ベクトルの意味や、高校で習うすべての公式(内積・外積・面積・成分など)をまとめていきます。
詳細記事へのリンクも載せていますので、ぜひ勉強の参考にしてくださいね!
目次
ベクトルとは?
ベクトルとは、向きと大きさをもった量のことです。
例えば、点 \(\mathrm{A}\) を始点とし、点 \(\mathrm{B}\) を終点とするベクトルは「\(\color{red}{\overrightarrow{\mathrm{AB}}}\)」と表します。
ベクトルは向きをもつので、長さが同じでも向きが違えば別のベクトルです。
(\(\overrightarrow{\mathrm{AB}}\) と \(\overrightarrow{\mathrm{BA}}\) は別のベクトル)
一方で、ベクトルに「位置」は関係がありません。
「向き」と「大きさ」が等しければ、位置が違っても同一のベクトルであると言えます。
以降、ベクトルに関する公式を一覧でまとめていきます。
ベクトルの基本知識【公式】
ベクトルの基本的な知識や公式をまとめていきます。
ベクトルと大きさの表記
ベクトルには \(2\) 通りの表記方法があります。
また、ベクトルの大きさを表すには、ベクトルを絶対値ではさみます。
- ベクトルの表記方法
始点と終点を結ぶ:\(\overrightarrow{\mathrm{AB}}\), \(\overrightarrow{\mathrm{CD}}\) など
一文字で表す:\(\vec{a}\), \(\vec{b}\) など - ベクトルの大きさの表記方法
ベクトル \(\overrightarrow{\mathrm{AB}}\) の大きさ:\(|\overrightarrow{\mathrm{AB}}|\)
ベクトル \(\vec{a}\) の大きさ: \(|\vec{a}|\)
ベクトルの演算の基本
ベクトルには次の基本的な演算規則が成り立ちます。
- \(\overrightarrow{\mathrm{A□}} + \overrightarrow{\mathrm{□B}} = \overrightarrow{\mathrm{AB}}\)
- \(\overrightarrow{\mathrm{□A}} − \overrightarrow{\mathrm{□B}} = \overrightarrow{\mathrm{BA}}\)
- \(\overrightarrow{\mathrm{BA}} = − \overrightarrow{\mathrm{AB}}\)
- \(\overrightarrow{\mathrm{AA}} = \vec{0}\)
ベクトルの演算法則
ベクトル同士は、次の規則にしたがって演算できます。
- 交換法則
\begin{align}\vec{a} + \vec{b} = \vec{b} + \vec{a}\end{align} - 結合法則
\begin{align}(\vec{a} + \vec{b}) + \vec{c} = \vec{a} + (\vec{b} + \vec{c})\end{align} - 逆ベクトルの性質
\begin{align}\vec{a} + (−\vec{a}) = \vec{0}\end{align} - 零ベクトルの性質
\begin{align}\vec{a} + \vec{0} = \vec{0} + \vec{a} = \vec{a}\end{align} - 実数倍
\(k, l\) を実数とするとき
\begin{align}k(l \vec{a}) &= (kl)\vec{a} \\ (k + l)\vec{a} &= k \vec{a} + l \vec{a} \\ k(\vec{a} + \vec{b}) &= k \vec{a} + k \vec{b}\end{align}
単位ベクトル・逆ベクトル・零ベクトル
単位ベクトル、逆ベクトル、零ベクトルの意味は次のとおりです。
- 単位ベクトル
大きさが \(1\) であるベクトル。
\(\vec{a}\) と同じ向きの単位ベクトルは \(\begin{align}\displaystyle \frac{\vec{a}}{|\vec{a}|}\end{align}\) - 逆ベクトル
あるベクトルと大きさが等しく、向きが反対であるベクトル。
\(\vec{a}\) の逆ベクトルは \(−\vec{a}\) - 零ベクトル
大きさが \(0\) のベクトル(始点と終点が一致するベクトル)。
\(\overrightarrow{\mathrm{AA}} = \vec{0}\)
平面ベクトル【公式】
平面上のベクトルに関する公式をまとめています。
ベクトルの成分表示
ベクトルは直行座標を使って表すことができ、これをベクトルの成分表示といいます。
原点を \(\mathrm{O}\) とする座標平面において、\(\vec{a} = \overrightarrow{\mathrm{OA}}\) となる点 \(\mathrm{A}(a_1, a_2)\) をとると、\(\vec{a}\) は次のように表せる。
\begin{align}\vec{a} = (a_1, a_2)\end{align}
このとき、\(a_1\) を \(x\) 成分、\(a_2\) を \(y\) 成分という。
ベクトルの相等
