この記事では、「正弦定理」についてできるだけわかりやすく解説していきます。
正弦定理の公式や証明、計算問題の解き方を詳しく説明していきますので、この記事を通してぜひマスターしてくださいね!
正弦定理とは?
正弦定理とは、三角形の内角の正弦 \((\sin)\) とその対辺の長さの比、そして外接円の半径との関係を示した定理です。
正弦定理の公式
\(\triangle \mathrm{ABC}\) において、頂点 \(\mathrm{A}\)、\(\mathrm{B}\)、\(\mathrm{C}\) に向かい合う辺の長さをそれぞれ \(a\)、\(b\)、\(c\) とすると、\(\triangle \mathrm{ABC}\) とその外接円について以下が成り立つ。
\begin{align}\color{red}{\displaystyle \frac{a}{\sin \mathrm{A}} = \frac{b}{\sin \mathrm{B}} = \frac{c}{\sin \mathrm{C}} = 2R}\end{align}
「\(\color{red}{\displaystyle \frac{\text{対応する辺の長さ}}{\text{角の正弦 (\(\sin\))}} = \text{直径}}\)」と言葉で覚えておいてもいいですね。
正弦定理の証明
ここでは、正弦定理がどうして成り立つのかを、証明を通して説明します。
\(\triangle \mathrm{ABC}\) において、その外接円の半径を \(R\) としたとき、\(\displaystyle \frac{a}{\sin \mathrm{A}} = 2R\) が成り立つことを示せ。
この等式を変形した「\(a = 2R \sin \mathrm{A}\)」について、\(\angle \mathrm{A}\) が (i) 鋭角、(ii) 直角、(iii) 鈍角の \(3\) 通りに場合分けして、それぞれが成り立つことを確認していきます。
外接円の中にうまく直角三角形を作るのがポイントです。
\(\displaystyle \frac{a}{\sin \mathrm{A}} = 2R\) より
\(a = 2R \sin \mathrm{A}\) …(*) とおく。
(i) \(\angle \mathrm{A} < 90^\circ\) のとき
\(\triangle \mathrm{ABC}\) の外接円について、頂点 \(\mathrm{B}\) を通る直径を \(\mathrm{BD}\) とし、点 \(\mathrm{D}\) と点 \(\mathrm{C}\) を結ぶ。
円周角の定理から
\(\angle \mathrm{BDC} = \angle \mathrm{A}\)
\(\mathrm{BD}\) は直径なので
\(\angle \mathrm{BCD} = 90^\circ\)
よって、\(\triangle \mathrm{BDC}\) は直角三角形であるから
\(\mathrm{BC} = \mathrm{BD} \sin \angle \mathrm{BDC}\)
\(\mathrm{BC} = a\), \(\mathrm{BD} = 2R\), \(\angle \mathrm{BDC} = \angle \mathrm{A}\) より、
\(a = 2R \sin \mathrm{A}\)
したがって、(*) が成り立つ。
(ii) \(\angle \mathrm{A} = 90^\circ\) のとき
\(\angle \mathrm{A} = 90^\circ\) であるから、円周角の定理より \(a\) は直径となる。
\(a = 2R\)
ここで、\(\sin \mathrm{A} = \sin 90^\circ = 1\) であるから、
\(a = 2R \sin \mathrm{A}\)
とも表せる。
したがって、(*) が成り立つ。
(iii) \(\angle \mathrm{A} > 90^\circ\) のとき
頂点 \(\mathrm{B}\) を通る外接円の直径を \(\mathrm{BD}\) とし、点 \(\mathrm{D}\) と点 \(\mathrm{C}\) を結ぶ。
\(\mathrm{BD}\) は直径なので
\(\angle \mathrm{BCD} = 90^\circ\)
また四角形 \(\mathrm{ABDC}\) は円に内接するので、
\(\angle \mathrm{A} + \angle \mathrm{BDC} = 180^\circ\)
\(\triangle \mathrm{BCD}\) は直角三角形なので、
\(\mathrm{BC} = \mathrm{BD} \sin \angle \mathrm{BDC}\)
\(\mathrm{BC} = a\), \(\mathrm{BD} = 2R\), \(\angle \mathrm{BDC} = 180^\circ − \angle \mathrm{A}\) より、
\(\begin{align} a &= 2R \sin (180^\circ − \angle \mathrm{A}) \\ &= 2R \sin \mathrm{A} \end{align}\)
したがって、(*) が成り立つ。
(i) ~ (iii) より、\(\angle \mathrm{A}\) の大きさによらず
\(a = 2R \sin \mathrm{A}\)
すなわち
\(\displaystyle \frac{a}{\sin \mathrm{A}} = 2R\)
が成り立つ。
(証明終わり)
このように、正弦定理の一部分が証明できました。
