余弦定理とは?公式の覚え方や証明、計算問題の解き方

この記事では、「余弦定理」についてできるだけわかりやすく解説していきます。

余弦定理の公式の覚え方や証明方法、計算問題の解き方も詳しく説明していきますので、この記事を通してぜひマスターしてくださいね!

 

余弦定理とは?

余弦定理とは、三角形の \(3\) 辺の長さと内角の余弦 \((\cos)\) の間に成り立つ関係を示した定理です。

余弦定理の公式

余弦定理

\(\triangle \mathrm{ABC}\) において、頂点 \(\mathrm{A}\)、\(\mathrm{B}\)、\(\mathrm{C}\) に向かい合う辺の長さをそれぞれ \(a\)、\(b\)、\(c\) とすると、以下の \(3\) つの等式が成り立つ。

  • \(\color{red}{a^2 = b^2 + c^2 − 2bc \cos \mathrm{A}}\)
  • \(\color{red}{b^2 = c^2 + a^2 − 2ca \cos \mathrm{B}}\)
  • \(\color{red}{c^2 = a^2 + b^2 − 2ab \cos \mathrm{C}}\)

「三角形の \(1\) 辺の長さは、その他の \(2\) 辺の長さとその間の角度の余弦から求められる」ということですね。

式が \(3\) つありますが、文字の入れ替わった \(3\) 通りを必死で覚えるというよりも、この関係性式の構造を理解しておくのがポイントです。

 

余弦定理の変形公式

三角形の角度を求める問題では、余弦定理を変形した以下の公式を使うことがあります。

余弦定理(変形バージョン)
  • \(\color{red}{\displaystyle \cos \mathrm{A} = \frac{b^2 + c^2 − a^2}{2bc}}\)
  • \(\color{red}{\displaystyle \cos \mathrm{B} = \frac{c^2 + a^2 − b^2}{2ca}}\)
  • \(\color{red}{\displaystyle \cos \mathrm{C} = \frac{a^2 + b^2 − c^2}{2ab}}\)

余弦定理の変形公式を使えば、「三角形のある角の余弦は、\(3\) 辺の長さから求められる」わけですね。

 

余弦定理の証明

ここでは、余弦定理がどうして成り立つのかを、証明を通して説明します。

証明

\(\triangle \mathrm{ABC}\) において、\(a^2 = b^2 + c^2 − 2bc \cos \mathrm{A}\) が成り立つことを示せ。

 

余弦定理は、ある頂点から垂線を下ろして、三角形を \(2\) つの直角三角形に分けることで証明できます。

その際、\(\angle \mathrm{A}\) が (i) 鋭角(ii) 直角(iii) 鈍角の \(3\) 通りに場合分けして考えます。

証明

 

\(a^2 = b^2 + c^2 − 2bc \cos \mathrm{A}\) …(*)とおく。

 

(i) \(\angle \mathrm{A} < 90^\circ\) のとき

頂点 \(\mathrm{C}\) から直線 \(\mathrm{AB}\) に垂線を下ろし、直線 \(\mathrm{AB}\) と交わる点を \(\mathrm{D}\) とする。

 

直角三角形 \(\mathrm{ACD}\) において、角 \(\mathrm{A}\) の三角比に注目すると

\(\mathrm{CD} = \mathrm{AC} \sin \mathrm{A} = b \sin \mathrm{A}\)

\(\mathrm{AD} = \mathrm{AC} \cos \mathrm{A} = b \cos \mathrm{A}\)

 

 

次に、直角三角形 \(\mathrm{BCD}\) において三平方の定理より

\(\mathrm{BC}^2 = \mathrm{CD}^2 + \mathrm{DB}^2\)

 

\(\mathrm{BC} = a\), \(\mathrm{CD} = b \sin \mathrm{A}\), \(\mathrm{DB} = \mathrm{AB} − \mathrm{AD} = c − b \cos \mathrm{A}\) より、

\(a^2 = (b \sin \mathrm{A})^2 + (c − b \cos \mathrm{A})^2\)

