この記事では、「置換積分法」の公式と、定積分・不定積分における置換積分のやり方をわかりやすく解説していきます。
代表的な置換パターンの見分け方や、ルート・三角関数を含む問題の解き方なども説明するので、この記事を通してぜひマスターしてくださいね!
目次
置換積分法の公式
置換積分法とは、そのままでは積分が難しい関数を、変数を置き換えることで積分するテクニックです。
- 不定積分の置換積分
\(\color{red}{x = g(t)}\) と置換できるとき、関数 \(f(x)\) の不定積分は
\begin{align} \color{red}{\int f(x) \,dx} &\color{red}{= \int f(g(t)) \frac{dx}{dt} \,dt} \\ &\color{red}{= \int f(g(t))g’(t) \,dt} \end{align} - 定積分の置換積分
\(\color{red}{x = g(t)}\) と置換できるとき、関数 \(f(x)\) の定積分は
\begin{align} \color{red}{\int_a^b f(x) \,dx} &\color{red}{= \int_\alpha^\beta f(g(t)) \frac{dx}{dt} \,dt} \\ &\color{red}{= \int_\alpha^\beta f(g(t)) g’(t) \,dt} \end{align}
(ただし、\(x\) が \(a \to b\) と単調に変化するとき \(t\) は \(\alpha \to \beta\) と単調に変化するものとする。)
上記の公式はそのまま丸暗記するというよりも、置換積分の考え方を知るために眺めましょう。
左辺は \(x\) の関数の \(x\) についての積分である一方、右辺は \(t\) の関数の \(t\) についての積分に変換されていますね。
まずはこの関係を押さえておきましょう!
置換積分法のやり方
それでは、置換積分法のやり方を不定積分・定積分のそれぞれについて説明します。
① 置換積分法の不定積分のやり方
以下の例題を通して、不定積分を置換積分法で解く手順を説明します。
\(\displaystyle \int x(x + 4)^3 dx\) を求めよ。
このまま積分するには、\((x + 4)^3\) を展開する必要があって面倒ですね。
こんなとき、面倒な計算をしなくてもいいように置換積分ができないか考えます。
まずは、被積分関数を別の文字で置換します。
ここでは、\(x + 4\) の部分を文字 \(t\) と置いてみましょう。
\(x + 4 = t\) とおくと、\(x = t − 4\)
よって
\(\begin{align}\color{salmon}{x(x + 4)^3} &= (t − 4)t^3 \\&= \color{salmon}{t^4 − 4t^3} \cdots ①\end{align}\)
\(x\) と \(t\) の関係式を任意の文字で微分し、\(dx\) と \(dt\) の関係式を得ます。
この問題では、\(x\) と \(t\) の関係式を「\(x =\) ~ 」に変形し、両辺を \(t\) で微分して \(\displaystyle \frac{dx}{dt}\) を求めたあと、\(dx = ○ dt\) のかたちで表しておきます。
\(x = t − 4\) の両辺を \(t\) で微分して
\(\displaystyle \frac{dx}{dt} = 1\)
よって
\(\color{skyblue}{dx} = \color{skyblue}{dt} \cdots ②\)
\(\displaystyle \frac{dx}{dt}\) という表記は、まるで分数のように式変形できる便利な性質があります。
これで準備が整ったので、積分します。
①で被積分関数(\(x\) の関数 → \(t\) の関数)、②が積分対象(\(dx \to dt\))が置換できていますね。
①、②より、
\(\displaystyle \int \color{salmon}{x(x + 4)^3} \, \color{skyblue}{dx} \)
\(\displaystyle = \int \color{salmon}{(t^4 − 4t^3)} \, \color{skyblue}{dt}\)
\(\displaystyle = \frac{1}{5} t^5 − 4 \cdot \frac{1}{4} t^4 + C\)
\(\displaystyle = \frac{1}{5} t^5 − t^4 + C\)
\(\displaystyle = \frac{1}{5} t^4(t − 5) + C\)(\(C\) は積分定数)
これで \(t\) について積分ができましたね!
さて、\(t\) は勝手に作った変数なので、最後に \(x\) の式に戻します。
\(t = x + 4\) であるから
\(\displaystyle \frac{1}{5} t^4(t − 5) + C\)
\(\displaystyle = \frac{1}{5} (x + 4)^4 (x + 4 − 5) + C\)
\(\displaystyle = \frac{1}{5} (x + 4)^4 (x − 1) + C\)
よって、\(\color{red}{\displaystyle \int x(x + 4)^3 dx = \frac{1}{5} (x + 4)^4 (x − 1) + C}\) と求められました!
