ベクトルの内積とは?意味・公式や求め方、計算問題

この記事では、「ベクトルの内積」の公式や意味をできるだけわかりやすく解説していきます。

内積の求め方や計算問題も解説していきますので、この記事を通してぜひマスターしてくださいね。

 

ベクトルの内積とは?

内積とは、\(\bf{2}\) つのベクトル同士の向きをそろえてかけ算したものです。

ベクトルの内積の定義

\(\vec{0}\) でないふたつのベクトル \(\vec{a}\), \(\vec{b}\) に対して、\(\vec{a}\), \(\vec{b}\) のなす角を \(\theta\) \((0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ)\) とすると、\(\vec{a}\), \(\vec{b}\) の内積は次のように定義される。

\begin{align}\color{red}{\vec{a} \cdot \vec{b} = |\vec{a}| |\vec{b}| \cos\theta}\end{align}

 

なお、\(\vec{a} = \vec{0}\) または \(\vec{b} = \vec{0}\) のときは

\begin{align}\vec{a} \cdot \vec{b} = 0\end{align}

と定める。

ベクトルは、「大きさ」と「向き」をもつものなので、向きの異なるベクトル同士を純粋にかけ算できません。

そこで、三角比 \(\cos\theta\) を用いてベクトルの向きをそろえ、内積として定義したのです。

補足

\(|\vec{a}|\) はベクトル \(\vec{a}\) の「大きさ」です。

\(\vec{a} = (x, y)\) のとき、 \(\vec{a}\) の大きさは三平方の定理より

\begin{align}|\vec{a}| = \sqrt{x^2 + y^2}\end{align}

と計算できます。

 

ベクトルの内積の公式

ここでは、ベクトルの内積に関わる公式を見ていきましょう。

【公式①】内積のベクトル表示(定義)

先ほど示した定義は、そのまま内積のベクトル表示の公式になります。

内積のベクトル表示

\(\vec{0}\) でないふたつのベクトル \(\vec{a}\), \(\vec{b}\) に対して、\(\vec{a}\), \(\vec{b}\) のなす角を \(\theta\) \((0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ)\) とすると、

\begin{align}\color{red}{\vec{a} \cdot \vec{b} = |\vec{a}| |\vec{b}| \cos \theta}\end{align}

 

内積を求めるとき、\(2\) つのベクトルの始点をそろえるのが暗黙のルールです。

始点をそろえないと、\(2\) つのベクトルのなす角 \(\theta\) が定義できないためです。

ですので、図形問題で内積を計算する際は、始点がそろっているかを必ず確認しましょう。

 

【公式②】内積の成分表示

また、\(2\) つのベクトルが成分表示されている場合、内積は次のように計算できます。

内積の成分表示

\(\vec{a} = (a_1, a_2)\), \(\vec{b} = (b_1, b_2)\) のとき

\begin{align}\color{red}{\vec{a} \cdot \vec{b} = a_1 b_1 + a_2 b_2}\end{align}

ベクトルが成分で表されている場合は、\(x\) 成分、\(y\) 成分ごとにかけて足し算するだけで内積を計算できるということですね。

なぜこの公式が成り立つのかは、「余弦定理」を使えば簡単に確かめられます。

余弦定理

\(\triangle \mathrm{ABC}\) について、

\begin{align}a^2 = b^2 + c^2 − 2bc \cos \mathrm{A}\end{align}

余弦定理とは?公式の覚え方や証明、計算問題の解き方
証明

 

\(\vec{0}\) でない \(2\) つのベクトル \(\vec{a} = (a_1, a_2)\), \(\vec{b} = (b_1, b_2)\) の始点を合わせて点 \(\mathrm{O}\) とし、\(\vec{\mathrm{OA}} = \vec{a}\), \(\vec{\mathrm{OB}} = \vec{b}\) となるように点 \(\mathrm{A}, \mathrm{B}\) をとる。

また、\(\angle \mathrm{AOB} = \theta\) とおく。

 

\(\triangle \mathrm{OAB}\) について、余弦定理より

\(\mathrm{AB^2} = \mathrm{OA^2} + \mathrm{OB^2} − 2 \mathrm{OA} \cdot \mathrm{OB} \cos \theta\)

 

ここで、\(\mathrm{AB^2} = |\vec{b} − \vec{a}|\), \(\mathrm{OA} = |\vec{a}|\), \(\mathrm{OB} = |\vec{b}|\) より

