この記事では、「相似」についてわかりやすく解説していきます。
記号や相似な図形の性質、三角形の相似条件、相似比と面積比の関係、証明問題も説明していくので、ぜひマスターしてくださいね!
目次
相似とは?
相似とは、形はまったく同じで、大きさの違う図形同士の関係です。
つまり、相似な図形同士は拡大・縮小の関係にあるといえますね。
また、裏返した図形においても相似は成り立ちます。
相似の定義
相似は次のように定義できます。
\(2\) つの図形が相似であるとは、一方の図形を拡大または縮小したとき、他方の図形と合同になることである。
「合同」とは、まったく同じ形、大きさである図形同士(拡大・縮小倍率が \(1\) 倍の図形同士)の関係でしたね。
相似の記号
相似は、「∽」という記号を使って次のように表します。
\(\triangle \mathrm{ABC}\) と \(\triangle \mathrm{DEF}\) が相似であるとき、
\(\color{red}{\triangle \mathrm{ABC}}\) ∽ \(\color{red}{\triangle \mathrm{DEF}}\)
このとき、対応する頂点の順番を合わせるのがルールです。
相似の性質
相似な図形には、次の \(2\) つの性質があります。
① 対応する辺の長さの比はすべて等しい
② 対応する角の大きさはそれぞれ等しい
それぞれについて詳しく説明します。
性質① 対応する辺の長さの比はすべて等しい
相似な図形では、対応するすべての線分が同じ倍率で拡大・縮小されています。
こうした拡大・縮小の倍率は「相似比」と呼ばれます。上の図における相似比は \(1 : 2\) ですね。
性質② 対応する角の大きさはそれぞれ等しい
相似な図形では、辺の長さはある倍率で拡大・縮小されても、対応する角の大きさは同じです。
三角形の相似条件
三角形の相似条件は次の \(3\) つです。
① \(3\) 組の辺の比がそれぞれ等しい
② \(2\) 組の辺の比とその間の角が等しい
③ \(2\) 組の角がそれぞれ等しい
三角形の相似条件は、相似を証明する問題ではもちろん、辺の長さや角度を求める問題でも利用することがあります。
合同条件と似ていますが、辺についてはあくまでも「比」が等しいという点に注意しましょう。
それぞれの相似条件を詳しく見てみましょう。
① 3 組の辺の比がそれぞれ等しい
\(2\) つの三角形において、対応する辺を \(a\) と \(a’\)、\(b\) と \(b’\)、\(c\) と \(c’\) とすると、
\(a : a’ = b : b’ = c : c’\)
が成り立てば、相似であると言えます。
② 2 組の辺の比とその間の角が等しい
\(2\) つの三角形において、対応する辺を \(a\) と \(a’\)、\(c\) と \(c’\)、その間の角を \(\angle \mathrm{B}\) と \(\angle \mathrm{B’}\) とすると、
\(a : a’ = c : c’\)
\(\angle \mathrm{B} = \angle \mathrm{B’}\)
が成り立てば、相似であると言えます。
③ 2 組の角がそれぞれ等しい
\(2\) つの三角形において、任意の \(2\) 組の角が等しい、例えば
\(\angle \mathrm{B} = \angle \mathrm{B’}\)
\(\angle \mathrm{C} = \angle \mathrm{C’}\)
が成り立てば、相似であると言えます。
三角形において \(2\) つの角の大きさが等しいとわかれば、自ずともう \(1\) つの角も等しいことがわかりますね。
平面図形の相似比と面積比
ここでは、平面図形の相似比と面積比について解説していきます。
相似比とは?
