この記事では、「正四面体」の高さ・体積・表面積を求める公式や問題の解き方をできるだけわかりやすく解説していきます。
また、正四面体の内接球・外接球の半径や角度の公式も紹介していきますので、この記事を通してぜひマスターしてくださいね。
目次
正四面体とは?
正四面体とは、\(4\) 枚の合同な正三角形を面にもつ四面体です。
正四面体は \(4\) つの面をもち、\(6\) つの辺と \(4\) つの頂点から構成されます。
\(4\) つの合同な正三角形でできているため、辺の長さはすべて等しくなります。
正四面体の高さ・体積の公式
正四面体の高さおよび体積を求める公式は次のとおりです。
\(1\) 辺の長さが \(a\) の正四面体について、
高さ \(\color{red}{h = \displaystyle \frac{\sqrt{6}}{3}a}\)
体積 \(\displaystyle \color{red}{V = \frac{\sqrt{2}}{12} a^3}\)
\(1\) 辺の長ささえわかれば、高さも体積もすぐにわかりますね。
公式をそのまま覚えてもよいですが、公式を導出する方法も知っておくとよいでしょう。
【証明】正四面体の高さ・体積の公式
実際に正四面体の高さ・体積の公式を導出してみましょう。
\(1\) 辺の長さが \(a\) の正四面体の高さ \(h\) および体積 \(V\) を求めよ。
まずは、頂点 \(\mathrm{O}\) から正三角形 \(\mathrm{ABC}\) に下ろした垂線の足の位置を考えてみましょう。
高さを求める際は平面を取り出してみるとわかりやすいです。
また、正四面体の体積は三角錐と同様、\(\displaystyle \frac{1}{3} \times (底面積) \times (高さ)\) で求められます。
正三角形 \(\mathrm{ABC}\) を底面とし、頂点 \(\mathrm{O}\) から下ろした垂線との交点を \(\mathrm{H}\) とする。
正三角形 \(\mathrm{ABC}\) を真上から見ると、\(\mathrm{H}\) と \(\mathrm{O}\) は \(1\) 点に重なる。
正三角形の対称性により、\(\mathrm{AH}\) と \(\mathrm{BC}\) の交点 \(\mathrm{M}\) は \(\mathrm{BC}\) の中点となる。
つまり、\(\mathrm{BM} = \mathrm{CM}\)
同様に、\(\mathrm{BH}\) の延長線は \(\mathrm{AC}\) の中点、\(\mathrm{CH}\) の延長線は \(\mathrm{AB}\) の中点と交わるから、点 \(\mathrm{H}\) は正三角形 \(\mathrm{ABC}\) の重心である。
\(\triangle \mathrm{ABM}\) において、三平方の定理より
\(\begin{align} \mathrm{AM}^2 &= \mathrm{AB}^2 − \mathrm{BM}^2 \\ &= a^2 − \left( \frac{a}{2} \right)^2 \\ &= a^2 − \frac{a^2}{4} \\ &= \frac{3}{4}a^2 \end{align}\)
\(\mathrm{AM} > 0\) なので、\(\displaystyle \mathrm{AM} = \frac{\sqrt{3}}{2}a\)
重心は中線の長さを \(2 : 1\) に内分するので、
\(\mathrm{AH} : \mathrm{HM} = 2 : 1\)
よって
\(\begin{align} \mathrm{AH} &= \frac{2}{3} \mathrm{AM} \\ &= \frac{2}{3} \cdot \frac{\sqrt{3}}{2}a\\ &= \frac{\sqrt{3}}{3}a \end{align}\)
高さ \(h\)(\(\mathrm{OH}\) の長さ)を求める。
\(\triangle \mathrm{OAH}\) において、三平方の定理より
\(\begin{align} \mathrm{OH}^2 &= \mathrm{OA}^2 − \mathrm{AH}^2 \\ &= a^2 − \left(\frac{\sqrt{3}}{3}a\right)^2 \\ &= a^2 − \frac{1}{3}a^2 \\ &= \frac{2}{3}a^2\end{align}\)
