この記事では、「常用対数」とは何かをわかりやすく解説していきます。
常用対数表の見方や使い方、最高位・桁数の計算方法なども説明していきますので、ぜひこの記事を通してマスターしてくださいね。
目次
常用対数とは?
常用対数とは、\(10\) を底とする対数 \(\log_{10} N\) のことです。
正の数 \(N\) は \(a \times 10^n\)(\(1 \leq a < 10\), \(n\) は整数)で表され、
\begin{align}\color{red}{\log_{10} N = \log_{10} a + n、 \ 0 \leq \log_{10} a < 1}\end{align}
なお、式変形の過程は以下のとおり。
\begin{align}\log_{10} N &= \log_{10} (a \times 10^n)\\&= \log_{10} a + \log_{10} 10^n \\&= \log_{10} a + n \cdot \log_{10} 10 \\&= \log_{10} a + n \cdot 1 \\&= \log_{10} a + n\end{align}
つまり、「\(10\) を何乗したら \(N\) になるか?」を表す数です。
(例)
\(\log_{10}100 = \log_{10}10^2 = 2\)
(\(10\) を \(2\) 乗したら \(100\))
\(\begin{align}\displaystyle \log_{10} \frac{1}{10000} &= \log_{10} \frac{1}{10^4} \\&= \log_{10} 10^{−4} \\&= −4\end{align}\)
(\(10\) を \(−4\) 乗したら \(\displaystyle \frac{1}{10000}\))
\(\begin{align}\log_{10}7310 &= \log_{10}(7.31 \times 10^3) \\&= \log_{10}7.31 + \log_{10}10^3 \\&= 0.8639 + 3 \\&= 3.8639\end{align}\)
(\(10\) を約 \(3.8639\) 乗したら \(7310\))
常用対数の式変形の過程では、対数の性質を利用します。忘れている人は先に復習しておきましょう!
対数の性質
- \(\log_{a} MN = \log_{a} M + \log_{a} N\)
- \(\displaystyle \log_{a} \frac{M}{N} = \log_{a} M − \log_{a} N\)
- \(\log_{a} M^k = k \log_{a} M\)
(ただし、\(a > 0\), \(a \neq 1\), \(M > 0\), \(N > 0\)、\(k\) は実数)
常用対数表とは?
教科書の巻末にある常用対数表について解説します。
常用対数表には、\(1.00 \leq a < 9.99\)(\(a\) は \(0.01\) 刻み)の範囲における \(\log_{10} a\) の値を小数第 \(5\) 位で四捨五入した値が示してあります(数字が見えない場合は拡大して見てください)。
任意の正の数 \(N\) は、必ず「\(N = a \times 10^n\)(\(1 \leq a < 10\), \(n\) は整数)」の形、常用対数でいえば「\(\log_{10} N = \underline{\log_{10} a} + n\)」の形で表せます。
つまり、常用対数表から \(\underline{\log_{10} a}\) の値を見つけ出せば、いかなる正の数 \(N\) であってもその常用対数が求められます。
常用対数表の見方
常用対数表の見方を説明します。
\(\log_{10} a\) の真数 \(a\) を「一の位と小数第 \(1\) 位」と「小数第 \(2\) 位」に分けて、直交表のように見て値を探します。
例えば、\(\log_{10} 1.43\) を求めたい場合、「\(1.4\)」の行と「\(3\)」の列が交わるセルの値 \(0.1553\) が答えです。
常用対数表を使った常用対数の求め方
例題を通して、実際に常用対数表から常用対数の値を求める手順を説明します。
\(2850\) の常用対数を常用対数表を用いて求めよ。
まずは真数(問題の数字)を \(a \times 10^n\) の形に変形します。
このとき、\(a\) が \(1 \leq a < 10\) の範囲になるようにします。
\(2850 = 2.85 \times 10^3\)
常用対数をとり、\(\log_{10} N = \log_{10} a + n\) の形に変形します。
\(2850 = 2.85 \times 10^3\) の常用対数をとると、
\(\begin{align}\log_{10} 2850 &= \log_{10}(2.85 \times 10^3)\\&= \log_{10} 2.85 + 3\end{align}\)
常用対数表から \(\log_{10} a\) の値を見つけます。
今回は \(\log_{10} 2.85\) が知りたいので、「\(2.8\)」の行、「\(5\)」の列の値を取り出します。
常用対数表より、
\(\log_{10} 2.85 = 0.4548\)
\(\log_{10} N = \log_{10} a + n\) より、表から探した \(\log_{10} a\) と \(n\) の和を求めれば、目的の常用対数の値が得られます。
したがって、
\(\begin{align} \log_{10} 2850 &= \log_{10} 2.85 + 3 \\&= 0.4548 + 3 \\ &= \color{red}{3.4548} \end{align}\)
常用対数表を読み取る問題はあまり出題されませんが、いざというときに対応できるようにしましょう!
