この記事では、「実数」の定義や記号をできるだけわかりやすく解説していきます。
また、実数の計算規則や虚数との関係なども紹介していきますので、この記事を通してぜひマスターしてくださいね。
目次
実数とは?
実数とは、数直線上に表せる数のことです。
正負を問わず、整数、分数、小数、平方根など、すべて数直線上に書くことができますね。
たまに、\(0\) は実数だったけ…と悩むことがありますが、しっかり数直線上に乗せることができるので、\(\bf{0}\) も立派な実数です!
では、具体的な実数の定義とはなんなのでしょうか。
実数の定義
実数をなすのは、ずばり有理数と無理数です。
実数とは、有理数と無理数を合わせた数全体である。
- 有理数
整数のわり算、つまり分数で表すことのできる実数。
整数 \(a,b\) \((b \neq 0)\) を用いて \(\color{red}{\displaystyle \frac{a}{b}}\) と表せる。 - 無理数
整数の分数で表すことのできない実数。
実数の分類
ここで、実数に分類される数の名称を整理してみましょう。
実数の中にも、数の性質ごとにいろいろなまとまりがあるのですね。
問題文の中でもこれらの名称がよく出てくるので、それぞれの意味と具体的な数の例をセットで押さえておきましょう!
実数ではない数(虚数)とは?
ここまで実数の例を見てきましたが、反対に、実数ではない数とは一体何でしょうか。
実数には、「\(2\) 乗すると正の数になる」という特徴があります。
この特徴を満たさない数、つまり、「\(2\) 乗すると負の数になる数」が実数ではない数です。
このような数を「虚数」と呼びます。
虚数とは、\(2\) 乗すると \(− 1\) になる虚数単位 \(i\) を含む数のことである。
\(i^2 = − 1\) または \(i = \sqrt{− 1}\)
虚数を含む数体系「複素数」
もともと、数の概念は実数だけでした。
しかし、より複雑な数学的事象を扱うために、実数を超える概念を生み出す必要がありました。
そこで、実数と虚数を合わせた「複素数」という数体系が考えられたのです。
実数 \(a, b\) と虚数単位 \(i\) を用いて「\(a + bi\)」の形で表せる数全体のこと。
複素数や \(i\) という概念は、実数ではない数を表現するために定義されたものです。
高校数学の範囲では、問題文で特に明記されない限りは実数だけを扱うと思って大丈夫です。
ちなみに、複素数で扱えるよりもっと複雑な事象を扱うために、数の次元をさらに拡張した数体系も存在します(四元数、八元数など)。
とはいえ、高校で習うのは複素数までです。
四元数などに深入りする必要はないので、数の概念って奥深いんだな〜程度に考えていてください!
数の分類を表す記号
実数には、整数、自然数など、いろいろなものが含まれていましたね。
それら特定の数の集合は、アルファベット \(1\) 文字の記号で表すことができます。
記号による表記方法を知っておくと、答案の記述を次のように省略することができます。
記述例 | 記号での表記 |
---|---|
\(n\) と \(m\) は整数である | \(n, m \in \mathbb{Z}\) |
自然数 \(k\) を用いて | \(k \ (k \in \mathbb{N})\) を用いて |
\(l\) は有理数である | \(l \in \mathbb{Q}\) |
答案での記述のしかたは個人の好みにもよるので、無理に記号を使う必要はありません。
数学の参考書などに出てくることがあるので、そういう表記方法もあるんだな〜くらいに捉えておきましょう!
実数の四則計算
数学の問題を解いていく中で、しばしば「\(k, l\) を自然数とする」など、数の範囲を制限して考えることがあります。
その際、それらの数を四則計算した結果もその数の範囲に収まるかを把握していないと、思いがけず誤った計算をしてしまうことがあります。
ここでは、様々な数の範囲における四則計算の自由度を見ていきましょう。
自然数同士の計算
自然数(正の整数)の範囲では、足し算とかけ算は自由にできますが、引き算や割り算をすると答えが自然数の範囲から出てしまうことがあります。
(例)
- \(6 + 8\)(答え \(14\) も自然数)
- \(2 − 4\) (答え \(− 2\) は整数)
- \(9 \times 5\)(答え \(45\) も自然数)
- \(3 \div 7\) (答え \(\displaystyle \frac{3}{7}\) は有理数)
整数同士の計算
整数まで範囲を広げると、足し算、引き算、かけ算が自由にできます。
割り算をすると、自然数同様、答えが有理数の範囲に広がってしまいますね。
(例)
- \(6 + (− 8)\)(答え \(− 2\) も整数)
- \(2 − 4\) (答え \(− 2\) も整数)
- \(9 \times 5\)(答え \(45\) も整数)
- \(− 3 \div 7\) (答え \(− \displaystyle \frac{3}{7}\) は有理数)
有理数同士の計算
数の範囲を有理数まで広げると、割り算も含めて自由に四則計算できます。
(例)
- \(\displaystyle \frac{6}{7} + \left(− \displaystyle \frac{2}{3}\right)\)(答え \(\displaystyle \frac{4}{21}\) も有理数)
- \(\displaystyle \frac{3}{4} − \left(− \displaystyle \frac{1}{4}\right)\) (答え \(1\) も有理数)