\(\displaystyle \int x(x + 4)^3 dx\) について、
\(x + 4 = t\) とおくと、\(x = t − 4\) であるから
\(\begin{align}x(x + 4)^3 &= (t − 4)t^3 \\&= t^4 − 4t^3 \cdots ①\end{align}\)
\(x = t − 4\) の両辺を \(t\) で微分して
\(\displaystyle \frac{dx}{dt} = 1\) すなわち \(dx = dt \cdots ②\)
①、②より、
\(\displaystyle \int x(x + 4)^3 \, dx\)
\(\displaystyle = \int (t^4 − 4t^3) \, dt\)
\(\displaystyle = \frac{1}{5} t^5 − 4 \cdot \frac{1}{4} t^4 + C\)
\(\displaystyle = \frac{1}{5} t^5 − t^4 + C\)
\(\displaystyle = \frac{1}{5} t^4(t − 5) + C\)
\(\displaystyle = \frac{1}{5} (x + 4)^4 (x + 4 − 5) + C\)
\(\displaystyle = \frac{1}{5} (x + 4)^4 (x − 1) + C\)(\(C\) は積分定数)
答え: \(\color{red}{\displaystyle \int x(x + 4)^3 dx = \frac{1}{5} (x + 4)^4 (x − 1) + C}\)(\(C\) は積分定数)
② 置換積分法の定積分のやり方
以下の例題を通して、定積分を置換積分法で解く手順を説明します。
\(\displaystyle \int_{−4}^{−3} x(x + 4)^3 \ dx\) を求めよ。
不定積分同様、被積分関数を別の文字で置換します。
\(x + 4 = t\) とおくと、\(x = t − 4\) であるから
\(\begin{align}\color{salmon}{x(x + 4)^3} &= (t − 4)t^3\\&= \color{salmon}{t^4 − 4t^3} \cdots ①\end{align}\)
\(x\) と \(t\) の関係式を任意の文字で微分し、\(dx\) と \(dt\) の関係式を得ます。
この問題では、\(x = (t \ \text{の式})\) を微分して \(\displaystyle \frac{dx}{dt}\) を求め、\(dx\) を \(dt\) で表します。
\(x = t − 4\) の両辺を \(t\) で微分して
\(\displaystyle \frac{dx}{dt} = 1\) すなわち \(\color{skyblue}{dx} = \color{skyblue}{dt} \cdots ②\)
定積分では、積分区間も \(x\) の区間から \(t\) の区間に変換しておきます。
\(t = x + 4\) より、積分区間は
\(x\) | \(\color{limegreen}{−4} \to \color{limegreen}{−3}\) |
\(t\) | \(\color{limegreen}{0} \to \color{limegreen}{1}\) |
…③
不定積分と違うのはこの手順です。
ここを見落とすと計算ミスが起こるので、必ず押さえておきましょう。
これで準備が整ったので、元の式を \(t\) で書き直し、定積分します。
積分区間も忘れずに書き直してくださいね。
①、②、③より、
\(\displaystyle \int_{\color{limegreen}{−4}}^{\color{limegreen}{−3}} \color{salmon}{x(x + 4)^3} \, \color{skyblue}{dx}\)
\(= \displaystyle \int_\color{limegreen}{0}^\color{limegreen}{1} \color{salmon}{(t^4 − 4t^3)} \, \color{skyblue}{dt}\)
\(\displaystyle = \left[ \frac{1}{5} t^5 − t^4 \right]_0^1\)
\(\displaystyle = \left( \frac{1}{5} \cdot 1^5 − 1^4 \right) − \left(\frac{1}{5} \cdot 0^5 − 0^4\right)\)
\(\displaystyle = \left( \frac{1}{5} − 1 \right) − 0\)
\(\displaystyle = \frac{1 − 5}{5}\)
\(\displaystyle = −\frac{4}{5}\)
よって、\(\color{red}{\displaystyle \int_{−4}^{−3} x(x + 4)^3 \ dx = −\frac{4}{5}}\) と求めることができました!
