この記事では、「増減表」の書き方や符号の調べ方をわかりやすく解説していきます。
関数を \(2\) 回微分する意味なども説明していくので、ぜひこの記事を通してマスターしてくださいね!
目次
増減表とは?
増減表とは、ある関数の増加および減少の様子を表にまとめたものです。
増減表を書くことで、グラフの概形を把握しやすくなります。
増減表の要素と意味
増減表に必ず書くのは、次の要素です。
一行目に \(x\)、二行目に一階微分 \(f'(x)\)、三行目に \(f(x)\) をとり、\(f'(x) = 0\) となる点の座標、およびその前後の関数の増減に着目します。
関数を微分する回数は「階数」と呼ばれ、「一階、二階…」などと数えられます(「一次、二次…」と数えることもあります)。
「変曲点を調べて」「凹凸も調べて」などと指定された場合は、二階微分 \(f’’(x)\) の行、変曲点の列を追加します。
そうすると、矢印の向きで関数の凹凸まで表現できます。
それぞれの要素の意味を確認しましょう。
一階微分 f'(x):関数の増減と極大・極小
一階微分 \(f’(x)\) は関数 \(f(x)\) において傾きを示します。
よって、\(f’(x)\) の符号を調べると「関数 \(f(x)\) の増減」と「極大・極小」がわかります。
関数 \(f(x)\) がある区間で連続で、かつ微分可能であるとき、
- ある区間で常に \(\color{red}{f'(x) > 0}\) ならば、\(f(x)\) はその区間で単調に増加する。
- ある区間で常に \(\color{red}{f'(x) = 0}\) ならば、\(f(x)\) はその区間で一定(定数)である。
- ある区間で常に \(\color{red}{f'(x) < 0}\) ならば、\(f(x)\) はその区間で単調に減少する。
関数 \(f(x)\) において、\(f'(x)\) の符号が
- \(x = a\) の前後で正から負に変わるとき
「\(f(x)\) は \(x = a\) で極大になる」といい、\(f(a)\) を「極大値」という。 - \(x = b\) の前後で負から正に変わるとき
「\(f(x)\) は \(x = b\) で極小になる」といい、\(f(b)\) を「極小値」という。
極大値と極小値をまとめて「極値」という。
二階微分 f”(x):関数の凹凸と変曲点
二階微分 \(f’’(x)\) とは、\(f'(x)\) をさらに微分したもの(つまり、関数 \(f(x)\) を \(2\) 回微分したもの)です。
二階微分 \(f’’(x)\) の符号まで調べると、傾き \(f’(x)\) の増減、つまり「関数 \(f(x)\) の凹凸」と「変曲点」がわかります。
関数 \(y = f(x)\) において、\(f’’(x)\) の符号によってグラフの傾きは次のように変化する。
- \(\color{red}{f’’(x) < 0}\) のとき
接線の傾きが単調に減少する - \(\color{red}{f’’(x) = 0}\) のとき
接線の傾きの増減が切り替わる(変曲点) - \(\color{red}{f’’(x) > 0}\) のとき
接線の傾きが単調に増加する
\(f’’(x)\) を調べるのは、「変曲点を調べて」「凹凸も調べて」などと指定されたときだけで構いません。
増減表の書き方(作り方)
例題を通して、増減表の書き方を説明していきます。
① 増減だけを調べるときの増減表
次の関数の増減を調べよ。
\(y = 2x^3 − 3x^2 + 1\)
関数の増減だけを調べればよい場合は、\(x\)、\(f'(x)\)、\(f(x)\) の \(3\) 行分の増減表を作ります。
\(f'(x) = 0\) を満たす \(x\) があるかどうかを調べることで、関数の傾きが \(0\) になる点の有無がわかります。
\(y’ = 6x^2 − 6x = 6x(x − 1)\) より、
\(y’ = 0\) のとき、\(x = 0, 1\)
\(y’ = 0\) が \(2\) つの異なる実数解をもつので、この関数は関数の傾きが \(0\) になる点を \(2\) つもつことがわかりました。
この場合、それらの点における \(x\), \(y\) 座標も求めておきます。
