正弦定理と余弦定理の使い分けを徹底解説!練習問題も

この記事では、正弦定理と余弦定理を使い分けるコツをできるだけわかりやすく解説していきます。

練習問題を中心に見分け方を紹介していくので、この記事を通してぜひマスターしてくださいね。

 

正弦定理と余弦定理

正弦定理と余弦定理の公式を最初に確認しておきましょう。

正弦定理

\(\triangle \mathrm{ABC}\) において、頂点 \(\mathrm{A}\)、\(\mathrm{B}\)、\(\mathrm{C}\) に向かい合う辺の長さをそれぞれ \(a\)、\(b\)、\(c\) とすると、\(\triangle \mathrm{ABC}\) とその外接円について以下が成り立つ。

\begin{align}\color{red}{\displaystyle \frac{a}{\sin \mathrm{A}} = \frac{b}{\sin \mathrm{B}} = \frac{c}{\sin \mathrm{C}} = 2R}\end{align}

 

余弦定理

\(\triangle \mathrm{ABC}\) において、頂点 \(\mathrm{A}\)、\(\mathrm{B}\)、\(\mathrm{C}\) に向かい合う辺の長さをそれぞれ \(a\)、\(b\)、\(c\) とすると、以下の \(3\) つの等式が成り立つ。

  • \(\color{red}{a^2 = b^2 + c^2 − 2bc \cos \mathrm{A}}\)
  • \(\color{red}{b^2 = c^2 + a^2 − 2ca \cos \mathrm{B}}\)
  • \(\color{red}{c^2 = a^2 + b^2 − 2ab \cos \mathrm{C}}\)

また、角度を求めたい問題の場合は、上記の余弦定理を変形した公式もありましたね!

余弦定理(変形バージョン)
  • \(\color{red}{\displaystyle \cos \mathrm{A} = \frac{b^2 + c^2 − a^2}{2bc}}\)
  • \(\color{red}{\displaystyle \cos \mathrm{B} = \frac{c^2 + a^2 − b^2}{2ca}}\)
  • \(\color{red}{\displaystyle \cos \mathrm{C} = \frac{a^2 + b^2 − c^2}{2ab}}\)
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このような正弦定理と余弦定理ですが、実際の問題でどう使い分けるかを次の章で詳しく解説していきます。

使い分けがしっかりと理解できていれば、問題文を読むだけで解き方の道筋がすぐに浮かぶようになります!

 

正弦定理と余弦定理の使い分け

正弦定理と余弦定理の使い分けのポイントは、「与えられている辺や角の数を数えること」です。

問題に関係する \(4\) つの登場人物を見極めます。

Tips

問題文に…

  • 対応する \(2\) 辺と \(2\) 角が登場する
    →「正弦定理」を使う!
  • \(3\) 辺と \(1\) 角が登場する
    →「余弦定理」を使う!

 

正弦定理の \(1\) つを見てみると、

\(\displaystyle \frac{a}{\sin \mathrm{A}} = \frac{b}{\sin \mathrm{B}}\)

辺 \(a\), \(b\)、角 \(\angle \mathrm{A}\), \(\angle \mathrm{B}\) が出てきています。

つまり、対応する \(2\) 組の辺と角ですね。

 

また、余弦定理の \(1\) つを見てみると、

\(a^2 = b^2 + c^2 − 2bc \cos \mathrm{A}\)

辺 \(a\), \(b\), \(c\) と角 \(\angle \mathrm{A}\) が出てきます。

つまり、\(3\) 辺と \(1\) 角ですね。

 

これら \(4\) つのうち、値のわかっている \(3\) つを使って目的の値を求めます。

実際に例題で使い分けを確認しましょう。

例題①「角度を求める」

例題①

\(\triangle \mathrm{ABC}\) において、\(a = 1\)、\(c = \sqrt{3}\)、\(\angle \mathrm{C} = 120^\circ\) のとき、\(\angle \mathrm{A}\) の値を求めなさい。

 

問題文より 辺 \(a\) と \(c\)、角 \(\mathrm{C}\) がわかっていて、角 \(\mathrm{A}\) を求めるので、「対応する \(2\) 辺と \(2\) 角の関係」です。

よって、この場合は正弦定理を使います。

解答

 

\(\triangle \mathrm{ABC}\) において、正弦定理

\(\displaystyle \frac{a}{\sin \mathrm{A}} = \frac{c}{\sin \mathrm{C}}\) より、

 

\(\begin{align} \sin \mathrm{A} &= a \cdot \frac{\sin \mathrm{C}}{c} \\ &= 1 \cdot \frac{\sin 120^\circ}{\sqrt{3}} \\ &= \displaystyle \frac{\frac{\sqrt{3}}{2}}{\sqrt{3}} \\ &= \frac{\sqrt{3}}{2} \cdot \frac{1}{\sqrt{3}} \\ &= \frac{1}{2} \end{align}\)

 

\(\angle \mathrm{C} = 120^\circ\) より、

\(0^\circ < \angle \mathrm{A} < 60^\circ\) であるから

\(\angle \mathrm{A} = 30^\circ\)

 

答え: \(\color{red}{\angle \mathrm{A} = 30^\circ}\)

 

例題②「辺の長さを求める」

次の問題はどうでしょうか?