定積分では具体的な値が求まるので、変数を元に戻す手順は必要ありません。
\(\displaystyle \int_{−4}^{−3} x(x + 4)^3 \ dx\) について、
\(x + 4 = t\) とおくと、\(x = t − 4\) であるから
\(\begin{align}x(x + 4)^3 &= (t − 4)t^3 \\&= t^4 − 4t^3 \cdots ①\end{align}\)
\(x = t − 4\) の両辺を \(t\) で微分して
\(\displaystyle \frac{dx}{dt} = 1\) すなわち \(dx = dt \cdots ②\)
\(t = x + 4\) より、積分区間は
\(x\) | \(−4 \to −3\) |
\(t\) | \(0 \to 1\) |
…③
①、②、③より、
\(\displaystyle \int_{−4}^{−3} x(x + 4)^3 \, dx\)
\(= \displaystyle \int_0^1 (t^4 − 4t^3) \, dt\)
\(\displaystyle = \left[ \frac{1}{5} t^5 − t^4 \right]_0^1\)
\(\displaystyle = \left( \frac{1}{5} \cdot 1^5 − 1^4 \right) − \left(\frac{1}{5} \cdot 0^5 − 0^4\right)\)
\(\displaystyle = \left( \frac{1}{5} − 1 \right) − 0\)
\(\displaystyle = \frac{1 − 5}{5}\)
\(\displaystyle = −\frac{4}{5}\)
答え: \(\color{red}{\displaystyle \int_{−4}^{−3} x(x + 4)^3 \ dx = −\frac{4}{5}}\)
置換積分の置換パターンの見分け方
さて、置換積分法で解く流れはわかったかと思いますが、肝心なのは「何を別の文字でおくか」です。変な置き換えをするとうまく解けなくなってしまいます。
実は、置換方法の見分け方は以下の \(3\) パターンしかありません。
パターン | 被積分関数 \(f(x)\) のかたち | 置換方法 |
---|---|---|
パターン① | \(g(x)\) と \(g’(x)\) で表現できる |
\(g(x) = t\) とおく → 慣れたら置換なしで解く |
パターン② | ①に当てはまらない |
複雑なパーツを \(t\) とおく
|
パターン③ |
\(a^2 \pm x^2\) を含む |
|
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
パターン① \(g(x)\) と \(g’(x)\) で表現できる
まずは、問題の関数が「何か \(g(x)\)」と「その導関数 \(g’(x)\)」で表現できないかをチェックします。
もし表すことができるなら、\(\color{red}{g(x) = t}\) と置換すれば 100% うまくいきます。
例えば次のような問題です。
\(\displaystyle \int x(x^2 + 5)^3 \ dx\)
見極めのポイントは、次数を見ることです。
複雑なパーツの中身の微分が簡単なパーツの次数と合っていれば、このパターンである可能性が高いです。
\(\displaystyle \int x(x^2 + 5)^3 \ dx\)
\(\displaystyle = \int \frac{1}{2} (2x)(x^2 + 5)^3 \ dx\)
\(\displaystyle = \int \frac{1}{2} (x^2 + 5)’(x^2 + 5)^3 \ dx\)
\(\color{salmon}{t = x^2 + 5}\) とおくと \(\color{skyblue}{\displaystyle \frac{dt}{dx} = (x^2 + 5)’}\) であるから
\(\displaystyle \int \frac{1}{2} \color{skyblue}{(x^2 + 5)’}\color{salmon}{(x^2 + 5)^3} \ dx\)
\(\displaystyle = \int \frac{1}{2} \color{skyblue}{\frac{dt}{dx}} \, \color{salmon}{t^3} \, dx\)
\(\displaystyle = \int \frac{1}{2} t^3 \,dt\)
\(\displaystyle = \frac{1}{8} t^4 + C\)
\(\displaystyle = \color{red}{\frac{1}{8} (x^2 + 5)^4 + C}\)
(\(C\) は積分定数)
このように、何か(ここでは \(g(x) = x^2 + 5\))とその微分 \(g’(x)\) が入っていたおかげで、うまく \(dx\) が相殺され、\(t\) の積分に変換できました!
