この記事では、「連立不等式」の解き方をできるだけわかりやすく解説していきます。
数直線の書き方から、文章題や絶対値・領域などの応用問題の解き方も紹介していきますので、この記事を通してぜひマスターしてくださいね。
目次
連立不等式とは?
連立不等式とは、その名のとおり連立した不等式、つまり、\(2\) つ以上の不等式のことです。
不等式の解は、範囲で示すことができましたね。
連立されたそれぞれの不等式に、それぞれの解の範囲があります。
連立不等式を解くときは、それぞれの解の範囲をまとめ、共通する部分を求めます。
【準備】数直線の書き方
連立不等式を解くにあたって、数直線の書き方を簡単に説明しておきます。
数直線では、範囲の端の値を含むか含まないかで、図示のしかたが異なります。
- 端の値を範囲に含む場合(\(\leq\)、\(\geq\))
値に黒丸を打ち、範囲の線は直角に書く - 端の値を範囲に含まない場合(\(<\)、\(>\))
値に白丸を打ち、範囲の線は斜めに書く
これによって、端の値を範囲に含むかどうかが視覚的にとてもわかりやすくなります。
自分で数直線を書いてみるときも、このルールを守るとケアレスミスを減らすことができておすすめです!
例題「数直線で範囲を示す」
試しに、例題で練習してみましょう。
\(−3 < x \leq 3\) の範囲を数直線で示しなさい。
\(x\) の範囲に、\(−3\) は含まれず、\(3\) は含まれる、ということですね。
丸の種類や範囲の線の書き方に注意して書いてみましょう。
このようになりますね!
連立不等式の解き方
それでは、次の例題を用いて連立不等式の解き方をステップごとに説明していきます。
次の連立不等式を解け。
\(\left\{\begin{array}{l}3x + 1 < 16\\− 2x + 5 \leq 13\end{array}\right.\)
まずは、左辺か右辺が \(x\) だけになるように、各不等式を整理します。
\(3x + 1 < 16\) より、
\(3x < 15\)
\(x < 5\) …①
\(−2x + 5 \leq 13\) より、
\(−2x \leq 8\)
\(x \geq −4\) …②
次に、数直線上にそれぞれの範囲を図示します。
① \(x < 5\) は、次のようになりますね。
ここに② \(x \geq −4\) の範囲も重ねて書いてみましょう。
これで、\(2\) つの不等式の範囲を数直線上に表せました。
連立不等式の解は、連立しているすべての不等式の範囲が重なる部分です。
数直線上で①と②が重なる部分に色をつけてみましょう。
この共通範囲が、この連立不等式の解になります。
よって、例題の答えは \(\color{red}{− 4 \leq x < 5}\) です。
いかがでしたか?
不等式の次数が増えたり、連立する式の数が増えたりしても基本的な解き方は同じです。
不等号の向きを間違えないこと、数直線を正しく書くことを意識すれば、必ず答えが出せますよ!
連立不等式の計算問題
それでは、さっそく基本的な連立不等式の問題を解いてみましょう。
計算問題①「連立一次不等式」
次の連立不等式を解きなさい。
\(\left\{\begin{array}{l}− 2x − 4 \leq 3x + 1\\9(x + 2) < 4 + 2x\end{array}\right.\)
あせらず、それぞれの不等式を \(x\) について整理しましょう。
\(−2x − 4 \leq 3x + 1\) より、
\(−4 − 1 \leq 3x + 2x\)
\(− 5 \leq 5x\)
\(−1 \leq x\) …①
\(9(x + 2) < 4 + 2x\) より、
\(9x + 18 < 4 + 2x\)
\(9x − 2x < 4 − 18\)
\(7x < −14\)
\(x < −2\) …②
数直線上に範囲を示すと、次のようになる。
①、②が重なり合う範囲はない。
答え: 解なし
計算問題②「3 つの式がつながった不等式」
次の不等式を解きなさい。
\(3 − x < 5x \leq 10\)
一見普通の不等式に見えますが、不等号が \(2\) つ含まれているので実は連立不等式です。
式の前半と後半で \(2\) つの不等式に分けて、連立不等式を解きましょう。
与式より、
\(\left\{\begin{array}{l}3 − x < 5x …①\\5x \leq 10 …②\end{array}\right.\)
①より、
\(3 < 5x + x\)
\(3 < 6x\)
\(\displaystyle \frac{1}{2} < x\)
②より、
\(x \leq 2\)
数直線上に①、②の範囲を示すと、次のようになる。
よって、①、②の共通範囲は \(\displaystyle \frac{1}{2} < x \leq 2\)
答え: \(\displaystyle \frac{1}{2} < x \leq 2\)
計算問題③「連立二次不等式」
次の連立不等式を解きなさい。
\(\left\{\begin{array}{l}2x^2 − 7x − 3 < 0\\− x^2 + 6x − 5 \geq 0\end{array}\right.\)
二次不等式でも、解き方は同じです。
二次不等式自体の範囲の計算もあるので、間違わないよう慎重に求めましょう。
\(2x^2 − 7x − 3 < 0\) の左辺を因数分解して、
\((2x − 1)(x − 3) < 0\)
\(\displaystyle \frac{1}{2} < x < 3\) …①
\(−x^2 + 6x − 5 \geq 0\) より
\(x^2 − 6x + 5 \leq 0\)
左辺を因数分解して、
\((x − 1)(x − 5) \leq 0\)
\(1 \leq x \leq 5\) …②
①、②の共通範囲は \(1 \leq x < 3\)
答え: \(1 \leq x < 3\)
連立不等式の応用問題
最後に、少し難易度の高い \(3\) 問を解いてみましょう!