\(x = 0\) のとき \(y = 1\)
\(x = 1\) のとき \(y = 2 − 3 + 1 = 0\)
次のような増減表を用意します。
先ほど求めた \(f'(x) = 0\) を満たす点の \(x\), \(y’\), \(y\) は埋めておきましょう。
\(x = 0\) のとき \(y’ = 0\), \(y = 1\)
\(x = 1\) のとき \(y’ = 0\), \(y = 0\)
これらの点が極値であるかどうかは、その前後で \(f'(x)\) の符号が入れ替わるかを調べることでわかります。
増減表の空欄の範囲における \(f’(x)\) の符号を調べます。
符号を調べるときは、その範囲内で適当な \(x\) の値を \(f’(x)\) に代入してみます。
今回は、\(x < 0\)、\(0 < x < 1\)、\(1 < x\) の範囲にある値を選べばいいですね。
ここでは、試しに \(x = −1\)、\(x = 2\) を\(f’(x)\) に代入してみます。
\(x = −1\) のとき \(y’ = 6(−1)(−1 − 1) = 12 > 0\)
\(\displaystyle x = \frac{1}{2}\) のとき \(\displaystyle y’ = 6 \cdot \frac{1}{2} \left( \frac{1}{2} − 1 \right) = −\frac{3}{2} < 0\)
\(x = 2\) のとき \(y’ = 6 \cdot 2(2 − 1) = 12 > 0\)
\(f’(x)\) が正なら \(2\) 行目に「\(\bf{+}\)」、\(3\) 行目に「\(\bf{\nearrow}\)」を書きます。
\(f’(x)\) が負なら \(2\) 行目に「\(\bf{−}\)」、\(3\) 行目に「\(\bf{\searrow}\)」を書きます。
山の矢印(↗︎↘︎:傾きが正から負)にはさまれたのが「極大」、谷の矢印(↘︎↗︎:傾きが負から正)にはさまれたのが「極小」です。
これで増減表の完成です!
ここからグラフを書く場合は、さらに \(x\) 軸、\(y\) 軸との交点の座標も調べておくとよいでしょう。
同じ例題で、さらにグラフを書くまでの手順を別記事の「三次関数のグラフの書き方」で説明しています!
ちなみに、以下のようなグラフになります。
② 増減と凹凸を調べるときの増減表
次の関数の増減、凹凸を調べよ。
\(y = 2x^3 − 3x^2 + 1\)
関数の増減と凹凸を調べる場合は、\(x\)、\(f'(x)\)、\(f’’(x)\)、\(f(x)\) の \(4\) 行分の増減表を作ります。
\(f’(x) = 0\) および \(f’’(x) = 0\) となる \(x\) が存在するかどうかを調べます。
\(y’ = 6x^2 − 6x = 6x(x − 1)\)
\(y’ = 0\) のとき、\(x = 0, 1\)
\(y’’ = 12x − 6 = 6(2x − 1)\)
\(y’’ = 0\) のとき、\(\displaystyle x = \frac{1}{2}\)
これらの点における \(x\), \(y\) 座標は求めておきましょう。
\(x = 0\) のとき \(y = 1\)
\(x = 1\) のとき \(y = 2 − 3 + 1 = 0\)
\(\displaystyle x = \frac{1}{2}\) のとき \(\displaystyle y = \frac{1}{4} − \frac{3}{4} + 1 = \frac{1}{2}\)
次のような増減表を用意します。
\(f’(x) = 0\) における \(x\), \(y’\), \(y\)、および \(f’’(x) = 0\) における \(x\), \(y’’\), \(y\) は埋めておきましょう。
増減を調べてみないとわかりませんが、\(y’ = 0\) の点が極値、\(y” = 0\) の点が変曲点である可能性があります。
前後の増減を調べましょう。
増減表の空欄の範囲における \(f’(x)\) および \(f’’(x)\) の符号を調べます。
符号を調べるときは、適当な \(x\) の値を代入してみましょう。
\(x = −1\) のとき
\(y’ = 6(−1)(−1 − 1) = 12 > 0\)