→ 慣れたら置換なしで(合成関数の積分)
このパターンは、慣れてきたら別の文字に置換しないでも積分できます。
\(\displaystyle \int x(x^2 + 5)^3 \ dx\)
\(\displaystyle = \int \frac{1}{2}(2x)(x^2 + 5)^3 \ dx\)
\(\displaystyle = \int \frac{1}{2}(x^2 + 5)’(x^2 + 5)^3 \ dx\)
\(\displaystyle = \frac{1}{2} \cdot \frac{1}{4} (x^2 + 5)^4 + C\)
\(\displaystyle = \color{red}{\frac{1}{8} (x^2 + 5)^4 + C}\)(\(C\) は積分定数)
要するに、合成関数を積分していると考えてください。
合成関数 \(f(g(x))\) を積分したいとき、中身の微分 \(g'(x)\) がいれば、全体を積分できます。
→ よくある \(g(x)\) と \(g'(x)\) の配置例
\(g(x)\) と \(g'(x)\) はさまざまな配置のされ方があります。
よく問題に登場する次の配置パターンには見慣れておきましょう(見切れる場合は横へスクロール)。
\(g(x)\) の配置場所 | 例題(解答は下) | 解法(積分公式) |
---|---|---|
べき乗の中身 \(\{\color{salmon}{g(x)}\}^n\) |
例題① \(\displaystyle \int x(\color{salmon}{x^2 + 5})^3 \, dx\) | \(\displaystyle \int g'(x)\{g(x)\}^n \, dx = \displaystyle \frac{1}{n + 1}\{g(x)\}^{n + 1} + C\) |
→ 特に、被積分関数が \(\sin x\) と \(\cos x\) の べき乗の積の場合 |
例題② \(\displaystyle \int \sin x \color{salmon}{\cos}^3 \color{salmon}{x} \,dx\) |
|
根号(ルート)の中身 \(\sqrt{\color{salmon}{g(x)}}\) |
例題③ \(\displaystyle \int x\sqrt{\color{salmon}{x^2 + 5}} \, dx\) | \(\begin{align}\displaystyle \int g'(x)\sqrt{g(x)} \, dx &= \displaystyle \int g'(x)\{g(x)\}^{\frac{1}{2}} \, dx \\&= \displaystyle \frac{2}{3}\{g(x)\}^{\frac{3}{2}} + C \\&= \displaystyle \frac{2}{3}g(x)\sqrt{g(x)} + C\end{align}\) |
分数の分母 \(\displaystyle \frac{◯}{\color{salmon}{g(x)}}\) |
例題④ \(\displaystyle \int \frac{x}{\color{salmon}{x^2 + 5}} \, dx\) | \(\displaystyle \int \frac{g'(x)}{g(x)} \, dx = \log |g(x)| + C\) |
\(\bf{e}\) の指数部分 \(e^{\color{salmon}{g(x)}}\) |
例題⑤ \(\displaystyle \int xe^\color{salmon}{{x^2 + 5}} \, dx\) | \(\displaystyle \int g'(x)e^{g(x)} \, dx = e^{g(x)} + C\) |
三角関数の角度 \(\sin(\color{salmon}{g(x)})\) など |
例題⑥ \(\displaystyle \int x \sin \left( \color{salmon}{x^2 + \frac{\pi}{4}} \right) \, dx\) |
|
\(\displaystyle \int x(x^2 + 5)^3 \, dx\)
\(= \displaystyle \int \frac{1}{2}(2x)(x^2 + 5)^3 \, dx\)
\(= \displaystyle \frac{1}{2} \int (x^2 + 5)'(x^2 + 5)^3 \, dx\)
\(= \displaystyle \frac{1}{2} \cdot \frac{1}{4}(x^2 + 5)^4 + C\)
\(= \color{red}{\displaystyle \frac{1}{8}(x^2 + 5)^4 + C}\)(\(C\) は積分定数)
\(\displaystyle \int \sin x \cos^3 x \,dx\)
\(\displaystyle = \int −(−\sin x) \cos^3 x \,dx\)
\(\displaystyle = −\int (\cos x)’ \cos^3 x \,dx\)
\(\displaystyle = \color{red}{−\frac{1}{4} \cos^4 x + C}\)(\(C\) は積分定数)
\(\displaystyle \int x\sqrt{x^2 + 5} \, dx\)
\(= \displaystyle \int \frac{1}{2}(2x)\sqrt{x^2 + 5} \, dx\)