\(2\) つのベクトルの向きと大きさが等しければ、それらは同じベクトルであると言えます。
成分で表した場合、\(x\) 成分、\(y\) 成分ともに一致します。
\(2\) つのベクトル \(\vec{a}\), \(\vec{b}\) の向きおよび大きさが等しいとき、\(\vec{a}\) と \(\vec{b}\) は等しい。
\begin{align}\vec{a} = \vec{b}\end{align}
\(\vec{a} = (a_1, a_2)\), \(\vec{b} = (b_1, b_2)\) のとき、
\begin{align}\vec{a} = \vec{b} \iff a_1 = b_1, a_2 = b_2\end{align}
成分によるベクトルの演算
成分表示されたベクトルは次のように演算できます。
\(\vec{a} = (a_1, a_2)\), \(\vec{b} = (b_1, b_2)\)、\(k, l\) を実数とするとき、
- 和
\begin{align}\vec{a} + \vec{b} &= (a_1, a_2) + (b_1, b_2) \\&= (a_1 + b_1, a_2 + b_2)\end{align} - 差
\begin{align}\vec{a} − \vec{b} &= (a_1, a_2) − (b_1, b_2) \\&= (a_1 − b_1, a_2 − b_2)\end{align} - 零ベクトル
\begin{align}\vec{a} = \vec{0} \iff a_1 = 0, a_2 = 0\end{align} - 実数倍
\begin{align}k\vec{a} &= k(a_1, a_2) = (k a_1, k a_2) \\\\ k\vec{a} + l\vec{b}&= k(a_1, a_2) + l(b_1, b_2) \\&= (k a_1 + l b_1, k a_2 + l b_2)\end{align}
ベクトルの成分と大きさ
ベクトルの大きさは、成分を使うと具体的な値として求めることができます。
\(\vec{a} = (a_1, a_2)\) のとき、\(\vec{a}\) の大きさは
\begin{align}|\vec{a}| = \sqrt{a_1^2 + a_2^2}\end{align}
\(2\) 点 \(\mathrm{A}(a_1, a_2)\), \(\mathrm{B}(b_1, b_2)\) について
\begin{align}\overrightarrow{\mathrm{AB}} = (b_1 − a_1, b_2 − a_2)\end{align}
\(\overrightarrow{\mathrm{AB}}\) の大きさは
\begin{align}|\overrightarrow{\mathrm{AB}}| = \sqrt{(b_1 − a_1)^2 + (b_2 − a_2)^2}\end{align}
ベクトルの分解
ベクトルは、必要に応じて分解することができます。
\(\vec{0}\) でなく、かつ平行でない \(2\) つのベクトル \(\vec{a}\), \(\vec{b}\) を用いて、任意のベクトル \(\vec{p}\) をただ \(1\) 通りに表すことができる。(ただし、\(s, t\) は実数)
\begin{align}\vec{p} = s\vec{a} + t\vec{b}\end{align}
また、\(k, l, m, n\) を実数として、以下が成り立つ。
\begin{align}k\vec{a} + l\vec{b} = m\vec{a} + n\vec{b} \iff k = m, l = n\end{align}
特に
\begin{align}k\vec{a} + l\vec{b} =\vec{0} \iff k = l = 0\end{align}
ベクトルの内積【公式】
ベクトルの内積については、以下の記事で詳しく説明しています。
ベクトルの内積とは?公式や求め方をわかりやすく解説!内積の重要 3 公式
内積については、次の \(3\) つの公式を必ず覚えておきましょう。
\(\vec{0}\) でない \(2\) つのベクトル \(\vec{a}\), \(\vec{b}\) のなす角を \(\theta\) \((0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ)\) とする。
- 内積のベクトル表示(定義)
\(\vec{a}\), \(\vec{b}\) の内積 \(\vec{a} \cdot \vec{b}\) を次のように定める。
\begin{align}\vec{a} \cdot \vec{b} = |\vec{a}| |\vec{b}| \cos\theta\end{align} - 内積の成分表示
\(\vec{a} = (a_1, a_2)\), \(\vec{b} = (b_1, b_2)\) のとき
\begin{align}\vec{a} \cdot \vec{b} = a_1 b_1 + a_2 b_2\end{align} - ベクトルのなす角
