この記事では、「集合」の意味や問題の解き方をできるだけわかりやすく解説していきます。
集合の表し方、記号の読み方や意味、問題の解き方などを紹介していきますので、この記事を通してぜひマスターしてくださいね。
目次
集合とは?
集合とは、何らかの条件によって明確にグループ分けできる「もの」の集まりのことです。
集合の要素、全体集合と部分集合
集合に含まれる \(1\) つ \(1\) つの「もの」を、その集合の要素と呼びます。「要素」は、それ以上分割できない単位の「もの」です。
集合を考えるときは、まず最初に全体集合を定義します。また、その中に含まれる個々の集合を部分集合と呼びます。
全体集合は、英語で “Universal set” というのでアルファベットの \(U\) で表すことが多く、部分集合は \(A\), \(B\), \(C\), \(\cdots\) など任意のアルファベットで表現します。
例えば、全体集合 \(U\) を「乗り物」とすると、乗用車、トラック、飛行機・・・といった要素が含まれます。
「乗り物」の中でも、乗用車は集合 \(A\)「地上を走る乗り物」、ボートは集合 \(C\)「水上を動く乗り物」というように、個々の要素はそれぞれ部分集合に属しています。
また、飛行機はタイヤで地上も走れるし翼で空も飛べるので、集合 \(A\) と \(B\) の両方に属しています。
このように部分集合同士が重なる場合もあれば、集合 \(D\) 「吊り下がって動く乗り物」のように、独立して存在する場合もあります。
集合の表し方
集合の表し方には、次の \(2\) つの方法があります。
- 要素を \(1\) つ \(1\) つ書き並べる場合
\(\color{red}{A = \{a, b, c, \cdots\}}\) - 要素の満たす条件を示す場合
\(\color{red}{A = \{x \mid \text{条件}\}}\)
また、集合に含まれる要素の個数は次のように表します。
集合 \(A\) に含まれる要素の個数は
\begin{align}\color{red}{n(A)}\end{align}
例えば、\(16\) の正の約数の集合を \(A\) とします。
集合 \(A\) とその要素の個数を表してみましょう。
- 要素を \(1\) つ \(1\) つ書き並べる場合
\(\color{red}{A = \{ 1, 2, 4, 8, 16 \}}\) - 要素の満たす条件を示す場合
\(\color{red}{A = \{x \mid x}\) は \(\color{red}{16}\) の正の約数\(\color{red}{\}}\)
要素の個数は、\(\color{red}{n(A) = 5}\)
これが集合の表し方の基本になるので、しっかり押さえておきましょう!
ベン図の書き方
ベン図とは、複数の集合の関係性を領域図で表したもので、おおまかに次のルールと手順で書くことができます。
集合を考える際は、ベン図に表してみると理解が深まることが多いです。
問題を読んで、自分でベン図を描けるようにしておきましょう。
集合の記号の読み方・意味
ここでは、集合の数学記号の読み方や意味を説明していきます。
よく使われる次の \(6\) つの記号について順番に学んでいきましょう。
要素 ∈
\(a\) が集合 \(A\) の要素であるとき、 記号 \(\in\) を使って「\(\color{red}{a \in A}\)」と表します。
数式 | 日本語での読み方 | 英語での読み方 |
---|---|---|
\(a \in A\) |
|
|
記号 \(\in\) は Element(要素)の “E” のかたちで覚えておくといいですね!