展開すると、

\(\begin{align}a^2 &= b^2 \sin^2 \mathrm{A} + c^2 − 2bc \cos \mathrm{A} + b^2 \cos^2 \mathrm{A} \\&= b^2(\sin^2 \mathrm{A} + \cos^2 \mathrm{A}) + c^2 − 2bc \cos \mathrm{A}\end{align}\)

(見切れる場合は横へスクロール)

\(\sin^2 \mathrm{A} + \cos^2 \mathrm{A} = 1\) より、

\(a^2 = b^2 + c^2 − 2bc \cos \mathrm{A}\)

 

したがって、(*)が成り立つ。

 

 

(ii) \(\angle \mathrm{A} = 90^\circ\) のとき

\(\triangle \mathrm{ABC}\) は直角三角形であるから、三平方の定理より、

\(a^2 = b^2 + c^2\)

 

ここで、

\(\cos \mathrm{A} = \cos 90^\circ = 0\)

であるから、

\(\begin{align} a^2 &= b^2 + c^2 − 2bc \cos \mathrm{A} \\ &= b^2 + c^2 − 2bc \cdot 0 \\ &= b^2 + c^2 \end{align}\)

 

したがって、(*)が成り立つ。

 

 

(iii) \(\angle \mathrm{A} > 90^\circ\) のとき

頂点 \(\mathrm{C}\) から直線 \(\mathrm{AB}\) に垂線を下ろし、直線 \(\mathrm{AB}\) と交わる点を \(\mathrm{D}\) とする。

直角三角形 \(\mathrm{ACD}\) において、角 \(\mathrm{A}\) の三角比に注目すると

\(\mathrm{CD} = b \sin \mathrm{A}\)

\(\mathrm{DA} = b \cos(180^\circ − \mathrm{A})\)

 

また、

\(\mathrm{DB} = \mathrm{AB} + \mathrm{DA}\) より

\(\begin{align}\mathrm{DB} &= c + b \cos(180^\circ − \mathrm{A}) \\&= c − b \cos \mathrm{A}\end{align}\)

 

 

次に、直角三角形 \(\mathrm{BCD}\) に注目すると、

三平方の定理より

\(\mathrm{BC}^2 = \mathrm{CD}^2 + \mathrm{DB}^2\)

 

\(\mathrm{BC} = a\)、\(\mathrm{CD} = b \sin \mathrm{A}\)、\(\mathrm{DB} = c − b \cos \mathrm{A}\) より、

\(\begin{align}a^2 &= (b \sin \mathrm{A})^2 + (c − b \cos \mathrm{A})^2 \\&= b^2 \sin^2 \mathrm{A} + c^2 − 2bc \cos \mathrm{A} + b^2 \cos^2 \mathrm{A} \\&= b^2(\sin^2 \mathrm{A} + \cos^2 \mathrm{A}) + c^2 − 2bc \cos \mathrm{A}\end{align}\)

(見切れる場合は横へスクロール)

\(\sin^2\mathrm{A} + \cos^2\mathrm{A} = 1\) より、

\(a^2 = b^2 + c^2 − 2bc \cos \mathrm{A}\)

 

したがって、(*)が成り立つ。

 

 

(i) ~ (iii) より、 \(\angle \mathrm{A}\) の大きさによらず

\(a^2 = b^2 + c^2 − 2bc \cos \mathrm{A}\)

が成り立つ。

 

(証明終わり)

このように余弦定理の \(1\) つを証明できました。

同様の証明手順で、次の \(2\) つの等式も証明できます。

  •  \(b^2 = c^2 + a^2 − 2ca \cos \mathrm{B}\)
  •  \(c^2 = a^2 + b^2 − 2ab \cos \mathrm{C}\)

公式への理解が深まるので、時間のある方は一度公式全体を証明してみてくださいね。

 

余弦定理の覚え方

余弦定理を覚えるポイントは、ずばり「三平方の定理」です。

三平方の定理 \(a^2 = b^2 + c^2\) をベースに書き出し、\(2bc \cos \mathrm{A}\) を引く!」と頭に叩き込みましょう。

さらに、辺や角の位置関係も覚えるようにすると、理解が深まって覚えやすくなります。

例えば \(a\) を求める場合、使う値は「その他の辺 \(b\), \(c\)」と、「その間の角 \(\mathrm{A}\) の余弦 \(\cos\)」です。