\(\mathrm{OH} > 0\) より、
\(h = \mathrm{OH} = \displaystyle \frac{\sqrt{2}}{\sqrt{3}}a = \color{red}{\displaystyle \frac{\sqrt{6}}{3}a}\)
底面積 \(\triangle \mathrm{ABC}\) は
\(\begin{align} \frac{1}{2} \cdot \mathrm{BC} \cdot \mathrm{AM} &= \frac{1}{2} \cdot a \cdot \frac{\sqrt{3}}{2}a \\ &= \frac{\sqrt{3}}{4}a^2 \end{align}\)
よって、正四面体 \(\mathrm{O-ABC}\) の体積 \(V\) は、
\(\begin{align} V &= \frac{1}{3} \cdot \triangle \mathrm{ABC} \cdot \mathrm{OH} \\&= \frac{1}{3} \cdot \frac{\sqrt{3}}{4}a^2 \cdot \frac{\sqrt{6}}{3}a \\&= \color{red}{\frac{\sqrt{2}}{12}a^3} \end{align}\)
(証明終わり)
上記のように、手計算で正四面体の高さや体積を求めるには複数のステップが必要です。
面倒な場合は、公式を覚えてしまったほうがいいですね。
三角形の重心の性質については、以下の記事で詳しく説明しています。
五心とは?三角形の重心/内心/外心/垂心/傍心の性質と求め方
正四面体の高さ・体積の求め方【例題】
それでは、公式を使って次の正四面体の高さ・体積を求めてみましょう。
\(1\) 辺の長さが \(4\) の正四面体の高さと体積を求めよ。
公式を書き出して、辺の長さを代入するだけです。
\(1\) 辺の長さが \(a\) である正四面体の高さ \(h\)、体積 \(V\) はそれぞれ
\(h = \displaystyle \frac{\sqrt{6}}{3}a\)
\(\displaystyle V = \frac{\sqrt{2}}{12} a^3\)
\(a = 4\) であるから、求める高さ \(h\) と体積 \(V\) は
\(h = \displaystyle \frac{\sqrt{6}}{3} \cdot 4 = \displaystyle \frac{4\sqrt{6}}{3}\)
\(\displaystyle V = \frac{\sqrt{2}}{12} \cdot 4^3 = \frac{4^2 \sqrt{2}}{3} = \frac{16\sqrt{2}}{3}\)
答え: 高さ \(\displaystyle \frac{4\sqrt{6}}{3}\)、体積 \(\displaystyle \frac{16\sqrt{2}}{3}\)
証明で示したように \(1\) から考えるよりも、ずっと簡単に正四面体の高さと体積が求められましたね!
正四面体の表面積の公式
次に、正四面体の表面積を求める公式を確認しましょう。
\(1\) 辺の長さが \(a\) の正四面体の表面積 \(S\) は、
\begin{align}\color{red}{S = \sqrt{3} a^2}\end{align}
【証明】正四面体の表面積の公式
上記の公式を実際に導いてみましょう。
\(1\) 辺の長さが \(a\) の正四面体の表面積 \(S\) を求めよ。
どの \(4\) 面も辺の長さが同じ正三角形なので、その面積を \(4\) 倍すればよいことになります。
一辺の長さが \(a\) の正三角形の面積は、
\(\displaystyle \frac{1}{2} \cdot a \cdot \frac{\sqrt{3}}{2} a = \frac{\sqrt{3}}{4} a^2\)
\(4\) 倍すると、正四面体の表面積 \(S\) は
\(\displaystyle S = 4 \cdot \frac{\sqrt{3}}{4} a^2 = \color{red}{\sqrt{3} a^2}\)
(証明終わり)
シンプルですね!