\(|\vec{b} − \vec{a}|^2 = |\vec{a}|^2 + |\vec{b}|^2 − 2 |\vec{a}| |\vec{b}| \cos \theta\)

 

移項して

\(|\vec{a}| |\vec{b}| \cos \theta = \displaystyle \frac{1}{2} (|\vec{a}|^2 + |\vec{b}|^2 − |\vec{b} − \vec{a}|^2)\)

 

右辺を成分表示して展開・整理すると

\(\displaystyle \frac{1}{2} (|\vec{a}|^2 + |\vec{b}|^2 − |\vec{b} − \vec{a}|^2)\)

\(= \displaystyle \frac{1}{2} [(a_1^2 + a_2^2) + (b_1^2 + b_2^2) − \{(b_1 − a_1)^2 + (b_2 − a_2)^2\}]\)

\(= \displaystyle \frac{1}{2} \{a_1^2 + a_2^2 + b_1^2 + b_2^2 − (b_1^2 − 2a_1b_1 + a_1^2 + b_2^2 − 2a_2b_2 + a_2^2)\}\)

\(= \displaystyle \frac{1}{2} (a_1^2 + a_2^2 + b_1^2 + b_2^2 − b_1^2 + 2a_1b_1 − a_1^2 − b_2^2 + 2a_2b_2 − a_2^2)\)

\(= \displaystyle \frac{1}{2} (2a_1b_1 + 2a_2b_2)\)

\(= \displaystyle \frac{1}{2} \cdot 2(a_1b_1 + a_2b_2)\)

\(= a_1b_1 + a_2b_2\)

(見切れる場合は横へスクロール)

 

ここで、左辺は \(\vec{a} \cdot \vec{b} = |\vec{a}| |\vec{b}| \cos \theta\) であるから

\(\color{red}{\vec{a} \cdot \vec{b} = a_1 b_1 + a_2 b_2}\)

 

(証明終わり)

 

【公式③】ベクトルのなす角

また、内積の公式①を \(\cos \theta\) について解くと、\(2\) つのベクトルのなす角がわかります。

ベクトルのなす角

\(\vec{0}\) でないふたつのベクトル \(\vec{a} = (a_1, a_2)\), \(\vec{b} = (b_1, b_2)\) のなす角を \(\theta\) とすると

\begin{align}\displaystyle \cos \theta &= \frac{\vec{a} \cdot \vec{b}}{|\vec{a}| |\vec{b}|} \\&= \displaystyle \frac{a_1 b_1 + a_2 b_2}{\sqrt{a_1^2 + a_2^2} \sqrt{b_1^2 + b_2^2}}\end{align}

このように内積は角度の情報をもち合わせているので、ベクトル同士の関係性や両者がなす角を知るのにとても便利なツールなのです。

 

ベクトルの内積の性質

次に、ベクトルの内積がもつ性質を説明していきます。

【性質①】内積の計算法則

内積記号「\(\cdot\)」を扱うときは、基本的にふつうの「\(\times\)」と同じように交換・分配・定数のくくり出しができます

内積の計算法則

ベクトル \(\vec{a}\), \(\vec{b}\), \(\vec{c}\) について、次が成り立つ。

  1. 交換法則
    \begin{align}\color{red}{\vec{a} \cdot \vec{b} = \vec{b} \cdot \vec{a}}\end{align}
  2. 分配法則
    \begin{align}\color{red}{\vec{a} \cdot (\vec{b} + \vec{c}) = \vec{a} \cdot \vec{b} + \vec{a} \cdot \vec{c}}\end{align}
  3. 定数倍
    \begin{align}\color{red}{(k \vec{a}) \cdot \vec{b} = \vec{a} \cdot (k \vec{b}) = k (\vec{a} \cdot \vec{b})}\end{align}

 

【性質②】ベクトルの大きさと内積

ベクトルの大きさと内積には、次の関係があります。

ベクトルの大きさと内積

ベクトル \(\vec{a}\), \(\vec{b}\) について、次が成り立つ。

  • \(\color{red}{\vec{a} \cdot \vec{a} = |\vec{a}|^2}\)
  • \(\color{red}{|\vec{a}| = \sqrt{\vec{a} \cdot \vec{a}}}\)
  • \(\color{red}{−|\vec{a}| |\vec{b}| \leq \vec{a} \cdot \vec{b} \leq |\vec{a}| |\vec{b}|}\)

