この記事では、「チェバの定理」の意味や証明方法、覚え方を紹介していきます。
メネラウスの定理との違いや、定義の逆を利用する問題の解き方もわかりやすく解説していくので、ぜひこの記事を通してマスターしてくださいね!
目次
チェバの定理とは?
チェバの定理とは、三角形の各頂点から引いた線分が \(1\) 点で交わるとき、辺上の線分の比に関して成り立つ定理です。
\(\triangle \mathrm{ABC}\) において、三角形の内部に任意の点 \(\mathrm{O}\) をとり、直線 \(\mathrm{AO}\) と \(\mathrm{BC}\)、\(\mathrm{BO}\) と \(\mathrm{CA}\)、\(\mathrm{CO}\) と \(\mathrm{AB}\) の交点をそれぞれ \(\mathrm{Q}\)、\(\mathrm{R}\)、\(\mathrm{P}\) とする。
このとき、
\begin{align}\color{red}{\displaystyle \frac{\mathrm{AP}}{\mathrm{PB}} \cdot \frac{\mathrm{BQ}}{\mathrm{QC}} \cdot \frac{\mathrm{CR}}{\mathrm{RA}} = 1}\end{align}
が成り立つ。
チェバの定理は、三角形の外周を点を辿りながら順番に \(1\) 周するイメージです。
チェバの定理の覚え方
チェバの定理の覚え方はとても簡単です。
まず、三角形の頂点を 〇、辺上の点を ● とし、どこでもいいので、スタート地点を決めましょう。
そして、どちら回りでもいいので、三角形の辺をぐるりとなぞって \(\bf{1}\) 周します。
〇 → ● → 〇 → ● のように交互順番に回ることが唯一のルールです。
そして、通った辺の長さを順番に以下の式に当てはめます。
\(\color{red}{\displaystyle \frac{\text{①}}{\text{②}} \cdot \frac{\text{③}}{\text{④}} \cdot \frac{\text{⑤}}{\text{⑥}} = 1}\)
すなわち
\(\displaystyle \frac{\mathrm{AP}}{\mathrm{PB}} \cdot \frac{\mathrm{BQ}}{\mathrm{QC}} \cdot \frac{\mathrm{CR}}{\mathrm{RA}} = 1\)
これでチェバの定理の完成です!
なお、チェバの定理は辺の比について成り立つので、外周を順番に回ることさえ守れていれば、項の順序が入れ替わっても問題ありません。
チェバの定理とメネラウスの定理の違い
チェバの定理と間違いやすいのが、メネラウスの定理です。
式はまったく同じですが、図における辺の配置が微妙に異なります。
チェバの定理は三角形の外周、メネラウスの定理は三角形と直線の外周と、視覚的に区別しておきましょう。
チェバの定理の証明
ここでは、チェバの定理を証明していきます。
以下の \(\triangle \mathrm{ABC}\) において、
\begin{align}\displaystyle \frac{\mathrm{AP}}{\mathrm{PB}} \cdot \frac{\mathrm{BQ}}{\mathrm{QC}} \cdot \frac{\mathrm{CR}}{\mathrm{RA}} = 1\end{align}
が成り立つことを証明せよ。
\(3\) 直線の交点で分けられる \(3\) つの三角形の面積比に着目すると、チェバの定理を証明できます。
\(3\) 直線 \(\mathrm{AQ}\), \(\mathrm{BR}\), \(\mathrm{CP}\) の交点を \(\mathrm{O}\) とする。
\(\triangle \mathrm{AOB}\) と \(\triangle \mathrm{AOC}\) において、底辺を \(\mathrm{AO}\) と見たときの高さ(垂線の長さ)をそれぞれ \(\mathrm{BH}\)、\(\mathrm{CK}\) とする。
底辺 \(\mathrm{AO}\) が共通なので、
\(\displaystyle \frac{\triangle \mathrm{AOB}}{\triangle \mathrm{AOC}} = \frac{\mathrm{BH}}{\mathrm{CK}}\) …①
ここで、\(\triangle \mathrm{BHQ}\) と \(\triangle \mathrm{CKQ}\) において、
\(\angle \mathrm{BHQ} = \angle \mathrm{CKQ} = 90^\circ\)
対頂角は等しいので、\(\angle \mathrm{BQH} = \angle \mathrm{CQK}\)
\(2\) つの角がそれぞれ等しいので、
\(\triangle \mathrm{BHQ}\) ∽ \(\triangle \mathrm{CKQ}\)
よって、
\(\displaystyle \frac{\mathrm{BH}}{\mathrm{CK}} = \frac{\mathrm{BQ}}{\mathrm{QC}}\) …②
①、②より、
\(\displaystyle \frac{\triangle \mathrm{AOB}}{\triangle \mathrm{AOC}} = \frac{\mathrm{BQ}}{\mathrm{QC}}\) …③
\(\triangle \mathrm{OBC}\) と \(\triangle \mathrm{AOB}\)、\(\triangle \mathrm{AOC}\) と \(\triangle \mathrm{OBC}\) においても同様に考えると、
\(\displaystyle \frac{\triangle \mathrm{OBC}}{\triangle \mathrm{AOB}} = \frac{\mathrm{CR}}{\mathrm{RA}}\) …④
