この記事では、「連立漸化式」の問題の解き方をわかりやすく解説していきます。
等比数列や特性方程式などこれまで習った知識で解けるので、ぜひこの記事を通してマスターしてくださいね。
連立漸化式とは?
連立漸化式とは、連立方程式のように、異なる数列を含む複数の漸化式です。
多くの場合、\(2\) つの数列を含む二元連立漸化式の問題が出題されます。
二元連立漸化式には、「対称型」と「一般型」があります。
- 対称型
\(2\) つの漸化式の係数に対称性があるもの。
\(\left\{\begin{array}{l} a_{n+1} = pa_n + qb_n\\ b_{n+1} = qa_n + pb_n\end{array}\right.\) - 一般型
\(2\) つの漸化式の係数に対称性がないもの。
\(\left\{\begin{array}{l} a_{n+1} = pa_n + qb_n\\ b_{n+1} = ra_n + sb_n\end{array}\right.\)
それぞれの解き方を確認していきましょう。
2 つの連立漸化式(対称型)の解き方
対称型の連立漸化式は、\(2\) 式の和と差をとることで簡単に \(2\) 本の等比数列型の漸化式を得られます。
\(\left\{\begin{array}{l} a_{n+1} = pa_n + qb_n …①\\ b_{n+1} = qa_n + pb_n …②\end{array}\right.\)
① + ②より \(a_{n+1} + b_{n+1} = (p + q)(a_n + b_n)\)
① − ②より \(a_{n+1} − b_{n+1} = (p − q)(a_n − b_n)\)
→ 等比数列 \(\{a_n + b_n\}\), \(\{a_n − b_n\}\) を得る
それでは、例題を見てみましょう。
数列 \(\{a_n\}\), \(\{b_n\}\) が次を満たしているとき、それぞれの一般項を求めよ。
\(a_1 = 4\), \(b_1 = 1\)
\(a_{n+1} = 3a_n + b_n\)
\(b_{n+1} = a_n + 3b_n\)
与えられた \(2\) 式の和と差をとり、\(2\) つの等比数列を得ます。
\(a_{n+1} = 3a_n + b_n \ \text{…①}\)
\(b_{n+1} = a_n + 3b_n \ \text{…②}\)
とおく。
① + ② より
\(a_{n+1} + b_{n+1} = 4(a_n + b_n)\)
数列 \(\{a_n + b_n\}\) は、初項 \(a_1 + b_1 = 5\)、公比 \(4\) の等比数列であるから
\(a_n + b_n = 5 \cdot 4^{n−1} \ \text{…③}\)
① − ② より
\(a_{n+1} − b_{n+1} = 2(a_n − b_n)\)
数列 \(\{a_n + b_n\}\) は、初項 \(a_1 − b_1 = 3\)、公比 \(2\) の等比数列であるから
\(a_n − b_n = 3 \cdot 2^{n−1} \ \text{…④}\)
あとは、得られた \(2\) 式の和と差をとれば、\(\{a_n\}\), \(\{b_n\}\) の一般項がわかります。
③ + ④ より
\(2a_n = 5 \cdot 4^{n−1} + 3 \cdot 2^{n−1}\)
よって \(a_n = \displaystyle \frac{1}{2}(5 \cdot 4^{n−1} + 3 \cdot 2^{n−1})\)
③ − ④ より
\(2b_n = 5 \cdot 4^{n−1} − 3 \cdot 2^{n−1}\)
よって \(b_n = \displaystyle \frac{1}{2}(5 \cdot 4^{n−1} − 3 \cdot 2^{n−1})\)
したがって、
答え:
\(\color{red}{a_n = \displaystyle \frac{1}{2}(5 \cdot 4^{n−1} + 3 \cdot 2^{n−1})}\)、\(\color{red}{b_n = \displaystyle \frac{1}{2}(5 \cdot 4^{n−1} − 3 \cdot 2^{n−1})}\)
簡単ですね!