常用対数の計算問題
それでは、常用対数の計算問題を解いてみましょう。
計算問題①「\(\log_{10} \sqrt{72}\)、\(\log_{10} 0.45\) の値」
次の値を求めよ。ただし、\(\log_{10} 2 = 0.3010\), \(\log_{10} 3 = 0.4771\) とする。
(1) \(\log_{10} \sqrt{72}\)
(2) \(\log_{10} 0.45\)
\(\log_{10} 2\), \(\log_{10} 3\) の値が与えられているので、問題の真数部分を \(2\) や \(3\) のべき乗の積で表してみましょう。
(1)
\(\log_{10} \sqrt{72}\)
\(= \log_{10} (2^3 \cdot 3^2)^{\frac{1}{2}}\)
\(\displaystyle = \frac{1}{2} (\log_{10} 2^3 + \log_{10} 3^2)\)
\(\displaystyle = \frac{1}{2} (3\log_{10} 2 + 2\log_{10} 3)\)
\(\displaystyle = \frac{1}{2} (3 \times 0.3010 + 2 \times 0.4771)\)
\(\displaystyle = \frac{1}{2} (0.9030 + 0.9542)\)
\(\displaystyle = \frac{1}{2} \cdot 1.8572\)
\(= 0.9286\)
答え: \(\color{red}{0.9286}\)
(2)
\(\log_{10} 0.45\)
\(\displaystyle = \log_{10} \frac{45}{100}\)
\(\displaystyle = \log_{10} \frac{3^2 \cdot 5}{100}\)
\(= \log_{10} (3^2 \cdot 5) − \log_{10} 100\)
\(= \log_{10} 3^2 + \log_{10} 5 − \log_{10} 10^2\)
\(\displaystyle = 2\log_{10} 3 + \log_{10} \frac{10}{2} − 2\)
\(= 2\log_{10} 3 + (\log_{10} 10 − \log_{10} 2) − 2\)
\(= 2\log_{10} 3 + (1 − \log_{10} 2) − 2\)
\(= 2\log_{10} 3 − \log_{10} 2 − 1\)
\(= 2 \cdot 0.4771 − 0.3010 − 1\)
\(= 0.9542 − 0.3010 − 1\)
\(= −0.3468\)
答え: \(\color{red}{−0.3468}\)
計算問題②「\(\log_{10} 0.000514\) の値(常用対数表を利用)」
常用対数表を用いて \(\log_{10} 0.000514\) の値を求めよ。
常用対数表から求める場合は、問題の真数部分を \(a \times 10^n\)(\(1 \leq a < 10\), \(n\) は整数)の形で表せばよいですね。
\(\begin{align} \log_{10} 0.000514 &= \log_{10} (5.14 \times 10^{−4}) \\ &= \log_{10} 5.14 − 4 \end{align}\)
常用対数表より、
\(\log_{10} 5.14 = 0.7110\) であるから
\(\begin{align} \log_{10} 0.000514 &= 0.7110 − 4 \\ &= −3.289 \end{align}\)
答え: \(\color{red}{−3.289}\)
常用対数と桁数・小数首位【公式】
常用対数は、\(10\) のべき乗と密接に関係しています。
私たちは普段十進法で数を数えますから、「\(10\) の何乗か」がわかることで桁数や小数首位を把握できます。
\(N\) は正の数、\(k\) は正の整数とすると、
- \(N\) の整数部分が \(k\) 桁であるとき
\(10^{k−1} \leq N < 10^k\) \(\iff k−1 \leq \log_{10} N < k\) - \(N\) の小数第 \(k\) 位に初めて \(0\) でない数字が現れるとき
\(10^{−k} \leq N < 10^{−k+1}\) \(\iff −k \leq \log_{10} N < −k+1\)
小数首位とは、初めて \(0\) でない数字が現れる桁数(小数第◯位)のことです。
