この記事では、ベクトルを使った三角形の面積の公式と求め方をできるだけわかりやすく解説していきます。
公式の証明や計算問題もていねいに説明していきますので、この記事を通してぜひマスターしてくださいね。
目次
ベクトルによる三角形の面積の公式
三角形の面積は、\(2\) 辺のベクトルを使って求めることができ、ベクトル表示および成分表示の公式があります。
\(\overrightarrow{\mathrm{OA}} = \vec{a} = (a_1, a_2)\), \(\overrightarrow{\mathrm{OB}} = \vec{b} = (b_1, b_2)\) のとき、\(\triangle \mathrm{OAB}\) の面積 \(S\) は
- 公式① ベクトル表示
\begin{align}\displaystyle S = \frac{1}{2} \sqrt{|\vec{a}|^2 |\vec{b}|^2 − (\vec{a} \cdot \vec{b})^2}\end{align} - 公式② 成分表示
\begin{align}\displaystyle S = \frac{1}{2} |a_1 b_2 − a_2 b_1|\end{align}
イメージ図とともに、それぞれの公式を詳しく説明します。
公式① 三角形の面積(ベクトル表示)
\(2\) 辺のベクトルの「大きさ」と「内積」から三角形の面積が求められます。
\(\triangle \mathrm{OAB}\) において、\(\overrightarrow{\mathrm{OA}} = \vec{a}\), \(\overrightarrow{\mathrm{OB}} = \vec{b}\) とすると、\(\triangle \mathrm{OAB}\) の面積 \(S\) は
\begin{align}\color{red}{\displaystyle S = \frac{1}{2} \sqrt{|\vec{a}|^2 |\vec{b}|^2 − (\vec{a} \cdot \vec{b})^2}}\end{align}
内積を求めるときと同じく、\(2\) つのベクトルの始点を必ずそろえるのがポイントです。
公式② 三角形の面積(成分表示)
公式①を各ベクトルの成分で表したのが次の公式です。
\(\triangle \mathrm{OAB}\) において、\(\vec{a} = (a_1, a_2)\), \(\vec{b} = (b_1, b_2)\) のとき、\(\triangle \mathrm{OAB}\) の面積 \(S\) は
\begin{align}\color{red}{\displaystyle S = \frac{1}{2} |a_1 b_2 − a_2 b_1|}\end{align}
\(2\) 辺のベクトルの \(x\) 成分と \(y\) 成分を互い違いにかけ合わせるイメージです。
絶対値を忘れないようにしてくださいね!
ベクトルによる三角形の面積公式の証明
ベクトルの三角形の面積公式の証明方法を説明します。
証明① ベクトル表示の公式
まずは、ベクトル表示の公式を証明します。
\(\overrightarrow{\mathrm{OA}} = \vec{a}\), \(\overrightarrow{\mathrm{OB}} = \vec{b}\) のとき、 \(\triangle \mathrm{OAB}\) の面積 \(S\) は
\begin{align}\displaystyle S = \frac{1}{2} \sqrt{|\vec{a}|^2 |\vec{b}|^2 − (\vec{a} \cdot \vec{b})^2}\end{align}
を示せ。
三角比を用いた三角形の面積公式 \(\color{red}{S = \displaystyle \frac{1}{2} ab \sin \theta}\) を「ベクトルの大きさ」と「ベクトルの内積」で表します。
\(\vec{a}\) と \(\vec{b}\) のなす角を \(\theta\) \((0^\circ < \theta < 180^\circ)\) とすると、
\(\sin\theta > 0\) より \(\sin\theta = \sqrt{1 − \cos^2\theta}\)、
内積 \(\vec{a} \cdot \vec{b} = |\vec{a}| |\vec{b}| \cos\theta\) より \(\displaystyle \cos\theta = \frac{\vec{a} \cdot \vec{b}}{|\vec{a}| |\vec{b}|}\) であるから、
