この記事では、「法線」の意味をできるだけわかりやすく解説します。
法線の方程式や法線ベクトルの求め方、法線ベクトルを利用して 2 直線のなす角を求める方法など、法線に関する内容をまとめていきますので、ぜひ勉強の参考にしてくださいね!
目次
法線とは?
法線とは、ある直線と垂直に交わる直線です。
曲線においては、曲線上のある点における接線に垂直な直線のことを指します。
ちなみに、空間(\(3\) 次元)においては、曲面上のある点における接平面に垂直な直線が法線です。
また、法線が向く方向を「法線方向」と呼びます。
法線の性質① (直線の傾き) × (法線の傾き) = −1
ある直線とその法線の傾きには、次の関係が成り立ちます。
傾きがそれぞれ \(m\), \(m’\) の直線は
\begin{align}\color{red}{\displaystyle mm’ = −1 \iff m’ = −\frac{1}{m}}\end{align}
のとき垂直に交わる。
すなわち、ある直線の傾きを \(m\)、その法線の傾きを \(m’\) とすると、上記が必ず成り立つ。
直線の傾きがわかれば法線の傾きはすぐにわかるということですね。
ただし、この性質は \(x\) 軸や \(y\) 軸に平行な直線(傾き \(\infty\) な直線)では使えないことに注意しておきましょう。
法線の性質② 直線と法線は「多 対 多」
直線とその法線は「\(1\) 対 \(1\)」の対応ではなく、「多 対 多」の対応になります。
直線 \(l\) の法線が直線 \(l’\) であるとき、直線 \(l’\) は直線 \(l\) の法線である。
また、直線 \(l\) に平行な直線であれば、直線 \(l’\) を法線にもつ。
互いに垂直な直線同士ですから、当たり前といえば当たり前です。
ふとこの対称性を見落とすことも多いので、しっかり理解しておきましょう!
法線の方程式
法線の方程式は、曲線上の「接点の座標」と「接線の傾き」から求められます。
ある曲線 \(y = f(x)\) 上の点 \(\mathrm{A}(a, f(a))\) における接線の傾きは \(f’(a)\) であるから、その法線の方程式は
\begin{align}\color{red}{y − f(a) = −\frac{1}{f’(a)} (x − a)}\end{align}
曲線のある点における接線の傾き \(f'(a)\) は、微分で求められましたね。
法線の傾きは直線の傾きとかけて \(−1\) になる値なので、\(− \displaystyle \frac{1}{f’(a)}\) となります。
例題「法線の方程式の求め方」
次の例題を通して、法線の方程式の求め方を説明します。
(1) 曲線 \(y = 2x^2 − 3x + 1\) 上の点 \((3, 10)\) における法線の方程式を求めよ。
(2) 曲線 \(y = x^3 – 2x + 1\) 上の点 \((2, 5)\) における法線の方程式を求めよ。
まずは、接点 \((a, f(a))\) における接線の傾き \(f'(a)\) を求めます。
そしたら、法線の方程式の公式 \(y − f(a) = −\displaystyle \frac{1}{f’(a)} (x − a)\) に当てはめるだけです。
\(f(x) = 2x^2 − 3x + 1\) とおくと、
\(\begin{align} f’(x) &= (2x^2 − 3x + 1)’ \\ &= 4x − 3 \end{align}\)
よって
\(f’(3) = 4 \cdot 3 − 3 = 9\)
より、点 \((3, 10)\) における接線の傾きは \(9\)
よって、曲線 \(y = 2x^2 − 3x + 1\) 上の点 \((3, 10)\) における法線の方程式は
\(\displaystyle y − 10 = −\frac{1}{9} (x − 3)\)
すなわち
\(\displaystyle y = −\frac{1}{9} x + \frac{31}{3}\)
答え: \(\color{red}{\displaystyle y = −\frac{1}{9} x + \frac{31}{3}}\)
\(f(x) = x^3 – 2x + 1\) とすると
\(f’(x) = 3x^2 − 2\)
\(f’(2) = 10\)
より、点 \((2, 5)\) における接線の傾きは \(10\)
よって、曲線 \(y = x^3 – 2x + 1\) 上の点 \((2, 5)\) における法線の方程式は
\(\displaystyle y − 5 = −\frac{1}{10} (x − 2)\)
\(\displaystyle y = −\frac{1}{10} x + \frac{26}{5}\)
答え: \(\color{red}{\displaystyle y = −\frac{1}{10} x + \frac{26}{5}}\)
法線ベクトルとは?