ポイントは、「\(\vec{a}^2\) は存在しない」ということです。

\(\vec{a}\) が \(\vec{a}\) 自身となす角は \(0^\circ\) ですから、内積の定義に当てはめると

\(\begin{align} \vec{a} \cdot \vec{a} &= |\vec{a}| |\vec{a}| \cos 0^\circ \\ &= \color{red}{|\vec{a}|^2} \end{align}\)

となります。

「ベクトル(\(\vec{a}\), \(\vec{b}\) など)」「ベクトルの大きさ(\(|\vec{a}|\), \(|\vec{b}|\) など)」「ベクトルの内積(\(\vec{a} \cdot \vec{b}\) など)」の違いは明確に理解しておきましょう。

 

【性質③】垂直なベクトルの内積

\(2\) つのベクトルがなす角が垂直な場合は、ベクトルの内積の値を特定できます。

垂直なベクトルの内積

\(\vec{a} \neq \vec{0}\), \(\vec{b} \neq \vec{0}\) のとき、

\begin{align}\vec{a} \perp \vec{b} &\iff \vec{a} \cdot \vec{b} = 0 \\&\iff a_1b_1 + a_2b_2 = 0\end{align}

\(2\) つのベクトルのなす角が \(90^\circ\) のときは \(\cos 90^\circ = 0\) となるので、内積の値が必ず \(0\) になるのですね。

\(\cos \theta = \cos  90^\circ = 0\) より、

\(\begin{align}\vec{a} \cdot \vec{b} &= |\vec{a}||\vec{b}| \cos \theta \\&= |\vec{a}||\vec{b}| \cdot 0 \\&= \color{red}{0}\end{align}\)

この条件は問題を解く上で重要なヒントになるので、必ず覚えておきましょう。

 

【性質④】平行なベクトルの内積

\(2\) つのベクトルがなす角が平行な場合、次のことが成り立ちます。

平行なベクトルの内積

\(\vec{a} \neq \vec{0}\), \(\vec{b} \neq \vec{0}\) のとき、

\begin{align}\vec{a} \ // \ \vec{b} &\iff \vec{a} \cdot \vec{b} = \pm |\vec{a}||\vec{b}|\end{align}

\(2\) つのベクトルが平行でさえあればいいので、お互いに逆向きでも問題ありません。

つまり、両者のなす角度は \(\theta = 0^\circ\) または \(180^\circ\) なので、

\(\cos \theta = \cos  0^\circ\) または \(\cos 180^\circ\)

すなわち \(\cos \theta = 1\) または \(−1\)

よって

\(\begin{align}\vec{a} \cdot \vec{b} &= |\vec{a}||\vec{b}| \cos \theta \\&= |\vec{a}||\vec{b}| \cdot (\pm 1) \\&= \color{red}{\pm |\vec{a}||\vec{b}|}\end{align}\)

と計算できますね。

 

ベクトルの内積の求め方【例題】

それでは、ベクトルの内積の求め方を次の例題を通して説明していきます。

例題

\(\vec{a}\), \(\vec{b}\) のなす角を \(\theta\) とする。

次の場合に、内積 \(\vec{a} \cdot \vec{b}\) を求めよ。

(1) \(|\vec{a}| = 4\), \(|\vec{b}| = 3\), \(\theta = 45^\circ\)

(2) \(\vec{a} = (2, 3)\), \(\vec{b} = (−5,4)\)

 

ポイントは、与えられた情報から適切な内積の公式を選ぶことです。

(1) では「大きさ」と「角度」が与えられているので、ベクトル表示の内積(公式①)を計算します。

(1) の解答

 

\(\begin{align} \vec{a} \cdot \vec{b} &= |\vec{a}| |\vec{b}| \cos 45^\circ \\ &= 4 \cdot 3 \cdot \frac{\sqrt{2}}{2} \\ &= 6\sqrt{2} \end{align}\)

 

答え: \(\color{red}{6\sqrt{2}}\)

 

(2) ではベクトルの「成分」が与えられているので、成分表示の内積(公式②)を計算します。

(2) の解答

 

\(\begin{align} \vec{a} \cdot \vec{b} &= a_1 b_1 + a_2 b_2 \\&= 2 \cdot (−5) + 3 \cdot 4 \\&= −10 + 12 \\ &= 2 \end{align}\)

 

答え: \(\color{red}{2}\)

 

ベクトルの内積の計算問題

それでは、もう少しだけ頭を使う問題にチャレンジしてみましょう!