\(= \displaystyle \frac{1}{2} \int (x^2 + 5)’\sqrt{x^2 + 5} \, dx\)
\(= \displaystyle \frac{1}{2} \int (x^2 + 5)’\{x^2 + 5\}^{\frac{1}{2}} \, dx\)
\(= \displaystyle \frac{1}{2} \cdot \frac{2}{3}\{x^2 + 5\}^{\frac{3}{2}} + C\)
\(= \color{red}{\displaystyle \frac{1}{3}(x^2 + 5)\sqrt{x^2 + 5} + C}\)(\(C\) は積分定数)
\(\displaystyle \int \frac{x}{x^2 + 5} \, dx\)
\(= \displaystyle \int \frac{1}{2} \cdot \frac{2x}{x^2 + 5} \, dx\)
\(= \displaystyle \frac{1}{2} \int \frac{(x^2 + 5)’}{x^2 + 5} \, dx\)
\(= \color{red}{\displaystyle \frac{1}{2} \log |x^2 + 5| + C}\)(\(C\) は積分定数)
\(\displaystyle \int xe^{x^2 + 5} \, dx\)
\(= \displaystyle \int \frac{1}{2} \cdot 2x \cdot e^{x^2 + 5} \, dx\)
\(= \displaystyle \frac{1}{2} \int (x^2 + 5)’ e^{x^2 + 5} \, dx\)
\(= \color{red}{\displaystyle \frac{1}{2} e^{x^2 + 5} + C}\)(\(C\) は積分定数)
\(\displaystyle \int x \sin \left( x^2 + \frac{\pi}{4} \right) \, dx\)
\(= \displaystyle \int \frac{1}{2} \cdot 2x \cdot \sin \left(x^2 + \frac{\pi}{4} \right) \, dx\)
\(= \displaystyle \frac{1}{2} \int \left(x^2 + \frac{\pi}{4} \right)’ \sin \left(x^2 + \frac{\pi}{4} \right) \, dx\)
\(= \color{red}{− \displaystyle \frac{1}{2} \cos \left(x^2 + \frac{\pi}{4} \right) + C}\)(\(C\) は積分定数)
パターン② ①に当てはまらない
パターン①に当てはまらない場合は、複雑なパーツ全体を \(t\) とおいてみましょう。
このとき、複雑なパーツの種類に応じて置き換え方を工夫します。
- べき乗の場合 → 中身を \(t\) とおく
- ルート(根号)の場合 → 根号ごと \(t\) とおく
- \(e^x\) を含む場合 → \((e^x + \text{定数}) = t\) とおく
→ べき乗なら中身を \(t\) とおく
べき乗の中身を \(t\) とおくとうまくいくことが多いです。
\(\displaystyle \int x(x + 3)^3 \, dx\)
\(\color{salmon}{x + 3 = t}\) とおくと、\(x = t − 3\)
\(\displaystyle \frac{dx}{dt} = 1\) より \(dx = dt\)
\(\displaystyle \int x(x + 3)^3 \, dx\)
\(\displaystyle = \int (t − 3)t^3 \, dt\)
\(\displaystyle = \int (t^4 − 3t^3) \, dt\)
\(\displaystyle = \frac{1}{5}t^5 − \frac{3}{4}t^4 + C\)
\(\displaystyle = \frac{1}{20}t^4(4t − 15) + C\)
\(\displaystyle = \frac{1}{20}(x + 3)^4\{4(x + 3) − 15\} + C\)
\(\displaystyle = \color{red}{\frac{1}{20}(x + 3)^4(4x − 3) + C}\)
(\(C\) は積分定数)
→ ルートなら根号ごと \(t\) とおく
ルートを含む式では、根号ごと \(t\) とおくとうまくいくことが多いです。
\(\displaystyle \int (x + 1) \sqrt{2x + 1} \,dx\)
\(\color{salmon}{\sqrt{2x + 1} = t}\) とおくと、\(\displaystyle x = \frac{1}{2}(t^2 − 1)\)
\(\displaystyle \frac{dx}{dt} = t\) より \(dx = t \,dt\)
\(\displaystyle \int (x + 1)\sqrt{2x + 1} \,dx\)
\(\displaystyle = \int \left\{ \frac{1}{2} (t^2 − 1) + 1 \right\} t \cdot t \,dt\)
\(\displaystyle = \int \frac{1}{2} (t^2 + 1)t^2 \, dt\)
\(\displaystyle = \int \frac{1}{2} (t^4 + t^2) \, dt\)
