この記事では「平方根」について、その性質や計算方法などをできるだけわかりやすく解説していきます。
また、平方根の近似値の覚え方や実際の問題なども紹介していきますので、この記事を通してぜひマスターしてくださいね。
目次
平方根とは?
ある数 \(a\) の平方根とは、「\(2\) 乗すると \(a\) になる数」のことです。
「ある数の \(2\) 乗」と逆の概念ですね。
まずは、平方根の定義と性質を確認してみましょう。
平方根の定義
ある数 \(a\) の平方根は、記号「\(\bf{\sqrt{ }}\)(ルート)」を用いて次のように表します。
\(a > 0\) のとき、
- \(\color{red}{\sqrt{a}}\):\(a\) の 正の平方根
- \(\color{red}{−\sqrt{a}}\):\(a\) の 負の平方根
\(a\) の平方根は \(2\) 乗すると \(a\) になる数ですから、
\(\color{red}{(\sqrt{a})^2 = (−\sqrt{a})^2 = a}\)
となります。
なお、\(a = 0\) のときは、 \(a\) の平方根は \(\sqrt{0} = 0\) の \(1\) 個だけです。
平方根の値が実数となるには、ルートの中身は必ず \(0\) 以上の数 \((a \geq 0)\) でなければなりません。
中身が負の場合 \((a < 0)\)、平方根の値は虚数となります。
実数とは?0 は実数?定義や記号、虚数との関係や計算方法
平方根の性質
平方根には、次の性質があります。
\(m > 0\), \(n > 0\) のとき、
- \(\color{red}{\sqrt{m^2} = m}\)
- \(\color{red}{\sqrt{m^2n} = m\sqrt{n}}\)
ルートの中身を素因数分解したときに、平方因数(\(\bf{2}\) 乗の形にできる因数)があった場合、その平方因数はルートの外に出すことができます。
平方根を答えるときは、ルートの中身がより簡潔な形で答えるのがルールなので、よく理解しておきましょう。
平方根の求め方
\(a\) の平方根は \(\pm \sqrt{a}\) …なのですが、 \(a\) の値によってはより簡単な形で表す必要があります。
ここでは、以下の例題を用いて、平方根の正しい求め方について解説します。
ある数の平方根をとるには、\(\bf{\pm \sqrt{ }}\) をつけます。
\(180\) の平方根は、
\(\pm \sqrt{180}\)
(\(\sqrt{180}\) と \(−\sqrt{180}\))
しかし、\(\pm \sqrt{180}\) はより簡単な形に変形できるかもしれません。
STEP.2 へ進みましょう。
\(\sqrt{ }\) の中身を素因数分解して、平方因数が含まれるかを調べます。
\(2^2\) や \(3^2\) のように、素因数分解したときに \(2\) 乗の形に出来る因数が平方因数です。
\(180\) を素因数分解すると、
\(\begin{align}180 &= 2 \times 2 \times 3 \times 3 \times 5 \\&= \color{salmon}{2^2 \cdot 3^2} \cdot 5\end{align}\)
平方根の性質、「\(\sqrt{m^2} = m\)」または「\(\sqrt{m^2n} = m\sqrt{n}\)」を利用して、平方因数を \(\sqrt{ }\) の外に出します。
\(\begin{align}\pm \sqrt{180} &= \sqrt{2^2 \cdot 3^2 \cdot 5}\\&= \pm 2 \cdot 3 \cdot \sqrt{5} \\&= \color{red}{\pm 6\sqrt{5}}\end{align}\)
これで完成です!