相似比とは、相似な図形の対応する辺の比のことです。
例えば \(\triangle \mathrm{ABC}\) と \(\triangle \mathrm{DEF}\) が相似の場合、
\(\mathrm{AB} : \mathrm{DE}\)、\(\mathrm{BC} : \mathrm{EF}\)、\(\mathrm{AC} : \mathrm{DF}\) が「相似比」であり、それらの比は一定です。
つまり、対応する辺を見つけて、長さの比を求めることで相似比が求められます。
相似な図形の面積比
相似な図形の面積比は、相似比の \(2\) 乗です。
つまり、相似比が \(a : b\) の図形では、面積比は \(\color{red}{a^2 : b^2}\) となります。
これは、相似な図形同士であれば辺の比や高さの比がすべて相似比に等しくなるためです。
三角形に限らず、どのような平面図形においても、相似な図形同士であれば面積比は相似比の \(2\) 乗となります。
相似の計算問題
それでは、相似の計算問題に挑戦してみましょう。
計算問題①「三角形の相似比と面積比を求める」
次の図で、\(\triangle \mathrm{ABC}\) ∽ \(\triangle \mathrm{DEF}\) であるとき、\(\triangle \mathrm{ABC}\) と \(\triangle \mathrm{DEF}\) の相似比と面積比を求めなさい。
\(\triangle \mathrm{ABC}\) ∽ \(\triangle \mathrm{DEF}\) なので、\(\mathrm{AB}\) と \(\mathrm{DE}\) が対応する辺です。
\(\mathrm{AB} : \mathrm{DE} = 3 : 6 = 1 : 2\) なので、
\(\triangle \mathrm{ABC}\) と \(\triangle \mathrm{DEF}\) の相似比は
\(1 : 2\)
よって、\(\triangle \mathrm{ABC}\) と \(\triangle \mathrm{DEF}\) の面積比は
\(1^2 : 2^2 = 1 : 4\)
答え: 相似比 \(\color{red}{1 : 2}\)、面積比 \(\color{red}{1 : 4}\)
計算問題②「台形の中の三角形と面積比」
図のように、\(\mathrm{AD} \ // \ \mathrm{BC}\)、\(\mathrm{AD} = 2 \ \text{cm}\)、\(\mathrm{BC} = 8 \ \text{cm}\) の台形 \(\mathrm{ABCD}\) がある。対角線 \(\mathrm{AC}\)、\(\mathrm{DB}\) の交点を \(\mathrm{E}\) とする。
また、\(\mathrm{AC}\)、\(\mathrm{DB}\) の中点をそれぞれ \(\mathrm{F}\)、\(\mathrm{G}\) とし、\(\mathrm{AG}\) の延長と \(\mathrm{BC}\) の交点を \(\mathrm{H}\) とする。
このとき、次の問いに答えなさい。
(1) 線分 \(\mathrm{BH}\) の長さを求めよ。
(2) 線分 \(\mathrm{GF}\) の長さを求めよ。
(3) \(\triangle \mathrm{AGE}\) の面積を \(S\)、\(\triangle \mathrm{DEC}\) の面積を \(T\) とするとき、\(S\) と \(T\) の比を最も簡単な整数の比で表せ。
合同な図形や相似な図形をどんどん見つけましょう。
対応する辺の値を用いて答えが求められます。
(1) \(\triangle \mathrm{AGD}\) と \(\triangle \mathrm{HGB}\) において、
仮定より、\(\mathrm{G}\) は \(\mathrm{DB}\) の中点なので
\(\mathrm{DG} = \mathrm{BG}\) …①
また \(\mathrm{AD} \ // \ \mathrm{BC}\) で錯角は等しいので、
\(\angle \mathrm{ADG} = \angle \mathrm{HBG}\) …②
対頂角は等しいので、
\(\angle \mathrm{AGD} = \angle \mathrm{HGB}\) …③
①、②、③より、\(1\) つの辺とその両端の角がそれぞれ等しいので、
\(\triangle \mathrm{AGD} \equiv \triangle \mathrm{HGB}\)
合同な図形では、対応する辺の長さはそれぞれ等しいので、
\(\mathrm{AD} = \mathrm{HB}\)
ゆえに、\(\mathrm{BH} = 2\)
答え: \(2 \ \text{cm}\)
(2) \(\triangle \mathrm{AGF}\) と \(\triangle \mathrm{AHC}\) において、
仮定より、\(\mathrm{F}\) は \(\mathrm{AC}\) の中点なので