\(\displaystyle = \frac{1}{2} \left(\frac{1}{5}t^5 + \frac{1}{3}t^3\right) + C\)
\(\displaystyle = \frac{1}{30} t^3(3t^2 + 5) + C\)
\(\displaystyle = \frac{1}{30} \{\sqrt{2x + 1}\}^3\{3(2x + 1) + 5\} + C\)
\(\displaystyle = \frac{1}{30} (2x + 1)\sqrt{2x + 1}(6x + 8) + C\)
\(\displaystyle = \color{red}{\frac{1}{15} (3x + 4)(2x + 1)\sqrt{2x + 1} + C}\)(\(C\) は積分定数)
→ \(e^x\) を含むなら (\(e^x\) + 定数) = \(t\) とおく
\((e^x \pm \text{定数})\) を含む場合は \((e^x \pm \text{定数}) = t\) とおくと計算が楽です。
なお、\(e^x = t\) とおいても解けます。
\(\displaystyle \int \frac{e^{2x}}{e^x + 2} \,dx\)
\(\color{salmon}{e^x + 2 = t}\) とおくと、\(e^x = t − 2\)
\(\displaystyle \frac{dt}{dx} = e^x\) より \(\displaystyle e^x \, dx = dt\)
\(\displaystyle \int \frac{e^{2x}}{e^x + 2} \, dx\)
\(\displaystyle = \int \frac{e^x}{e^x + 2} \cdot e^x \, dx\)
\(\displaystyle = \int \frac{t − 2}{t} \, dt\)
\(\displaystyle = \int \left( 1 − \frac{2}{t} \right) \, dt\)
\(= t − 2\log t + C\)
(\(t = e^x + 2 > 0\) より \(\log|t| = \log t\))
\(= \color{red}{(e^x + 2) − 2\log (e^x + 2) + C}\)(\(C\) は積分定数)
パターン③ \(a^2 \pm x^2\) を含む
被積分関数に \(a^2 \pm x^2\) のかたちを含む場合は、次のような特殊な置換方法が有効です。
- \(\sqrt{a^2 − x^2}\) を含む場合 → \(\color{red}{x = a \sin\theta}\) とおく(定積分のみ)
- \(\displaystyle \frac{1}{a^2 + x^2}\) を含む場合 → \(\color{red}{x = a \tan\theta}\) とおく(定積分のみ)
- \(\sqrt{x^2 \pm a^2}\) の場合 → \(\color{red}{t = x + \sqrt{x^2 \pm a^2}}\) などとおく
パターン①, ② を試してもうまくいかないなぁと思ったとき、このパターンを疑いましょう。
→ \(\sqrt{a^2 − x^2}\) なら \(x = a \sin\theta\) とおく
定積分の問題で \(\sqrt{a^2 − x^2}\) のかたちが出てきたら、\(x = a \sin\theta\) とおくとうまく積分できます。
\(\displaystyle \int_0^3 \sqrt{9 − x^2} \, dx\)
\(\color{salmon}{x = 3 \sin\theta}\) とおくと、
\(\displaystyle \frac{dx}{d\theta} = 3 \cos\theta\) より \(dx = 3\cos\theta \,d\theta\)
\(x\) | \(0 \to 3\) |
\(\theta\) | \(\displaystyle 0 \to \frac{\pi}{2}\) |
なお、この範囲で \(\cos\theta \geq 0\)
\(\displaystyle \int_0^3 \sqrt{9 − x^2} \, dx\)
\(\displaystyle = \int_0^{\frac{\pi}{2}} \sqrt{9 − 9 \sin^2 \theta} \cdot 3 \cos\theta \, d\theta\)
\(\displaystyle = \int_0^{\frac{\pi}{2}} 3\sqrt{1 − \sin^2 \theta} \cdot 3 \cos\theta \, d\theta\)
(\(1 − \sin^2 \theta = \cos^2 \theta\) 利用)
\(\displaystyle = \int_0^{\frac{\pi}{2}} 9\sqrt{\cos^2 \theta} \cdot \cos\theta \, d\theta\)
(\(\cos \theta \geq 0\) より \(\sqrt{\cos^2 \theta} = |\cos\theta| = \cos\theta\))
\(\displaystyle = \int_0^{\frac{\pi}{2}} 9 \cos^2 \theta \, d\theta\)
(半角の公式 \(\displaystyle \cos^2 \theta = \frac{1 + \cos 2\theta}{2}\) 利用)