同様の手順で、次の \(2\) つの等式も証明できます。
- \(\displaystyle \frac{b}{\sin \mathrm{B}} = 2R\)
- \(\displaystyle \frac{c}{\sin \mathrm{C}} = 2R\)
それらを総合すると、正弦定理全体を証明できます。
\(\displaystyle \frac{a}{\sin \mathrm{A}} = \frac{b}{\sin \mathrm{B}} = \frac{c}{\sin \mathrm{C}} = 2R\)
理解が深まるので、時間のある方は一度全体を証明してみてくださいね。
正弦定理の覚え方
「正弦定理が覚えられない!」という人は、簡単な図形とともに覚えておきましょう。
正弦定理は、「対応する辺と角の正弦 \((\sin)\) の比」についての定理です。
このことを、まず頭に叩き込んでおきます。
また、「正弦定理には外接円が関係する!」ということも要チェックです。
最後に、正弦定理の分数が三角形のかたちのように下(分母)が長い \(\sin\) の値であることをイメージ付けておきましょう。
正弦定理の計算問題
最後に、計算問題を通して正弦定理の使い方をマスターしましょう。
正弦定理を使う基本的な問題のパターンは次の \(2\) つです。
正弦定理が使える場面は…
- 対応する辺と角が \(2\) 組あり、そのうちの \(1\) 辺または \(1\) 角を求める
- 対応する辺と角が \(1\) 組わかっているとき、外接円の半径を求める
両パターンの解き方を把握しておきましょう。
計算問題①「正弦定理で辺の長さを求める」
\(\triangle \mathrm{ABC}\) において、\(a = 10\)、\(\angle \mathrm{B} = 60^\circ\)、\(\angle \mathrm{C} = 75^\circ\) のとき、\(b\) を求めよ。
この問題では、一見、対応している辺と角がどこにもありません。
このほかに、簡単に数値が求められそうなところはないでしょうか?
\(2\) 角がわかっているので、残りの \(\angle \mathrm{A}\) も簡単にわかりますね!
すると、対応する \(2\) 組の辺と角(\(a\) と \(\angle \mathrm{A}\)、\(b\) と \(\angle \mathrm{B}\))に正弦定理を適用できますね。
三角形の内角の和は \(180^\circ\) なので、
\(\begin{align} \angle \mathrm{A} &= 180^\circ − (60^\circ + 75^\circ) \\ &= 45^\circ \end{align}\)
\(\triangle \mathrm{ABC}\) において、正弦定理より
\(\displaystyle \frac{a}{\sin \mathrm{A}} = \frac{b}{\sin \mathrm{B}}\)
すなわち
\(\displaystyle \frac{10}{\sin 45^\circ} = \frac{b}{\sin 60^\circ}\)
\(10 \sin 60^\circ = b \sin 45^\circ\)
よって
\(\begin{align}b &= \displaystyle \frac{10 \sin 60^\circ}{\sin 45^\circ}\\&= \displaystyle \frac{10 \times \frac{\sqrt{3}}{2}}{\frac{\sqrt{2}}{2}} \\&= 5\sqrt{3} \times \sqrt{2} \\ &= 5\sqrt{6} \end{align}\)
答え: \(\color{red}{b = 5\sqrt{6}}\)
わかったことをすぐに図に書き込んでいくと、どんどん問題のヒントに気づけるのでオススメです!
数学が苦手な人ほど、頭の中だけで解こうとして図を書きません。
賢い人ほど、図を書きながら情報を正しく整理できます。
計算問題②「正弦定理で外接円の半径を求める」
\(\triangle \mathrm{ABC}\) において、\(b = 6\)、\(\angle \mathrm{B} = 30^\circ\) のとき、外接円の半径 \(R\) を求めなさい。
外接円の半径を求める問題では、正弦定理がそのまま使えます。
\(1\) 組の辺と角(\(b\) と \(\angle \mathrm{B}\))がわかっているので、あとは正弦定理に当てはめるだけですね。
\(\triangle \mathrm{ABC}\) において、正弦定理より
\(\displaystyle \frac{b}{\sin \mathrm{B}} = 2R\)
よって
\(\begin{align} R &= \frac{b}{2 \sin \mathrm{B}} \\ &= \frac{6}{2 \sin 30^\circ} \\ &= \frac{6}{2 \cdot \frac{1}{2}} \\ &= 6 \end{align}\)
答え: \(\color{red}{R = 6}\)
以上で問題も終わりです!
正弦定理の計算は複雑なものではないので、解き方を理解できればどんどん問題が解けるようになりますよ!
なお、正弦定理とごちゃごちゃになってしまいがちなのが、余弦定理ですよね。
「余弦定理」や「正弦定理と余弦定理の使い分け」については、以下の記事も参考にしてくださいね!
余弦定理とは?公式の覚え方や証明、計算問題の解き方 正弦定理と余弦定理の使い分けを徹底解説!練習問題も