(例)\(0.0038\) の小数首位は小数第 \(3\) 位
上記の公式における不等式の等号の位置、\(k\) の位置は混乱しやすいので、具体的な例で確認して頭に定着させましょう。
(例)
- \(3\) 桁の正の数 \(A\)
\(\iff 100 \leq A < 1000\)
\(\iff 10^2 \leq A < 10^3\)
\(\iff 2 \leq \log_{10}A < 3\) - 小数第 \(4\) 位が小数首位の正の数 \(B\)
\(\iff 0.0001 \leq B < 0.001\)
\(\iff 10^{−4} \leq B < 10^{−3}\)
\(\iff −4 \leq \log_{10} B < −3\)
常用対数と最高位・小数首位の数字【公式】
ある正の数の常用対数をとり、それを整数部分と小数部分に分けると、最高位の数字や小数首位の数字がわかります。
正の数 \(N\) の常用対数をとり、
\(\log_{10} N = n + \alpha\)(\(n\) は整数、\(0 \leq \alpha < 1\))
とおく。
\(\log_{10} A \leq \alpha < \log_{10} (A + 1)\)(\(A\) は整数)と表せるとき、
\begin{align}& \color{red}{A \leq 10^{\alpha} < A + 1} \\&\iff A \cdot 10^n \leq 10^{\alpha} \cdot 10^n < (A + 1) \cdot 10^n \\&\iff A \cdot 10^n \leq 10^{n + \alpha} < (A + 1) \cdot 10^n \\&\iff A \cdot 10^n \leq N < (A + 1) \cdot 10^n \\& \color{red}{\iff N \text{の最高位の数字は} A} \end{align}
常用対数の整数部分はあくまでも桁数にしか影響せず、小数部分が具体的な数字の配列に影響するのですね。
具体的な問題の解き方は、次の応用問題で解説します!
常用対数の応用問題
常用対数の応用問題に挑戦しましょう。
応用問題①「\(3^{23}\) の桁数と最高位の数字」
\(3^{23}\) の桁数および最高位の数字を求めよ。ただし、\(\log_{10} 3 = 0.4771\) とする。
常用対数をとれば桁数を求められるのでしたね。
また、常用対数の小数部分に注目して最高位の数字も求めましょう。
\(3^{23}\) の常用対数をとって
\(\begin{align} \log_{10} 3^{23} &= 23\log_{10} 3 \\ &= 23 \cdot 0.4771 \\ &= 10.9733 \end{align}\)
よって
\(3^{23} = 10^{10.9733}\)
であるから
\(10^{10} < 3^{23} < 10^{11}\)
したがって \(3^{23}\) の桁数は \(11\) 桁
また、
\(10^{10.9733} = 10^{10} \cdot 10^{0.9733}\) …①
ここで、
\(\log_{10} 9 = 2\log_{10} 3 = 0.9542\)、\(\log_{10} 10 = 1\)
より
\(\log_{10} 9 < 0.9733 < \log_{10} 10\)
すなわち
\(9 < 10^{0.9733} < 10\)
各辺に \(10^{10}\) をかけると、①より
\(9 \cdot 10^{10} < 10^{10.9733} < 10 \cdot 10^{10}\)
よって \(9 \cdot 10^{10} < 3^{23} < 10 \cdot 10^{10}\)
したがって、最高位の数字は \(9\)
答え: 桁数 \(\color{red}{11}\) 桁、最高位の数字 \(\color{red}{9}\)
応用問題②「初めて 0 でない数字が現れるのは小数第何位?」
\(\displaystyle \left( \frac{2}{3} \right)^{100}\) を小数で表すと、小数第何位に初めて \(0\) でない数字が現れるか。また、その数字を求めよ。
ただし、\(\log_{10} 2 = 0.3010\), \(\log_{10} 3 = 0.4771\) とする。
小数の場合も求め方は同じです。
ただし、不等式と桁数の関係に注意しましょう。
\(\displaystyle \left( \frac{2}{3} \right)^{100}\) の常用対数をとって