\begin{align} \cos \theta = \frac{\vec{a} \cdot \vec{b}}{|\vec{a}| |\vec{b}|} = \frac{a_1 b_1 + a_2 b_2}{\sqrt{a_1^2 + a_2^2} \sqrt{b_1^2 + b_2^2}}\end{align}
内積の性質
ベクトルの内積には、次の性質が成り立ちます。
性質① 内積の計算法則
- 交換法則
\(\begin{align}\vec{a} \cdot \vec{b} = \vec{b} \cdot \vec{a}\end{align}\) - 分配法則
\(\begin{align}(\vec{a} + \vec{b}) \cdot \vec{c} = \vec{a} \cdot \vec{c} + \vec{b} \cdot \vec{c}\\ \vec{a} \cdot (\vec{b} + \vec{c}) = \vec{a} \cdot \vec{b} + \vec{a} \cdot \vec{c}\end{align}\) - 実数倍
\(k\) を実数とすると、\(\begin{align}(k\vec{a}) \cdot \vec{b} =\vec{a} \cdot (k\vec{b}) = k(\vec{a} \cdot \vec{b})\end{align}\)
性質② ベクトルの大きさと内積
- \(\vec{a} \cdot \vec{a} = |\vec{a}|^2 \)
- \(|\vec{a}| = \sqrt{\vec{a} \cdot \vec{a}}\)
- \(−|\vec{a}||\vec{b}| \leq \vec{a} \cdot \vec{b} \leq |\vec{a}||\vec{b}|\)
性質③ 平行・垂直なベクトルの内積
\(\vec{a} \neq \vec{0}\), \(\vec{b} \neq \vec{0}\) のとき、
- 平行なベクトルの内積
\(\begin{align}\vec{a} \ // \ \vec{b} \iff \vec{a} \cdot \vec{b} = \pm |\vec{a}||\vec{b}|\end{align}\) - 垂直なベクトルの内積
\(\begin{align}\vec{a} \perp \vec{b} \iff \vec{a} \cdot \vec{b} = 0\end{align}\)
ベクトルの平行条件・垂直条件【公式】
ベクトルの平行条件および垂直条件については、以下の記事で詳しく説明しています。
ベクトルの平行条件、垂直条件とは?内積公式や証明問題を解説\(\vec{0}\) でない \(2\) つのベクトル \(\vec{a} = (a_1, a_2)\), \(\vec{b} = (b_1, b_2)\) について、
平行条件
\begin{align}\vec{a} \ // \ \vec{b} &\iff \vec{a} = k \vec{b} \ \text{となる実数} \ k \ \text{がある} \\&\iff a_1b_2 − a_2b_1 = 0\end{align}
垂直条件
\begin{align}\vec{a} \perp \vec{b} &\iff \vec{a} \cdot \vec{b} = 0 \\&\iff a_1b_1 + a_2b_2 = 0\end{align}
ベクトルの共点条件・共線条件・共面条件【公式】
ベクトルの問題を解く上で重要なヒントとなる条件をまとめました。
なお、共面条件は空間ベクトル特有の条件です。
共点条件(複数の点が一致する条件)
- \(3\) 点 \(\mathrm{P}\), \(\mathrm{Q}\), \(\mathrm{R}\) が一致する \(\iff \overrightarrow{\mathrm{OP}} = \overrightarrow{\mathrm{OQ}} = \overrightarrow{\mathrm{OR}}\)
共線条件(\(3\) 点が一直線上にある条件)
- \(3\) 点 \(\mathrm{A}\), \(\mathrm{B}\), \(\mathrm{C}\) が一直線上にある \(\iff \overrightarrow{\mathrm{AC}} = k\overrightarrow{\mathrm{AB}}\) となる実数 \(k\) がある
- 点 \(\mathrm{P}\) が直線 \(\mathrm{AB}\) 上にある \(\iff \overrightarrow{\mathrm{OP}} = s\overrightarrow{\mathrm{OA}} + t\overrightarrow{\mathrm{OB}}\) となる実数 \(s, t\) \((s + t = 1)\) がある
共面条件(\(4\) 点が同一平面上にある条件)
- 点 \(\mathrm{P}(\vec{p})\) が、同一直線上にない \(3\) 点 \(\mathrm{A}(\vec{a})\), \(\mathrm{B}(\vec{b})\), \(\mathrm{C}(\vec{c})\) の定める平面上にある
\(\iff \overrightarrow{\mathrm{AP}} = s\overrightarrow{\mathrm{AB}} + t\overrightarrow{\mathrm{AC}}\) となる実数 \(s, t\) がある