最後に、平方根の求め方の流れをおさらいしましょう。
\(180\) の平方根は、
\(\begin{align} \pm \sqrt{180} &= \pm \sqrt{2 \times 2 \times 3 \times 3 \times 5} \\ &= \pm \sqrt{2^2 \cdot 3^2 \cdot 5} \\ &= \pm 2 \cdot 3 \cdot \sqrt{5} \\ &= \pm 6\sqrt{5} \end{align}\)
答え: \(\color{red}{\pm 6\sqrt{5}}\)
\(\sqrt{2 \times 2 \times 2 \times 2 \times 3}\) のような場合、 \(\sqrt{2^4 \cdot 3}\) としたくなりますが、素因数分解の目的は平方因数を見つけることですから、\(\sqrt{2^2 \cdot 2^2 \cdot 3}\) のように \(2\) 乗の形を作りましょう。
平方根の計算方法
ここでは、\(\sqrt{ }\) を含む式の計算方法(平方根同士の足し算、引き算、かけ算、割り算)について解説します。
平方根の足し算・引き算
\(\sqrt{ }\) を含む式の足し算・引き算では、\(\sqrt{ }\) の中の数が同じであれば、文字式の足し算や引き算と同じように計算できます。
\(a > 0\), \(m > 0\), \(n > 0\) のとき、
- \(\color{red}{m}\sqrt{a} \color{red}{+ n}\sqrt{a} = \color{red}{(m + n)}\sqrt{a}\)
- \(\color{red}{m}\sqrt{a} \color{red}{− n}\sqrt{a} = \color{red}{(m − n)}\sqrt{a}\)
\(\sqrt{ }\) の中の数がすべて異なるので、このままでは計算できません。
まずは、それぞれの数を変形して、より簡単な形で表してみましょう。
\(\sqrt{20} = \sqrt{2 \times 2 \times 5} = 2\sqrt{5}\)
\(\sqrt{125} = \sqrt{5 \times 5 \times 5} = 5\sqrt{5}\)
\(\sqrt{80} = \sqrt{4 \times 4 \times 5} = 4\sqrt{5}\)
変形によって、\(\sqrt{ }\) の中身が「\(5\)」にそろいましたね。
したがって、以下のように計算できます。
\(\sqrt{20} + \sqrt{125} − \sqrt{80}\)
\(= {\color{salmon}{2}}\sqrt{5} {\color{salmon}{\,+\, 5}}\sqrt{5} {\color{salmon}{\,− \,4}}\sqrt{5}\)
\(= \color{salmon}{(2 + 5 − 4)}\sqrt{5}\)
\(= \color{red}{3\sqrt{5}}\)
答えは \(\color{red}{3\sqrt{5}}\) です。
平方根のかけ算
平方根同士のかけ算では、\(\sqrt{ }\) を結合したり、分配したりできます。
\(a > 0\), \(b > 0\) のとき、
\begin{align}\color{red}{\sqrt{a} \times \sqrt{b} = \sqrt{ab}}\end{align}
\(\sqrt{12} \times \sqrt{18} \times \sqrt{75} = \sqrt{12 \times 18 \times 75}\) としてもよいのですが、先にそれぞれの数を簡単な形で表してからかけ算した方が計算が楽になります。
\(\sqrt{12} = 2\sqrt{3}\), \(\sqrt{18} = 3\sqrt{2}\), \(\sqrt{75} = 5\sqrt{3}\) となるので、以下のように計算できます。
\(\sqrt{12} \times \sqrt{18} \times \sqrt{75}\)
\(= 2\sqrt{3} \times 3\sqrt{2} \times 5\sqrt{3}\)
\(= \color{salmon}{2 \times 3 \times 5 \times \sqrt{3 \times 2 \times 3}}\)
\(= 30\sqrt{3^2 \times 2}\)
\(= 30 \times 3 \times \sqrt{2}\)
\(= \color{red}{90\sqrt{2}}\)
答えは \(\color{red}{90\sqrt{2}}\) ですね。
平方根の割り算
平方根同士の割り算の場合も、\(\sqrt{ }\) を結合したり、分配したりできます。
割り算は、分数の形に直します。
\(a > 0\), \(b > 0\) のとき、
\begin{align}\color{red}{\displaystyle \sqrt{a} \div \sqrt{b} = \frac{\sqrt{a}}{\sqrt{b}} = \sqrt{\frac{a}{b}}}\end{align}
\(\sqrt{ }\) を含む式の割り算では、分母に \(\sqrt{ }\) を含む分数が答えになることがよくあります。
分数の分母は、必ず整数にするのがルールです。
分数の分母を \(\sqrt{ }\) を含む数から整数に変形することを「分母の有理化」といいます。
分母の有理化
\(\displaystyle \bf{\frac{a}{\sqrt{b}}}\) の場合
\((\sqrt{b})^2 = b\) を利用して、分母を整数にする。
分子と分母に分母と同じ数 \(\sqrt{b}\) をかけて、
\begin{align}\displaystyle \frac{a}{\sqrt{b}} = \frac{a \color{red}{\times \sqrt{b}}}{\sqrt{b} \color{red}{\times \sqrt{b}}} = \frac{a\sqrt{b}}{\color{red}{b}}\end{align}