\(\displaystyle = \int_0^{\frac{\pi}{2}} \frac{9(1 + \cos 2\theta)}{2} \, d\theta\)
\(\displaystyle = \frac{9}{2} \int_0^{\frac{\pi}{2}} (1 + \cos 2\theta) \, d\theta\)
\(\displaystyle = \frac{9}{2} \left[ \theta + \frac{1}{2} \sin 2\theta \right]_0^{\frac{\pi}{2}}\)
\(\displaystyle = \frac{9}{2} \left\{ \left( \frac{\pi}{2} + 0 \right) − (0 + 0) \right\}\)
\(\displaystyle = \color{red}{\frac{9}{4}\pi}\)
→ \(\displaystyle \frac{1}{a^2 + x^2}\) なら \(x = a \tan\theta\) とおく
定積分の問題で \(\displaystyle \frac{1}{a^2 + x^2}\) のかたちが出てきたら、\(x = a \tan\theta\) とおくとうまく積分できます。
\(\displaystyle \int_0^1 \frac{1}{1 + x^2} \, dx\)
\(\color{salmon}{x = \tan\theta}\) とおくと
\(\displaystyle \frac{dx}{d\theta} = \frac{1}{\cos^2\theta}\) より \(\displaystyle dx = \frac{1}{\cos^2 \theta} \, d\theta\)
\(x\) | \(0 \to 1\) |
\(\theta\) | \(\displaystyle 0 \to \frac{\pi}{4}\) |
\(\displaystyle \int_0^1 \frac{1}{1 + x^2} \, dx\)
\(\displaystyle = \int_0^{\frac{\pi}{4}} \frac{1}{1 + \tan^2 \theta} \cdot \frac{1}{\cos^2 \theta} \, d\theta\)
(\(\displaystyle 1 + \tan^2 \theta = \frac{1}{\cos^2 \theta}\) 利用)
\(\displaystyle = \int_0^{\frac{\pi}{4}} \cos^2 \theta \cdot \frac{1}{\cos^2 \theta} \, d\theta\)
\(\displaystyle = \int_0^{\frac{\pi}{4}} 1 \, d\theta\)
\(\displaystyle = \left[ \theta \right]_0^{\frac{\pi}{4}}\)
\(\displaystyle = \color{red}{\frac{\pi}{4}}\)
こうした置換方法の根拠には、高校では習わない \(\sin\) や \(\tan\) の「逆関数」が関わっています。
そのため、高校数学の範囲では上記の不定積分は求められませんが、定積分なら求められます。
逆関数とは?逆関数の求め方や微分積分をわかりやすく解説
→ \(\sqrt{x^2 \pm a^2}\) なら \(t = x + \sqrt{x^2 \pm a^2}\) など
根号(ルート)の中に \(x^2 \pm a^2\) がある場合は、\(t = x + \sqrt{x^2 \pm a^2}\) とおく方法もあります。
\(\displaystyle \int \frac{1}{\sqrt{x^2 + 4}} \, dx\)
\(\color{salmon}{t = x + \sqrt{x^2 + 4}}\) とおくと
\(\begin{align}\displaystyle \frac{dt}{dx} &= 1 + \frac{(x^2 + 4)’}{2\sqrt{x^2 + 4}} \\&= 1 + \frac{2x}{2\sqrt{x^2 + 4}} \\&= 1 + \frac{x}{\sqrt{x^2 + 4}} \\&= \frac{\sqrt{x^2 + 4} + x}{\sqrt{x^2 + 4}} \\&= \frac{t}{\sqrt{x^2 + 4}}\end{align}\)
より
\(\displaystyle \frac{1}{\sqrt{x^2 + 4}} \ dx = \frac{1}{t} \, dt\)
\(\displaystyle \int \frac{1}{\sqrt{x^2 + 4}} \, dx\)
\(= \displaystyle \int \frac{1}{t} \, dt\)
\(= \displaystyle \log|t| + C\)
\(= \color{red}{\displaystyle \log(x + \sqrt{x^2 + 4}) + C}\)(\(C\) は積分定数)
(\(\sqrt{x^2 + 4} > \sqrt{x^2} = |x| \geq x\) より、\(x + \sqrt{x^2 + 4} \geq 0\) で絶対値は外れる)
置換積分法の練習問題
確認の意味を込めて、最後に \(2\) 問だけ練習問題を解いてみましょう。
「何を \(t\) とおくか」は、パターン①から順番に疑っていくといいですよ。
置換パターン