\(\displaystyle \frac{\triangle \mathrm{AOC}}{\triangle \mathrm{OBC}} = \frac{\mathrm{AP}}{\mathrm{PB}}\) …⑤
③、④、⑤をそれぞれかけると、
\(\displaystyle \frac{\mathrm{AP}}{\mathrm{PB}} \cdot \frac{\mathrm{BQ}}{\mathrm{QC}} \cdot \frac{\mathrm{CR}}{\mathrm{RA}} \) \(\displaystyle = \frac{\triangle \mathrm{AOC}}{\triangle \mathrm{OBC}} \cdot \frac{\triangle \mathrm{AOB}}{\triangle \mathrm{AOC}} \cdot \frac{\triangle \mathrm{OBC}}{\triangle \mathrm{AOB}} \) \(= 1 \)
となり、チェバの定理が成り立つ。
(証明終わり)
チェバの定理の逆
チェバの定理は、その逆も成り立ちます。
\(\triangle \mathrm{ABC}\) のそれぞれの辺、またはそれらの延長上に、点 \(\mathrm{P}\)、\(\mathrm{R}\)、\(\mathrm{Q}\) があり、そのうちの \(1\) つ、または \(3\) つが辺の延長上にあるとする。
このとき、\(\mathrm{BR}\) と \(\mathrm{CP}\) が交わり、かつ
\begin{align}\displaystyle \frac{\mathrm{AP}}{\mathrm{PB}} \cdot \frac{\mathrm{BQ}}{\mathrm{QC}} \cdot \frac{\mathrm{CR}}{\mathrm{RA}} = 1\end{align}
が成り立つならば、 \(3\) つの直線 \(\mathrm{AQ}\)、\(\mathrm{BR}\)、\(\mathrm{CP}\) は \(1\) 点で交わる。
この定理は、\(3\) 直線が \(1\) 点で交わることを証明するときによく用いられます。
なお、チェバの定理の逆はチェバの定理を使って簡単に証明できるので、興味のある方はやってみてください!
チェバの定理の計算問題
それでは、チェバの定理の計算問題に挑戦してみましょう。
計算問題①「チェバ、メネラウスの使い分け」
次の図において、 以下の値を求めなさい。
(1) \(\mathrm{CR} : \mathrm{RA}\)
(2) \(\mathrm{BQ} : \mathrm{QC}\)
このように三角形の中で \(3\) つの直線が交わる場合、「チェバの定理だ!」と断定するのはまだ早いです。見方を変えると、メネラウスの定理も適用できます。
どちらの定理を使うのか、わかっている値と図をよく見て考えましょう。
(1)
\(\triangle \mathrm{ACP}\) と直線 \(\mathrm{BR}\) において、メネラウスの定理より
\(\displaystyle \frac{\mathrm{CR}}{\mathrm{RA}} \cdot \frac{\mathrm{AB}}{\mathrm{BP}} \cdot \frac{\mathrm{PO}}{\mathrm{OC}} = 1\)
\(\displaystyle \frac{\mathrm{CR}}{\mathrm{RA}} \cdot \frac{11}{5} \cdot \frac{2}{3} = 1\)
\(\displaystyle \frac{\mathrm{CR}}{\mathrm{RA}} = \frac{15}{22}\)
答え: \(15 : 22\)
(2)
\(\triangle \mathrm{ABC}\) において、チェバの定理より
\(\displaystyle \frac{\mathrm{AP}}{\mathrm{PB}} \cdot \frac{\mathrm{BQ}}{\mathrm{QC}} \cdot \frac{\mathrm{CR}}{\mathrm{RA}} = 1\)
\(\displaystyle \frac{6}{5} \cdot \frac{\mathrm{BQ}}{\mathrm{QC}} \cdot \frac{15}{22} = 1\)
\(\displaystyle \frac{\mathrm{BQ}}{\mathrm{QC}} = \frac{11}{9}\)
答え: \(11 : 9\)
計算問題②「チェバの定理の逆で証明」
三角形の \(3\) つの中線は \(1\) 点で交わることを、チェバの定理の逆を用いて証明しなさい。
チェバの定理が成り立てばその逆もいえるので、チェバの定理を成立させる流れを作りましょう。
図において、\(\triangle \mathrm{ABC}\) の各辺の中点を点 \(\mathrm{P}\)、\(\mathrm{Q}\)、\(\mathrm{R}\) とする。
点 \(\mathrm{P}\)、\(\mathrm{Q}\)、\(\mathrm{R}\) は、それぞれ辺 \(\mathrm{AB}\)、\(\mathrm{BC}\)、\(\mathrm{CA}\) の中点なので、
\(\mathrm{AP} = \mathrm{PB}\)
\(\mathrm{BQ} = \mathrm{QC}\)
\(\mathrm{CR} = \mathrm{RA}\)
となる。
よって、
\(\displaystyle \frac{\mathrm{AP}}{\mathrm{PB}} \cdot \frac{\mathrm{BQ}}{\mathrm{QC}} \cdot \frac{\mathrm{CR}}{\mathrm{RA}} = 1 \cdot 1 \cdot 1 = 1\)
となる。
チェバの定理の逆により、三角形の \(3\) つの中線は \(1\) 点で交わる。
(証明終わり)
以上で問題も終わりです!
チェバの定理は、とにかく図とともに目で見て覚えることが大切です。
しっかりとマスターしておきましょう!