\(\mathrm{AF} : \mathrm{AC} = 1 : 2\) …①
また、\(\triangle \mathrm{AGD} \equiv \triangle \mathrm{HGB}\) より、
\(\mathrm{AG} : \mathrm{HG} = 1 : 1\) なので
\(\mathrm{AG} : \mathrm{AH} = 1 : 2\) …②
共通な角より、
\(\angle \mathrm{GAF} = \angle \mathrm{HAC}\) …③
①、②、③より、
\(2\) 組の辺の比とその間の角が等しいので、
\(\triangle \mathrm{AGF}\) ∽ \(\triangle \mathrm{AHC}\)
\(\triangle \mathrm{AGF}\) と \(\triangle \mathrm{AHC}\) の相似比は
\(\mathrm{AG} : \mathrm{AH} = 1 : 2\) …④
また、
\(\begin{align} \mathrm{HC} &= \mathrm{BC} − \mathrm{BH} \\ &= 8 − 2 \\ &= 6 \end{align}\)
よって、④より
\(\mathrm{GF} : \mathrm{HC} = 1 : 2\)
\(\mathrm{GF} : 6 = 1 : 2\)
\(2\mathrm{GF} = 6\)
\(\mathrm{GF} = 3\)
答え: \(3 \ \text{cm}\)
(3) \(\triangle \mathrm{AED}\) と \(\triangle \mathrm{CEB}\) において、
対頂角は等しいので
\(\angle \mathrm{AED} = \angle \mathrm{CEB}\) …①
仮定より \(\mathrm{AD} \ // \ \mathrm{BC}\)
ゆえに錯角は等しいので、
\(\angle \mathrm{ADE} = \angle \mathrm{CBE}\) …②
①、②より、
\(2\) つの角がそれぞれ等しいので、
\(\triangle \mathrm{AED}\) ∽ \(\triangle \mathrm{CEB}\)
\(\triangle \mathrm{AED}\) と \(\triangle \mathrm{CEB}\) の相似比は、
\(\begin{align} \mathrm{AD} : \mathrm{CB} &= 2 : 8 \\ &= 1 : 4 \end{align}\)
ゆえに、\(\triangle \mathrm{AED}\) と \(\triangle \mathrm{CEB}\) の面積比は
\(1 : 16\)
次に、\(\triangle \mathrm{ADC}\) 中の \(\triangle \mathrm{AED}\) と \(\triangle \mathrm{DEC}\) において、\(\mathrm{AE}\) と \(\mathrm{CE}\) をそれぞれ底辺とみたとき、高さは等しいので、底辺の比が面積の比となる。
\(\mathrm{AE} : \mathrm{CE} = 1 : 4\) なので、
\(\triangle \mathrm{AED} : \triangle \mathrm{DEC} = 1 : 4\)
\(\triangle \mathrm{AED} : T = 1 : 4\)
\(4 \triangle \mathrm{AED} = T\)
\(\displaystyle \triangle \mathrm{AED} = \frac{1}{4} T\) …(i)
また、\(\triangle \mathrm{AED}\) と \(\triangle \mathrm{FEG}\) において、
対頂角が等しいので、
\(\angle \mathrm{AED} = \angle \mathrm{FEG}\) …③
\(\mathrm{AD} \ // \ \mathrm{FE}\) より、錯角が等しいので
\(\angle \mathrm{ADE} = \angle \mathrm{FGE}\) …④
③、④より、
\(2\) つの角がそれぞれ等しいので、
\(\triangle \mathrm{AED}\) ∽ \(\triangle \mathrm{FEG}\)
\(\triangle \mathrm{AED}\) と \(\triangle \mathrm{FEG}\) の相似比は
\(\mathrm{AD} : \mathrm{FG} = 2 : 3\)
\(\triangle \mathrm{ADG}\) 中の \(\triangle \mathrm{AED}\) と \(\triangle \mathrm{AGE}\) において、\(\mathrm{DE}\) と \(\mathrm{EG}\) をそれぞれ底辺とみたとき、高さは等しいので、底辺の比が面積の比となる。
\(\mathrm{DE} : \mathrm{EG} = 2 : 3\) なので、