ある要素がある集合に属さない場合は、記号 \(\in\) にスラッシュをつけた \(\notin\) を用いて「\(b \notin A\)」のように表せます。
また、記号の向きを入れ替えて「\(A \ni a\)」のように用いることもできます。
部分集合 ⊂
集合 \(B\) が集合 \(A\) に含まれるとき、「\(B\) は \(A\) の部分集合である」といい、記号 \(\subset\) を使って「\(\color{red}{B \subset A}\)」と表します。
数式 | 日本語での読み方 | 英語での読み方 |
---|---|---|
\(B \subset A\) |
|
|
記号 \(\subset\) の口が開いている側が大きい集合、閉じている側が小さい集合(部分集合)というイメージをもっておきましょう。
「\(B \subset A\)」と書いたとき、厳密には、「\(B\) は \(A\) に含まれるか、\(A\) と完全に一致する」ことを意味します。
この「\(A\) と完全に一致する(等しい)」可能性を強調して「\(B \subseteq A\)」と表すこともあります。
また、先ほどと同様、全体を否定したり、記号の向きを入れ替えたりもできます。
(例)
- 「\(B \not\subset A\)」:\(B\) は \(A\) に含まれない
- 「\(A \supset B\)」:\(A\) は \(B\) を含む(\(B \subset A\) と同じ意味)
共通部分 ∩
集合 \(A\) と集合 \(B\) の両方に属する要素全体の集合を「\(A\) と \(B\) の共通部分」といい、記号 \(\cap\) を使って「\(\color{red}{A \cap B}\)」と表します。
数式 | 日本語での読み方 | 英語での読み方 |
---|---|---|
\(A \cap B\) |
|
|
英単語 cap と紐づけて、帽子の形 \(\cap\) と覚えておくといいですよ。
和集合 ∪
集合 \(A\) と集合 \(B\) のいずれかに属する要素全体の集合を「和集合」といい、記号 \(\cup\) を使って「\(\color{red}{A \cup B}\)」と表します。
数式 | 日本語での読み方 | 英語での読み方 |
---|---|---|
\(A \cup B\) |
|
|
英単語 cup の “u” の形 \(\cup\) と覚えておくと便利です。または、union(合併)の “u” でもいいですね!
空集合 ∅
\(1\) つも要素を持たない集合のことを「空集合」といい、記号 \(\color{red}{\emptyset}\) または \(\{\}\) と表します。
記号 \(\emptyset\) はノルウェー語やデンマーク語に使用されるアルファベットが元となっていて、記号そのものに決まった読み方はないようです。
ちなみに英語では、”empty set” や “null set” などの呼び方が一般的です。
補集合  ̄
全体集合 \(U\) に含まれる要素で、集合 \(A\) に属さない要素全体を「\(A\) の補集合」といい、集合の上に棒記号を付けて「\(\color{red}{\overline{A}}\)」と表します。
数式 | 日本語での読み方 | 英語での読み方 |
---|---|---|
\(\overline{A}\) |
|
|
なお、英語圏では補集合を \(A^c\), \(A’\) などと表すこともあります。
また、補集合には次の重要な性質があります。
全体集合を \(U\) とすると、任意の集合 \(A\), \(B\) について次のことが成り立つ。
- \(A \cap \overline{A} = \emptyset\)
- \(A \cup \overline{A} = U\)
- \(\overline{\overline{A}} = A\)
- \(A \subset B\) ならば \(\overline{A} \supset \overline{B}\)
集合の問題で当たり前に使う性質なので、頭に入れておきましょう。
以上が、集合における \(6\) つの記号でした。
どれも大切なので、何回か読み返してしっかり覚えるようにしましょう!