\(\bf{\displaystyle \frac{a}{\sqrt{b} + \sqrt{c}}}\) (または \(\bf{\displaystyle \frac{a}{\sqrt{b} − \sqrt{c}}}\))の場合
乗法公式 \((a + b)(a − b) = a^2 − b^2\) を利用して、分母を整数にする。
分子と分母に、分母と符号を入れ替えた数 \((\sqrt{b} − \sqrt{c})\) をかけて、
\begin{align}\displaystyle \frac{a}{\sqrt{b} + \sqrt{c}} &= \frac{a \color{red}{(\sqrt{b} − \sqrt{c})}}{(\sqrt{b} + \sqrt{c})\color{red}{(\sqrt{b} − \sqrt{c})}}\\&= \frac{a(\sqrt{b} − \sqrt{c})}{(\sqrt{b})^2 − (\sqrt{c})^2} \\&= \frac{a (\sqrt{b} − \sqrt{c})}{\color{red}{b − c}}\end{align}
まずは、\(\sqrt{ }\) を結合して、中身を計算します。
\(\sqrt{20} \div \sqrt{12}\)
\(\displaystyle = \color{salmon}{\sqrt{\frac{20}{12}}}\)
\(\displaystyle = \sqrt{\frac{5}{3}}\)
\(\displaystyle = \frac{\sqrt{5}}{\sqrt{3}}\)
\(\displaystyle \frac{\sqrt{5}}{\sqrt{3}}\) のままでは分母が整数ではないので、分子と分母に \(\sqrt{3}\) をかけて分母を有理化します。
\(\displaystyle = \frac{\sqrt{5}}{\sqrt{3}}\)
\(\displaystyle = \frac{\sqrt{5} \color{salmon}{\times \sqrt{3}}}{\sqrt{3} \color{salmon}{\times \sqrt{3}}} \)
\(\displaystyle = \color{red}{\frac{\sqrt{15}}{3}}\)
ということで、答えは \(\displaystyle \color{red}{\frac{\sqrt{15}}{3}}\) になります。
平方根の近似値の覚え方
平方根の近似値は、年号を暗記するように語呂合わせを使うと簡単に覚えることができます。
以下が代表的な平方根の近似値です。
- \(\bf{\sqrt{2} ≒ 1.41421356\cdots}\)
一夜一夜に人見頃(ひとよひとよにひとみごろ) - \(\bf{\sqrt{3} ≒ 1.7320508\cdots}\)
人並みにおごれや(ひとなみにおごれや) - \(\bf{\sqrt{5} ≒ 2.2360679\cdots}\)
富士山麓オウム鳴く(ふじさんろくおうむなく) - \(\bf{\sqrt{6} ≒ 2.44949\cdots}\)
煮よ良く良く(によよくよく) - \(\bf{\sqrt{7} ≒ 2.64575\cdots}\)
菜に虫いない(なにむしいない) - \(\bf{\sqrt{8} ≒ 2.828427\cdots}\)
ニヤニヤ呼ぶな(にやにやよぶな) - \(\bf{\sqrt{10} ≒ 3.1622\cdots}\)
三色に並ぶ(みいろにならぶ)
平方根の問題の中には、近似値を必要とするものもあります。
\(\sqrt{2}\), \(\sqrt{3}\), \(\sqrt{5}\) は特に使う機会が多いので、覚えておくと便利ですよ。
平方根の練習問題
練習問題を通して、平方根の問題を解く力を伸ばしていきましょう。
練習問題①「350 の平方根」
平方根を求める基本的な問題です。
\(\pm \sqrt{350}\)
\(= \pm \sqrt{2 \times 5 \times 5 \times 7}\)
\(= \pm \sqrt{2 \times 5^2 \times 7}\)
\(= \pm 5\sqrt{14}\)
答え: \(\color{red}{\pm 5\sqrt{14}}\)
練習問題②「平方根の四則計算」
\(\sqrt{ }\) を含む式の四則計算です。
\(\displaystyle \frac{\sqrt{50}}{\sqrt{6}} + 2(\sqrt{3} − 4) \)
\(\displaystyle = \sqrt{\frac{50}{6}} + 2\sqrt{3} − 8\)
\(\displaystyle = \sqrt{\frac{25}{3}} + 2\sqrt{3} − 8\)
\(\displaystyle = \frac{5}{\sqrt{3}} + 2\sqrt{3} − 8\)
\(\displaystyle = \frac{5 \times \sqrt{3}}{\sqrt{3} \times \sqrt{3}} + 2\sqrt{3} − 8\)
\(\displaystyle = \frac{5\sqrt{3}}{3} + 2\sqrt{3} − 8\)
\(\displaystyle = \frac{11\sqrt{3}}{3} − 8\)
答え: \(\displaystyle \color{red}{\frac{11\sqrt{3}}{3} − 8}\)
(\(\displaystyle \color{red}{\frac{11\sqrt{3} − 24}{3}}\) でもOK)
練習問題③「分数や平方根を大きい順に並べる」
\(\sqrt{ }\) を含む数の大小関係を判断する問題です。