正四面体の表面積の求め方【例題】
それでは、公式を使って次の正四面体の表面積を求めてみましょう。
\(1\) 辺の長さが \(4\) の正四面体の表面積を求めよ。
公式を書き出して、辺の長さを代入するだけですね。
\(1\) 辺の長さが \(a\) である正四面体の表面積 \(S\) は
\(S = \sqrt{3} a^2\)
\(a = 4\) であるから、求める表面積 \(S\) は
\(S = \sqrt{3} \cdot 4^2 = 16\sqrt{3}\)
答え: \(16\sqrt{3}\)
正四面体の内接球・外接球の半径の公式
次に、正四面体の内接球および外接球の半径の公式を示します。
\(1\) 辺の長さが \(a\) の正四面体について、
内接球の半径 \(\displaystyle \color{red}{r = \frac{\sqrt{6}}{12} a}\)
外接球の半径 \(\displaystyle \color{red}{R = \frac{\sqrt{6}}{4} a}\)
それぞれの意味と導出方法を説明していきます。
【証明①】正四面体の内接球の半径の公式
内接球とは、立体図形の内部にあり、すべての面に接する球のことです。
正四面体の各面との接点から内接球の中心(内心)への距離が「内接球の半径」です。
ここでは、この球の半径 \(r\) を求めてみましょう。
内接球の内心を \(\mathrm{I}\) とおくと、\(\mathrm{I}\) から \(4\) 面の三角形に下ろした垂線の長さは内接球の半径 \(r\) に一致する。
よって、正四面体の体積 \(V\) は \(\mathrm{I}\) を頂点とする \(4\) つの合同な三角錐の体積の和で表される。
\(\begin{align} V &= \frac{1}{3} r \triangle \mathrm{ABC} \times 4 \\ &= \frac{4r}{3} \triangle \mathrm{ABC} \end{align}\)
より、
\(\displaystyle r = \frac{3V}{4 \triangle \mathrm{ABC}}\)
ここで、\(\displaystyle V = \frac{\sqrt{2}}{12} a^3\)、\(\displaystyle \triangle \mathrm{ABC} = \frac{\sqrt{3}}{4} a^2\) より
\(\begin{align} r &= \frac{3V}{4 \triangle \mathrm{ABC}} \\&= \displaystyle \frac{3 \frac{\sqrt{2}}{12} a^3}{4 \frac{\sqrt{3}}{4} a^2} \\&= \frac{\frac{\sqrt{2}}{4} a^3}{\sqrt{3} a^2} \\&= \frac{\sqrt{2}}{4} a^3 \cdot \frac{1}{\sqrt{3} a^2} \\&= \frac{\sqrt{2}}{4\sqrt{3}} a \\&= \color{red}{\frac{\sqrt{6}}{12} a} \end{align}\)
(証明終わり)
したがって、\(\color{red}{\displaystyle r = \frac{\sqrt{6}}{12} a}\) と表せます。
【証明②】正四面体の外接球の半径の公式
外接球とは、立体図形の外側にあり、すべての頂点を通る球のことです。
正四面体の各頂点から外接球の中心(外心)への距離が「外接球の半径」です。
ここでは、この球の半径 \(R\) を求めてみましょう。
外接球の外心を \(\mathrm{J}\) とおく。
頂点 \(\mathrm{O}\) 側から球を見下ろすと、\(3\) 点 \(\mathrm{O}\), \(\mathrm{J}\), \(\mathrm{H}\) は一点に重なる。
ここで三角形 \(\mathrm{AOM}\) が面となるように立体を切り出すと、次のようになる。
\(\mathrm{OJ}\)、\(\mathrm{AJ}\) は外接球の半径なので \(\mathrm{OJ} = \mathrm{AJ} = R\)
点 \(\mathrm{H}\) は正三角形の重心なので \(\displaystyle \mathrm{AH} = \frac{\sqrt{3}}{3} a\)
\(\mathrm{OH}\) は正四面体の高さなので \(\mathrm{OH} = \displaystyle \frac{\sqrt{6}}{3} a\)
また、
\(\begin{align} \mathrm{JH} &= \mathrm{OH} − \mathrm{OJ} \\ &= \frac{\sqrt{6}}{3} a − R \end{align}\)
ここで、直角三角形 \(\mathrm{AJH}\) について三平方の定理より
\(\mathrm{AJ}^2 = \mathrm{AH}^2 + \mathrm{JH}^2\)
\(\begin{align}\displaystyle R^2 &= \left( \frac{\sqrt{3}}{3} a \right)^2 + \left( \frac{\sqrt{6}}{3} a − R \right)^2\\&= \frac{1}{3} a^2 + \frac{2}{3} a^2 − \frac{2\sqrt{6}}{3} aR + R^2\end{align}\)
\(\displaystyle 0 = a^2 − \frac{2\sqrt{6}}{3} aR\)
\(\displaystyle \frac{2\sqrt{6}}{3} aR = a^2\)
よって
\(\begin{align} R &= \frac{3a}{2\sqrt{6}} \\ &= \frac{3\sqrt{6}a}{12} \\ &= \color{red}{\frac{\sqrt{6}}{4} a} \end{align}\)
(証明終わり)
このように、\(\color{red}{R = \displaystyle \frac{\sqrt{6}}{4} a}\) と求められましたね!
