この記事では、「相加平均と相乗平均の大小関係」の意味や使い方をわかりやすく解説していきます。
式の最大値・最小値を求める計算問題や、不等式の証明問題の解き方もていねいに説明していきますので、ぜひこの記事を通してマスターしてくださいね!
相加平均・相乗平均とは?
相加平均とは、足し合わせの平均値です。
一方、相乗平均とは、かけ合わせの平均値です。
\(n\) 個の正の数 \(a_1\), \(a_2\), \(\cdots\), \(a_n\) があるとき、
- 相加平均
\begin{align}\color{red}{\displaystyle \frac{a_1 + a_2 + \cdots + a_n}{n}}\end{align} - 相乗平均
\begin{align}\color{red}{\sqrt[n]{a_1 a_2 \cdots a_n}}\end{align}
相加平均ではすべての数を足し合わせて個数 \(n\) で割ります。私たちがよく目にするいわゆる「平均」ですね。
相乗平均では、すべての数をかけ合わせた数の \(n\) 乗根をとります。
相加平均と相乗平均の大小関係
正の数の相加平均と相乗平均には、次のような大小関係が成り立ちます。
正の数の相加平均は、必ず相乗平均以上になる。
\begin{align}\color{red}{\text{(相加平均)} \geq \text{(相乗平均)}}\end{align}
すなわち、\(n\) 個の正の数 \(a_1\), \(a_2\), \(\cdots\), \(a_n\) があるとき、
\begin{align}\displaystyle \frac{a_1 + a_2 + \cdots + a_n}{n} \geq \sqrt[n]{a_1 a_2 \cdots a_n}\end{align}
\(\text{(相加平均)} \geq \text{(相乗平均)}\) という大小関係は \(n\) が何個でも成り立ちますが、よく使用するのは \(n = 2\) および \(n = 3\) のときの不等式です。
こうした不等式を「相加平均・相乗平均の不等式」、または省略して「相加相乗平均の不等式」と呼びます。
【公式】相加平均・相乗平均の不等式
ここでは、覚えておくべき \(2\) 変数と \(3\) 変数の相加平均・相乗平均の不等式を公式として示します。
2 変数の公式 \(\displaystyle \frac{a + b}{2} \geq \sqrt{ab}\)
\(2\) 変数の公式はさまざまな計算問題、証明問題に使用するのでしっかり覚えておきましょう。
\(a \geq 0\), \(b \geq 0\) のとき、
\begin{align}\color{red}{\displaystyle \frac{a + b}{2} \geq \sqrt{ab}}\end{align}
(等号成立は \(a = b\) のとき)
両辺を \(2\) 倍した「\(\color{red}{a + b \geq 2\sqrt{ab}}\)」、および、両辺を \(2\) 乗して順序を入れ替えた 「\(\color{red}{\displaystyle ab \leq \left( \frac{a + b}{2} \right)^2}\)」のかたちで使用することも多いです。
「(左辺) \(−\) (右辺)」を計算し、\(0\) 以上になることを示すことで証明できます。
不等式 \(\displaystyle \frac{a + b}{2} \geq \sqrt{ab}\)(\(a \geq 0\), \(b \geq 0\))において、
\(\text{(左辺)} − \text{(右辺)}\)
\(\displaystyle = \frac{a + b}{2} − \sqrt{ab}\)
\(\displaystyle = \frac{a − 2\sqrt{ab} + b}{2}\)
\(\displaystyle = \frac{(\sqrt{a})^2 − 2\sqrt{a}\sqrt{b} + (\sqrt{b})^2}{2}\)
\(\displaystyle = \frac{(\sqrt{a} − \sqrt{b})^2}{2} \geq 0\)
よって、\(\displaystyle \frac{a + b}{2} \geq \sqrt{ab}\) が示された。
また、\(\text{(左辺)} − \text{(右辺)} = 0\) のとき \(a = b\) となるので、
等号成立は \(a = b\) のときである。
(証明終わり)
3 変数の公式 \(\displaystyle \frac{a + b + c}{3} \geq \sqrt[3]{abc}\)
\(3\) 変数の公式はそれほど使いませんが、たまに公式を証明する問題が出てくるので把握しておきましょう。
\(a \geq 0\), \(b \geq 0\), \(c \geq 0\) のとき、
\begin{align}\color{red}{\displaystyle \frac{a + b + c}{3} \geq \sqrt[3]{abc}}\end{align}