\(\iff \vec{p} = s\vec{a} + t\vec{b} + u\vec{c}\) となる実数 \(s, t, u\) で \(s + t + u = 1\) を満たすものがある
ベクトルと三角形の面積【公式】
ベクトルと三角形の面積については、以下の記事で詳しく説明しています。
ベクトルによる三角形の面積の求め方!公式や証明、計算問題\(\overrightarrow{\mathrm{OA}} = \vec{a} = (a_1, a_2)\), \(\overrightarrow{\mathrm{OB}} = \vec{b} = (b_1, b_2)\) のとき、\(\triangle \mathrm{OAB}\) の面積 \(S\) は
- ベクトル表示
\begin{align} S = \frac{1}{2} \sqrt{|\vec{a}|^2 |\vec{b}|^2 − (\vec{a} \cdot \vec{b})^2}\end{align} - 成分表示
\begin{align} S = \frac{1}{2} |a_1 b_2 − a_2 b_1| \end{align}
位置ベクトル【公式】
位置ベクトルについては、以下の記事で詳しく説明しています。
位置ベクトルとは?内分・外分・重心の公式や求め方を解説!2 点を結ぶベクトルの位置ベクトル
平面上の \(2\) 点 \(\mathrm{A}(\vec{a})\), \(\mathrm{B}(\vec{b})\) に対して、始点を点 \(\mathrm{O}\) とすると、
\begin{align}\overrightarrow{\mathrm{AB}} = \vec{b} − \vec{a}\end{align}
内分点・外分点の位置ベクトル
平面上の \(2\) 点 \(\mathrm{A}(\vec{a})\), \(\mathrm{B}(\vec{b})\) について、
- 内分点
線分 \(\mathrm{AB}\) を \(m : n\) に内分する点 \(\mathrm{P}\) の位置ベクトル \(\vec{p}\) は
\begin{align}\vec{p} = \frac{n \vec{a} + m \vec{b}}{m + n}\end{align} - 外分点
線分 \(\mathrm{AB}\) を \(m : n\) に外分する点 \(\mathrm{Q}\) の位置ベクトル \(\vec{q}\) は
\begin{align}\vec{q} = \frac{−n \vec{a} + m \vec{b}}{m − n}\end{align}
三角形の重心の位置ベクトル
\(3\) 点 \(\mathrm{A}(\vec{a})\), \(\mathrm{B}(\vec{b})\), \(\mathrm{C}(\vec{c})\) を頂点とする \(\triangle \mathrm{ABC}\) の重心 \(\mathrm{G}\) の位置ベクトル \(\vec{g}\) は
\begin{align}\vec{g} = \frac{\vec{a} + \vec{b} + \vec{c}}{3}\end{align}
ベクトル方程式【公式】
ベクトル方程式については、以下の記事で詳しく説明しています。
ベクトル方程式とは?図形別の公式(直線・円)や問題の解き方直線のベクトル方程式
直線上の任意の点 \(\mathrm{P}\) の位置ベクトルを \(\vec{p}\) とし、\(s\), \(t\) を実数の変数とする。
- 異なる \(2\) 点 \(\mathrm{A}(\vec{a})\), \(\mathrm{B}(\vec{b})\) を通る直線
\(\vec{p} = (1 − t)\vec{a} + t\vec{b}\)
または
\(\vec{p} = s\vec{a} + t\vec{b} (s + t = 1)\)
- 定点 \(\mathrm{A}(\vec{a})\) を通り、ベクトル \(\vec{d}\) に平行な直線
\(\vec{p} = \vec{a} + t\vec{d}\)
(ただし、\(\vec{d} \neq \vec{0}\))
- 定点 \(\mathrm{A}(\vec{a})\) を通り、ベクトル \(\vec{n}\) に垂直な直線
\(\vec{n} \cdot (\vec{p} − \vec{a}) = 0\)
(ただし、\(\vec{n}\) は直線の法線ベクトル)
「法線」とは、ある直線に垂直な直線のことです。
法線とは?法線の方程式や法線ベクトルの公式・求め方
円のベクトル方程式
\(\overrightarrow{\mathrm{OA}} = \vec{a}\), \(\overrightarrow{\mathrm{OB}} = \vec{b}\), \(\overrightarrow{\mathrm{OC}} = \vec{c}\), \(\overrightarrow{\mathrm{OP}} = \vec{p}\) とし、\(\mathrm{P}\) は円周上の任意の点とする。
- 中心 \(\mathrm{C}\)、半径 \(r\) の円
\(|\vec{p} − \vec{c}| = r\)
\((\vec{p} − \vec{c}) \cdot (\vec{p} − \vec{c}) = r^2\)
