一次不等式とは?解き方や応用問題(文章題、絶対値や分数)

この記事では「一次不等式」について、式変形による解き方、またグラフを用いた解き方をできるだけわかりやすく解説していきます。

また、応用問題として、文章題などの難問にも挑戦しますので、この記事を通してぜひマスターしてくださいね。

 

一次不等式とは?

一次不等式とは、不等式のうち、変数の次数が \(1\) 次(\(1\) 乗)の不等式です。

例えば、「\(x + 1 > 0\)」のような不等式です。

不等式

左辺と右辺が \(<, >, \leq, \geq\) などの不等号で結ばれた、大小関係を示す式。

不等式に含まれる変数(\(x\) など)の値の範囲を求めることを「不等式を解く」という。

 

不等式の性質

一次不等式を解くにあたって、不等式の性質を知っておく必要があります。

不等式には、次の \(3\) つの性質があります。

【性質①】和と差

等式を解くとき「移行」を行いますが、不等式でも同様に行うことができます。

不等式の性質①

両辺に同じ数を足しても引いても、不等号の向きは変わらない。

 

\(a \color{red}{<} b\) のとき、

\begin{align}a \color{orange}{+ c} \color{red}{<} b \color{orange}{+ c}\end{align}

\begin{align}a \color{orange}{− c} \color{red}{<} b \color{orange}{− c}\end{align}

(例)

 

\(x + 1 > 0\) の左辺を \(x\) だけにするには、両辺に \(− 1\) を足して

\(x + 1 \color{orange}{ − 1} > 0 \color{orange}{ − 1}\)

\(\color{red}{x > − 1}\)

「両辺に \(− 1\) を足す」ことは、「左辺の \(+ 1\) を符号を入れ替えて右辺に移行する」ことと同じです。

不等式において、移行する分には不等号の向きは変わらないことを覚えておきましょう。

 

【性質②】正の数の積と商

不等式では、両辺に正の数をかけたり割ったりしても大小関係は変わりません。

不等式の性質②

両辺に正の数をかけても割っても、不等号の向きは変わらない。

 

\(a \color{red}{<} b\)、\(\color{orange}{c} > 0\) のとき、

\begin{align}a\color{orange}{c} \color{red}{<} b\color{orange}{c}\end{align}

\begin{align}\frac{a}{\color{orange}{c}} \color{red}{<} \frac{b}{\color{orange}{c}}\end{align}

(例)

 

\(3 > −1\) の両辺を \(4\) 倍すると

\(3 \cdot \color{orange}{4} > − 1 \cdot \color{orange}{4}\)

\(\color{red}{12 > − 4}\)

 

【性質③】負の数の積と商

一方、両辺に負の数をかけたり割ったりすると大小関係が逆転します。

不等式の性質③

両辺に負の数をかけたり割ったりすると、不等号の向きが変わる。

 

\(a \color{red}{<} b\)、\(\color{skyblue}{c} < 0\) なら、以下が成り立つ。

\begin{align}a\color{skyblue}{c} \color{red}{>} b\color{skyblue}{c}\end{align}

\begin{align}\displaystyle \frac{a}{\color{skyblue}{c}} \color{red}{>} \displaystyle \frac{b}{\color{skyblue}{c}}\end{align}

(例)

 

\(3 > − 1\) の両辺を \(−4\) 倍すると

\(3 \cdot \color{skyblue}{(−4)} \color{red}{<} − 1 \cdot \color{skyblue}{(−4)}\)

\(\color{red}{−12 < 4}\)

このように、不等式において負の数をかけたり割ったりするときには不等号の向きに注意しましょう。

 

一次不等式の解き方

一次不等式には、「式変形による解き方」と、「グラフによる解き方」の \(2\) 通りがあります。

【解き方①】式変形

まずは、式変形による解き方を次の例題を用いて説明していきます。

例題
次の不等式を解け。

\(3x + 4 > x\)

 

STEP.1
変数を含む項を左辺に、定数項を右辺に移行する

一次不等式の基本的な解き方は、左辺が変数だけになるように式変形することです。

一次方程式と同じですね。

\(3x + 4 > x\)

左辺の \(4\) を右辺に、右辺の \(x\) を左辺に移行して、

\(3x − x > − 4\)

Tips

移行する際は、符号の入れ替えを忘れないようにしましょう!

 

STEP.2
式を整理して、左辺を変数のみにする

左辺が変数だけになるように式を整理すれば、解が求まります。

\(3x − x > − 4\)

\(2x > − 4\)

 

両辺を \(2\) で割って

\(\color{red}{x > − 2}\)

これだけです。簡単ですね!