\(\begin{align}\displaystyle S &= \frac{1}{2} \mathrm{OA} \cdot \mathrm{OB} \sin\theta \\&= \frac{1}{2} |\vec{a}| |\vec{b}| \sqrt{1 − \cos^2\theta} \\&= \frac{1}{2} |\vec{a}| |\vec{b}| \sqrt{1 − \left( \frac{\vec{a} \cdot \vec{b}}{|\vec{a}| |\vec{b}|} \right)^2} \\&= \frac{1}{2} |\vec{a}| |\vec{b}| \sqrt{\frac{|\vec{a}|^2 |\vec{b}|^2 − (\vec{a} \cdot \vec{b})^2}{|\vec{a}|^2 |\vec{b}|^2}} \\&= \frac{1}{2} |\vec{a}| |\vec{b}| \frac{\sqrt{|\vec{a}|^2 |\vec{b}|^2 − (\vec{a} \cdot \vec{b})^2}}{|\vec{a}| |\vec{b}|} \\&= \frac{1}{2} \sqrt{|\vec{a}|^2 |\vec{b}|^2 − (\vec{a} \cdot \vec{b})^2}\end{align}\)
したがって \(\displaystyle S = \frac{1}{2} \sqrt{|\vec{a}|^2 |\vec{b}|^2 − (\vec{a} \cdot \vec{b})^2}\) は成り立つ。
(証明終わり)
三角形の面積のさまざまな求め方を紹介しています。
三角形の面積公式まとめ!求め方をわかりやすく解説
証明② 成分表示の公式
続いて、成分表示の公式を証明します。
\(\vec{a} = (a_1, a_2)\) , \(\vec{b} = (b_1, b_2)\) のとき、 \(\triangle \mathrm{OAB}\) の面積 \(S\) は
\begin{align}\displaystyle S = \frac{1}{2} |a_1 b_2 − a_2 b_1|\end{align}
を示せ。
ベクトル表示の公式における「ベクトルの大きさ」「ベクトルの内積」を成分で表します。
\(S = \displaystyle \frac{1}{2} \sqrt{ |\vec{a}|^2 |\vec{b}|^2 − (\vec{a} \cdot \vec{b})^2 }\) において、
- \(|\vec{a}| = \sqrt{a_1^2 + a_2^2}\)
- \(|\vec{b}| = \sqrt{b_1^2 + b_2^2}\)
- \(\vec{a} \cdot \vec{b} = a_1 b_1 + a_2 b_2\)
より、
\(|\vec{a}|^2 |\vec{b}|^2 − (\vec{a} \cdot \vec{b})^2\)
\(= (a_1^2 + a_2^2)(b_1^2 + b_2^2) − (a_1 b_1 + a_2 b_2)^2\)
\(= (a_1^2 b_1^2 + a_1^2 b_2^2 + a_2^2 b_1^2 + a_2^2 b_2^2) \) \(− \ (a_1^2 b_1^2 + 2a_1 b_1 a_2 b_2 + a_2^2 b_2^2)\)
\(= a_1^2 b_2^2 − 2a_1 b_1 a_2 b_2 + a_2^2 b_1^2\)
\(= (a_1 b_2 − a_2 b_1)^2\)
よって
\(\begin{align}S &= \displaystyle \frac{1}{2} \sqrt{ |\vec{a}|^2 |\vec{b}|^2 − (\vec{a} \cdot \vec{b})^2 } \\&= \displaystyle \frac{1}{2} \sqrt{(a_1 b_2 − a_2 b_1)^2} \\&= \displaystyle \frac{1}{2} |a_1 b_2 − a_2 b_1| \end{align}\)
したがって、\(\displaystyle S = \frac{1}{2} |a_1 b_2 − a_2 b_1|\) は成り立つ。
(証明終わり)
計算は大変でしたが、無事導けましたね!