\(\begin{align} \log_{10} \left( \frac{2}{3} \right)^{100} &= 100\log_{10} \frac{2}{3} \\ &= 100(\log_{10} 2 − \log_{10} 3) \\ &= 100(0.3010 − 0.4771) \\ &= −17.61 \end{align}\)
よって \(\displaystyle \left( \frac{2}{3} \right)^{100} = 10^{−17.61}\)
であるから
\(\displaystyle 10^{−18} < \left( \frac{2}{3} \right)^{100} < 10^{−17}\)
したがって小数第 \(18\) 位で初めて \(0\) でない数字が現れる。
また、
\(10^{−17.61} = 10^{−18} \cdot 10^{0.39}\) …①
ここで、
\(\log_{10} 2 = 0.3010\), \(\log_{10} 3 = 0.4771\)
より
\(\log_{10} 2 < 0.39 < \log_{10} 3\)
すなわち
\(2 < 10^{0.39} < 3\)
各辺に \(10^{−18}\) をかけると、①より
\(2 \cdot 10^{−18} < 10^{−17.61} < 3 \cdot 10^{−18}\)
よって \(\displaystyle 2 \cdot 10^{−18} < \left( \frac{2}{3} \right)^{100} < 3 \cdot 10^{−18}\)
したがって、初めて現れる \(0\) でない数字は \(2\)
答え: 小数第 \(\color{red}{18}\) 位、初めて現れる \(\color{red}{0}\) でない数字 \(\color{red}{2}\)
応用問題③「金利計算(複利)の文章題」
預金の年利(複利)が \(0.8 \ \text{%}\) であるとき、預金が初めて元金の \(1.5\) 倍以上になるのは何年後か。
ただし、\(\log_{10} 2 = 0.3010\)、\(\log_{10} 3 = 0.4771\)、\(\log_{10} 7 = 0.8451\) とする。
常用対数は、金利計算にも活用できます。
問題で与えられた常用対数の値を利用できるように、うまく式変形しましょう。
複利とは、\(1\) 年ごとに利息を元金に繰り入れる方式のことで、利息分にもまた利息がつきます。
年利(複利)\(\alpha\)、元金 \(A\) の \(n\) 年後の預金は \(A(1 + \alpha)^n\) と計算できます。
元金を \(x\) 円とすると、\(n\) 年後の預金は
\((1 + 0.008)^n x = 1.008^n x\)
\(n\) 年後の預金が元金の \(1.5\) 倍以上になるとき、
\(1.008^n x \geq 1.5x\)
したがって、\(1.008^n \geq 1.5\) を満たす最小の自然数 \(n\) を求めればよい。
両辺の常用対数をとると
\(n \log_{10} 1.008 \geq \log_{10} 1.5\)
ここで、
\(\log_{10} 1.008\)
\(\displaystyle = \log_{10} \frac{1008}{1000}\)
\(\displaystyle = \log_{10} \frac{2^4 \cdot 3^2 \cdot 7}{10^3}\)
\(= \log_{10} 2^4 + \log_{10} 3^2 + \log_{10} 7 − \log_{10} 10^3\)
\(= 4\log_{10} 2 + 2\log_{10} 3 + \log_{10} 7 − 3\)
\(= 1.204 + 0.9542 + 0.8451 − 3\)
\(= 0.0033\)
(見切れる場合は横へスクロール)
\(\begin{align} \log_{10}1.5 &= \log_{10} \frac{3}{2} \\ &= \log_{10} 3 − \log_{10} 2 \\ &= 0.4771 − 0.3010 \\ &= 0.1761 \end{align}\)
であるから、
\(0.0033n \geq 0.1761\)
\(n \geq 53.36\cdots\)
よって、\(54\) 年後に元金の \(1.5\) 倍以上となる。
答え: \(\color{red}{54}\) 年後
以上で応用問題も終わりです。
常用対数は十進数と相性がよく、工学・実験科学・経済学などの実学でよく使われます。
常用対数の特徴や使い方をつかんで、ぜひマスターしてくださいね!