- 線分 \(\mathrm{AB}\) を直径とする円
\begin{align}(\vec{p} − \vec{a}) \cdot (\vec{p} − \vec{b}) = 0\end{align}
球面のベクトル方程式
球面上の任意の点を \(\mathrm{P}(\vec{p})\) とすると、中心 \(\mathrm{C}(\vec{c})\)、半径 \(r\) の球面のベクトル方程式は
\begin{align}|\vec{p} − \vec{c}| = r\end{align}
\begin{align}(\vec{p} − \vec{c}) \cdot (\vec{p} − \vec{c}) = r^2\end{align}
平面のベクトル方程式
点 \(\mathrm{A}(\vec{a})\) を通り、\(\vec{n} \,(\neq \vec{0})\) に垂直な平面のベクトル方程式は
\begin{align}\vec{n} \cdot (\vec{p} − \vec{a}) = 0\end{align}
平面上の点の存在範囲
\(\overrightarrow{\mathrm{OA}} = \vec{a}\), \(\overrightarrow{\mathrm{OB}} = \vec{b}\), \(\overrightarrow{\mathrm{OP}} = \vec{p}\) とする。
(ただし、\(\vec{a} \neq \vec{0}\), \(\vec{b} \neq \vec{0}\), \(\vec{a} \neq \vec{b}\)、\(s\) と \(t\) は実数の変数とする。)
\(\vec{p} = s\vec{a} + t\vec{b}\) について、\(s\), \(t\) に条件があると、\(\vec{p}\) の終点 \(\mathrm{P}\) の存在範囲は次のようになる。
- 直線 \(\mathrm{AB}\)
\begin{align}s + t = 1\end{align} - 線分 \(\mathrm{AB}\)
\begin{align}s + t = 1, s \geq 0, t \geq 0\end{align} - \(\triangle \mathrm{OAB}\) の周および内部
\begin{align}s + t \leq 1, s \geq 0, t \geq 0\end{align} - 平行四辺形 \(\mathrm{OACB}\) の周および内部
\begin{align}0 \leq s \leq 1, 0 \leq t \leq 1\end{align}
ベクトル方程式で扱う \(s, t\) などの実数の変数は、「媒介変数」と呼ばれます。
媒介変数表示とは?グラフや計算(微分積分・ベクトル)
空間ベクトル【公式】
\(x, y\) 方向の二次元で考える平面ベクトルに対して、\(x, y, z\) 方向の三次元で考えるベクトルを「空間ベクトル」といいます。
空間ベクトルについては、以下の記事で詳しく説明しています。
空間ベクトルとは?内積や面積の公式と問題を解くコツ空間ベクトルの演算
空間ベクトルにおいても、ベクトルの基本知識【公式】の内容が成り立ちます。
空間ベクトルでは成分が \(x, y, z\) の \(3\) 方向になることに伴い、次のように演算されます。
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空間ベクトルの成分表示
原点を \(\mathrm{O}\) とする座標空間において、\(\vec{a} = \overrightarrow{\mathrm{OA}}\) となる点 \(\mathrm{A}(a_1, a_2, a_3)\) をとると、\(\vec{a}\) は次のように表せる。
\begin{align}\vec{a} = (a_1, a_2, a_3)\end{align}
このとき、\(a_1\) を \(x\) 成分、\(a_2\) を \(y\) 成分、\(a_3\) を \(z\) 成分という。
空間ベクトルの相等
\(\vec{a} = (a_1, a_2, a_3)\), \(\vec{b} = (b_1, b_2, b_3)\) について
\begin{align}\vec{a} = \vec{b} \iff a_1 = b_1, a_2 = b_2, a_3 = b_3\end{align}
成分による空間ベクトルの演算
\(\vec{a} = (a_1, a_2, a_3)\), \(\vec{b} = (b_1, b_2, b_3)\)、\(k, l\) を実数とするとき、
- 和
\begin{align}\vec{a} + \vec{b} &= (a_1, a_2, a_3) + (b_1, b_2, b_3) \\&= (a_1 + b_1, a_2 + b_2, a_3 + b_3)\end{align} - 差
\begin{align}\vec{a} − \vec{b} &= (a_1, a_2, a_3) − (b_1, b_2, b_3) \\&= (a_1 − b_1, a_2 − b_2, a_3 − b_3)\end{align} - 零ベクトル