(等号成立は \(a = b = c\) のとき)
\(3\) 変数の場合も、「(左辺) \(−\) (右辺)」を計算していくと証明できます。
右辺に三乗根があるため少し計算が複雑になりますね。
\(a\), \(b\), \(c\) は \(0\) 以上の数なので、何かの \(3\) 乗に置き換えると楽です。
(見切れる場合は横へスクロール)
不等式 \(\displaystyle \frac{a + b + c}{3} \geq \sqrt[3]{abc}\)(\(a \geq 0\), \(b \geq 0\), \(c \geq 0\))において、
\(a = p^3\), \(b = q^3\), \(c = r^3\) \((p \geq 0, q \geq 0, r \geq 0)\) と置き換えると、
与式は
\(\displaystyle \frac{p^3 + q^3 + r^3}{3} \geq \sqrt[3]{p^3q^3r^3}\)
すなわち
\(p^3 + q^3 + r^3 \geq 3pqr\) …①
と表せる。
①について、
\(\text{(左辺)} − \text{(右辺)}\)
\(= p^3 + q^3 + r^3 − 3pqr\)
\(= (p + q + r)(p^2 + q^2 + r^2 − pq − qr − rp)\)
\(\displaystyle = \frac{1}{2} (p + q + r)(2p^2 + 2q^2 + 2r^2 − 2pq − 2qr − 2rp)\)
\(\displaystyle = \frac{1}{2} (p + q + r) \{(p^2 − 2pq + q^2) + (q^2 − 2qr + r^2) + (r^2 − 2rp + p^2)\}\)
\(\displaystyle = \frac{1}{2} (p + q + r) \{(p − q)^2 + (q − r)^2 + (r − p)^2\}\)
ここで、
\(p + q + r \geq 0\)、\((p − q)^2 + (q − r)^2 + (r − p)^2 \geq 0\)
であるから、
\(\text{(左辺)} − \text{(右辺)} \geq 0\)
①が成り立つので、\(\displaystyle \frac{a + b + c}{3} \geq \sqrt[3]{abc}\) が成り立つ。
また、 \(\text{(左辺)} − \text{(右辺)} = 0\) のとき \(p = q = r\) が成り立つことから、与式の等号成立は \(a = b = c\) のときである。
(証明終わり)
相加平均・相乗平均の不等式の使い方
相加平均・相乗平均の不等式は、「関数などの最大値・最小値を求めるとき」「不等式を証明するとき」に活用できます。
特に、以下のような問題では \(\text{(相加平均)} \geq \text{(相乗平均)}\) の関係が使える可能性が高いです。
- 対象とする数が正の数である
- 変数が逆数の位置にあるなどの理由で、対象とする数の積が定数になる
(例)\(x\) と \(\displaystyle \frac{2}{x}\)(積は \(2\)) 、 \(3y\) と \(\displaystyle \frac{1}{y}\)(積は \(3\))など
① 相加相乗平均で和の最小値を求める
まずは、相加平均・相乗平均の不等式を使って何かの和の最小値を求める方法を説明します。
\(x > 0\) のとき \(\displaystyle 3x + \frac{1}{x}\) の最小値を求めよ。
\(3x\) と \(\displaystyle \frac{1}{x}\) はともに正の数であり、\(2\) 数の積は定数になる(変数が残らない)ので、相加平均・相乗平均の不等式が使えます。
\(2\) 数の和の最小値を求める問題では、相加平均・相乗平均の不等式を \(\color{red}{a + b \geq 2\sqrt{ab}}\) のかたちで利用します。
相加平均・相乗平均の不等式を使う前に、対象となる \(2\) 数が正の数(\(0\) 以上)であることを確認します。
解答にも必ず書いてくださいね。
\(x > 0\) より、
\(3x > 0\), \(\displaystyle \frac{1}{x} > 0\)
相加平均・相乗平均の不等式 \(\displaystyle \frac{a + b}{2} \geq \sqrt{ab}\) を変形した \(\color{red}{a + b \geq 2\sqrt{ab}}\) を利用して、\(2\) 数の和に関する不等式を得ます。
相加平均と相乗平均の大小関係より
\(\begin{align} 3x + \frac{1}{x} &\geq 2\sqrt{3x \cdot \frac{1}{x}} \\ &= 2\sqrt{3} \end{align}\)
