この記事では、集合の要素の個数の求め方をできるだけわかりやすく解説していきます。
補集合や和集合の要素の個数を求める公式とその使い方も説明していくので、この記事を通してぜひマスターしてくださいね。
目次
【復習】要素の個数の表し方
集合の要素の個数は、次のように表すことができましたね。
集合 \(A\) に含まれる要素の個数は
\begin{align}\color{red}{n(A)}\end{align}
(例)
\(A = \{1, 3, 5, 7, 9\}\) のとき、\(n(A) = 5\)
補集合の要素の個数【公式】
補集合の要素の個数は、次の公式で表せます。
全体集合を \(U\) とすると、
\begin{align}\color{red}{n(\overline{A}) = n(U) − n(A)}\end{align}
ある集合 \(A\) の補集合 \(\overline{A}\)とは、\(A\) でない要素の集まりのことでしたね。
よって、全体集合 \(U\) の要素の個数から集合 \(A\) の要素の個数を引くことで求めることができます。
例題「\(n(\overline{A})\), \(n(\overline{B})\) の求め方」
次の例題で、補集合の求め方を確認しましょう。
\(U\) を全体集合とし、\(A\)、\(B\) はその部分集合とする。
\(U = \{x \ | \ x\) は \(50\) 以下の自然数\(\}\)、\(n(A) = 13\)、\(B = \{2, 4, 8, 16, 32\}\) であるとき、次の集合の要素の個数を求めよ。
(1) \(n(\overline{A})\)
(2) \(n(\overline{B})\)
全体集合の要素の個数 \(n(U)\) と、注目している集合の要素の個数 \(n(A)\), \(n(B)\) がわかれば、その補集合の要素の個数 \(n(\overline{A})\), \(n(\overline{B})\) が求められます。
自然数は \(1, 2, 3, \cdots\) であることに注意して、まずは \(n(U)\) を求めましょう!
\(U = \{x \ | \ x\) は \(50\) 以下の自然数\(\}\) より、\(n(U) = 50\)
(1)
\(n(A) = 13\) より、
\(\begin{align}n(\overline{A}) &= n(U) − n(A) \\&= 50 − 13 \\&= 37\end{align}\)
(2)
\(B = \{2, 4, 8, 16, 32\}\) より、\(n(B) = 5\)
よって
\(\begin{align}n(\overline{B}) &= n(U) − n(B) \\&= 50 − 5 \\&= 45\end{align}\)
答え: (1) \(n(\overline{A}) = 37\)、(2) \(n(\overline{B}) = 45\)
和集合の要素の個数【公式】
あつかう集合の数に応じて、和集合の要素の個数を求める公式があります。
単純に各集合の要素の個数を足し算すると、共通部分が重複して足し算されます(図で色が濃くなっている部分)。
したがって、各集合の要素の個数を足したものから共通部分の要素の個数を引くことで、和集合の要素の個数が求められます。
ここでは、問題でよく出る \(2\) つの集合、および \(3\) つの集合の和集合の公式をそれぞれ示します。
公式① 2 つの集合の場合
集合 \(A\) と集合 \(B\) の和集合 \(A \cup B\) の要素の個数について、次が成り立つ。
\begin{align}\color{red}{n(A \cup B) = n(A) + n(B) − n(A \cap B)}\end{align}
なお、\(A \cap B = \emptyset\) の場合は
\begin{align}\color{red}{n(A \cup B) = n(A) + n(B)}\end{align}
集合 \(A\) と \(B\) に要素の重複(つまり共通部分 \(A \cap B\))があれば、\(A\) と \(B\) の要素の個数の和からそれを差し引きます。
重複がなければ、単純に \(A\) と \(B\) の要素の個数を足すだけです。
ベン図を描いて理解できれば、わざわざ公式として暗記しなくても大丈夫そうですね。
公式② 3 つの集合の場合
集合 \(A\)、集合 \(B\)、集合 \(C\) の和集合 \(A \cup B \cup C\) の要素の個数について、次が成り立つ。