\begin{align}\vec{a} = \vec{0} \iff a_1 = 0, a_2 = 0, a_3 = 0\end{align} - 実数倍
\begin{align}k\vec{a} &= k(a_1, a_2, a_3) \\&= (k a_1, k a_2, k a_3) \\\\ k\vec{a} + l\vec{b}&= k(a_1, a_2, a_3) + l(b_1, b_2, b_3) \\&= (k a_1 + l b_1, k a_2 + l b_2, k a_3 + l b_3)\end{align}
空間ベクトルの成分と大きさ
- \(\vec{a}\) の大きさ
\(\vec{a} = (a_1, a_2, a_3)\) のとき
\begin{align}|\vec{a}| = \sqrt{a_1^2 + a_2^2 + a_3^2}\end{align} - \(\overrightarrow{\mathrm{AB}}\) の大きさ
\(2\) 点 \(\mathrm{A}(a_1, a_2, a_3)\), \(\mathrm{B}(b_1, b_2, b_3)\) について、\(\overrightarrow{\mathrm{AB}} = (b_1 − a_1, b_2 − a_2, b_3 − a_3)\) より
\begin{align}|\overrightarrow{\mathrm{AB}}| = \sqrt{(b_1 − a_1)^2 + (b_2 − a_2)^2 + (b_3 − a_3)^2}\end{align}
空間ベクトルの分解
同じ平面上にない \(4\) 点 \(\mathrm{O}, \mathrm{A}, \mathrm{B}, \mathrm{C}\) に対して \(\overrightarrow{\mathrm{OA}} = \vec{a}, \overrightarrow{\mathrm{OB}} = \vec{b}, \overrightarrow{\mathrm{OC}} = \vec{c}\) とすると、任意のベクトル \(\vec{p}\) をただ \(1\) 通りに表すことができる。
\begin{align}\vec{p} = s\vec{a} + t\vec{b} + u\vec{c}\end{align}
(\(s, t, u\) は実数)
空間ベクトルの内積
空間ベクトルの内積の公式は次のとおりです。
\(\vec{0}\) でない \(2\) つのベクトル \(\vec{a} = (a_1, a_2, a_3)\), \(\vec{b} = (b_1, b_2, b_3)\) のなす角を \(\theta\) \((0^\circ \leq \theta \leq 180^\circ)\) とする。
- 内積のベクトル表示
\begin{align}\vec{a} \cdot \vec{b} = |\vec{a}| |\vec{b}| \cos\theta\end{align} - 内積の成分表示
\begin{align}\vec{a} \cdot \vec{b} = a_1 b_1 + a_2 b_2 + a_3b_3\end{align} - ベクトルのなす角
\begin{align} \cos \theta = \frac{\vec{a} \cdot \vec{b}}{|\vec{a}| |\vec{b}|} = \frac{a_1 b_1 + a_2 b_2 + a_3b_3}{\sqrt{a_1^2 + a_2^2 + a_3^2} \sqrt{b_1^2 + b_2^2 + b_3^2}}\end{align}
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ベクトルの外積【発展】
高校では習いませんが、ベクトルには「外積」という概念も存在します。
\(\vec{0}\) でない \(2\) つのベクトル \(\vec{a}\), \(\vec{b}\) がなす角を \(\theta\) とするとき、\(\vec{a}\), \(\vec{b}\) に垂直で、かつ大きさが \(|\vec{a}||\vec{b}|\sin \theta\) のベクトルを \(\vec{a}\), \(\vec{b}\) の「外積」という。
\(\vec{a}\), \(\vec{b}\) の外積のうち、\(\vec{a}\) から \(\vec{b}\) の向きへ右ねじを回転したときにねじの進む向きのベクトルは以下のように表す。
\begin{align}\vec{a} \times \vec{b}\end{align}
(\(\vec{a} \times \vec{b} \neq \vec{b} \times \vec{a}\))
また、\(\vec{a} = (a_1, a_2, a_3)\), \(\vec{b} = (b_1, b_2, b_3)\) のとき
\begin{align}\vec{a} \times \vec{b} = (a_2 b_3 − b_2 a_3, a_3 b_1 − b_3 a_1, a_1 b_2 − b_1 a_2)\end{align}
(見切れる場合は横へスクロール)
以上がベクトルの公式一覧でした!
詳しい内容については、それぞれの関連記事を確認してみてくださいね。