法線ベクトルとは、ある直線に垂直なベクトル、または、ある平面に垂直なベクトルのことで、\(\color{red}{\vec{n}}\) と表します。
法線で重要なのはその向き(= 直線または面に垂直であること)だけなので、法線ベクトル \(\vec{n}\) は無数に存在します(法線方向を向いていれば大きさはなんでもOK)。
そのうち、大きさが \(1\) である法線ベクトルを「単位法線ベクトル」といいます。
なお、単位法線ベクトルは必ず \(\bf{2}\) つ存在します。
法線ベクトルと直線の方程式
法線ベクトルと対応する直線の方程式についての公式と、実際の求め方を説明します。
① 直線の方程式から法線ベクトルを求める公式
法線ベクトルは、直線の方程式から簡単に求められます。
直線 \(ax + by + c = 0\) \((a \neq 0, b \neq 0)\) の法線ベクトルは
\begin{align}\color{red}{t(a, b)\,\, (t \neq 0)}\end{align}
直線の方程式を整理すると \(\displaystyle y = −\frac{a}{b} x − \frac{c}{b}\) となるので、その傾きは \(\displaystyle −\frac{a}{b}\) です。
法線ベクトルはそれに垂直な傾き \(\displaystyle \frac{b}{a}\) をもつベクトルなので、\(x\) 成分と \(y\) 成分の比が \(a : b\) であればいい、すなわち、法線ベクトルの成分は \(0\) でない任意の定数 \(t\) を用いて \(t(a, b)\) と表せます。
(1) 直線 \(3x + 2y − 8 = 0\) の法線ベクトルを求めよ。
(2) \(\displaystyle y = −\frac{3}{4} x + 5\) の法線ベクトル \(\vec{n}\) を求めよ。
公式から一瞬で法線ベクトルがわかります。
(2) では、直線の方程式を基本形 \(y = Ax + B\) から一般形 \(ax + by + c = 0\) に変形しておきましょう。
(1)
直線 \(3x + 2y − 8 = 0\) の法線ベクトルは
\(t(3, 2)\) \((t \neq 0)\)
答え: \(\color{red}{t(3, 2)}\) \((t \neq 0)\)
(2)
\(\displaystyle y = −\frac{3}{4} x + 5\) を変形して、
\(\displaystyle \frac{3}{4} x + y − 5 = 0\)
よってこの直線の法線ベクトルは
\(\displaystyle \vec{n} = t \left( \frac{3}{4}, 1 \right)\) \((t \neq 0)\)
答え: \(\color{red}{\displaystyle t \left( \frac{3}{4}, 1 \right) (t \neq 0)}\)
② 法線ベクトルから直線の方程式を求める公式
反対に、法線ベクトルから直線の方程式を求めることもできます。
ベクトル \(\vec{n} = (a, b)\) に垂直で、点\((x_1, y_1)\) を通る直線の方程式は
\begin{align}\color{red}{y − y_1 = −\frac{a}{b} (x − x_1)}\end{align}
(ただし、\(a \neq 0\), \(b \neq 0\))
法線ベクトルの成分から、その傾きは \(\displaystyle \frac{b}{a}\) とわかるので、逆数をとって \(−1\) をかければ直線の傾き \(\displaystyle −\frac{a}{b}\) が得られますね。
(1) 点 \((−2 , 2)\) を通り、\(\vec{n} = (1, 5)\) を法線ベクトルにもつ直線の方程式を求めよ。
(2) 点 \((3, 7)\) を通り、\(\displaystyle \vec{n}\left(\frac{3}{4}, 1 \right)\) に垂直な直線の方程式を求めよ。
直線の傾きを先に計算しておくと楽です。
(1)
\(\vec{n} = (1, 5)\) に垂直な直線の傾きは \(−\displaystyle \frac{1}{5}\)
よって、求める方程式は
\(\displaystyle y − 2 = −\frac{1}{5} (x + 2)\)
すなわち
\(\displaystyle y = −\frac{1}{5} x + \frac{8}{5}\)
答え: \(\color{red}{\displaystyle y = −\frac{1}{5} x + \frac{8}{5}}\)
(2)
\(\displaystyle \vec{n}\left(\frac{3}{4}, 1 \right)\) に垂直な直線の傾きは
\(−\displaystyle \frac{\frac{3}{4}}{1} = −\displaystyle \frac{3}{4}\)
点 \((3, 7)\) を通り、傾き \(\displaystyle −\frac{3}{4}\) の直線の方程式は
\(\displaystyle y − 7 = −\frac{3}{4} (x − 3)\)
\(\displaystyle y − 7 = −\frac{3}{4}x + \frac{9}{4}\)
\(\displaystyle \frac{3}{4}x + y − \frac{37}{4} = 0\)
答え: \(\color{red}{\displaystyle \frac{3}{4} x + y − \frac{37}{4} = 0}\)
③ 内積を利用して直線の方程式を求める公式
また、内積を利用して直線の方程式を求めることもできます。
定点 \(\mathrm{A}(\vec{a})\) を通り、ベクトル \(\vec{n}\) \((\neq \vec{0})\) に垂直な直線 \(g\) 上の任意の点を \(\mathrm{P}(\vec{p})\) とすると、直線 \(g\) のベクトル方程式は
\begin{align}\color{red}{\vec{n} \cdot (\vec{p} − \vec{a}) = 0}\end{align}