\begin{align}\color{red}{n(A \cup B \cup C) \ } &\color{red}{= n(A) + n(B) + n(C)} \\& \ \ \ \color{red}{\ − n(A \cap B) − n(B \cap C) − n(C \cap A)}\\& \ \ \ \color{red}{\ + n(A \cap B \cap C)}\end{align}
(見切れる場合は横へスクロール)
\(3\) つの和集合の公式は直感的にわかりにくいので、ベン図で順を追って確認しましょう。
\(3\) つの集合の要素の個数を足すと、\(2\) 回重複して足される部分と、\(3\) 回重複して足される部分があります。
そこでまず、集合 \(2\) つずつの共通部分 \(A \cap B\)、\(B \cap C\)、\(C \cap A\) の要素の個数を引きます。
そうすると \(3\) つの集合の共通部分 \(A \cap B \cap C\) が \(1\) 回余分に引かれてしまうので、最後にその要素の個数 \(n(A \cap B \cap C)\) を加えます。
そうすると、すべての要素の個数を \(1\) 回ずつ数えられることになります。
例題「\(n(A \cup B)\) の求め方」
以下の例題で、公式を使った和集合の要素の個数の求め方を示します。
以下の \(2\) つの集合について、和集合の要素の個数 \(n(A \cup B)\) を求めよ。
\(A = \{1, 2, 3, 4\}\)
\(B = \{3, 4, 5\}\)
公式を書き出し、公式に当てはめる数値を求めていきます。
\(A\), \(B\) の和集合の要素の個数は、以下の式で求められる。
\(n(A \cup B) = n(A) + n(B) − n(A \cap B)\)
\(A = \{1, 2, 3, 4\}\) より \(n(A) = 4\)
\(B = \{3, 4, 5\}\) より \(n(B) = 3\)
\(A \cap B = \{3, 4\}\) より \(n(A \cap B) = 2\) であるから、
\(\begin{align} n(A \cup B) &= n(A) + n(B) − n(A \cap B) \\ &= 4 + 3 − 2 \\ &= 5 \end{align}\)
答え: \(\color{red}{n(A \cup B) = 5}\)
実際に、集合 \(A\) と 集合 \(B\) の和集合は
\(A \cup B = \{1, 2, 3, 4, 5\}\)
ですので、要素の個数 \(n(A \cup B)\) は公式で求めたとおり、\(5\) になりますね。
例題は公式を使うまでもないですが、要素の個数が多いときには公式が必須ですよ!
要素の個数の計算問題
それでは、要素の個数を求める計算問題にチャレンジしましょう。
計算問題①「\(n(\overline{A})\), \(n(\overline{A} \cap B)\) を求める」
\(U\) を全体集合とし、\(A\)、\(B\) はその部分集合とする。
\(n(U) = 100\)、\(n(A) = 33\)、\(n(A \cup \overline{B}) = 71\) であるとき、次の集合の要素の個数を求めよ。
(1) \(n(\overline{A})\)
(2) \(n(\overline{A} \cap B)\)
(1) は補集合の要素の個数の公式で一発ですね。
(2) のような問題では、数や式をこねくりまわすよりも、ベン図を描いてどの部分を求めるのかを整理するほうが簡単ですよ。
(1)
\(\begin{align}n(\overline{A}) &= n(U) − n(A) \\&= 100 − 33 \\&= 67\end{align}\)
答え: \(n(\overline{A}) = 67\)
(2)
\(A \cup \overline{B}\) および \(\overline{A} \cap B\) を図示すると以下のようになる。
よって、
\(\begin{align}n(\overline{A} \cap B) &= n(U) − n(A \cup \overline{B}) \\&= 100 − 71 \\&= 29\end{align}\)
答え: \(n(\overline{A} \cap B) = 29\)
計算問題②「3 または 7 で割り切れる整数」
\(1\) から \(1000\) までの整数のうち、\(3\) または \(7\) で割り切れるものはいくつあるか。
\(3\) または \(7\) で割り切れる、つまり、\(3\) の倍数の集合と \(7\) の倍数の集合の和集合を求める問題です。
全体集合が大きいので、すべての要素を数え上げるのは大変です。倍数の個数は、割り算の商に注目して求めることができます。