2 つの連立漸化式(一般型)の解き方
一般型の二元連立漸化式の解き方には、大きく次の \(2\) つの方法があります。
- 等比数列型に帰着
- 隣接三項間漸化式に帰着
それぞれについて、同じ例題で説明していきます。
【解き方①】等比数列型に帰着
\(1\) つ目は、等比型の数列に帰着させる方法です。
等比数列型
\begin{align}\color{red}{a_{n+1} + \alpha b_{n+1} = \beta (a_n + \alpha b_n)}\end{align}
を満たす \(\alpha, \beta\) を求めると、等比数列型の漸化式 \(2\) 本を得る
→ \(2\) 式を連立して \(a_n, b_n\) を得る
それでは、例題で解き方を確認しましょう。
数列 \(\{a_n\}\), \(\{b_n\}\) が次を満たしているとき、それぞれの一般項を求めよ。
\(a_1 = b_1 = 1\)
\(a_{n+1} = a_n + 4b_n\)
\(b_{n+1} = a_n + b_n\)
まずは作りたい式、求めたい値を宣言しましょう。
\(a_{n+1} + \alpha b_{n+1} = \beta (a_n + \alpha b_n)\) …①
を満たす \(\alpha, \beta\) を求める。
①の左辺に与えられた漸化式を代入します。また、右辺は展開しておきます。
変形した式は、\(a_n, b_n\) が何であっても成り立つ恒等式なので、左辺と右辺の係数を比較しましょう。
与えられた漸化式から、
(①の左辺)
\(= (a_n + 4b_n) + \alpha(a_n + b_n)\)
\(= (1 + \alpha)a_n + (4 + \alpha)b_n\)
(①の右辺)
\(= \beta a_n + \alpha\beta b_n\)
よって①は
\((1 + \alpha)a_n + (4 + \alpha)b_n = \beta a_n + \alpha\beta b_n\)
と変形できる。
これがすべての \(n\) について成り立つとき、
\(\left\{\begin{array}{l} 1 + \alpha = \beta …②\\ 4 + \alpha = \alpha\beta …③\end{array}\right.\)
②、③の連立方程式を解いて、\(\alpha, \beta\) を求めます。
なお、筆記試験の答案では連立方程式を解く過程は省略し、答えだけ書いても構いません。
③に②を代入して
\(4 + \alpha = \alpha(1 + \alpha)\)
\(4 + \alpha = \alpha + \alpha^2\)
\(\alpha^2 = 4\)
\(\alpha = \pm 2\)
②に代入して
\(\beta = 1 \pm 2 = 3, −1\)
よって、\((\alpha, \beta) = (2, 3), (−2, −1)\)
求めた \(2\) 組の \((\alpha, \beta)\) から、\(2\) 本の等比数列型の漸化式を得ます。
それぞれについて一般項を求めましょう。
\((\alpha, \beta) = (2, 3), (−2, −1)\) を①に代入すると
\(a_{n+1} + 2b_{n+1} = 3(a_n + 2b_n)\) …④
\(a_{n+1} − 2b_{n+1} = −(a_n − 2b_n)\) …⑤
④より、数列 \(\{a_n + 2b_n\}\) は初項 \(a_1 + 2b_1 = 3\)、公比 \(3\) の等比数列、
⑤より、数列 \(\{a_n − 2b_n\}\) は初項 \(a_1 − 2b_1 = −1\)、公比 \(−1\) の等比数列
であるから、
\(a_n + 2b_n = 3 \cdot 3^{n−1} = 3^n\) …⑥
\(a_n − 2b_n = −1(−1)^{n−1} = (−1)^n\) …⑦
得られた \(2\) 式をさらに連立し、\(a_n, b_n\) を求めます。
⑥ + ⑦ より
\(2a_n = 3^n + (−1)^n\)
よって \(\displaystyle a_n = \frac{3^n + (−1)^n}{2}\)
⑥ − ⑦ より
\(4b_n = 3^n − (−1)^n\)
よって \(\displaystyle b_n = \frac{3^n − (−1)^n}{4}\)
したがって、
答え:
\(\color{red}{\displaystyle a_n = \frac{3^n + (−1)^n}{2}}\), \(\color{red}{\displaystyle b_n = \frac{3^n − (−1)^n}{4}}\)
【解き方②】隣接三項間漸化式に帰着
\(2\) つ目は、隣接三項間漸化式に帰着させる方法です。
連立漸化式から片方の数列 (\(a_n\) または \(b_n\)) を消去し、隣接三項間漸化式を得る
→ 隣接三項間漸化式の解法にしたがって一般項を求める
それでは、先ほどと同じ例題で解き方を確認しましょう。
数列 \(\{a_n\}\), \(\{b_n\}\) が次を満たしているとき、それぞれの一般項を求めよ。
\(a_1 = b_1 = 1\)
\(a_{n+1} = a_n + 4b_n\)
\(b_{n+1} = a_n + b_n\)
まずは、連立漸化式に番号を振りましょう。
\(\left\{\begin{array}{l} a_{n+1} = a_n + 4b_n …①\\ b_{n+1} = a_n + b_n …②\end{array}\right.\)
連立漸化式のどちらかを選んで、\(\{a_n\}\) の項 = \(\{b_n\}\) の項 に分離します。