計算問題①「2 つのベクトルがなす角度を求める」

計算問題①

\(2\) つのベクトル \(\vec{a} = (−\sqrt{3}, 1)\), \(\vec{b} = (3, \sqrt{3})\) のなす角 \(\theta\) を求めよ。

ただし、\(0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ\) とする。

 

成分表示の内積 \(\vec{a} \cdot \vec{b}\) を計算したあと、「\(\cos \theta = \) 〜」の式(公式③)を求めましょう。

内積のほかに、\(|\vec{a}|\), \(|\vec{b}|\) も先に求めておくと計算がスムーズですよ!

解答

 

まず、\(\vec{a} \cdot \vec{b}\), \(|\vec{a}|\), \(|\vec{b}|\) を求める。

\(\begin{align} \vec{a} \cdot \vec{b} &= (−\sqrt{3}) \cdot 3 + 1 \cdot \sqrt{3} \\&= −3\sqrt{3} + \sqrt{3} \\ &= −2\sqrt{3} \end{align}\)

 

\(\begin{align} |\vec{a}| &= \sqrt{(−\sqrt{3})^2 + 1^2} \\ &= \sqrt{4} \\ &= 2 \end{align}\)

 

\(\begin{align} |\vec{b}| &= \sqrt{3^2 + (\sqrt{3})^2} \\ &= \sqrt{12} \\ &= 2\sqrt{3} \end{align}\)

 

 

したがって、

\(\begin{align} \cos \theta &= \frac{\vec{a} \cdot \vec{b}}{|\vec{a}| |\vec{b}|} \\ &= \frac{−2\sqrt{3}}{2 \cdot 2\sqrt{3}} \\ &= −\frac{1}{2} \end{align}\)

 

\(0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ\) より、\(\theta = 120^\circ\)

 

答え: \(\theta = 120^\circ\)

 

計算問題②「垂直なベクトルの成分を求める」

計算問題②

\(\vec{a} = (3, 5)\), \(\vec{b} = (x, 6)\) が垂直であるとき、\(x\) の値を求めよ。

 

ベクトルの問題で「垂直」というキーワードが出たら「\(\text{(内積)} = 0\)」と瞬時に反応できるようにしましょう。

解答

 

\(\vec{a}\) と \(\vec{b}\) は垂直なので、

\(\vec{a} \cdot \vec{b} = 0\)

 

\(\vec{a} \cdot \vec{b} = 3x + 30\) より、

\(3x + 30 = 0\)

\(x = −10\)

 

答え: \(x = −10\)

 

計算問題③「ベクトルの大きさから内積を求める」

計算問題③

\(|\vec{a}| = 1\), \(|\vec{b}| = 3\), \(|\vec{a} + \vec{b}| = \sqrt{6}\) のとき \(\vec{a} \cdot \vec{b}\) の値を求めよ。

 

\(|\vec{a} + \vec{b}| = \sqrt{6}\) を \(2\) 乗すると、\(\vec{a} \cdot \vec{b}\) に関する方程式が得られそうです。

解答

 

\(|\vec{a} + \vec{b}| = \sqrt{6}\) の両辺を \(2\) 乗すると

\(|\vec{a} + \vec{b}|^2 = 6\)

\(|\vec{a}|^2 + 2\vec{a} \cdot \vec{b} + |\vec{b}|^2 = 6\)

 

\(|\vec{a}| = 1\), \(|\vec{b}| = 3\) より

\(1^2 + 2 \vec{a} \cdot \vec{b} + 3^2 = 6\)

\(2 \vec{a} \cdot \vec{b} + 10 = 6\)

\(2 \vec{a} \cdot \vec{b} = −4\)

\(\vec{a} \cdot \vec{b} = −2\)

 

答え: \(\vec{a} \cdot \vec{b} = −2\)

以上で内積の計算問題も終わりです!

 

内積はベクトルの計算において大変重要です。

いろいろな問題を解きながら、ベクトルの内積に慣れていきましょう!

補足

ベクトルに関するほかの公式や問題について調べたい方は、以下のまとめ記事から探してみてくださいね!

ベクトルを総まとめ!意味や各種公式【重要記事一覧】

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