そうすると、\(2\) 数の和 \(\displaystyle 3x + \frac{1}{x}\) が \(2\sqrt{3}\) 以上である、つまり、最小値が \(2\sqrt{3}\) であることがわかります。
最後に、等号成立条件(\(a = b\))を確認して、最小値をとるときの変数の値を求めます。
等号は \(\displaystyle 3x = \frac{1}{x}\)、すなわち \(\displaystyle x = \frac{1}{\sqrt{3}}\) で成り立つ。
したがって、\(\displaystyle 3x + \frac{1}{x}\) は \(\displaystyle x = \frac{1}{\sqrt3}\) のとき最小値 \(2\sqrt3\) をとる。
答え: \(\color{red}{2\sqrt3}\)
\(x > 0\) より、
\(3x > 0\), \(\displaystyle \frac{1}{x} > 0\) であるから、
相加平均と相乗平均の大小関係より
\(\begin{align} 3x + \frac{1}{x} &\geq 2\sqrt{3x \cdot \frac{1}{x}} \\ &= 2\sqrt{3} \end{align}\)
等号は \(\displaystyle 3x = \frac{1}{x}\)、すなわち \(\displaystyle x = \frac{1}{\sqrt{3}}\) で成り立つ。
したがって、\(\displaystyle 3x + \frac{1}{x}\) は \(\displaystyle x = \frac{1}{\sqrt3}\) のとき最小値 \(2\sqrt3\) をとる。
答え: \(\color{red}{2\sqrt3}\)
② 相加相乗平均で積の最大値を求める
相加平均・相乗平均の不等式を使って何かの積の最大値を求める方法を説明します。
\(\displaystyle 0 \leq x \leq \frac{\pi}{2}\) のとき、\((1 − \cos x)\cos x\) の最大値を求めよ。
\((1 − \cos x)\) と \(\cos x\) はともに正の数であり、\(2\) 数の積は定数になる(変数が残らない)ので、相加平均・相乗平均の不等式が使えます。
\(2\) 数の積の最大値を求める問題では、相加平均・相乗平均の不等式を \(\color{red}{\displaystyle ab \leq \left( \frac{a + b}{2} \right)^2}\) のかたちで利用できます。
相加平均・相乗平均の不等式を使う前に、対象となる \(2\) 数が正の数(\(0\) 以上)であることを確認します。
解答にも必ず書いてくださいね。
\(\displaystyle 0 \leq x \leq \frac{\pi}{2}\) より、
\(0 \leq \cos x \leq 1\), \(0 \leq 1 − \cos x \leq 1\)
相加平均・相乗平均の不等式 \(\displaystyle \frac{a + b}{2} \geq \sqrt{ab}\) を変形した \(\color{red}{\displaystyle ab \leq \left( \frac{a + b}{2} \right)^2}\) を利用して、\(2\) 数の積に関する不等式を得ます。
相加平均と相乗平均の大小関係より
\(\displaystyle (1 − \cos x)\cos x\)
\(\displaystyle \leq \left\{ \frac{(1 − \cos x) + \cos x}{2} \right\}^2\)
\(\displaystyle = \left( \frac{1}{2} \right)^2\)
\(\displaystyle = \frac{1}{4}\)
そうすると、\(2\) 数の積 \(\displaystyle (1 − \cos x)\cos x\) が \(\displaystyle \frac{1}{4}\) 以下である、つまり、最大値が \(\displaystyle \frac{1}{4}\) であることがわかります。
最後に、等号成立条件(\(a = b\))を確認して、最大値をとるときの変数の値を求めます。
等号は \(1 − \cos x = \cos x\) のとき、
すなわち \(\displaystyle \cos x = \frac{1}{2}\) より
\(\displaystyle x = \frac{\pi}{3}\) のときに成り立つ。
したがって、\(\displaystyle x = \frac{\pi}{3}\) のとき \(\cos x (1 − \cos x)\) は最大値 \(\displaystyle \frac{1}{4}\) をとる。
答え: \(\color{red}{\displaystyle \frac{1}{4}}\)
\(\displaystyle 0 \leq x \leq \frac{\pi}{2}\) より、
\(0 \leq \cos x \leq 1\), \(0 \leq 1 − \cos x \leq 1\) であるから、