Tips

両辺に同じ数をかけたり割ったりする際は、不等号の向きに注意してくださいね。

 

完了

 

【解き方②】グラフの利用

通常は式変形で解けばよいのですが、グラフを使って式の大小関係を表現できることも知っておくと便利です。

先ほどと同じ例題で解き方を確認しましょう。

例題
次の不等式を解け。

\(3x + 4 > x\)

 

STEP.1
左辺と右辺をそれぞれ関数とおく

左辺と右辺を、それぞれ「\(y = \) ~」の関数とおきます。

\(\left\{\begin{array}{l}y = 3x + 4 …①\\y = x …②\end{array}\right.\) とおく。

 

STEP.2
2 つの関数の交点を求める

左辺と右辺を等号で結び、①と②の交点を求めます。

\(3x + 4 = x\) のとき、

\(3x − x = − 4\)

\(2x = − 4\)

\(x = − 2\)

 

②に代入して、

\(y = − 2\)

 

よって①、②の交点は \((− 2, − 2)\)

 

STEP.3
グラフを書く

①、②のグラフを書きます。

このとき、それぞれの \(x, y\) 切片と交点は明記するようにしましょう。

①、②のグラフは下記のようになる。

 

STEP.4
グラフから x の範囲を求める

グラフから、不等式の大小関係を満たす \(x\) の範囲を求めます。

例題の不等式は \(3x + 4 > x\) だったので、関数①が関数②よりも大きくなるような \(x\) の値の範囲を調べます。

グラフを見ると、①と②の交点よりも右側であれば、①が②よりも常に上側にくることがわかります。

\(3x + 4 > x\) \((① > ②)\) となる \(x\) の値の範囲は

\(\color{red}{x > − 2}\)

 

完了

グラフによる解き方は一見使い勝手が悪いように見えますが、「不等式を視覚的にとらえる」考え方が重要です。

二次不等式・連立不等式はもちろん、領域の問題を解くときにも活用できますので、心に留めておきましょう。

 

一次不等式の練習問題

それでは、一次不等式を解く練習をしましょう。

練習問題①「基本的な一次不等式」

練習問題①

次の不等式を解け。

\(x + 5 < 3x − 1\)

 

典型的な一次不等式です。

両辺を負の数で割るとき、不等号の向きを変え忘れないようにしましょう。

解答

 

\(x + 5 < 3x − 1\)

 

移行して

\(x − 3x < − 1 − 5\)

\(− 2x < − 4\)

 

両辺を \(− 2\) で割って

\(x > 2\)

 

答え: \(x > 2\)

 

練習問題②「分数を含む一次不等式」

練習問題②

次の不等式を解け。

\(\displaystyle \frac{1}{2}x − 3 < 5x + \displaystyle \frac{3}{4}\)

 

分数が含まれていると、足し算や引き算の通分が面倒ですね。

そんなときは、まず式全体に何かをかけて、分数を解消します。

解答

 

\(\displaystyle \frac{1}{2}x − 3 < 5x + \displaystyle \frac{3}{4}\)

 

両辺に \(4\) をかけて

\(2x − 12 < 20x + 3\)

 

移行して

\(2x − 20x < 3 + 12\)

\(− 18x < 15\)

 

両辺を \(− 18\) で割って

\(x > − \displaystyle \frac{15}{18} = − \displaystyle \frac{5}{6}\)

 

答え: \(x > − \displaystyle \frac{5}{6}\)

 

一次不等式の応用問題

最後に、少しだけレベルの高い問題に挑戦してみましょう。

応用問題①「絶対値と場合分け」

応用問題①

\(|3x − 5| \geq 6\) を解け。

 

絶対値を含む不等式です。

絶対値の中身が正になる場合と負になる場合とに場合分けして計算を進めましょう。

解答

 

\(|3x − 5| \geq 6\) …① とおく。

 

(i) \(3x − 5 \geq 0\)、すなわち \(x \geq \displaystyle \frac{5}{3}\) のとき

\(|3x − 5| = 3x − 5\)

より、①は

\(3x − 5 \geq 6\)

\(3x \geq 6 + 5\)

\(3x \geq 11\)

\(x \geq \displaystyle \frac{11}{3}\)

 

これは、\(x \geq \displaystyle \frac{5}{3}\) を満たす。

 

 

(ii) \(3x − 5 < 0\)、すなわち \(x < \displaystyle \frac{5}{3}\) のとき

\(|3x − 5| = − (3x − 5) = − 3x + 5\)

より、①は

\(− 3x + 5 \geq 6\)

\(− 3x \geq 6 − 5\)

\(− 3x \geq  1\)

\(x \leq − \displaystyle \frac{1}{3}\)

 

これは、\(x < \displaystyle \frac{5}{3}\) を満たす。

 