\(U = \{x \mid 1\) から \(1000\) までの整数\(\}\)
\(A = \{x \mid 3\) の倍数\(\}\)
\(B = \{x \mid 7\) の倍数\(\}\)
とすると、
\(A \cap B = \{x \mid 21\) の倍数\(\}\)
\(A \cup B = \{x \mid 3\) の倍数または \(7\) の倍数\(\}\)
である。
\(1000 \div 3 = 333\) 余り \(1\) より、
\(1\) から \(1000\) までの整数に含まれる \(3\) の倍数は
\(3, 6, 9, \cdots, 999\)
つまり \(3 \cdot 1, \ 3 \cdot 2, \ 3 \cdot 3, \ \cdots, \ 3 \cdot 333\)
よって \(n(A) = 333\)
同様に考えて、
\(1000 \div 7 = 142\) 余り \(6\) より、\(n(B) = 142\)
\(1000 \div 21 = 47\) 余り \(13\) より、\(n(A \cap B) = 47\)
したがって、\(A\) と \(B\) の和集合の要素の個数は
\(\begin{align} n(A \cup B) &= n(A) + n(B) − n(A ∩ B) \\&= 333 + 142 − 47 \\ &= 428 \end{align}\)
したがって、\(3\) または \(7\) で割り切れる集合の要素の個数は \(428\) 個
答え: \(428\) 個
計算問題③「3、4、5の倍数の共通部分と和集合」
\(100\) 以下の自然数のうち、\(3\) の倍数の集合を \(A\)、\(4\) の倍数の集合を \(B\)、\(5\) の倍数の集合を \(C\) とする。
このとき、\(n(A \cap B \cap C)\) および \(n(A \cup B \cup C)\) をそれぞれ求めよ。
\(3\) つの集合の共通部分および和集合の要素の個数ですね。
共通部分については、\(A \cap B\) ならば \(3\) も \(4\) も倍数にもつから \(12\) の倍数、\(A \cap B \cap C\) ならば \(3\) も \(4\) も \(5\) も倍数にもつから \(60\) の倍数と、論理的に考えることができます。
和集合の要素の個数については、公式を使って導きましょう!
\(U = \{x \mid 1\) から \(100\) までの整数\(\}\), \(A = \{x \mid 3\) の倍数\(\}\), \(B = \{x \mid 4\) の倍数\(\}\), \(C = \{x \mid 5\) の倍数\(\}\) について、
\(100 \div 3 = 33\) 余り \(1\) より、\(n(A) = 33\)
\(100 \div 4 = 25\) より、\(n(B) = 25\)
\(100 \div 5 = 20\) より、\(n(C) = 20\)
また、
\(A \cap B = \{x \mid 12\) の倍数\(\}\), \(B \cap C = \{x \mid 20\) の倍数\(\}\), \(C \cap A = \{x \mid 15\) の倍数\(\}\), \(A \cap B \cap C = \{x \mid 60\) の倍数\(\}\) であるから、
\(100 \div 12 = 8\) 余り \(4\) より、\(n(A \cap B) = 8\)
\(100 \div 20 = 5\) より、\(n(B \cap C) = 5\)
\(100 \div 15 = 6\) 余り \(10\) より、\(n(C \cap A) = 6\)
\(100 \div 60 = 1\) 余り \(40\) より、\(n(A \cap B \cap C) = 1\)
よって、
\(\begin{align}n(A \cup B \cup C) &= n(A) + n(B) + n(C) − n(A \cap B) − n(B \cap C) − n(C \cap A) + n(A \cap B \cap C) \\&= 33 + 25 + 20 − 8 − 5 − 6 + 1 \\&= 60\end{align}\)
(見切れる場合は横へスクロール)
答え: \(n(A \cap B \cap C) = 1\)、\(n(A \cup B \cup C) = 60\)
以上で問題も終わりです!
集合の要素の個数を求める際は、公式を活用するのはもちろんのこと、ベン図などを用いて求める部分を具体的にイメージするのが大切です。
頭の中でもんもんと考え込まず、手を動かして状況を整理してみてくださいね!