その式の添え字を \(1\) つ上にずらした式も作っておきます。
① より
\(\displaystyle b_n = \frac{1}{4} (a_{n+1} − a_n)\)
\(\displaystyle b_{n+1} = \frac{1}{4} (a_{n+2} − a_{n+1})\)
上記の \(2\) 式を、もう一方の漸化式に代入すると、隣接三項間漸化式が得られます。
それぞれ②に代入して
\(\displaystyle \frac{1}{4} (a_{n+2} − a_{n+1}) = a_n + \frac{1}{4} (a_{n+1} − a_n)\)
整理して
\(a_{n+2} − 2a_{n+1} − 3a_n = 0\) …③
あとは、隣接三項間漸化式を解いて、\(a_n\) を求めましょう。
\(a_n\) と \(b_n\) の関係式から、\(b_n\) も導けます。
\(x^2 − 2x − 3 = 0\) を解いて
\((x + 1)(x − 3) = 0\) より \(x = −1, 3\)
であるから、③は
\(a_{n+2} + a_{n+1} = 3(a_{n+1} + a_n)\) …④
\(a_{n+2} − 3a_{n+1} = −(a_{n+1} − 3a_n)\) …⑤
と変形できる。
ここで、\(a_1 = b_1 = 1\), \(a_2 = a_1 + 4b_1 = 5\)
よって
④より、数列 \(\{a_{n+1} + a_n\}\) は初項 \(a_2 + a_1 = 6\)、公比 \(3\) の等比数列、
⑤より、数列 \(\{a_{n+1} − 3a_n\}\) は初項 \(a_2 − 3a_1 = 2\)、公比 \(−1\) の等比数列
であるから
\(a_{n+1} + a_n = 6 \cdot 3^{n−1} = 2 \cdot 3^n\) …⑥
\(a_{n+1} − 3a_n = 2(−1)^{n−1} = −2(−1)^n\) …⑦
⑥ − ⑦ より
\(\begin{align} 4a_n &= 2 \cdot 3^n − \{−2(−1)^n\} \\ &= 2 \cdot 3^n + 2(−1)^n \end{align}\)
よって \(\displaystyle a_n = \frac{3^n + (−1)^n}{2}\)
① より
\(\begin{align} b_n &= \frac{1}{4} (a_{n+1} − a_n) \\ &= \frac{1}{4} \left\{ \frac{3^{n+1} + (−1)^{n+1}}{2} − \frac{3^n + (−1)^n}{2} \right\} \\ &= \frac{1}{8} \{3 \cdot 3^n − 3^n −(−1)^n − (−1)^n\} \\ &= \frac{1}{8} \{2 \cdot 3^n − 2(−1)^n\} \\ &= \frac{3^n − (−1)^n}{4} \end{align}\)
(見切れる場合は横へスクロール)
よって
答え:
\(\color{red}{\displaystyle a_n = \frac{3^n + (−1)^n}{2}}\), \(\color{red}{\displaystyle b_n = \frac{3^n − (−1)^n}{4}}\)
「隣接三項間漸化式」の解き方を忘れている人は、以下の記事で復習しておきましょう!
漸化式全パターンの解き方まとめ!難しい問題を攻略しよう
どちらの解き方でもいくつか問題を解いて、自力で一通り解答できるようにしておくと安心ですね。
3 つの連立漸化式の解き方
出題頻度は低いですが、\(3\) つの数列を含む三元連立漸化式の問題もあります。
三元連立漸化式の問題は、誘導にしたがえば難なく解けることがほとんどです。
例を見てみましょう。
数列 \(\{a_n\}\), \(\{b_n\}\), \(\{c_n\}\) \((n = 1, 2, 3, \cdots)\) を次のように定める。
\(a_1 = 3\), \(b_1 = 2\), \(c_1 = 1\)、
\(\left\{\begin{array}{l} a_{n + 1} = \displaystyle \frac{b_n + c_n}{3}\\ b_{n + 1} = \displaystyle \frac{c_n + a_n}{3}\\ c_{n + 1} = \displaystyle \frac{a_n + b_n}{3}\end{array}\right.\)
このとき、次の問いに答えよ。
(1) \(a_n + b_n + c_n\) を \(n\) を用いて表せ。
(2) \(a_n − b_n\), \(a_n − c_n\) を \(n\) を用いてそれぞれ表せ。
(3) 数列 \(\{a_n\}\), \(\{b_n\}\), \(\{c_n\}\) の一般項を求めよ。
(1), (2) は与えられた漸化式の和や差を計算すれば簡単にわかりますね。
それらの答えをうまく使って、(3) の一般項を導きましょう。
(1)
与えられた漸化式の和を求めると、
\(a_{n+1} + b_{n+1} + c_{n+1}\)
\(\displaystyle = \frac{b_n + c_n}{3} + \frac{c_n + a_n}{3} + \frac{a_n + b_n}{3}\)
\(\displaystyle = \frac{2a_n + 2b_n + 2c_n}{3}\)
\(\displaystyle = \frac{2}{3}(a_n + b_n + c_n)\)
よって、数列 \(\{a_n + b_n + c_n\}\) は公比 \(\displaystyle \frac{2}{3}\) の等比数列である。