- \(\displaystyle \frac{55}{2} \times \displaystyle \frac{3}{5}\)(答え \(\displaystyle \frac{33}{2}\) も有理数)
- \(− \displaystyle \frac{9}{4} \div 7\) (答え \(− \displaystyle \frac{9}{28}\) も有理数)
実数同士の計算
最後に、有理数と無理数を含めた実数の範囲で考えると、四則演算は自由にできます。
(例)
- \(\displaystyle \frac{6}{7} + \pi\)(答え \(\displaystyle \frac{6}{7} + \pi\) も実数)
- \(\sqrt{2} − 3\sqrt{2}\) (答え \(− 2\sqrt{2}\) も実数)
- \(− 3.2 \times 0.1\)(答え \(− 0.32\) も実数)
- \(\displaystyle \frac{\sqrt{5}}{2} \div 7\) (答え \(\displaystyle \frac{\sqrt{5}}{14}\) も実数)
このように、数の範囲が広がるにしたがって、四則計算の自由度が高まっていくんですね。
無理数同士の計算
ちなみに、無理数の範囲では四則計算のどれであっても答えの範囲は実数に広がります。
注意しておきましょう。
(例)
- \(− \pi + \pi\)(答え \(0\) は実数)
- \(\sqrt{6} − \sqrt{6}\)(答え \(0\) は実数)
- \(− \sqrt{2} × \sqrt{2}\)(答え \(− 2\) は実数)
- \(\displaystyle \frac{\sqrt{5}}{2} ÷ \sqrt{5}\) (答え \(\displaystyle \frac{1}{2}\) は実数)
実数の練習問題
最後に、練習問題を解いて、実数のイメージを固めていきましょう。
練習問題「整数、有限小数、無限小数、無理数に分類」
以下の数字について、問いに答えなさい。
\(− 6\)、\(\sqrt{7}\)、\(\displaystyle \frac{4}{3}\)、\(\pi\)、\(2i\)、\(0.134\)、\(\displaystyle \frac{11}{2}\)、\(0\)、\(\sqrt{−13}\)
(1) 実数、虚数に分類せよ。
(2) 実数を整数、有限小数、無限小数、無理数に分類せよ。
虚数とは、\(2\) 乗すると負の数になる虚数単位 \(i\) を含む数でしたね。
また、実数はさらに細かい数の単位に分類できました。
それぞれの数値を分数に直せるか、小数に直すと無限に続くかどうか、\(1\) つずつ確認していきましょう。
無限小数には有理数のものと無理数のもの、どちらも存在することに注意しましょう!
(1)
\(2i\)、\(\sqrt{−13}\) は、虚数単位 \(i\) を含むため、虚数である。
\(\begin{align}\sqrt{−13} &= \sqrt{13 \times (− 1)} \\&= \sqrt{13} \times \sqrt{− 1} \\&= \sqrt{13}i\end{align}\)
答え:
実数 \(− 6\)、\(\sqrt{7}\)、\(\displaystyle \frac{4}{3}\)、\(\pi\)、\(0.134\)、\(\displaystyle \frac{11}{2}\)、\(0\)
虚数 \(2i\)、\(\sqrt{−13}\)
(2)
実数(\(2i, \sqrt{−13}\) 以外)を「整数 ÷ 整数」の分数に変形できるか確認する。
- \(− 6 = − \displaystyle \frac{6}{1}\) (◯)
- \(\sqrt{7} = 2.6457513 \cdots\) (×)
- \(\displaystyle \frac{4}{3}\) (◯)
- \(\pi = 3.141592 \cdots\) (×)
- \(0.134 = \displaystyle \frac{134}{1000}\) (◯)
- \(\displaystyle \frac{11}{2}\) (◯)
- \(0 = \displaystyle \frac{0}{1}\) (◯)
したがって、\(\sqrt{7}\) と \(\pi\) は無理数である。
実数(\(2i, \sqrt{−13}\) 以外)を整数または小数に変形し、有限小数か無限小数かを確認する。
- \(− 6\)(整数)
- \(\sqrt{7} = 2.6457513\)… (無限小数)
- \(\displaystyle \frac{4}{3} = 1.333333\)…(無限小数)
- \(\pi = 3.141592\)…(無限小数)
- \(0.134\)(有限小数)
- \(\displaystyle \frac{11}{2} = 5.5\) (有限小数)
- \(0\) (整数)
したがって、
\(− 6\) と \(0\) は整数、
\(0.134\) と \(\displaystyle \frac{11}{2}\) は有限小数、
\(\sqrt{7}\)、\(\displaystyle \frac{4}{3}\)、\(\pi\) は無限小数である。
答え:
- 整数… \(− 6\)、\(0\)
- 有限小数… \(0.134\)、\(\displaystyle \frac{11}{2}\)
- 無限小数… \(\sqrt{7}\)、\(\displaystyle \frac{4}{3}\)、\(\pi\)
- 無理数… \(\sqrt{7}\)、\(\pi\)
以上で、すべての解説は終わりです!
実数は数値計算の基本となるので、正確に理解しておくことが大切です。
定期的に復習して、理解を深めておきましょう!