直線とその法線が垂直であることから、両者ベクトルの内積が \(0\) になることを利用しているのですね。
点 \((1, −3)\) を通り、\(\vec{n} = (5, 2)\) に垂直な直線の方程式を求めよ。
直線上の点を \(\mathrm{P}(x, y)\) として、直線のベクトル方程式を立てます。
成分を計算していくと、直線の方程式が得られます。
通る点を \(\mathrm{A}(1, −3)\) 、求める直線上の点を \(\mathrm{P}(x, y)\) とすると、
求める直線のベクトルは
\(\overrightarrow{\mathrm{AP}} = (x − 1, y − (−3)) = (x − 1, y + 3)\)
これが \(\vec{n} = (5, 2)\) と垂直に交わるから、
\(\overrightarrow{\mathrm{AP}} \cdot \vec{n} = 0\)
すなわち
\((x − 1) \cdot 5 + (y + 3) \cdot 2 = 0\)
\(5x − 5 + 2y + 6 = 0\)
\(5x + 2y + 1 = 0\)
したがって、求める直線の方程式は \(5x + 2y + 1 = 0\)
答え: \(\color{red}{5x + 2y + 1 = 0}\)
直線のベクトル方程式は、上記のほかにも複数存在します。
ベクトル方程式とは?図形別の公式(直線・円)や問題の解き方
法線ベクトルと平面の方程式(3 次元)
今度は、\(3\) 次元空間における法線ベクトルと平面の方程式について説明していきます。
① 平面の方程式から法線ベクトルを求める公式
\(3\) 次元においても、法線ベクトルは平面の方程式から簡単に求められます。
平面 \(ax + by + cz + d = 0\) \((a \neq 0\), \(b \neq 0\), \(c \neq 0)\) の法線ベクトルは
\begin{align}\color{red}{t(a, b, c)\,\, (t \neq 0)}\end{align}
\(2\) 次元の場合と同じく、平面の方程式の \(x\), \(y\), \(z\) の係数の比が法線ベクトルの各成分になります。
平面 \(3x + 4y − 8z + 1 = 0\) の法線ベクトルを求めよ。
公式から、一瞬で法線ベクトルがわかります。
平面 \(3x + 4y − 8z + 1 = 0\) の法線ベクトルは
\(t(3, 4, −8)\) \((t \neq 0)\)
答え: \(\color{red}{t(3, 4, −8)}\) \((t \neq 0)\)
② 法線ベクトルから平面の方程式を求める公式
反対に、法線ベクトルから平面の方程式を求めることもできます。
ベクトル \(\vec{n} = (a, b, c)\) に垂直で、点\((x_1, y_1, z_1)\) を通る平面の方程式は
- 内積表示(平面のベクトル方程式)
\begin{align}\color{red}{\vec{n} \cdot (\vec{x} − \vec{x_1}) = 0}\end{align} - 成分表示(平面の方程式)
\begin{align}\color{red}{a(x − x_1) + b(y − y_1) + c(z − z_1) = 0}\end{align}
(ただし、\(a \neq 0\), \(b \neq 0\), \(c \neq 0\))
平面とその法線が垂直であることから、両者ベクトルの内積が \(0\) になることを利用しています。
内積表示の公式を成分で書き直すと、平面の方程式が得られます。
点 \(\mathrm{A}(−1 , 5, 2)\) を通り、\(\vec{n} = (3, 4, −3)\) が法線ベクトルである直線の方程式を求めよ。
公式を覚えてしまえば簡単ですね。
求める方程式は
\(\displaystyle 3(x + 1) + 4(y − 5) − 3(z − 2) = 0\)
すなわち
\(\displaystyle 3x + 4y − 3z − 11 = 0\)
答え: \(\color{red}{\displaystyle 3x + 4y − 3z − 11 = 0}\)
法線ベクトルと 2 直線のなす角の公式
法線ベクトルを利用して \(2\) 直線のなす角を求める公式は次のとおりです。
\(2\) 直線 \(ax + by + c = 0\)、\(a’x + b’y + c’ = 0\) の法線ベクトルの \(1\) つはそれぞれ
\(\vec{n} = (a, b)\)、\(\vec{n}’ = (a’, b’)\) であるから、
\(2\) 直線のなす角 \(\theta\) は
\begin{align} \cos\theta &= \frac{\vec{n} \cdot \vec{n}’}{|\vec{n}||\vec{n}’|} \\ &= \frac{aa’ + bb’}{\sqrt{a^2 + b^2} \sqrt{a’^2 + b’^2}}\end{align}
を満たす。
(ただし、\(a \neq 0\), \(a’ \neq 0\), \(b \neq 0\), \(b’ \neq 0\))
この公式は、ある \(2\) 直線のなす角がそれぞれの法線ベクトルがなす角に必ず等しいという性質を利用しています。
\(2\) 直線の法線ベクトル同士の内積から \(2\) 直線のなす角を求めているのですね。
なぜわざわざ法線ベクトルを使うかというと、\(2\) 直線そのものの方向ベクトルを求めるよりも法線ベクトルを求める方が簡単だからです。
方向ベクトル
ある直線に対して、同じ方向を向くベクトル。
直線 \(ax + by + c = 0\) の方向ベクトルは
\begin{align}t(−b, a) \ \ (t \neq 0)\end{align}
ベクトルのなす角の公式 \(\cos\theta = \displaystyle \frac{\vec{a} \cdot \vec{b}}{|\vec{a}||\vec{b}|}\) は、内積の公式 \(\vec{a} \cdot \vec{b} = |\vec{a}||\vec{b}| \cos\theta\) を変形して得られます。
ベクトルの内積とは?公式や求め方をわかりやすく解説!