相加平均と相乗平均の大小関係より
\(\displaystyle (1 − \cos x)\cos x\)
\(\displaystyle \leq \left\{ \frac{(1 − \cos x) + \cos x}{2} \right\}^2\)
\(\displaystyle = \left( \frac{1}{2} \right)^2\)
\(\displaystyle = \frac{1}{4}\)
等号は \(1 − \cos x = \cos x\) のとき、
すなわち \(\displaystyle \cos x = \frac{1}{2}\) より
\(\displaystyle x = \frac{\pi}{3}\) のときに成り立つ。
したがって、\(\displaystyle x = \frac{\pi}{3}\) のとき \(\cos x (1 − \cos x)\) は最大値 \(\displaystyle \frac{1}{4}\) をとる。
答え: \(\color{red}{\displaystyle \frac{1}{4}}\)
③ 相加相乗平均で不等式を証明する
相加平均・相乗平均の不等式は、不等式の証明問題でも活用できます。
\(x\), \(y > 0\) のとき、以下の不等式を示せ。
\(\displaystyle \left( x + \frac{1}{y} \right)\left( \frac{1}{x} + 4y \right) \geq 9\)
登場する変数がともに正の数であり、それらの逆数も出てくる場合は、相加平均・相乗平均の不等式が使えないかを試してみる価値があります。
式が因数分解されたかたちであれば、最初に展開しておきます。
左辺を展開すると、
\(\displaystyle \left( x + \frac{1}{y} \right) \left( \frac{1}{x} + 4y \right)\)
\(\displaystyle = 1 + 4xy + \frac{1}{xy} + 4\)
\(\displaystyle = 4xy + \frac{1}{xy} + 5\)
ここで、\(2\) 数 \(4xy\), \(\displaystyle \frac{1}{xy}\) の積は定数になることから、左辺に対して相加平均・相乗平均の不等式が使えると判断します。
相加平均・相乗平均の不等式を使う前に、注目する \(2\) 数が正の数(\(0\) 以上)であることを確認します。
\(x\), \(y > 0\) より、
\(4xy > 0\), \(\displaystyle \frac{1}{xy} > 0\)
準備が整ったら、左辺に対して相加平均・相乗平均の不等式を適用します。
この問題では、\(\color{red}{a + b \geq 2\sqrt{ab}}\) が使えますね。
相加平均と相乗平均の大小関係より
\(\begin{align} 4xy + \frac{1}{xy} + 5 &\geq 2\sqrt{4xy \cdot \frac{1}{xy}} + 5 \\ &= 4 + 5 \\ &= 9 \end{align}\)
相加平均・相乗平均の不等式を使ったら、最後に等号成立条件を確認することを習慣づけておきましょう。
等号成立は \(\displaystyle 4xy = \frac{1}{xy}\) すなわち \(\displaystyle xy = \frac{1}{2}\) のときに成立する。
したがって
\(\displaystyle \left( x + \frac{1}{y} \right)\left( \frac{1}{x} + 4y \right) \geq 9\)
が成り立つ。
これで証明が完了しました。
左辺を展開すると、
\(\displaystyle \left( x + \frac{1}{y} \right) \left( \frac{1}{x} + 4y \right)\)
\(\displaystyle = 1 + 4xy + \frac{1}{xy} + 4\)
\(\displaystyle = 4xy + \frac{1}{xy} + 5\)
\(x\), \(y > 0\) より、
\(4xy > 0\), \(\displaystyle \frac{1}{xy} > 0\) であるから、
相加平均と相乗平均の大小関係より
\(\begin{align} 4xy + \frac{1}{xy} + 5 &\geq 2\sqrt{4xy \cdot \frac{1}{xy}} + 5 \\ &= 4 + 5 \\ &= 9 \end{align}\)
等号成立は \(\displaystyle 4xy = \frac{1}{xy}\) すなわち \(\displaystyle xy = \frac{1}{2}\) のときに成立する。
したがって
\(\displaystyle \left( x + \frac{1}{y} \right)\left( \frac{1}{x} + 4y \right) \geq 9\)
