{10} − 6\sqrt{6} − 15}\)
計算問題③「\(\displaystyle \frac{\sqrt{3} − \sqrt{7} + \sqrt{10}}{\sqrt{3} + \sqrt{7} + \sqrt{10}}\) の有理化」
最後は少し工夫が必要な難問です。
\(\displaystyle \frac{\sqrt{3} − \sqrt{7} + \sqrt{10}}{\sqrt{3} + \sqrt{7} + \sqrt{10}}\) を有理化しなさい。
分母を \(2\) つに分けるとき、根号の中身の大きい \(\sqrt{10}\) が単独となるよう、\(\sqrt{3} + \sqrt{7}\) と \(\sqrt{10}\) に分けますね。
しかし、分子をその分け方で展開すると計算が大変になってしまいます。
そこで、分子は分子でうまく和と差ができるように分け方を変えて、計算を工夫しましょう。
(見切れる場合は横へスクロール)
\(\displaystyle \frac{\sqrt{3} − \sqrt{7} + \sqrt{10}}{\sqrt{3} + \sqrt{7} + \sqrt{10}}\)
\(\displaystyle = \frac{\sqrt{3} − \sqrt{7} + \sqrt{10}}{(\sqrt{3} + \sqrt{7}) + \sqrt{10}}\)
\(\displaystyle = \frac{\sqrt{3} − \sqrt{7} + \sqrt{10}}{(\sqrt{3} + \sqrt{7}) + \sqrt{10}} \cdot \frac{(\sqrt{3} + \sqrt{7}) − \sqrt{10}}{(\sqrt{3} + \sqrt{7}) − \sqrt{10}}\)
\(\displaystyle = \frac{\color{salmon}{\sqrt{3} − (\sqrt{7} − \sqrt{10})}}{(\sqrt{3} + \sqrt{7}) + \sqrt{10}} \cdot \frac{\color{salmon}{\sqrt{3} + (\sqrt{7} − \sqrt{10})}}{(\sqrt{3} + \sqrt{7}) − \sqrt{10}}\)
\(\displaystyle = \frac{(\sqrt{3})^2 − (\sqrt{7} − \sqrt{10})^2}{(\sqrt{3} + \sqrt{7})^2 − (\sqrt{10})^2}\)
\(\displaystyle = \frac{3 − (7 − 2\sqrt{70} + 10)}{(3 + 2\sqrt{21} + 7) − 10}\)
\(\displaystyle = \frac{2\sqrt{70} − 14}{2\sqrt{21}}\)
\(\displaystyle = \frac{\sqrt{70} − 7}{\sqrt{21}}\)
\(\displaystyle = \frac{\sqrt{70} − 7}{\sqrt{21}} \cdot \frac{\sqrt{21}}{\sqrt{21}}\)
\(\displaystyle = \frac{7\sqrt{30} − 7\sqrt{21}}{21}\)
\(\displaystyle = \frac{\sqrt{30} − \sqrt{21}}{3}\)
答え: \(\color{red}{\displaystyle \frac{\sqrt{30} − \sqrt{21}}{3}}\)
【参考】複素数の実数化(例題付き)
最後に、分母の有理化とよく似た、複素数の分母の実数化について少し解説していきます。
分母に虚数 \(i\) が含まれている式を分母が実数のみの式に変形する計算テクニックであり、有理化と似た考え方で計算できます。
分母の項が 1 つの場合 \(\displaystyle \frac{b}{ai}\)
まず、分母の項が \(1\) つの場合の実数化です。
\begin{align} \frac{b}{ai} = \frac{b}{ai} \color{salmon}{\times \frac{i}{i}} = −\frac{bi}{a} \end{align}
虚数 \(i\) は、同じく虚数 \(i\) をかけてあげると \(−1\) と実数にすることができます。
このとき、\(i^2 = −1\) ですので、答えの符号にはくれぐれも気をつけましょう。
\(\displaystyle \frac{3}{2i}\) の分母を実数化しなさい。
分母に虚数 \(i\) が含まれるので、分母と分子に \(i\) をかけます。
\(\begin{align} \frac{3}{2i} &= \frac{3}{2i} \color{salmon}{\times \frac{i}{i}} \\ &= \frac{3i}{2i^2} \\ &= \frac{3i}{2 \cdot (−1)} \\ &= −\frac{3i}{2} \end{align}\)
答え: \(\color{red}{−\displaystyle \frac{3i}{2}}\)
簡単ですね!
分母の項が 2 つの場合 \(\displaystyle \frac{c}{a \pm bi}\)
分母の項が \(2\) つある場合、有理化と同じく、和と差の積を利用すると分母を実数化できます。
\begin{align}\displaystyle \frac{c}{a + bi} = \frac{c}{a + bi} \color{salmon}{\times \frac{a − bi}{a − bi}} = \frac{c(a − bi)}{a^2 + b^2} \end{align}
ただし、\(i^2 = −1\) ですから、和と差の積の符号に十分注意しましょう。
\(a + bi\) と \(a − bi\) のように、和と差の関係で表される \(2\) つの複素数を「共役な複素数」といいます。
複素数とは?公式や i の 2 乗の意味、計算問題の解き方\(\displaystyle \frac{25}{3 − 4i}\) の分母を実数化しなさい。
分母 \(3 − 4i\) の共役複素数 \(3 + 4i\) を分母と分子にかけます。
途中計算では \(i^2 = −1\) に注意しましょう!
\(\begin{align} \frac{25}{3 − 4i} &= \frac{25}{3 − 4i} \color{salmon}{\times \frac{3 + 4i}{3 + 4i}} \\&= \frac{25(3 + 4i)}{3^2 − (4i)^2}\\&= \frac{25(3 + 4i)}{9 − 16i^2} \\&= \frac{25(3 + 4i)}{9 − 16(−1)} \\&= \frac{25(3 + 4i)}{9 + 16} \\&= \frac{25(3 + 4i)}{25} \\&= 3 + 4i \end{align}\)
答え: \(\color{red}{3 + 4i}\)
以上で分母の有理化、複素数の実数化の説明は終わりです!
有理化は、非常に重要な計算テクニックです。
この記事でしっかりと復習して、必ずマスターしておきましょうね!