\(\triangle \mathrm{AED} : \triangle \mathrm{AGE} = 2 : 3\)
\(\triangle \mathrm{AED} : S = 2 : 3\)
\(3 \triangle \mathrm{AED} = 2S\)
\(\displaystyle \triangle \mathrm{AED} = \frac{2}{3} S\) …(ii)
(i)、(ii) より、
\(\displaystyle \frac{2}{3} S = \frac{1}{4} T\)
\(\displaystyle S = \frac{1}{4} T \cdot \frac{3}{2} = \frac{3}{8} T\)
答え: \(3 : 8\)
相似の証明問題
最後に、三角形の相似条件を使った証明問題に挑戦しましょう。
証明問題①「相似な三角形を見つける」
下の図において、相似な三角形を記号を使って表しなさい。
また、そのときの相似条件も答えなさい。
どの相似条件を用いるかや、対応する頂点を合わせることに気をつけましょう。
- \(\triangle \mathrm{JKL}\) ∽ \(\triangle \mathrm{NMO}\)
\(3\) 組の辺の比がそれぞれ等しい
\((\mathrm{JK} : \mathrm{KL} : \mathrm{LJ} = \mathrm{NM} : \mathrm{MO} : \mathrm{ON} \) \(= 3 : 5 : 6)\) - \(\triangle \mathrm{DEF}\) ∽ \(\triangle \mathrm{PRQ}\)
\(2\) 組の辺の比とその間の角が等しい
\((\mathrm{DE} : \mathrm{EF} = \mathrm{PR} : \mathrm{RQ} = 3 : 2\),
\(\angle \mathrm{E} = \angle \mathrm{R} = 45^\circ)\) - \(\triangle \mathrm{ABC}\) ∽ \(\triangle \mathrm{HIG}\)
\(2\) 組の角がそれぞれ等しい
\((\angle \mathrm{A} = \angle \mathrm{H} = 90^\circ, \angle \mathrm{B} = \angle \mathrm{I} = 60^\circ)\)
証明問題②「三角形の相似を示す」
下の図のような平行四辺形 \(\mathrm{ABCD}\) がある。\(\angle \mathrm{A}\) の二等分線と辺 \(\mathrm{BC}\) との交点を \(\mathrm{E}\)、\(\angle \mathrm{D}\) の二等分線と辺 \(\mathrm{BC}\) との交点を \(\mathrm{F}\)、\(\angle \mathrm{A}\) の二等分線と \(\angle \mathrm{D}\) の二等分線との交点を \(\mathrm{G}\) とする。
また、\(\mathrm{DC}\) の延長と \(\angle \mathrm{A}\) の二等分線との交点を \(\mathrm{H}\) とする。
このとき、\(\triangle \mathrm{GFE}\) ∽ \(\triangle \mathrm{GDH}\) であることを証明しなさい。
角度のヒントが多いですね。
問題文を整理しながら、どの相似条件にもっていくか道筋を立ててから証明を進めていきましょう。
\(\triangle \mathrm{GFE}\) と \(\triangle \mathrm{GDH}\) において
仮定より、
\(\mathrm{AD} \ // \ \mathrm{BC}\) …①
\(\mathrm{AB} \ // \ \mathrm{DH}\) …②
\(\angle \mathrm{EAB} = \angle \mathrm{EAD}\) …③
\(\angle \mathrm{FDC} = \angle \mathrm{FDA}\) …④
①より同位角は等しいから、
\(\angle \mathrm{EAD} = \angle \mathrm{GEF}\) …⑤
\(\angle \mathrm{FDA} = \angle \mathrm{GFE}\) …⑥
②より錯角は等しいから、
\(\angle \mathrm{EAB} = \angle \mathrm{GHD}\) …⑦
③、⑤、⑦より、
\(\angle \mathrm{GEF} = \angle \mathrm{GHD}\) …⑧
④、⑥より、
\(\angle \mathrm{GFE} = \angle \mathrm{GDH}\) …⑨
⑧、⑨より、
\(2\) 組の角がそれぞれ等しいから
\(\triangle \mathrm{GFE}\) ∽ \(\triangle \mathrm{GDH}\)
(証明終わり)
以上で証明問題も終わりです!
相似な図形を見つけながら解いていく問題はとても多いです。
まずは、正確に相似条件を覚えるところからはじめましょう!