この記事では、「反復試行の確率」と「独立な試行の確率」についてできるだけわかりやすく解説していきます。
公式や計算方法を紹介していくので、この記事を通してしっかりマスターしてくださいね!
目次
反復試行の確率とは?【公式】
反復試行の確率とは、独立な試行を繰り返すときの確率のことです。
つまり、同じ試行を何度も繰り返すときの確率です。
\(1\) 回の試行で事象 \(\mathrm{A}\) が起こる確率を \(p\) としたとき、この試行を \(n\) 回行う反復試行の確率で、事象 \(\mathrm{A}\) がちょうど \(r\) 回起こる確率は
\begin{align}\color{red}{{}_n \mathrm{C}_r \times p^r \times (1 − p)^{n − r}}\end{align}
事象 \(\mathrm{A}\) が起こるのは \(n\) 回の試行のうち何回目でもよいので、\(n\) 回から任意の \(r\) 回を選ぶ場合の数、\({}_n \mathrm{C}_r\) 通りになります。
また、「\(n\) 回の試行で事象 \(\mathrm{A}\) が \(r\) 回起こる」=「\((n − r)\) 回は事象 \(\mathrm{A}\) が起こらない(事象 \(\mathrm{A}\) 以外の事象が起こる)」ということになります。
そのため、事象 \(\mathrm{A}\) が起こる確率 \(p\) を \(r\) 回、事象 \(\mathrm{A}\) が起こらない確率 \((1 − p)\) を \((n − r)\) 回、合わせて \(n\) 回分の試行の確率をかけ算します。
公式の成り立ちはこの通りです。
ただ単に公式を暗記するのではなく、意味をきちんと理解するようにしましょう!
さて、反復試行の確率では「独立な試行」であることが前提となっています。
では、「独立な試行」とは一体何なのでしょうか。
独立な試行の確率とは?【公式】
独立な試行とは、それぞれの結果がお互いに影響を与えない試行同士のことです。
前の試行の結果が次の試行に全く影響を与えない場合に、その試行は独立であるといえます。
\(2\) つの試行 \(\mathrm{X}\)、\(\mathrm{Y}\) は独立とする。
このとき、試行 \(\mathrm{X}\) で事象 \(\mathrm{A}\) が起こり、試行 \(\mathrm{Y}\) で事象 \(\mathrm{B}\) が起こる確率は次のように表される。
\begin{align}\color{red}{P(\mathrm{A}) \times P(\mathrm{B})}\end{align}
試行が独立ならば、それぞれの確率を単純にかけ算すればよいということですね。
独立な試行の確率の公式は、反復試行の確率の公式の前提となっています。
だから、反復試行の確率の公式では試行の回数分の確率をかけているんですね。
独立試行と独立でない試行の見分け方
独立試行と独立でない試行を見分けるコツは、次の通りです。
- ある試行がほかの試行に何ら影響を与えない
→「独立な試行」 - 前の試行によって、次の試行の状況が変化する
→「独立でない試行」
簡単な例題を見てみましょう。
独立な試行の例
赤玉が \(3\) 個、白玉が \(3\) 個入った箱から玉を \(1\) 個取り出し、玉の色を見て箱に戻す。
この試行を \(3\) 回繰り返すとき、\(3\) 回とも赤玉が出る確率を求めよ。
玉を取り出すたびに箱へ戻すので、箱の中の状況は何回目の試行でも同じままです。
よって、この問題は「独立試行の確率」です。
\(1\) 回の試行で赤玉を取り出す確率は \(\displaystyle \frac{3}{6} = \displaystyle \frac{1}{2}\) であるから、
求める確率は
\({}_3 \mathrm{C}_3 \cdot \left(\displaystyle \frac{1}{2}\right)^3 \cdot \left(\displaystyle \frac{1}{2}\right)^0 = \displaystyle \frac{1}{8}\)
答え: \(\color{red}{\displaystyle \frac{1}{8}}\)
典型的な独立試行には、「サイコロを何回か振る」、「じゃんけんを何回かする」など、試行の性質としてもともと独立性をもつものが多いです。
サイコロを \(1\) 回振って \(1\) の目が出たからといって、次に振ったときに特定の目が出にくくなることはないですよね。
また、(ズルをしていない限り)じゃんけんで勝ったり負けたりする確率は皆平等です。
独立でない試行の例
赤玉が \(3\) 個、白玉が \(3\) 個入った箱から玉を \(1\) 個取り出す。
この試行を \(3\) 回繰り返すとき、\(3\) 回とも赤玉が出る確率を求めよ。
ただし、取り出した玉は箱の中に戻さないものとする。
取り出した玉を箱に戻さないので、箱の中の玉は試行を重ねるごとに減っていきます。
そうすると、「赤玉が出る」という事象の確率は、前の試行の影響を受けて毎回異なってきますね。
したがって、この問題は「独立ではない試行の確率」です。
各試行ごとに、袋の中の玉の総数と赤玉の数を考えて確率を求めます。
\(3\) 回とも赤玉が出る場合、
袋の中の玉の総数:\(6\) → \(5\) → \(4\)
袋の中の赤玉の数:\(3\) → \(2\) → \(1\)
と変化するから、求める確率は
\(\displaystyle \frac{3}{6} \cdot \frac{2}{5} \cdot \frac{1}{4} = \frac{1}{20}\)
答え: \(\color{red}{\displaystyle \frac{1}{20}}\)
玉、カード、くじなどの問題では、取り出したものを「戻す」場合は独立試行、「戻さない」場合は独立でない試行と判断できます。
問題文をよく読んで、独立か・そうでないかを特定するキーワードを探しましょう!