例題「2 直線のなす角の求め方」
次の例題を通して、法線ベクトルを使った \(2\) 直線のなす角の求め方を説明します。
次の \(2\) 直線のなす角 \(\theta\) を求めよ。ただし、\(0^\circ \leq \theta \leq 90^\circ\) とする。
(1) \(5x − y − 3 = 0\), \(3x + 2y + 4 = 0\)
(2) \(x + \sqrt{3} y − 5 = 0\), \(\sqrt{3} x − 3y + 1 = 0\)
\(2\) 直線の法線ベクトル \(\vec{n}\), \(\vec{n’}\) を求めて、公式 \(\displaystyle \cos\theta = \frac{\vec{n} \cdot \vec{n}’}{|\vec{n}||\vec{n}’|}\) に当てはめます。
このとき、\(2\) 直線のなす角はいつも \(\theta\)、\(180^\circ − \theta\) の \(2\) 通りで表せてしまうので、問題で与えられた角度の範囲に留意しましょう。
\(2\) 直線の法線ベクトルの \(1\) つをそれぞれ \(\vec{n}\), \(\vec{n}’\) とおくと、
\(\vec{n} = (5, −1)\), \(\vec{n}’ = (3, 2)\) より、
\(2\) 直線のなす角を \(\alpha \ (0^\circ \leq \alpha \leq 180^\circ)\) とおくと、
\(\begin{align}\displaystyle \cos\alpha &= \frac{\vec{n} \cdot \vec{n}’}{|\vec{n}||\vec{n}’|}\\&= \frac{5 \cdot 3 + (−1) \cdot 2}{\sqrt{25 + 1} \sqrt{9 + 4}}\\&= \frac{13}{\sqrt{26} \sqrt{13}}\\&= \frac{1}{\sqrt{2}}\end{align}\)
\(\alpha = 45^\circ\)、すなわち、\(2\) 直線のなす角は \(45^\circ\) または \(135^\circ\) である。
このうち、\(0^\circ \leq \theta \leq 90^\circ\) を満たす角は
\(\theta = 45^\circ\)
答え: \(\color{red}{\theta = 45^\circ}\)
\(2\) 直線の法線ベクトルの \(1\) つをそれぞれ \(\vec{n}\), \(\vec{n}’\) とおくと、
\(\vec{n} = (1, \sqrt{3})\), \(\vec{n}’ = (\sqrt{3}, −3)\)
\(2\) 直線のなす角を \(\alpha \ (0^\circ \leq \alpha \leq 180^\circ)\) とおくと、
\(\begin{align}\displaystyle \cos\alpha &= \frac{\vec{n} \cdot \vec{n}’}{|\vec{n}||\vec{n}’|}\\&= \frac{1 \cdot \sqrt{3} + \sqrt{3} \cdot (−3)}{\sqrt{1 + 3} \sqrt{3 + 9}}\\&= −\frac{2\sqrt{3}}{2 \cdot 2\sqrt{3}}\\&= −\frac{1}{2}\end{align}\)
\(\alpha = 120^\circ\)、すなわち、\(2\) 直線のなす角は \(120^\circ\) または \(60^\circ\) である。
このうち、\(0^\circ \leq \theta \leq 90^\circ\) を満たす角は
\(\theta = 60^\circ\)
答え: \(\color{red}{60^\circ}\)
以上で法線の解説は終わりです!
直線と法線の関係を理解しておけば、法線の問題は怖くありません。
ぜひマスターしてくださいね!