例題②

\(\triangle \mathrm{ABC}\) において、\(a = \sqrt{6}\)、\(c = \sqrt{3} + 1\)、\(\angle \mathrm{B} = 45^\circ\) のとき、\(b\) の値を求めなさい。

 

問題文より、辺 \(a\), \(c\)、角 \(\mathrm{B}\) がわかっていて、辺 \(b\) を求めるので、「\(3\) 辺と \(1\) 角の関係」です。

よって、この場合は余弦定理を使います。

解答

(見切れる場合は横へスクロール)

 

\(\triangle \mathrm{ABC}\) において、余弦定理より

\(\begin{align}b^2 &= c^2 + a^2 − 2ca \cos \mathrm{B}\\&= (\sqrt{3} + 1)^2 + (\sqrt{6})^2 − 2(\sqrt{3} + 1) \sqrt{6} \cos 45^\circ\\&= 3 + 2\sqrt{3} + 1 + 6 − 2(\sqrt{3} + 1) \sqrt{6} \cdot \frac{\sqrt{2}}{2}\\&= 10 + 2\sqrt{3} − 2\sqrt{3} (\sqrt{3} + 1)\\&= 10 + 2\sqrt{3} − 6 − 2\sqrt{3}\\&= 4\end{align}\)

 

\(b > 0\) より、\(b = 2\)

 

答え: \(\color{red}{b = 2}\)

 

正弦定理と余弦定理の練習問題

最後に、練習問題を通して正弦定理と余弦定理の使い分けをマスターしましょう。

練習問題①「sin A を求める」

練習問題①

\(\triangle \mathrm{ABC}\) について、\(a = 8\)、\(b = 6\)、\(c = 4\) であるとき、\(\sin \mathrm{A}\) の値を求めよ。

 

\(a\)、\(b\)、\(c\) の \(3\) 辺がわかっているので余弦定理を用いて解く問題ですね!

求めるものが正弦 \((\sin)\) だからと言って、安易に正弦定理を使わないように注意しましょう。

解答

 

\(\triangle \mathrm{ABC}\) において、余弦定理より

\(\begin{align} \cos \mathrm{A} &= \frac{b^2 + c^2 − a^2}{2bc} \\ &= \frac{6^2 + 4^2 − 8^2}{2 \cdot 6 \cdot 4} \\ &= \frac{36 + 16 − 64}{2 \cdot 6 \cdot 4} \\ &= \frac{−12}{2 \cdot 6 \cdot 4} \\ &= −\frac{1}{4} \end{align}\)

 

\(\sin^2 \mathrm{A} + \cos^2 \mathrm{A} = 1\) より、

\(\begin{align} \sin^2 \mathrm{A} &= 1 − \cos^2 \mathrm{A}\\ &=  1 − \left(−\frac{1}{4}\right)^2\\ &= 1 − \frac{1}{16} \\ &= \frac{15}{16} \end{align}\)

 

ここで、\(0^\circ < \angle \mathrm{A} < 180^\circ\) であるから、

\(\sin \mathrm{A} > 0\) より

\(\displaystyle \sin \mathrm{A} = \frac{\sqrt{15}}{4}\)

 

答え: \(\displaystyle \frac{\sqrt{15}}{4}\)

 

練習問題②「辺の長さを求める」

練習問題②

\(\triangle \mathrm{ABC}\) について、\(c = 6\)、\(\angle \mathrm{B} = 15^\circ\)、\(\angle \mathrm{C} = 135^\circ\) のとき、\(a\) を求めよ。

 

この問題では \(2\) 角がわかっているので、残る \(1\) 角もすぐにわかりますね。

そうすれば、対応する \(2\) 組の辺と角(\(c\) と \(\angle \mathrm{C}\)、\(a\) と \(\angle \mathrm{A}\))について考えることができるので、正弦定理が使えます。

解答

 

三角形の内角の和は \(180^\circ\) であるから

\(\begin{align} \angle \mathrm{A} &= 180^\circ − (15^\circ + 135^\circ) \\ &= 30^\circ \end{align}\)

 

\(\triangle \mathrm{ABC}\) において、正弦定理より

\(\displaystyle \frac{a}{\sin \mathrm{A}} = \frac{c}{\sin \mathrm{C}}\)

すなわち

\(\displaystyle \frac{a}{\sin 30^\circ} = \frac{6}{\sin 135^\circ}\)

 

よって

\(\begin{align} a &= \frac{6 \sin 30^\circ}{\sin 135^\circ} \\ &= \frac{6 \cdot \frac{1}{2}}{\frac{1}{\sqrt{2}}} \\ &= 3 \cdot \frac{\sqrt{2}}{1} \\ &= 3\sqrt{2} \end{align}\)

 

答え: \(3\sqrt{2}\)

 