独立試行・反復試行の練習問題
最後に、独立試行・反復試行の練習問題に挑戦しましょう。
練習問題①「サイコロの 3 の目が 2 回出る確率」
\(1\) 個のサイコロを \(4\) 回振るとき、\(3\) の目がちょうど \(2\) 回出る確率を求めよ。
サイコロを振る試行は「独立な試行の繰り返し」なので、反復試行の確率です。
\(4\) 回のうち \(2\) 回 \(3\) の目が出る場合の数は
\({}_4 \mathrm{C}_2\) 通り
\(1\) 回の試行で \(3\) の目が出る確率は \(\displaystyle \frac{1}{6}\)、
\(3\) 以外の目が出る確率は \(\displaystyle \frac{5}{6}\) であるから、
求める確率は
\({}_4 \mathrm{C}_2 \times \left(\displaystyle \frac{1}{6}\right)^2 \times \left(\displaystyle \frac{5}{6}\right)^2\)
\(= \displaystyle \frac{4 \cdot 3}{2 \cdot 1} \times \displaystyle \frac{1}{36} \times \displaystyle \frac{25}{36}\)
\(= 6 \times \displaystyle \frac{1}{36} \times \displaystyle \frac{25}{36}\)
\(= \displaystyle \frac{25}{216}\)
答え: \(\displaystyle \frac{25}{216}\)
練習問題②「コインの表が 4 回以上出る確率」
表裏が出る確率が等しいコインを \(5\) 回投げるとき、表が \(4\) 回以上出る確率を求めよ。
コインを \(5\) 回投げる試行はそれぞれ独立な試行の繰り返しなので、反復試行の確率です。
求めたい確率は表が \(4\) 回「以上」出る確率なので、場合分けがあることに注意しましょう。
コインを \(1\) 回投げて表、裏が出る確率はそれぞれ \(\displaystyle \frac{1}{2}\)。
表が \(5\) 回中 \(4\) 回出る確率は
\({}_5 \mathrm{C}_4 \times \left(\displaystyle \frac{1}{2}\right)^4 \times \left(\displaystyle \frac{1}{2}\right)\)
\(= {}_5 \mathrm{C}_1 \times \left(\displaystyle \frac{1}{2}\right)^5\)
\(= 5 \times \displaystyle \frac{1}{32}\)
\(= \displaystyle \frac{5}{32}\)
表が \(5\) 回中 \(5\) 回出る確率は
\({}_5 \mathrm{C}_5 × \left(\displaystyle \frac{1}{2}\right)^5\)
\(= 1 \times \displaystyle \frac{1}{32}\)
\(= \displaystyle \frac{1}{32}\)
よって求める確率は
\(\displaystyle \frac{5}{32} + \displaystyle \frac{1}{32} = \displaystyle \frac{6}{32} = \displaystyle \frac{3}{16}\)
答え: \(\displaystyle \frac{3}{16}\)
場合分けして求めた各確率は、「和の法則」で足し算できます。
積の法則・和の法則とは?違いや問題の解き方をわかりやすく解説以上で練習問題は終了です!
独立試行・反復試行の確率は、これまで学んできた確率の知識があれば難しくないと思います。
さまざまな問題を解いて、独立試行なのかどうか、反復試行なのかどうかを見分けられるようになりましょう!