この記事では、「多項式」についてできるだけわかりやすく解説していきます。
項・単項式・次数・係数などの意味や簡単な計算問題も紹介していきますので、この記事を通してぜひマスターしてくださいね。
目次
多項式とは?
多項式とは、項を \(2\) つ以上含んだ式、つまり、単項式の和として表される式のことです。
これだけを説明されても、「項」や「単項式」が何か知らなければ、よくわかりませんね。
順番に理解していきましょう。
項
項とは、式を構成する文字、数字、およびそれらの積などで表される、一かたまりの要素です。
(例)
- \(3\)
- \(x\)
- \(3x\)
- \(\displaystyle \frac{x}{3}\)
- \(3xyz\)
- \(−3\)
なお、\(−3\) のように符号も含めて「項」と呼びます。
すべての式は項から成り立っていて、式に含まれる項の数から「単項式」と「多項式」とに分類できます。
単項式
単項式とは、\(1\) つの項で構成された式です。
先ほど例に示した項はすべて単項式であると言えます。
つまり、単項式は数字や文字、またはそれらの積(かけ算)で表せます。
(例)
- \(3\)
- \(x\)
- \(3x \ \ \color{salmon}{(3 \times x)}\)
- \(\displaystyle \frac{x}{3} \ \ \color{salmon}{\left(\frac{1}{3} \times x \right)}\)
- \(3xyz \ \ \color{salmon}{(3 \times x \times y \times z)}\)
- \(−3\)
分母に文字(変数)がくる項は、単項式ではなく「分数式」と呼ばれることに注意しましょう。
単項式はあくまでも数字や文字のかけ算で表されるものだからです。
(分数式の例) \(\displaystyle \frac{3}{x} = 3 \color{salmon}{\div} x\)
多項式
多項式とは、\(2\) つ以上の項で構成される式、つまり、単項式の和(足し算)として表される式です。
(例)
\(\displaystyle 3x \color{salmon}{+} \frac{x}{3} \color{salmon}{+} (−3)\)
このような式は、
\(\displaystyle 3 \color{salmon}{+} 3x \color{salmon}{+} \frac{x}{3} \color{salmon}{−} 3\)
と書かれることが多いので、足し算だけではなく、引き算も入っているように見えます。
しかし、項は符号を含む概念なので、引き算ではなく『マイナスを含む項の足し算』ととらえます。
単項式と多項式の用語
単項式・多項式には、いくつかの重要な用語があります。
ここでは \(2x^2 + 3x + 1\) という多項式を例に、「次数」「係数」「定数項」「昇べきの順」「降べきの順」の \(5\) つの用語を説明していきます。
① 次数
- 単項式(項)の次数
項に含まれる文字の個数。 - 多項式の次数
含まれている項の次数の中で最も大きい次数。
多項式 \(2x^2 + 3x + 1\) の項ごとの次数と全体の次数を考えてみましょう。
【項ごとの次数】
- \(2x^2\)
\(2x^2 = 2 \cdot x \cdot x\) より、文字 \(x\) が \(2\) 個含まれる
→ 次数は \(2\) - \(3x\)
\(3x = 3 \cdot x\) より、文字 \(x\) が \(1\) 個含まれる
→ 次数は \(1\) - \(1\)
文字が含まれない
→ 次数は \(0\)
【多項式の次数】
\(2x^2 + 3x + 1\)
次数が最も大きい項は \(2x^2\) (次数 \(2\))
→ 次数は \(\color{red}{2}\)
ちなみに、式全体の次数 \(n\) に注目して、多項式を「\(n\) 次式」と呼ぶこともあります。
多項式 \(2x^2 + 3x + 1\) は「二次式」ですね。
② 係数
係数
文字を含む項の数字部分。
多項式 \(2x^2 + 3x + 1\) において、文字を含む項は「\(2x^2\)」と「\(3x\)」で、それぞれの係数(つまり数字部分)は \(\color{red}{2}\) と \(\color{red}{3}\) です。
③ 定数項
定数項
文字が含まれない、数字のみからなる項。
多項式 \(2x^2 + 3x + 1\) において、文字が含まれていない項、つまり定数項は \(\color{red}{1}\) です。
④ 昇べきの順
昇べきの順
項を次数の小さい順に並べること。
式の前から後ろへ次数がだんだん大きくなるから、「昇」べきと呼びます。
多項式「\(2x^2 + 3x + 1\)」の項を次数が小さい方から並べ替えると
\(1 + 3x + 2x^2\)
となります。これを「昇べきの順に並べる」といいます。