\(y’’ = 6\{2(−1) − 1\} = −18 < 0\)
\(\displaystyle x = \frac{1}{2}\) のとき
\(\displaystyle y’ = 6 \cdot \frac{1}{2} \left( \frac{1}{2} − 1 \right) = −\frac{3}{2} < 0\)
\(x = 2\) のとき
\(y’ = 6 \cdot 2(2 − 1) = 12 > 0\)
\(y’’ = 6\left(2 \cdot 2 − 1\right) = 18 > 0\)
符号を調べるのは、\(f’(x) = 0\) 前後の \(1\) 点ずつ、\(f’’(x) = 0\) 前後の \(1\) 点ずつで十分です。
\(f’(x)\), \(f’’(x)\) の符号から、矢印の向きを決定します。
\(x < 0\) では、\(y’ > 0\), \(y” < 0\) でした。つまり、傾きは正であるが単調に減少するので、上向きだけれど横に湾曲していく矢印を記入します。
\(0 < x < \displaystyle \frac{1}{2}\) では、\(y’ < 0\), \(y” < 0\) でした。つまり、傾きは負で単調に減少するので、下向きかつ下に湾曲していく矢印を記入します。
\(\displaystyle \frac{1}{2} < x < 1\) では、\(y’ < 0\), \(y” > 0\) でした。つまり、傾きは負であるが単調に増加するので、下向きだけれど横に湾曲していく矢印を記入します。
\(1 < x\) では、\(y’ > 0\), \(y” > 0\) でした。つまり、傾きは正で単調に増加するので、上向きかつ上に湾曲していく矢印を記入します。
これで増減表の完成です!
増減表から、この関数は \(x = 0\) で極大(極大値 1)、\(x = \displaystyle \frac{1}{2}\) で変曲点、\(x = 1\) で極小(極小値 0)をとることがわかりますね。
グラフは先ほどと同じになるので、増減表と見比べてみてください。
増減表の練習問題
さまざまな種類の関数の増減表を書く練習をしましょう。
練習問題①「最大値・最小値を求める(定義域)」
\(f(x) = x^3 − 4x^2 + 4x + 1\) \((0 \leq x \leq 3)\) の最大値と最小値を求めよ。
定義域のある関数では、増減表の両端を定義域で固定します。
極大値・極小値が最大値・最小値であるとは限らないことに注意しましょう。
\(\begin{align} y’ &= 3x^2 − 8x + 4 \\ &= (3x − 2)(x − 2) \end{align}\)
\(y’ = 0\) のとき \(\displaystyle x = \frac{2}{3}, 2\)
\(\displaystyle x = \frac{2}{3}\) のとき
\(\begin{align} y &= \frac{8}{27} − \frac{16}{9} + \frac{8}{3} + 1 \\ &= \frac{8 − 48 + 72 + 27}{27} \\ &= \frac{59}{27} \end{align}\)
\(x = 2\) のとき
\(\begin{align} y &= 8 − 16 + 8 + 1 \\ &= 1 \end{align}\)
また、
\(x = 0\) のとき \(y = 1\)
\(x = 3\) のとき \(y = 27 − 36 + 12 + 1 = 4\)
よって、\(0 \leq x \leq 3\) における \(y\) の増減は次のようになる。
したがって、
\(x = 3\) で最大値 \(4\)、\(x = 0, 2\) で最小値 \(1\) をとる。
答え:
最大値 \(\color{red}{4 \,\,(x = 3)}\)、最小値 \(\color{red}{1 \,\,(x = 0, 2)}\)
練習問題②「三角関数のグラフを書く」
関数 \(y = x + 2\sin x\) \((0 \leq x \leq 2\pi)\) の凹凸と極値を調べ、グラフを書け。
凹凸も必要なので、\(y’’\) まで求めます。
\(y’ = 1 + 2\cos x\)