初項 \(a_1 + b_1 + c_1 = 3 + 2 + 1 = 6\) であるから、
\(a_n + b_n + c_n = 6\left(\displaystyle \frac{2}{3} \right)^{n−1}\)
答え: \(\color{red}{a_n + b_n + c_n = 6\left(\displaystyle \frac{2}{3} \right)^{n−1}}\)
(2)
与えられた漸化式から、
\(\begin{align} a_{n+1} − b_{n+1} &= \frac{b_n + c_n}{3} − \frac{c_n + a_n}{3} \\&= − \frac{1}{3}(a_n − b_n) \end{align}\)
よって、数列 \(\{a_n − b_n\}\) は公比 \(− \displaystyle \frac{1}{3}\) の等比数列である。
初項 \(a_1 − b_1 = 3 − 2 = 1\) であるから、
\(a_n − b_n = \left(− \displaystyle \frac{1}{3} \right)^{n−1}\)
同様に、
\(\begin{align} a_{n+1} − c_{n+1} &= \frac{b_n + c_n}{3} − \frac{a_n + b_n}{3} \\&= − \frac{1}{3}(a_n − c_n) \end{align}\)
よって、数列 \(\{a_n − c_n\}\) は公比 \(− \displaystyle \frac{1}{3}\) の等比数列である。
初項 \(a_1 − c_1 = 3 − 1 = 2\) であるから、
\(a_n − c_n = 2\left(− \displaystyle \frac{1}{3} \right)^{n−1}\)
答え:
\(\color{red}{a_n − b_n = \left(− \displaystyle \frac{1}{3} \right)^{n−1}}\)、\(\color{red}{a_n − c_n = 2\left(− \displaystyle \frac{1}{3} \right)^{n−1}}\)
(3) (見切れる場合は横へスクロール)
(1), (2) より、
\(\begin{align}a_n &= \frac{1}{3}\{(a_n + b_n + c_n) + (a_n − b_n) + (a_n − c_n)\} \\&= \frac{1}{3}\left\{6\left(\frac{2}{3}\right)^{n−1} + \left(−\frac{1}{3}\right)^{n−1} + 2\left(−\frac{1}{3} \right)^{n−1}\right\} \\&= 2\left(\frac{2}{3}\right)^{n−1} + \left(−\frac{1}{3}\right)^{n−1}\end{align}\)
\(a_n − b_n = \left(− \displaystyle \frac{1}{3} \right)^{n−1}\) より
\(\begin{align}b_n &= a_n − \left(− \displaystyle \frac{1}{3} \right)^{n−1} \\&= 2\left(\frac{2}{3}\right)^{n−1} + \left(−\frac{1}{3}\right)^{n−1} − \left(− \displaystyle \frac{1}{3} \right)^{n−1} \\&= 2\left(\displaystyle \frac{2}{3} \right)^{n−1}\end{align}\)
\(a_n − c_n = 2\left(− \displaystyle \frac{1}{3} \right)^{n−1}\) より
\(\begin{align}c_n &= a_n − 2\left(− \displaystyle \frac{1}{3} \right)^{n−1} \\&= 2\left(\frac{2}{3}\right)^{n−1} + \left(−\frac{1}{3}\right)^{n−1} − 2\left(− \displaystyle \frac{1}{3} \right)^{n−1} \\&= 2\left(\frac{2}{3}\right)^{n−1} − \left(− \displaystyle \frac{1}{3} \right)^{n−1}\end{align}\)
答え:
\(\left\{\begin{array}{l} a_n = 2\left(\displaystyle \frac{2}{3}\right)^{n−1} + \left(−\displaystyle \frac{1}{3}\right)^{n−1}\\ b_n = 2\left(\displaystyle \frac{2}{3} \right)^{n−1}\\ c_n = 2\left(\displaystyle \frac{2}{3}\right)^{n−1} − \left(− \displaystyle \frac{1}{3} \right)^{n−1}\end{array}\right.\)
以上で解説は終わりです。
連立漸化式はどうしても解答が長くなるので、途中で目的感を見失うと混乱してしまいます。
あらかじめ自分がたどる解答プロセスとゴールをイメージしておくことが大切です。
連立漸化式の解き方を押さえて、ぜひマスターしてくださいね!
ほかの数列や漸化式について調べたい方は、以下のまとめ記事から探してみてくださいね!
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