集合の計算問題
それでは、実際に集合の問題を解いてみましょう。
計算問題①「集合と要素の個数を求める」
全体集合 \(U = \{x \mid x\) は \(1\) から \(30\) までの自然数\(\}\)、部分集合 \(A = \{a \mid a\) は \(2\) の倍数\(\}\)、\(B = \{b \mid b\) は \(5\) の倍数\(\}\) のとき、次の集合とその要素の個数を求めよ。
(1) \(A \cap B\)
(2) \(A \cup B\)
(3) \(\overline{A}\)
(4) \(A \cap \overline{B}\)
集合の考え方に慣れるまでは、実際にベン図を描いてみると理解しやすいです。
(1)
\(A\) と \(B\) の共通部分 \(A \cap B\) は \(10\) の倍数である。
全体集合 \(U\) が \(1\) から \(30\) までの自然数なので、
\(A \cap B = \{10, 20, 30\}\)
\(n(A \cap B) = 3\) である。
答え:
\(A \cap B = \{10, 20, 30\}\)
\(n(A \cap B) = 3\)
(2)
\(A\) と \(B\) の和集合 \(A \cup B\) は \(2\) の倍数または \(5\) の倍数である。
全体集合 \(U\) が \(1\) から \(30\) までの自然数なので、
\(A \cup B\) \(= \{2, 4, 5,\) \(6, 8, 10,\) \(12, 14, 15,\) \(16, 18, 20,\) \(22, 24, 25,\) \(26, 28, 30\}\)
\(n(A \cup B) = 18\)
答え:
\(A \cup B\) \(= \{2, 4, 5,\) \(6, 8, 10,\) \(12, 14, 15,\) \(16, 18, 20,\) \(22, 24, 25,\) \(26, 28, 30\}\)
\(n(A \cup B) = 18\)
(3)
\(A\) の補集合は \(2\) の倍数でない \(30\) 以下の自然数である。
よって、
\(\overline{A}\) \(= \{1, 3, 5,\) \(7, 9, 11,\) \(13, 15, 17,\) \(19, 21, 23,\) \(25, 27, 29\}\)
\(n(\overline{A}) = 15\)
答え:
\(\overline{A}\) \(= \{1, 3, 5,\) \(7, 9, 11,\) \(13, 15, 17,\) \(19, 21, 23,\) \(25, 27, 29\}\)
\(n(\overline{A}) = 15\)
(4)
\(A \cap \overline{B}\) は、 \(2\) の倍数であるが、 \(5\) の倍数ではない要素の集合である。
全体集合が \(1\) から \(30\) までの自然数なので、
\(A \cap \overline{B}\) \(= \{2, 4, 6,\) \(8, 12, 14,\) \(16, 18, 22,\) \(24, 26, 28\}\)
\(n(A \cap \overline{B}) = 12\)
答え:
\(A \cap \overline{B}\) \(= \{2, 4, 6,\) \(8, 12, 14,\) \(16, 18, 22,\) \(24, 26, 28\}\)
\(n(A \cap \overline{B}) = 12\)
以下の記事では、集合の要素の個数に関して成り立つ公式について説明しています。
集合の要素の個数の求め方!補集合や和集合の公式
計算問題②「要素を書き出す」
全体集合 \(U\) が \(1\) ~ \(20\) までの自然数であり、この全体集合の部分集合で、要素が \(3\) の倍数の集合を \(A\)、要素が \(5\) の倍数の集合を \(B\) とするとき、次の集合を要素を書き並べる方法で表せ。
(1) \(\overline{A} \cup \overline{B}\)
(2) \(\overline{A} \cap \overline{B}\)
この問題も、ベン図で状況を把握してみましょう。
各集合と要素をベン図にまとめると次のようになる。
(1)
\(\overline{A} \cup \overline{B}\) を表す範囲は次の色をつけた部分である。
よって、\(\overline{A} \cup \overline{B} = \{1, 2, 3,\) \(4, 5, 6,\) \(7, 8, 9,\) \(10, 11, 12,\) \(13, 14, 16,\) \(17, 18, 19, 20\}\)
答え:
\(\{1, 2, 3,\) \(4, 5, 6,\) \(7, 8, 9,\) \(10, 11, 12,\) \(13, 14, 16,\) \(17, 18, 19, 20\}\)
(2)
\(\overline{A} \cap \overline{B}\) を表す範囲は次の色をつけた部分である。
よって、
\(\overline{A} \cap \overline{B}\) \(= \{1, 2, 4, 7, 8, 11, 13, 14, 16, 17, 19\}\)
答え: \(\{1, 2, 4, 7, 8, 11, 13, 14, 16, 17, 19\}\)
ちなみに、この問題は「ドモルガンの法則」を使うとより簡単に求められます。下記記事「計算問題①」で解説しています!
ドモルガンの法則とは?ベン図や例題でわかりやすく解説!以上で問題も終わりです!
集合は新しく覚えることがたくさんあり、理解するのが少し大変だったかもしれません。
でも大丈夫。
集合をベン図で表して理解したり、問題を解いて考え方に慣れていけば、必ずマスターできるようになりますよ!