が成り立つ。
(証明終わり)
なお、この例題を次のように解くのは間違いです。
相加平均と相乗平均の大小関係より
\(\displaystyle x + \frac{1}{y} \geq 2\sqrt{\frac{x}{y}}\) …①
\(\displaystyle \frac{1}{x} + 4y \geq 4\sqrt{\frac{y}{x}}\) …②
よって
\(\begin{align} \left( x + \frac{1}{y} \right) \left( \frac{1}{x} + 4y \right) &\geq 2\sqrt{\frac{x}{y}} \cdot 4\sqrt{\frac{y}{x}} \\ &= 8 \end{align}\)
なぜかというと、相加平均・相乗平均の不等式を複数回利用する場合は、すべての等号が同時に成り立つ必要があるからです。
①の等号成立は \(xy = 1\) のとき、②の等号成立は \(xy = 4\) のときであり、同時に成り立つような \(x\), \(y\) は存在しません。
このように、相加平均・相乗平均の不等式を使うときには、常に等号成立条件を意識しましょう。
相加相乗平均の応用問題
一見、相加平均と相乗平均の大小関係を使えるとは判断しにくい応用問題を集めました。
「相加相乗平均を使えることに気づく」練習として、挑戦してみてください。
応用問題①「長方形の面積の最大値」
周の長さが \(4\) である長方形の面積の最大値を求めよ。
長方形の辺の長さを文字でおいて周の長さや面積の条件式を立ててみると、実は相加平均・相乗平均の不等式が使える問題です。
長方形の辺の長さを \(x\), \(y\) \((x \geq y > 0)\) とおく。
周の長さが \(4\) であるから、
\(2x + 2y = 4\) すなわち \(x + y = 2\)
また、長方形の面積は \(xy\) である。
ここで、\((x \geq y > 0)\) であるから、
相加平均と相乗平均の大小関係より
\(\displaystyle xy \leq \left( \frac{x + y}{2} \right)^2 = \left( \frac{2}{2} \right)^2 = 1\)
よって、\(xy\) は最大値 \(1\) をとる。
なお、等号は \(x = y = 1\) のときに成り立つ。
答え: \(\color{red}{1}\)
応用問題②「和の最小値(式変形が必要)」
(1) \(x > 0\) のとき、\(\displaystyle x + \frac{4}{x + 1}\) の最小値を求めよ。
(2) \(x > 0\), \(y > 0\), \(z > 0\) のとき、\(\displaystyle (x + y + z)\left( \frac{1}{x} + \frac{1}{y} + \frac{1}{z} \right)\) の最小値を求めよ。
(1) では、\(2\) 数の積が定数になるように式を少し工夫すると相加平均・相乗平均の不等式が使えます。
また、(2) のように変数が \(3\) つ出てきても、積が定数になる数のペアに注目すると相加平均・相乗平均の不等式が使えます。まずは式を展開してみましょう。
(1)
\(\displaystyle x + \frac{4}{x + 1} = (x + 1) + \frac{4}{x + 1} − 1\)
ここで、\(x + 1 > 0\) であるから、
相加平均と相乗平均の大小関係より
\(\begin{align} (x + 1) &+ \frac{4}{x + 1} − 1 \\ &\geq 2\sqrt{(x + 1) \cdot \frac{4}{x + 1}} − 1 \\ &= 4 − 1 \\ &= 3 \end{align}\)
等号は \(\displaystyle x + 1 = \frac{4}{x + 1}\) のとき、
すなわち \((x + 1)^2 = 4\) より
\(x = 1\)
のときに成り立つ。
よって、\(x = 1\) のとき、\(\displaystyle x + \frac{4}{x + 1}\) は最小値 \(3\) をとる。
答え: \(\color{red}{3}\)
(2)(見切れる場合は横へスクロール)
\(\displaystyle (x + y + z) \left( \frac{1}{x} + \frac{1}{y} + \frac{1}{z} \right)\)
\(\displaystyle = 1 + \frac{x}{y} + \frac{x}{z} + \frac{y}{x} + 1 + \frac{y}{z} + \frac{z}{x} + \frac{z}{y} + 1\)
\(\displaystyle = \left( \frac{x}{y} + \frac{y}{x} \right) + \left( \frac{y}{z} + \frac{z}{y} \right) + \left( \frac{z}{x} + \frac{x}{z} \right) + 3\)