応用問題①「絶対値を含む不等式」
次の連立不等式を解きなさい。
\(\left\{\begin{array}{l}|x + 2| < 6\\3x − 1 \leq 2\end{array}\right.\)
不等式に絶対値があるので、まずは絶対値を外す必要がありますね。
そのために、絶対値の中身が正か負かで場合分けしましょう。
\(\left\{\begin{array}{l}|x + 2| < 6 …①\\3x − 1 \leq 2 …②\end{array}\right.\)
とおく。
①について、
(i) \(x + 2 \geq 0\) すなわち \(x \geq −2\) のとき
\(x + 2 < 6\)
\(x < 4\)
\(x \geq −2\) であるから
\(−2 \leq x < 4\)
(ii) \(x + 2 < 0\) すなわち \(x < −2\) のとき
\(−(x + 2) < 6\)
\(−x − 2 < 6\)
\(−x < 8\)
\(x > −8\)
\(x < −2\) であるから
\(−8 < x < −2\)
(i)、(ii)より、①を満たす \(x\) の範囲は \(−8 < x < 4\)
②より、
\(3x \leq 3\)
\(x \leq 1\)
①、②それぞれの範囲を数直線上に示すと、次のようになる。
よって、共通範囲は、\(− 8 < x \leq 1\)
答え: \(− 8 < x \leq 1\)
応用問題②「食塩水の文章問題」
\(10\ \text{%}\) の食塩水を \(500 \ \mathrm{g}\) の水に溶かし、食塩濃度 \(1\ \text{%}\) 以上 \(5\ \text{%}\) 以下の食塩水を作りたい。
このとき、\(10\ \text{%}\) の食塩水は何 \(\mathrm{g}\) 必要か、求めよ。
なお、重さ \((\mathrm{g})\) を小数点以下第 \(1\) 位まで計れる器具を使用して作る。
食塩水の濃度の問題です。
\(\displaystyle \text{食塩水の濃度 (%)} = \frac{\text{食塩の重さ}}{\text{食塩水の重さ}} \times 100\)
を思い出しましょう。
文章題で「以上」や「以下」と書かれた場合は、\(=\) を含む不等号(\(\leq\)、\(\geq\))になります。
一方、「より濃い」や「より薄い」などとあれば、\(=\) を含まない不等号(\(<\)、\(>\))になります。
\(10\ \text{%}\) の食塩水 \(x\ \mathrm{g}\) に含まれている食塩の重さは、
\(\displaystyle x \times \frac{10}{100} = \frac{x}{10} \ \mathrm{g}\)
水 \(500 \ \mathrm{g}\) と \(10\ \text{%}\) の食塩水 \(x\ \mathrm{g}\) を混ぜてできあがる食塩水の濃度は、
\(\begin{align}\displaystyle \frac{\text{食塩の重さ}}{\text{食塩水の重さ}} \times 100 &= \frac{\frac{x}{10}}{500 + x} \times 100 \\&= \frac{10x}{500 + x} \ \text{(%)}\end{align}\)
これが \(1\ \text{%}\) 以上 \(5\ \text{%}\) 以下となるには、以下の連立不等式を解けばよい。
\(\left\{\begin{array}{l}\displaystyle \frac{10x}{500 + x} \geq 1 …①\\\displaystyle \frac{10x}{500 + x} \leq 5 …②\end{array}\right.\)
①より、
\(10x \geq 500 + x\)
\(9x \geq 500\)
\(x \geq \displaystyle \frac{500}{9} ≒ 55.5555…\)
②より、
\(10x \leq 5(500 + x)\)
\(10x \leq 2500 + 5x\)
\(5x \leq 2500\)
\(x \leq 500\)
それぞれの範囲を数直線上に示すと、次のようになる。
小数点以下第 \(1\) 位まで計れる器具を使用するため、左の端は \(55.6\) からとなる。
重なり合う範囲は、\(55.6 \leq x \leq 500\)
答え: \(10 \, \text{%}\) の食塩水は、\(55.6 \, \mathrm{g}\) 以上 \(500 \, \mathrm{g}\) 以下必要である。
応用問題③「連立不等式の表す領域」
次の連立不等式のあらわす領域を図示しなさい。
\(\left\{\begin{array}{l}x + y > − 2\\3x − y > 1\end{array}\right.\)
\(x\) と \(y\) の \(2\) つの変数があるので、 今回は数直線ではなく、\(xy\)平面に図示します。
一次関数の「\(y = ax + b\)」のように、左辺が \(y\) だけになるように直してみましょう。
\(y > ax + b\) のときは、\(y = ax + b\) の直線より \(y\) が大きくなるということなので、その範囲は直線より上の部分です。
\(y < ax + b\) のときはその逆で、直線より下の部分が範囲となります。
\(x + y > −2\) より、
\(y > −x − 2\) …①
直線 \(y = −x − 2\) は、傾き \(−1\)、切片 \(−2\) の直線である。
\(3x − y > 1\) より、
\(−y > −3x + 1\)
\(y < 3x − 1\) …②
直線 \(y = 3x − 1\) は、傾き \(3\)、切片 \(−1\) の直線である。
よって、①、②を満たすのは、以下の領域である。なお、境界線は含まない。
答え:
(境界線は含まない)
以上で、すべての問題は終わりです!
連立された不等式の各範囲が重なり合う部分を取り出すというイメージはつかめたでしょうか。
連立不等式は別の単元との複合問題も多いので、しっかりマスターしておきましょう!