⑤ 降べきの順
降べきの順
項を次数の大きい順に並べること。
式の前から後ろへ次数がだんだん小さくなるから、「降」べきと呼びます。
多項式 \(2x^2 + 3x + 1\) はすでに降べきの順に並べられていますね。
一般的に、多項式は降べきの順で示すことが多いです。
複数の文字を含む多項式では、「\(x\) について降べきの順」「\(y\) について昇べきの順」など、特定の文字に着目して項を並べ替えることもあります。
このときは、着目する文字以外の文字は単なる数字とみなして考えます。
多項式の計算問題
多項式にまつわる用語は理解できたでしょうか。確認もかねて、問題を解いてみましょう。
計算問題①「多項式をすべて選ぶ」
次の式のうち、多項式をすべて選べ。
\(5x\)、\(x + 1\)、\(\displaystyle −\frac{x}{2}\)、\(3x^2 + x\)、\(\displaystyle \frac{x − 1}{2}\)
多項式とは、単項式の和で表せる式のことでしたね。
\(+\) や \(−\) の符号がある部分に着目しましょう。
- \(5x\)(単項式)
- \(x + 1\)(多項式)
- \(\displaystyle −\frac{x}{2} = −\frac{1}{2} x\)(単項式)
- \(3x^2 + x\)(多項式)
- \(\displaystyle \frac{x − 1}{2} = \frac{1}{2} x + \left( −\frac{1}{2} \right)\)(多項式)
よって、多項式は
\(x + 1\)、\(3x^2 + x\)、\(\displaystyle \frac{x − 1}{2}\)
答え:
\(x + 1\)、\(3x^2 + x\)、\(\displaystyle \frac{x − 1}{2}\)
計算問題②「昇べきの順に並べる」
多項式 \(\displaystyle 3x + x^2 + \frac{x^4}{2} + 5\) について次の問いに答えよ。
(1) 昇べきの順に並べよ。
(2) 次数を求めよ。
まずは、各項の次数を知る必要があります。\(1\) つずつ確認しましょう。
各項の次数は以下のとおり(括弧内が次数)。
- \(3x\) ( \(1\) )
- \(x^2 = x \cdot x\) ( \(2\) )
- \(\displaystyle \frac{x^4}{2} = \frac{1}{2} \cdot x \cdot x \cdot x \cdot x\) ( \(4\) )
- \(5\) ( \(0\) )
(1) 昇べきの順に並べると、
\(\displaystyle 5 + 3x + x^2 + \frac{x^4}{2}\)
答え: \(\displaystyle 5 + 3x + x^2 + \frac{x^4}{2}\)
(2) 最も次数が大きい項は \(\displaystyle \frac{x^4}{2}\) であるから、多項式の次数は \(4\)
答え: \(4\)
計算問題③「複数の文字を含む多項式」
多項式 \(3x^3 + y^5 + 3xyz + z\) について次の問いに答えよ。
(1) \(x\) について降べきの順に並べよ。
(2) 次の場合の次数を求めよ。
(i) 特定の文字に着目しない場合
(ii) \(x\) に着目する場合
どの文字に着目するかによって、降べきの順、式の次数は異なります。
特定の文字に着目しない場合は、\(x\), \(y\), \(z\) すべてを文字とみなして考えます。
特定の文字に着目する場合は、その文字だけを文字ととらえて式を整理してみましょう。
(1)
\(3x^3 + y^5 + 3xyz + z\) を \(x\) について降べきの順に並べると
\(3x^3 + 3yzx + y^5 + z\)
答え: \(3x^3 + 3xyz + y^5 + z\)
(2)
(i) すべての文字を文字とみなすと、 各項の次数は以下のとおり(括弧内が次数)。
- \(3x^3\) ( \(3\) )
- \(y^5\) ( \(5\) )
- \(3xyz\) ( \(3\) )
- \(z\) ( \(1\) )
最も次数が大きい項は \(y^5\) であるから、多項式の次数は \(5\) 。
(ii) \(x\) に着目した場合の各項の次数は以下のとおり(括弧内が次数)。
- \(3x^3\) ( \(3\) )
- \(3yzx\) ( \(1\) )
- \(y^5 + z\) ( \(0\) )
最も次数が大きい項は \(3x^3\) であるから、式の次数は \(3\) 。
答え: (i) \(5\) 、(ii) \(3\)
以上で、すべての問題は終わりです!
多項式の考え方は理解できたでしょうか?
高校数学の基盤となる重要な考え方なので、しっかり理解して、わからないところは復習しておきましょう。