ここで、\(x > 0\), \(y > 0\), \(z > 0\) であるから、
相加平均と相乗平均の大小関係より
\(\displaystyle \frac{x}{y} + \frac{y}{x} \geq 2\sqrt{\frac{x}{y} \cdot \frac{y}{x}} = 2\)
\(\displaystyle \frac{y}{z} + \frac{z}{y} \geq 2\sqrt{\frac{y}{z} \cdot \frac{z}{y}} = 2\)
\(\displaystyle \frac{z}{x} + \frac{x}{z} \geq 2\sqrt{\frac{z}{x} \cdot \frac{x}{z}} = 2\)
これらはすべて、\(x = y = z\) のときに等号が成立する。
よって、
\(\displaystyle (x + y + z) \left( \frac{1}{x} + \frac{1}{y} + \frac{1}{z} \right)\)
\(\geq 2 + 2 + 2 + 3\)
\(= 9\)
したがって、\(x = y = z\) のとき最小値 \(9\) をとる。
答え: \(\color{red}{9}\)
応用問題③「分数 \(\displaystyle \frac{x}{x^2 + 1}\) の最大値」
\(x > 0\) のとき、\(\displaystyle \frac{x}{x^2 + 1}\) の最大値を求めよ。
「\(x\) が正の数である」という情報に反応しましょう。
実は、このような問題もうまく式変形すると相加平均と相乗平均の大小関係が使えます。
\(\displaystyle \frac{x}{x^2 + 1}\) の分母・分子を \(x\) で割ると、
\(\displaystyle \frac{x}{x^2 + 1} = \frac{1}{x + \frac{1}{x}}\)
ここで、\(x > 0\) であるから、
相加平均と相乗平均の大小関係より
\(\displaystyle x + \frac{1}{x} \geq 2\sqrt{x \cdot \frac{1}{x}} = 2\)
(等号成立は \(\displaystyle x = \frac{1}{x}\)、すなわち \(x = 1\) のとき)
\(\displaystyle x + \frac{1}{x} \geq 2\) より、
\(\displaystyle \frac{1}{x + \frac{1}{x}} \leq \frac{1}{2}\)
したがって、
\(\displaystyle \frac{x}{x^2 + 1}\) は最大値 \(\displaystyle \frac{1}{2}\) をとる。
答え: \(\color{red}{\displaystyle \frac{1}{2}}\)
相加相乗平均の証明問題
最後に、相加平均と相乗平均の大小関係を使った不等式の証明問題に挑戦しましょう。
証明問題「\(\displaystyle (x^2 + y^2) \left( \frac{1}{x^2} + \frac{1}{y^2} \right) \geq 4\)」
\(\displaystyle (x^2 + y^2) \left( \frac{1}{x^2} + \frac{1}{y^2} \right) \geq 4\) を示せ。
\(x^2\), \(y^2\) は常に \(0\) 以上の数なので、「相加平均・相乗平均の不等式が使えないかな?」と考えましょう。
左辺を展開すると、
\(\displaystyle (x^2 + y^2) \left( \frac{1}{x^2} + \frac{1}{y^2} \right) = 2 + \frac{x^2}{y^2} + \frac{y^2}{x^2}\)
ここで、\(x^2 > 0\), \(y^2 > 0\) より
\(\displaystyle \frac{x^2}{y^2} > 0\), \(\displaystyle \frac{y^2}{x^2} > 0\) であるから、
相加平均と相乗平均の大小関係より
\(\begin{align}\displaystyle 2 + \frac{x^2}{y^2} + \frac{y^2}{x^2} &\geq 2 + 2\sqrt{\frac{x^2}{y^2} \cdot \frac{y^2}{x^2}} \\&= 4\end{align}\)
等号は \(x^2 = y^2\)、すなわち \(x = \pm y\) のときに成り立つ。
したがって
与式 \(\displaystyle (x^2 + y^2) \left( \frac{1}{x^2} + \frac{1}{y^2} \right) \geq 4\) は成り立つ。
(証明終わり)
以上で解説は終わりです。
相加平均と相乗平均の大小関係は、最大値・最小値を求める問題、不等式の証明問題などで切り札になることが多いです。
しっかりと理解を深めておきましょう!