公式そのものは覚えておく必要がありますが、\(\mathrm{A}\), \(\mathrm{B}\), \(\mathrm{C}\) などの記号を丸暗記するのではなく、求めるもの・使うものの位置関係を図で覚えておきましょう。

 

【補足】余弦定理と三平方の定理の関係

直角三角形において成り立つ三平方の定理は、実は余弦定理の一種でもあります。

\(\angle \mathrm{A} = 90^\circ\) の \(\triangle \mathrm{ABC}\) において、余弦定理を書いてみると

\(\begin{align} a^2 &= b^2 + c^2 − 2bc \cos \mathrm{A} \\ &= b^2 + c^2 − 2bc \cos 90^\circ \\ &= b^2 + c^2 − 2bc \cdot 0 \\ &= b^2 + c^2 \end{align}\)

つまり

\(a^2 = b^2 + c^2\)

となります。

\(\cos 90^\circ = 0\) のため、マイナスの項がなくなるのですね。

 

余弦定理の計算問題

最後に、計算問題を通して余弦定理の使い方をマスターしましょう。

余弦定理を使う基本的な問題のパターンは次の \(2\) つです。

Tips

余弦定理が使える場面は…

  • \(2\) 辺と \(1\) 角がわかっているとき、もう \(1\) 辺を求める
  • \(3\) 辺がわかっているとき、\(1\) 角を求める

両パターンの解き方を把握しておきましょう。

計算問題①「余弦定理で辺の長さを求める」

計算問題①

\(\triangle \mathrm{ABC}\) において、\(a = 6\)、\(\angle \mathrm{B} = 60^\circ\)、\(c = 4\) のとき、\(b\) を求めよ。

 

図がない問題では、必ず自分で図を書きましょう。

求めたい辺以外の \(2\) 辺とその間の角がわかっているので、余弦定理が利用できますね。

公式に値を入れていきましょう。

解答

 

\(\triangle \mathrm{ABC}\) において、余弦定理より

\(\begin{align} b^2 &= c^2 + a^2 − 2ca \cos \mathrm{B} \\ &= 4^2 + 6^2 − 2 \cdot 4 \cdot 6 \cdot \cos 60^\circ \\ &= 16 + 36 − 48 \cdot \frac{1}{2} \\ &= 52 − 24 \\ &= 28 \end{align}\)

 

\(b > 0\) より、\(b = 2\sqrt{7}\)

 

答え: \(\color{red}{b = 2\sqrt{7}}\)

 

計算問題②「余弦定理で角度を求める」

計算問題②

\(\triangle \mathrm{ABC}\) において、\(a = 4\sqrt{2}\)、\(b = 2\sqrt{5}\)、\(c = 6\) のとき、\(\cos \mathrm{A}\) を求めよ。

 

先ほど同様、図を書いてみます。

\(3\) 辺がわかっていて、\(1\) 角を求める問題ですね。

この場合は、「\(\cos =\)」で始まる変形バージョンの余弦定理を利用すると、速く計算できますよ。

解答

 

\(\triangle \mathrm{ABC}\) において、余弦定理より

\(\begin{align} \cos \mathrm{A} &= \frac{b^2 + c^2 − a^2}{2bc} \\ &= \frac{(2\sqrt{5})^2 + 6^2 − (4\sqrt{2})^2}{2 \cdot 2\sqrt{5} \cdot 6} \\ &= \frac{20 + 36 − 32}{2 \cdot 2\sqrt{5} \cdot 6} \\ &= \frac{24}{2 \cdot 2\sqrt{5} \cdot 6} \\ &= \frac{1}{\sqrt{5}} \\ &= \frac{\sqrt{5}}{5} \end{align}\)

 

答え: \(\color{red}{\displaystyle \cos \mathrm{A} = \frac{\sqrt{5}}{5}}\)

以上で問題も終わりです!

 

まずは三角形の図とともに、余弦定理の公式をしっかりと覚えましょう。

余裕のある人は、公式の変形バージョンも覚えておくと、スピードアップして解くことができますよ!

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