正四面体の 2 面の角度の公式
正四面体では、どの \(2\) 面のなす角度も等しくなります。
正四面体の任意の \(2\) 面の角度を \(\theta\) としたとき、\(\theta\) について次の式が成り立つ。
\begin{align}\color{red}{\displaystyle \cos \theta = \frac{1}{3}}\end{align}
【証明】正四面体の 2 面の角度の公式
上記の公式を実際に導出してみましょう。
ここでは、具体的に \(\triangle \mathrm{ABC}\) と \(\triangle \mathrm{OBC}\) のなす角度 \(\theta\) について考えます。
証明には、三角比の考え方を使います。
三角比とは?定義や三角比の相互関係をわかりやすく解説!
\(\triangle \mathrm{OMH}\) について、
\(\displaystyle \mathrm{MO} = \frac{\sqrt{3}}{2} a\)
\(\begin{align} \mathrm{MH} &= \frac{1}{3} \mathrm{AM} \\ & = \frac{1}{3} \cdot \frac{\sqrt{3}}{2} a \\ &= \frac{\sqrt{3}}{6} a \end{align}\)
\(\triangle \mathrm{OMH}\) は直角三角形であるから、
\(\begin{align} \cos \theta &= \frac{\mathrm{MH}}{\mathrm{MO}} \\&= \displaystyle \frac{\frac{\sqrt{3}}{6} a}{\frac{\sqrt{3}}{2} a} \\&= \color{red}{\frac{1}{3}} \end{align}\)
(証明終わり)
したがって、\(2\) 面のなす角の余弦は \(\color{red}{\displaystyle \frac{1}{3}}\) であることがわかりました。
ちなみに、この角度を度数法で表すと \(\theta ≒ 70.52^\circ\) となります。
正四面体の計算問題
最後に、正四面体の計算問題に挑戦してみましょう。
計算問題「1 辺が 2√3 の正四面体」
\(1\) 辺の長さが \(2\sqrt{3} \ \mathrm{cm}\) の正四面体について、次の大きさを求めなさい。
(1) 表面積
(2) 体積
(3) \(2\) つの面のなす角 \(\theta\) の \(\sin\) の値
(4) 内接球の半径
(5) 外接球の直径
正四面体に関係するいろいろな値を求めさせる問題です。
これまでに紹介した公式を使えば、あっという間に求められますね。
(1)
正四面体の表面積 \(S = \sqrt{3} a^2\) より、
\(\sqrt{3} (2\sqrt{3})^2 = 12\sqrt{3}\)
答え: \(12\sqrt{3} \, \mathrm{cm^2}\)
(2)
正四面体の体積 \(\displaystyle V = \frac{\sqrt{2}}{12} a^3\) より、
\(\displaystyle \frac{\sqrt{2}}{12} (2\sqrt{3})^3 = 2\sqrt{6}\)
答え: \(2\sqrt{6} \, \mathrm{cm^3}\)
(3) 正四面体の \(2\) 面のなす角 \(\theta\) について、
\(\displaystyle \cos \theta = \frac{1}{3}\) \((0^\circ < \theta < 90^\circ)\)
が成り立つ。
\(\sin^2 \theta + \cos^2 \theta = 1\) より、
\(\begin{align} \sin^2 \theta &= 1 − \cos^2 \theta \\ &= 1 − \left( \frac{1}{3} \right)^2 \\ &= \frac{8}{9} \end{align}\)
\(\sin \theta > 0\) より、\(\displaystyle \sin \theta = \frac{2\sqrt{2}}{3}\)
答え: \(\displaystyle \frac{2\sqrt{2}}{3}\)
(4)
内接球の半径 \(\displaystyle r = \frac{\sqrt{6}}{12} a\) より、
\(\displaystyle \frac{\sqrt{6}}{12} \cdot 2\sqrt{3} = \frac{\sqrt{2}}{2}\)
答え: \(\displaystyle \frac{\sqrt{2}}{2} \, \mathrm{cm}\)
(5)
外接球の半径 \(\displaystyle R = \frac{\sqrt{6}}{4} a\) より、
外接球の直径は
\(\displaystyle 2 \cdot \frac{\sqrt{6}}{4} \cdot 2\sqrt{3} = 3\sqrt{2}\)
答え: \(3\sqrt{2} \, \mathrm{cm}\)
以上で問題も終わりです!
正四面体の問題は、公式を丸暗記しておけば楽ではありますが、そんなに頻出するテーマでもありません。
公式を忘れてしまってもいいように、それぞれの値の導き方も理解しておきましょう!
上の方の図の所の高さを求める公式だけaの所がa^2になってますよ。
この度はコメントいただきありがとうございます。
ご指摘を受け、該当部分を修正いたしました。
今後ともどうぞ当サイトをよろしくお願いいたします。