練習問題③「円に内接する四角形の辺や面積」

練習問題③

下の図において、次の問いに答えなさい。

(1) 辺 \(\mathrm{AD}\) の長さを求めよ。

(2) 四角形 \(\mathrm{ABCD}\) の外接円の半径 \(R\) を求めよ。

(3) 四角形 \(\mathrm{ABCD}\) の面積を求めよ。

 

四角形に補助線を引いて、\(2\) つの三角形として見ると、答えが導けます。

設問ごとに、三角形のどの \(4\) つの辺と角が関わっているのかをしっかりと見極めましょう。

解答

 

(1) 線分 \(\mathrm{AC}\) を引く。

 

円に内接する四角形の性質より、

\(\begin{align} \angle \mathrm{B} &= 180^\circ − \angle \mathrm{D} \\ &= 180^\circ − 120^\circ \\ &= 60^\circ \end{align}\)

 

\(\triangle \mathrm{ABC}\) において、余弦定理より

\(\begin{align} \mathrm{AC}^2 &= \mathrm{AB}^2 + \mathrm{BC}^2 − 2\mathrm{AB} \cdot \mathrm{BC} \cos 60^\circ \\ &= 4^2 + 6^2 − 2 \cdot 4 \cdot 6 \cdot \frac{1}{2} \\ &= 16 + 36 − 24 \\ &= 28 \end{align}\)

 

\(\mathrm{AC} > 0\) より、\(\mathrm{AC} = 2\sqrt{7}\)

 

\(\triangle \mathrm{ADC}\) において、余弦定理より

\(\mathrm{AC}^2 = \mathrm{AD}^2 + \mathrm{DC}^2 − 2 \mathrm{AD} \cdot \mathrm{DC} \cos 120^\circ\)

\(\displaystyle (2\sqrt{7})^2 = \mathrm{AD}^2 + 2^2 − 2 \mathrm{AD} \cdot 2 \left( −\frac{1}{2} \right)\)

\(28 = \mathrm{AD}^2 + 4 + 2\mathrm{AD}\)

\(\mathrm{AD}^2 + 2\mathrm{AD} − 24 = 0\)

\((\mathrm{AD} + 6)(\mathrm{AD} − 4) = 0\)

 

\(\mathrm{AD} > 0\) より、\(\mathrm{AD} = 4\)

 

答え: \(\mathrm{AD} = 4\)

 

 

(2) \(\triangle \mathrm{ABC}\) において、正弦定理より

\(\displaystyle \frac{\mathrm{AC}}{\sin \mathrm{B}} = 2R\)

すなわち

\(\displaystyle \frac{2\sqrt{7}}{\sin 60^\circ} = 2R\)

 

よって

\(\begin{align} R &= \frac{\sqrt{7}}{\sin 60^\circ} \\ &= \frac{\sqrt{7}}{\frac{\sqrt{3}}{2}} \\ &= \sqrt{7} \cdot \frac{2}{\sqrt{3}} \\ &= \frac{2\sqrt{7}}{\sqrt{3}} \\ &= \frac{2\sqrt{21}}{3} \end{align}\)

 

答え: \(\displaystyle R = \frac{2\sqrt{21}}{3}\)

 

 

(3) 四角形 \(\mathrm{ABCD}\) の面積は、\(\triangle \mathrm{ABC}\) と \(\triangle \mathrm{ADC}\) の面積の和に等しい。

 

三角形の面積の公式 \(\displaystyle S = \frac{1}{2} ab \sin \theta\) より、

\(\begin{align} \triangle \mathrm{ABC} &= \frac{1}{2} \cdot \mathrm{AB} \cdot \mathrm{BC} \cdot \sin \mathrm{B} \\ &= \frac{1}{2} \cdot 4 \cdot 6 \cdot \sin 60^\circ \\ &= \frac{1}{2} \cdot 4 \cdot 6 \cdot \frac{\sqrt{3}}{2} \\ &= 6\sqrt{3} \end{align}\)

 

\(\begin{align} \triangle \mathrm{ADC} &= \frac{1}{2} \cdot \mathrm{AD} \cdot \mathrm{CD} \cdot \sin \mathrm{D} \\ &= \frac{1}{2} \cdot 4 \cdot 2 \cdot \sin 120^\circ \\ &= \frac{1}{2} \cdot 4 \cdot 2 \cdot \frac{\sqrt{3}}{2} \\ &= 2\sqrt{3} \end{align}\)

 

したがって、四角形 \(\mathrm{ABCD}\) の面積は

\(\begin{align} \triangle \mathrm{ABC} + \triangle \mathrm{ADC} &= 6\sqrt{3} + 2\sqrt{3} \\ &= 8\sqrt{3} \end{align}\)

 

答え: \(8\sqrt{3}\)

以上で練習問題も終わりです!

 

余弦定理と正弦定理の使い分けはマスターできましたか?

余弦定理は「\(3\) 辺と \(1\) 角の関係」、正弦定理は「対応する \(2\) 辺と \(2\) 角の関係」を見つけることがコツです。

どんな問題が出ても、どちらの公式を使うかを即座に判断できるようになりましょう!

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