(i), (ii) より、\(x \geq \displaystyle \frac{11}{3}, x \leq − \displaystyle \frac{1}{3}\)

 

答え: \(x \geq \displaystyle \frac{11}{3}, x \leq − \displaystyle \frac{1}{3}\)

 

応用問題②「買い物の文章題」

応用問題②

\(1\) 個 \(100\) 円のチョコレートと \(1\) 個 \(130\) 円のマカロンを合わせて \(10\) 個買って、その代金が \(1000\) 円以上 \(1100\) 円以下のギフトセットを作りたい。\(1\) 個 \(100\) 円のチョコレートを何個以上何個以下買えばよいか。

 

範囲を求める文章題ですね。

問題をよく読んで、正しい不等式を立てましょう。

「以上(\(\geq\))」と「より大きい(\(>\))」、「以下(\(\leq\))」と「より小さい(\(<\))」で、不等号の種類を混同しないように注意してくださいね!

解答

 

購入するチョコレートの数を \(x\) 個とおくと、マカロンは \((10 − x)\) 個購入する。

 

ギフトセットの代金は、

\(100x + 130(10 − x)\) 円となる。

 

これが \(1000\) 円以上 \(1100\) 円以下になればよいので、

\(\left\{\begin{array}{l}1000 \leq 100x + 130(10 − x) …①\\100x + 130(10 − x) \leq 1100 …②\end{array}\right.\)

 

①より、

\(1000 \leq 100x + 1300 −  130x\)

\(− 100x + 130x \leq 1300 − 1000\)

\(30x \leq 300\)

 

\(x \leq \displaystyle \frac{300}{30}\)

 

\(x \leq 10\) …①’

 

 

②より、

\(100x + 1300 − 130x \leq 1100\)

\(100x − 130x \leq 1100 − 1300\)

\(− 30x \leq − 200\)

 

\(x \geq \displaystyle \frac{200}{30}\)

 

\(x \geq \displaystyle \frac{20}{3} = 6.66\)… …②’

 

①’、②’より、

\(6.66… \leq x \leq 10\)

この範囲を満たす自然数は \(7, 8, 9, 10\)

 

したがって、チョコレートを \(7\) 個以上 \(10\) 個以下買えばよい。

 

答え: \(7\) 個以上 \(10\) 個以下

 

応用問題③「食塩水の文章題」

応用問題③

\(4 \ \mathrm{%}\) の食塩水と \(10\ \mathrm{%}\) の食塩水がある。\(4\ \mathrm{%}\) の食塩水 \(200 \ \mathrm{g}\) と \(10\ \mathrm{%}\) の食塩水を混ぜて、\(6\ \mathrm{%}\) 以上の食塩水を作りたい。この時、\(10 \ \mathrm{%}\) の食塩水は最低何 \(\mathrm{g}\) 必要か?

 

出ました、食塩水の問題です…。

苦手意識を感じる人が多い問題ですが、パーセンテージに惑わされず、「含まれる食塩の重さ」に関する式を立てましょう。

解答

 

\(10\ \mathrm{%}\) の食塩水の重さを \(x \ \mathrm{g}\) とする。

混ぜたあとの食塩水の重さは \((200 + x) \ \mathrm{g}\) となる。

 

\(4\ \mathrm{%}\) と \(10\ \mathrm{%}\) の食塩水に含まれる食塩の重さの合計は、

\(200 \times \displaystyle \frac{4}{100} + x \times \displaystyle \frac{10}{100}\) より

 

\(8 + \displaystyle \frac{10}{100}x\) …①

 

 

混ぜたあと、食塩水が \(6\ \mathrm{%}\) になった場合の食塩の重さは、

\((200 + x) \times \displaystyle \frac{6}{100}\) より

 

\(12 + \displaystyle \frac{6}{100}x\) …②

 

 

混ぜたあとの濃度が \(6\ \mathrm{%}\) 以上になればよいので、

① \(\geq\) ② より

 

\(8 + \displaystyle \frac{10}{100}x \geq 12 + \displaystyle \frac{6}{100}x\)

 

\(\displaystyle \frac{10}{100}x − \displaystyle \frac{6}{100}x \geq 12 − 8\)

 

\(\displaystyle \frac{4}{100}x \geq 4\)

 

両辺に \(\displaystyle \frac{100}{4}\) をかけて、

 

\(x \geq 100\)

 

したがって、\(10\ \mathrm{%}\) の食塩水を \(100\ \mathrm{g}\) 以上混ぜればよい。

 

答え: 最低 \(100\ \mathrm{g}\)

以上で応用問題も終わりです。

 

一次不等式は、不等号の向きなど注意点が多いですが、きちんと理解すれば簡単に解けるようになります。

苦手意識をなくして、入試でも得点源としていきましょう!

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