証明の中で、根号を外すときに
\begin{align}\sqrt{(a_1 b_2 + a_2 b_1)^2} = |a_1 b_2 + a_2 b_1|\end{align}
と、絶対値がつくことに注意してください。
一般に、\(x\) を実数とするとき、
\begin{align}\sqrt{x^2} = |x|\end{align}
となるのでしたね。
ベクトルによる三角形の面積の計算問題
ベクトルを用いて三角形の面積を求めてみましょう。
計算問題①「大きさと内積から面積を求める」
\(|\overrightarrow{\mathrm{OA}}| = 4\), \(|\overrightarrow{\mathrm{OB}}| = 5\), \(\overrightarrow{\mathrm{OA}} \cdot \overrightarrow{\mathrm{OB}} = 8\) のとき、\(\triangle \mathrm{OAB}\) の面積 \(S\) を求めよ。
ベクトル表示の公式に代入しましょう。
\(\begin{align} S &= \frac{1}{2} \sqrt{|\overrightarrow{\mathrm{OA}}|^2 |\overrightarrow{\mathrm{OB}}|^2 − (\overrightarrow{\mathrm{OA}} \cdot \overrightarrow{\mathrm{OB}})^2} \\ &= \frac{1}{2} \sqrt{4^2 \cdot 5^2 − 8^2} \\ &= \frac{1}{2} \sqrt{400 − 64} \\ &= \frac{1}{2} \sqrt{336} \\ &= \frac{1}{2} \cdot 4\sqrt{21} \\ &= 2\sqrt{21} \end{align}\)
答え: \(2\sqrt{21}\)
計算問題②「原点を頂点にもつ三角形の面積」
座標平面上で、\(3\) 点 \(\mathrm{O}(0, 0)\), \(\mathrm{A}(1, 3)\), \(\mathrm{B}(2, 5)\) を頂点とする三角形の面積を求めよ。
頂点の座標がわかっているときは、成分表示の公式を使います。
頂点の \(1\) つが原点 \(\mathrm{O}\) なので、ここをベクトルの始点としましょう。
\(\vec{a} = \overrightarrow{\mathrm{OA}}\), \(\vec{b} = \overrightarrow{\mathrm{OB}}\) とすると、
\(\vec{a} = (1,3)\), \(\vec{b} = (2,5)\)
したがって、求める面積を \(S\) とすると、
\(\begin{align} S &= \frac{1}{2} |a_1 b_2 − a_2 b_1| \\ &= \frac{1}{2} |1 \cdot 5 − 3 \cdot 2| \\ &= \frac{1}{2} |5 − 6| \\ &= \frac{1}{2} |−1| \\ &= \frac{1}{2} \end{align}\)
答え: \(\displaystyle \frac{1}{2}\)
計算問題③「3 頂点の座標から面積を求める」
座標平面上で、\(3\) 点 \(\mathrm{A}(1, 1)\), \(\mathrm{B}(−2, 3)\), \(\mathrm{C}(3, −3)\) を頂点とする三角形の面積を求めよ。
今度は原点を通らない三角形です。
公式が使えるように、先に始点を決めて \(2\) 辺のベクトルを成分で求めておきます。
ここでは始点を \(A\) とした解答を示します。
\(\begin{align} \overrightarrow{\mathrm{AB}} &= \overrightarrow{\mathrm{OB}} − \overrightarrow{\mathrm{OA}} \\ &= (−2, 3) − (1, 1) \\ &= (−3, 2) \end{align}\)
\(\begin{align} \overrightarrow{\mathrm{AC}} &= \overrightarrow{\mathrm{OC}} − \overrightarrow{\mathrm{OA}} \\ &= (3, −3) − (1, 1) \\ &= (2, −4) \end{align}\)
求める面積を \(S\) とすると、
\(\begin{align} S &= \frac{1}{2} |(−3) \cdot (−4) − 2 \cdot 2| \\ &= \frac{1}{2} |12 − 4| \\ &= \frac{1}{2} \cdot 8 \\ &= 4 \end{align}\)
答え: \(4\)
以上で計算問題も終わりです!
図形問題では、三角形の面積を求める問題は定番中の定番です。
ベクトルを使った求め方にも慣れておきましょう!
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