\(\sqrt{2}\) や \(\sqrt{3}\) の近似値を覚えていれば、それを利用して解いてみましょう。
近似値を覚えていない場合は、すべての数を \(2\) 乗してみましょう。
(\(0\) よりも大きい数同士であれば、\(2\) 乗しても大小関係が変わらない性質を利用)
解答①で近似値を利用する方法、解答②で \(2\) 乗を利用する方法を示します。
\(\sqrt{2} ≒ 1.414\)、\(\sqrt{3} ≒ 1.732\) より、
- \(4\sqrt{3} ≒ 4 \times 1.732 = 6.928\)
- \(\displaystyle \frac{9}{2} = 4.5\)
- \(3\sqrt{2} ≒ 3 \times 1.414 = 4.242\)
\(4.242 < 4.5 < 6 < 6.928\) より、
\(\displaystyle 3\sqrt{2} < \frac{9}{2} < 6 < 4\sqrt{3}\)
答え: \(\color{red}{4\sqrt{3}}\)、\(\color{red}{6}\)、\(\displaystyle \color{red}{\frac{9}{2}}\)、\(\color{red}{3\sqrt{2}}\)
\(4\sqrt{3} > 0\)、\(\displaystyle \frac{9}{2} > 0\)、\(3\sqrt{2} > 0\)、\(6 > 0\) より、それぞれを \(2\) 乗して、
- \((4\sqrt{3})^2 = 16 \times 3 = 48\)
- \(\displaystyle \left( \frac{9}{2} \right)^2 = \frac{81}{4} = 20.25\)
- \((3\sqrt{2})^2 = 9 \times 2 = 18\)
- \(6^2 = 36\)
\(18 < 20.25 < 36 < 48\) より、
\(\displaystyle 3\sqrt{2} < \frac{9}{2} < 6 < 4\sqrt{3}\)
答え: \(\color{red}{4\sqrt{3}}\)、\(\color{red}{6}\)、\(\displaystyle \color{red}{\frac{9}{2}}\)、\(\color{red}{3\sqrt{2}}\)
\(5\sqrt{3}\)、\(2\sqrt{3}\) のように、\(\sqrt{ }\) の中身が同じときは、整数部分(\(\bf{\sqrt{ }}\) の外)だけで大小を比較できます(\({\bf{5}}\sqrt{3} > {\bf{2}}\sqrt{3}\))。
平方根の応用問題
ここまでで理解したことを利用して、応用問題を解いてみましょう。
応用問題①「√600a が正の整数となるような a」
\(\sqrt{600a}\) が正の整数となるような最小の整数 \(a\) を求めなさい。
\(\sqrt{600a}\) が正の整数となるということは、 \(600a\) の平方因数を \(\sqrt{ }\) の外に出したときに \(\sqrt{ }\) の中に素因数が残らないということです。
\(600a\) を素因数分解して \(2\) 乗の形にすると、
\(600a = 2^2 \times 5^2 \times 2 \times 3 \times a\)
\(a = 2 \times 3\) であれば、\(600a = 2^2 \times 2^2 \times 3^2 \times 5^2\) となり、
\(\sqrt{600a} = 2 \times 2 \times 3 \times 5 = 60\) となる。
したがって、条件を満たす最小の整数 \(a\) は \(6\)
答え: \(\color{red}{a = 6}\)
応用問題②「有理化を含む四則計算」
\(\sqrt{ }\) を含む式の四則計算ですが、少し複雑な分母の有理化も含んでいます。
一度にすべて変形しようとしないで、\(1\) つずつ丁寧に計算していきましょう。
\(\displaystyle 3\sqrt{2} (\sqrt{10} − 7) + \frac{6}{\sqrt{5} − \sqrt{2}}\)
\(\displaystyle = 3\sqrt{20} − 21\sqrt{2} + \frac{6}{\sqrt{5} − \sqrt{2}}\)
\(\displaystyle = 6\sqrt{5} − 21\sqrt{2} + \frac{6}{\sqrt{5} − \sqrt{2}}\)
\(\displaystyle = 6\sqrt{5} − 21\sqrt{2} + \frac{6(\sqrt{5} + \sqrt{2})}{(\sqrt{5} − \sqrt{2}) (\sqrt{5} + \sqrt{2})}\)
\(\displaystyle = 6\sqrt{5} − 21\sqrt{2} + \frac{6(\sqrt{5} + \sqrt{2})}{(\sqrt{5})^2 − (\sqrt{2})^2}\)
\(\displaystyle = 6\sqrt{5} − 21\sqrt{2} + \frac{6(\sqrt{5} + \sqrt{2})}{5 − 2}\)
\(\displaystyle = 6\sqrt{5} − 21\sqrt{2} + \frac{6(\sqrt{5} + \sqrt{2})}{3}\)
\(= 6\sqrt{5} − 21\sqrt{2} + 2(\sqrt{5} + \sqrt{2})\)
\(= 6\sqrt{5} − 21\sqrt{2} + 2\sqrt{5} + 2\sqrt{2}\)
\(= 8\sqrt{5} − 19\sqrt{2}\)
答え: \(\color{red}{8\sqrt{5} − 19\sqrt{2}}\)
以上で応用問題も終わりです。
平方根の計算は大学入試でもよく出てくるので、たくさん練習して、苦手意識をなくしていきましょう!