この記事では、「不定形の極限」の解消法をわかりやすく解説していきます。
例題を通して極限値の求め方を説明していきますので、ぜひこの記事を通してマスターしてくださいね。
目次
不定形とは?
不定形の極限とは、全体がどのような極限値に向かうかが直接定められない以下のようなタイプの極限です。
不定形の極限の例
- \(\infty − \infty\)
- \(0 \times \infty\)
- \(\displaystyle \frac{0}{0}\)
- \(\displaystyle \frac{\infty}{\infty}\)
数列や関数の極限は、「収束すること」が明らかになっていないと求められません。
例えば、次のような式の形では極限が定まりません。
(例)
- \(\displaystyle \lim_{x \to 2} \frac{x^3 − 3x − 2}{x^2 − 3x + 2}\)
\(x \to 2\) のとき、\(\displaystyle \frac{x^3 − 3x − 2}{x^2 − 3x + 2} \to \color{red}{\frac{0}{0}}\) - \(\displaystyle \lim_{n \to \infty} (2n^3 − 3n^2)\)
\(n \to \infty\) のとき、\(2n^3 − 3n^2 \to \color{red}{\infty − \infty}\) - \(\displaystyle \lim_{n \to \infty} \frac{\sqrt{n^3 + 1}}{\sqrt{n^2 + 1} + \sqrt{n}}\)
\(n \to \infty\) のとき、\(\displaystyle \frac{\sqrt{n^3 + 1}}{\sqrt{n^2 + 1} + \sqrt{n}} \to \color{red}{\frac{\infty}{\infty}}\)
このようなものを「不定形の極限」といいます。
極限の問題として出てくるのは、このような不定形の極限がほとんどです。
不定形の解消方法には、大きく分けると「式変形」か「はさみうちの原理」の \(2\) つがあります。
それぞれについて説明していきます。
不定形の解消法①:式変形
式変形による不定形の解消は、問題のパターンによって次のように対応します。
それぞれ例題を見ながら確認しましょう。
【式変形①】因数分解し、約分する
分数式の場合、まずは因数分解できるかを確認しましょう。
分母分子が約分され、そのまま不定形が解消できることも多いですよ。
次の極限を求めよ。
\(\displaystyle \lim_{x \to 2} \frac{x^3 − 3x − 2}{x^2 − 3x + 2}\)
このままだと、\(\displaystyle \frac{0}{0}\) の不定形です。
一方、分母分子をそれぞれ因数分解してみると、約分されて極限を求められる形になります。
\(\displaystyle \lim_{x \to 2} \frac{x^3 − 3x − 2}{x^2 − 3x + 2}\)
\(\displaystyle = \lim_{x \to 2} \frac{(x − 2)(x^2 + 2x + 1)}{(x − 1)(x − 2)}\)
\(\displaystyle = \lim_{x \to 2} \frac{(x + 1)^2}{x − 1}\)
\(= \color{red}{9}\)
【式変形②】分母の最高次の項で分母・分子を割る
一般的に、分数式は分母の最高次の項で分母・分子の各要素を割るとうまくいきます。
無理式が含まれていても、分数式ならこの方法が有効です。
次の極限を求めよ。
(1) \(\displaystyle \lim_{x \to −\infty} \frac{2x^2 + 3}{x^3 − 2x}\)
(2) \(\displaystyle \lim_{n \to \infty} \frac{\sqrt{n^3 + 1}}{\sqrt{n^2 + 1} + \sqrt{n}}\)
(1) は \(\displaystyle \frac{\infty}{−\infty}\)、(2) は \(\displaystyle \frac{\infty}{\infty}\) の不定形です。
分母の最高次の項に着目しましょう。
(1)
\(\displaystyle \lim_{x \to −\infty} \frac{2x^2 + 3}{x^3 − 2x}\)
\(\displaystyle = \lim_{x \to −\infty} \frac{\frac{2}{x} + \frac{3}{x^3}}{1 − \frac{2}{x^2}}\)
\(\displaystyle = \frac{0 + 0}{1 − 0}\)
\(= \color{red}{0}\)
(2)
\(\displaystyle \lim_{n \to \infty} \frac{\sqrt{n^3 + 1}}{\sqrt{n^2 + 1} + \sqrt{n}}\)
\(\displaystyle = \lim_{n \to \infty} \frac{\sqrt{n + \frac{1}{n^2}}}{\sqrt{1 + \frac{1}{n^2}} + \sqrt{\frac{1}{n}}}\)
\(= \color{red}{\infty}\)
【式変形③】最高次の項でくくり出す
分数式でない、\(n\) や \(x\) の多項式の場合、最高次の項でくくり出すとうまくいきます。
次の極限を求めよ。
\(\displaystyle \lim_{n \to \infty} (2n^3 − 3n^2)\)
このままだと \(\infty − \infty\) の不定形ですが、最高次の項 \(n^3\) でくくると \(\infty \times (2 − 0)\) の形にできますね。
\(\displaystyle \lim_{n \to \infty} (2n^3 − 3n^2)\)
\(\displaystyle = \lim_{n \to \infty} n^3 \left( 2 − \frac{3}{n} \right)\)
\(= \color{red}{\infty}\)
【式変形④】有理化する
分数式でなく、\(n\) や \(x\) の無理式を含む式の場合、無理式の部分を有理化するとうまくいきます。
次の極限を求めよ。
\(\displaystyle \lim_{x \to −\infty} (\sqrt{x^2 + 3x} + x)\)
このままだと \(\infty − \infty\) の不定形です。
\(\displaystyle \sqrt{x^2 + 3x} + x = \frac{\sqrt{x^2 + 3x} + x}{1}\) とみて、分子を有理化すると考えましょう。
\(\displaystyle \lim_{x \to −\infty} (\sqrt{x^2 + 3x} + x)\)
\(\displaystyle = \lim_{x \to −\infty} \frac{(x^2 + 3x) − x^2}{\sqrt{x^2 + 3x} − x}\)
\(\displaystyle = \lim_{x \to −\infty} \frac{3x}{\sqrt{x^2 + 3x} − x}\)
\(\displaystyle = \lim_{x \to −\infty} \frac{3x}{\sqrt{x^2 \left( 1 + \frac{3}{x} \right)} − x}\)
ここで、\(x < 0\) のとき \(\sqrt{x^2} = −x\) より
\(\displaystyle = \lim_{x \to −\infty} \frac{3x}{−x\sqrt{1 + \frac{3}{x}} − x}\)
\(\displaystyle = \lim_{x \to −\infty} \frac{3}{−\sqrt{1 + \frac{3}{x}} − 1}\)
\(\displaystyle = \color{red}{−\frac{3}{2}}\)
「有理化」の計算に自信がない人は復習しておきましょう!
有理化のやり方をわかりやすく解説!複素数の問題や難問も!
不定形の解消法②:はさみうちの原理
\(2\) つ目の方法は、「はさみうちの原理」です。
求めたい極限を不等式ではさみこみ、その極限が収束することを間接的に示します。
はさみうちの原理は、三角関数やガウス記号を含む式の極限で有効なことが多いです。
詳しい解き方については、以下の記事で詳しく説明しています。
はさみうちの原理とは?使い方やコツをわかりやすく解説!
解説は以上です。
不定形の極限への対処方法をマスターして、得点源にしていきましょう!