この記事では「三平方の定理」について、その公式や計算方法をできるだけわかりやすく解説していきます。
また、三平方の定理の証明や、暗記が必要な角度と辺の比などについても紹介していきますので、この記事を通してぜひマスターしてくださいね。
目次
三平方の定理とは?【公式】
三平方の定理とは、直角三角形の辺の長さについて成り立つ等式です。
まずは定理を確認してみましょう。
直角三角形の直角を挟む \(2\) 辺の長さを \(a, b\) とし、斜辺を \(c\) とすると、
\begin{align}\color{red}{ a^2 + b^2 = c^2}\end{align}
の等式が成り立つ。
文字だけだとわかりづらいですが、以下の図を見ると簡単ですよ。
注意するポイントとして、斜辺 \(c\) は直角に向かい合う一番長い辺のことだと覚えておいてください。
\(c\) の辺さえ間違えなければ、残りの辺は自動的に \(a\), \(b\) だと判断できますので、簡単に計算できますよ。
三平方の定理の証明
ここでは、三平方の定理のさまざまな証明方法のうち、一番シンプルな方法を示します。
証明には、以下の図形を利用します。(オレンジ色の直角三角形同士は相似、灰色は直角二等辺三角形)
台形 \(\mathrm{ABCD}\) の面積を \(2\) 通りの方法で示すことで、三平方の定理を証明していきます。
まず最初に、以下の通常の公式で台形 \(\mathrm{ABCD}\) の面積を求めます。
\begin{align}\text{台形の面積} = (\text{上底} + \text{下底}) \times \text{高さ} \div 2\end{align}
では実際に計算してみましょう。
【台形 \(\mathrm{ABCD}\) の面積①】
\(= (\mathrm{AB} + \mathrm{DC}) \times \mathrm{BC} \div 2\)
\(= (a + b) \times ( b + a ) \div 2\)
\(= \color{salmon}{\displaystyle \frac{1}{2}( a + b )^2}\)
つまり、
【台形 \(\mathrm{ABCD}\) の面積①】 \(= \displaystyle \frac{1}{2}( a + b )^2\) ですね。
次に、別のやり方で台形 \(\mathrm{ABCD}\) の面積を求めます。
この台形 \(\mathrm{ABCD}\) は \(3\) つの直角三角形からできているので、
【台形 \(\mathrm{ABCD}\) の面積②】=【三角形 \(\mathrm{AED}\)】+【三角形 \(\mathrm{ABE}\)】+【三角形 \(\mathrm{ECD}\)】
という式でも面積を求めることができます。
さっそく計算してみましょう。
【台形 \(\mathrm{ABCD}\) の面積②】
=【三角形 \(\mathrm{AED}\)】+【三角形 \(\mathrm{ABE}\)】+【三角形 \(\mathrm{ECD}\)】
\(= \displaystyle \frac{1}{2}c^2 + \displaystyle \frac{1}{2}ab + \displaystyle \frac{1}{2}ab\)
\(=\) \(\displaystyle \frac{1}{2}c^2 + ab\)
つまり、
【台形 \(\mathrm{ABCD}\) の面積②】\(= \displaystyle \frac{1}{2}c^2 + ab\) ですね。
最後に、【台形 \(\mathrm{ABCD}\) の面積①】の面積と、【台形 \(\mathrm{ABCD}\) の面積②】を等号で結びます。
では、実際に計算しましょう。
【台形 \(\mathrm{ABCD}\) の面積①】=【台形 \(\mathrm{ABCD}\) の面積②】
\(\displaystyle \frac{1}{2}( a + b )^2\) = \(\displaystyle \frac{1}{2}c^2 + ab\)
\(( a + b )^2 = c^2 + 2ab\)
\(a^2 + 2ab + b^2 = c^2 + 2ab\)
よって
\(\color{red}{a^2 + b^2 = c^2}\)
以上で証明は完了です!
いかがでしょうか。
最後に三平方の定理『\(\color{red}{a^2 + b^2 = c^2}\)』が出てきましたね。
三平方の定理の証明は問題として出題される可能性がありますので、一通り理解しておくと良いですよ。
直角三角形の角度と辺の比【暗記】
三平方の定理をもっと使いこなしていくために、下の \(\bf{4}\) パターンの直角三角形の角度と辺の比を覚えましょう。
これらの形を暗記すると、よりスピーディに計算できるようになります。
もちろん、万が一それぞれの辺の比を忘れてしまっても、直角三角形の \(2\) 辺の長さがわかっていれば、もう \(1\) 辺の長さは三平方の定理で導き出せるので、あわてないでくださいね。
三平方の定理の計算問題
それでは、三平方の定理を使って計算する方法を学びましょう。
計算問題①「辺の長さを求める」
斜辺じゃない辺の長さを求める問題ですね。
まずは直角に向かい合う一番長い辺(斜辺 \(c\))を見つけます。
今回の場合は \(c = 5\) ですね。
あとは、公式に値を当てはめていくだけです。
三平方の定理より
\(a^2 + 4^2 = 5^2\)
\(a^2 = 5^2 − 4^2 = 25 − 16 = 9\)
\(a > 0\) であるため(辺の長さはマイナスにならないため)
\(a = 3\)
答え: \(\color{red}{a = 3}\)
計算問題②「斜辺の長さを求める」
もう \(1\) つ、違うタイプの問題を解いてみましょう。
斜辺の長さを求めるパターンですね。
斜辺以外の \(2\) 辺 \((a, b)\) の長さがわかっているので、そのまま公式へ当てはめます。
三平方の定理より
\(5^2 + 12^2 = c^2\)
\(25 + 144 = c^2\)
\(c^2 = 169 = 13^2\)
\(c > 0\) より、\(c = 13\)
答え: \(\color{red}{c = 13}\)
いかがでしょうか、少しずつ慣れてきましたか?
三平方の定理の応用問題
最後に、少しだけ難易度が上がった応用問題を \(2\) 問解いてみましょう。
応用問題①「1 辺と 1 角から辺の長さを求める」
下の図のような三角形がある。\(a\) の値を求めよ。
角度が \(45^\circ, 90^\circ\) の直角三角形なので、残りの角度は \(45^\circ\) となります。
つまり、直角二等辺三角形ですね。
直角二等辺三角形の辺の比は「\(1: 1: \sqrt{2}\)」ですので、それぞれの比と実際の長さを照らし合わせましょう。
\(45^\circ, 45^\circ, 90^\circ\) の直角三角形であるから、
\(1 : \sqrt{2} = a : 4\) より
\(\sqrt{2}a = 4\)
\(a = \displaystyle \frac{4}{\sqrt{2}} = 2\sqrt{2}\)
答え: \(\color{red}{a = 2\sqrt{2}}\)
応用問題②「2 辺の長さを求める」
下の図のような三角形がある。\(b\) と \(c\) の値を求めよ。
角度 \(30^\circ, 90^\circ\) から、残りの角度は \(60^\circ\) なので、辺の比が「\(1 : \sqrt{3} : 2\)」の直角三角形だとわかりますね。
\(30^\circ, 60^\circ, 90^\circ\) の直角三角形であるから、
\(1 : \sqrt{3} = b : 3\) より
\(\sqrt{3}b = 3\)
\(b = \displaystyle \frac{3}{\sqrt{3}} = \sqrt{3}\)
また、\(b : c = 1 : 2\) より
\(c = 2b = 2\sqrt{3}\)
答え: \(\color{red}{b = \sqrt{3}, c = 2\sqrt{3}}\)
以上で応用問題も終わりです!
三平方の定理はとても重要ですので、何回も練習問題などを反復して覚えるようにしてくださいね。