\(y’ = 0\) のとき
\(\displaystyle \cos x = −\frac{1}{2}\)、\(0 \leq x \leq 2\pi\) より
\(\displaystyle x = \frac{2}{3}\pi, \frac{4}{3}\pi\)
\(\displaystyle 0 \leq x < \frac{2}{3}\pi\) で \(y’ > 0\)
\(\displaystyle \frac{2}{3}\pi < x < \frac{4}{3}\pi\) で \(y’ < 0\)
\(\displaystyle \frac{4}{3}\pi < x \leq 2\pi\) で \(y’ > 0\)
\(y’’ = −2\sin x\)
\(y’’ = 0\) のとき
\(\sin x = 0\)、\(0 \leq x \leq 2\pi\) より
\(x = 0, \pi, 2\pi\)
\(0 \leq x < \pi\) で \(y’’ < 0\)
\(\pi < x \leq 2\pi\) で \(y’’ > 0\)
また、
- \(x = 0\) のとき \(y = 0\)
- \(\displaystyle x = \frac{2}{3}\pi\) のとき \(\displaystyle y = \frac{2}{3}\pi + \sqrt{3}\)
\(\displaystyle \frac{2}{3}\pi + \sqrt{3} ≒ \frac{2}{3} \cdot 3.14 + 1.73 = 3.8\) - \(x = \pi\) のとき \(y = \pi\)
- \(\displaystyle x = \frac{4}{3}\pi\) のとき \(\displaystyle y = \frac{4}{3}\pi − \sqrt{3}\)
\(\displaystyle \frac{4}{3}\pi − \sqrt{3} ≒ \frac{4}{3} \cdot 3.14 − 1.73 = 2.5\) - \(x = 2\pi\) のとき \(y = 2\pi\)
よって、\(0 \leq x \leq 2\pi\) における \(y\) の凹凸は次のようになる。
極値およびグラフは次の通り。
答え:
極大値 \(\color{red}{\displaystyle \frac{2}{3}\pi + \sqrt{3} \,\,\left(\displaystyle x = \frac{2}{3}\pi\right)}\)
極小値 \(\color{red}{\displaystyle \frac{4}{3}\pi − \sqrt{3} \,\,\left(\displaystyle x = \frac{4}{3}\pi\right)}\)
以上で問題も終わりです。
増減表がすばやく書けると、問題がスムーズに解けます。
しっかり練習してぜひマスターしてくださいね!
増減表
f(x)のところがいつも分からなくて今までの勉強よりも確率が高いです。
でも、受験には必要ないですけど学校は使うのでもっと勉強したいと思います。
ご感想ありがとうございます。
今後とも当サイトをどうぞよろしくお願いいたします。
増減表の作り方の①ステップ1のf'(a)=0より極値を持つことが分かると書いてありますが、必要条件なので成り立つ可能性があるだけで極値を取るかは分からないのではないのですか。
当該箇所、文言を修正いたしました。
ご指摘いただきありがとうございます。
f”(x)=0のとき
接線の傾きの符号が切り替わる(変曲点)
というのは、
接線の傾きの増減が切り替わる(変曲点)
ではないでしょうか。
接線の傾きの符号が切り替わるのは極値のはずです。
この度はコメントいただきありがとうございます。
ご指摘を受け、該当部分を修正いたしました。
今後ともどうぞ当サイトをよろしくお願いいたします。
2階微分と思うんですけど
この度はコメントいただきありがとうございます。
「2回微分」というキーワードでお調べになる方が多いためあえて使用しておりましたが、用語としてはご指摘のとおり「2階微分」が正しいです。
確かに、元の文章だと誤った認識を与えてしまうおそれがありましたので、文言を一部修正いたしました。
今後ともどうぞ当サイトをよろしくお願いいたします。