① \(f(x)\) が \(g(x)\) と \(g’(x)\) で表現できる → \(g(x) = t\) に置換
② ① に当てはまらない → 複雑なパーツを \(t\) に置換
③ \(a^2 \pm x^2\) を含む → 特殊な置換
練習問題①「三角関数の積の定積分」
次の不定積分を求めよ。
\(\displaystyle \int_{0}^{\frac{\pi}{2}} \sin^2 x \cos^3x \, dx\)
\(\sin x\) のべき乗と \(\cos x\) のべき乗の積です。
\(\sin^n x \cos x\) または \(\sin x \cos^m x\) のかたちに変形できれば、パターン①の置換が可能です。
\(\begin{align}\sin^2 x \cos^3x &= \sin^2 x \cdot \cos^2x \cdot \cos x \\&= \sin^2 x (1 − \sin^2 x)\cos x \\&= (\sin^2 x − \sin^4 x)\cos x\end{align}\)
\(\sin x = t\) とおくと、\(\displaystyle \frac{dt}{dx} = \cos x\)
\(x\) | \(0 \to \displaystyle \frac{\pi}{2}\) |
\(t\) | \(0 \to 1\) |
\(\displaystyle \int_{0}^{\frac{\pi}{2}} \sin^2 x \cos^3x \, dx\)
\(= \displaystyle \int_{0}^{\frac{\pi}{2}} (\sin^2 x − \sin^4 x)\cos x \, dx\)
\(= \displaystyle \int_0^1 (t^2 − t^4)\frac{dt}{dx} \, dx\)
\(= \displaystyle \int_0^1 (t^2 − t^4) \, dt\)
\(= \displaystyle \left[\frac{1}{3}t^3 − \frac{1}{5}t^5\right]_0^1\)
\(= \displaystyle \left(\frac{1^3}{3} − \frac{1^5}{5}\right) − \left(\frac{0^3}{3} − \frac{0^5}{5}\right)\)
\(= \displaystyle \frac{1}{3} − \frac{1}{5}\)
\(= \displaystyle \frac{5 − 3}{15}\)
\(= \displaystyle \frac{2}{15}\)
答え: \(\color{red}{\displaystyle \frac{2}{15}}\)
練習問題②「分母がルートの分数の不定積分」
次の不定積分を求めよ。
\(\displaystyle \int \frac{x}{\sqrt{4 − x^2}} \, dx\)
\(\sqrt{ }\) もあるし、\(a^2 − x^2\) のかたちもあるし、「\(t = 4 − x^2\)」「\(t = \sqrt{4 − x^2}\)」「\(x = a \sin\theta\)」、どれでおけばいいんだ?と混乱しますが、まずはパターン①から疑います。
\((4 − x^2)’ = −2x\) なので、分子は \(\displaystyle x = −\frac{1}{2} (−2x) = −\frac{1}{2} (4 − x^2)’\) と表現できますね。
\(\begin{align}\displaystyle \frac{x}{\sqrt{4 − x^2}} &= −\frac{1}{2} \frac{−2x}{\sqrt{4 − x^2}} \\&= −\frac{1}{2} \frac{(4 − x^2)’}{\sqrt{4 − x^2}} \end{align}\)
\(t = 4 − x^2\) とおくと、\(\displaystyle \frac{dt}{dx} = (4 − x^2)’\) であるから、
\(\displaystyle \int \frac{x}{\sqrt{4 − x^2}} \, dx\)
\(\displaystyle = −\frac{1}{2} \int \frac{(4 − x^2)’}{\sqrt{4 − x^2}} \, dx\)
\(\displaystyle = −\frac{1}{2} \int \frac{\frac{dt}{dx}}{\sqrt{t}} \, dx\)
\(\displaystyle = −\frac{1}{2} \int \frac{1}{\sqrt{t}} \, dt\)
\(\displaystyle = −\frac{1}{2} \int t^{−\frac{1}{2}} \, dt\)
\(\displaystyle = −\frac{1}{2} \cdot \frac{1}{\frac{1}{2}} t^{\frac{1}{2}} + C\)
\(= −t^{\frac{1}{2}} + C\)
\(= −\sqrt{t} + C\)
\(= −\sqrt{4 − x^2} + C\)
(\(C\) は積分定数)
答え:
\(\color{red}{−\sqrt{4 − x^2} + C}\)(\(C\) は積分定数)
以上で問題も終わりです!
置換積分は、ざっくりとパターン化できるとはいえ複雑で難しいテクニックです。
置換積分を使いこなすには、多くの問題を解いてカンをつけていくのが一番の近道です。
失敗や成功を重ねて、置換積分法をマスターしてくださいね!