この記事では「逆数」について、その意味や計算方法をできるだけわかりやすく解説していきます。
マイナスの数の逆数の求め方や、逆数の和の問題なども紹介していきますので、この記事を通してぜひマスターしてくださいね。
目次
逆数とは?
逆数とは、ある数にかけ算すると答えが \(1\) になる数です。
逆数には常にペアがいて、必ず「〇〇の逆数」という表現をします。
例えば、ある数 \(A\) と \(B\) をかけると答えが \(1\) になるとき(\(A \times B = 1\) のとき)、
- 「\(A\) は \(B\) の逆数」
または - 「\(B\) は \(A\) の逆数」
と表現できます。
簡単な具体例を見てみましょう。
例えば、
\(2 \times \displaystyle \frac{1}{2} = 1\)
なので、
- 「\(2\) の逆数は \(\displaystyle \frac{1}{2}\)」
または - 「\(\displaystyle \frac{1}{2}\) の逆数は \(2\)」
といえます。
逆数には、かけて \(1\) になるペアの数が必ずあります。
しかし、実は \(1\) つだけ逆数をもたない数字があります。
それは、「\(0\)」です。
\(0\) には何をかけても \(0\) のままで、\(1\) にはなりませんよね。
したがって、\(0\) には逆数がありません。
逆数の求め方
ここでは、逆数の求め方を説明します。
ある数の逆数を求めるには、ある数を ① 分数に変形して、② 分母と分子をひっくり返します。
そうすれば、「ある数 × 逆数 = \(\bf{1}\)」という式の分母と分子が約分でき、かけ算した答えを \(1\) にできます。
これが、逆数の求め方の基本です。
それでは、さまざまな数の逆数の求め方を確認していきましょう。
整数の逆数
ここでは、整数 \(6\) の逆数を求めてみましょう。
\(6\) を分数に直し、分母と分子をひっくり返します。
整数 \(6\) を分数で表すと \(\displaystyle \frac{6}{1}\)
分母と分子をひっくり返すと \(\displaystyle \frac{1}{6}\)
よって、\(6\) の逆数は \(\displaystyle \frac{1}{6}\)
逆数を求めたあとは、元の数とかけて \(1\) になるか確認しておくと安心です。
(確認)
\(6 \times \displaystyle \frac{1}{6} = \displaystyle \frac{6}{1} \times \displaystyle \frac{1}{6} = 1\)
分数の逆数
次は、 \(\displaystyle \frac{5}{3}\) の逆数を求めてみましょう。
\(\displaystyle \frac{5}{3}\) はもともと分数なので、分母と分子をひっくり返すだけですね。
\(\displaystyle \frac{5}{3}\) の逆数は \(\displaystyle \frac{3}{5}\)
(確認)
\(\displaystyle \frac{5}{3} \times \displaystyle \frac{3}{5} = 1\)
一方で、帯分数のときはまず仮分数に直してから逆数を求めます。
\(2 \displaystyle \frac{3}{5}\) の逆数を求めてみましょう。
なお、\(2 \displaystyle \frac{3}{5}\) の 「\(2\)」 は \(\displaystyle \frac{5}{5}\) が \(2\) つあることを示しているのでしたね。
\(2 \displaystyle \frac{3}{5}\) を仮分数に直すと
\(2 \displaystyle \frac{3}{5} = \displaystyle \frac{5}{5} \times 2 + \displaystyle \frac{3}{5} = \displaystyle \frac{10}{5} + \displaystyle \frac{3}{5} = \displaystyle \frac{13}{5}\)
分母と分子をひっくり返すと\(\displaystyle \frac{5}{13}\)
よって \(2 \displaystyle \frac{3}{5}\) の逆数は \(\displaystyle \frac{5}{13}\)
(確認)
\(2 \displaystyle \frac{3}{5} \times \displaystyle \frac{5}{13} = \displaystyle \frac{13}{5} \times \displaystyle \frac{5}{13} = 1\)
小数の逆数
ここでは、 \(0.25\) の逆数を求めてみましょう。
小数の場合も、分数に直してから逆数を求めます。
小数を分数へ直すには、分母に「\(1\)」を置き、分子が整数になるように、分母・分子に同じ数をかけてあげます。
\(0.25 = \displaystyle \frac{0.25}{1} = \displaystyle \frac{0.25 \color{salmon}{\times 100}}{1 \color{salmon}{\times 100}} = \displaystyle \frac{25}{100} = \displaystyle \frac{1}{4}\)
分母と分子をひっくり返すと \(\displaystyle \frac{4}{1} = 4\)
よって、\(0.25\) の逆数は \(4\)
(確認)
\(0.25 \times 4 = \displaystyle \frac{1}{4} \times 4 = 1\)
マイナスの数の逆数
ここでは、\(− 5\) の逆数を求めてみましょう。
答えは簡単、\(\displaystyle \frac{1}{5}\) …ではありません。
かけ算すると、\(− 5 \times \displaystyle \frac{1}{5} = − 1\) になってしまいますね。
ある数と逆数の関係は、かけて「\(\color{red}{+ 1}\)」にならないといけないので、ある数がマイナスの場合、その逆数も必ずマイナスとなります。
正しくは、
\(− 5\) の逆数は \(− \displaystyle \frac{1}{5}\)
(確認)
\(− 5 \times \left(− \displaystyle \frac{1}{5}\right) = 1\)
ですね!
逆数の計算問題
では、さっそく、逆数の簡単な問題を解いてみましょう。
計算問題①「負の数の逆数を求める」
逆数を求める方法は、以下のような手順でしたね。
- 「ある数」を分数にする。
- 分母と分子を逆にして、逆数を求める。
- ある数と逆数をかけると \(1\) になることを確認する。
\(− 4 = − \displaystyle \frac{4}{1}\) より、
\(− 4\) の逆数は \(− \displaystyle \frac{1}{4}\)
(確認)
\(− 4 × \left(− \displaystyle \frac{1}{4}\right) = − \displaystyle \frac{4}{1} × \left(− \displaystyle \frac{1}{4}\right) = 1\)
答え: \(− \displaystyle \frac{1}{4}\)
計算問題②「帯分数の逆数を求める」
ある数が帯分数のときは、まず仮分数に直すんでしたね。
\(\begin{align}5 \displaystyle \frac{2}{7} &= \displaystyle \frac{7}{7} \times 5 + \displaystyle \frac{2}{7} \\&= \displaystyle \frac{35}{7} + \displaystyle \frac{2}{7} \\&= \displaystyle \frac{37}{7}\end{align}\)
より、
\(5 \displaystyle \frac{2}{7}\) の逆数は \(\displaystyle \frac{7}{37}\)
(確認)
\(5 \displaystyle \frac{2}{7} \times \displaystyle \frac{7}{37} = \displaystyle \frac{37}{7} \times \displaystyle \frac{7}{37} = 1\)
答え: \(\displaystyle \frac{7}{37}\)
計算問題③「小数の逆数を求める」
小数の逆数を求める問題です。
今までの問題と同じように、分数に直してから逆数を求めます。
\(3.75 = \displaystyle \frac{3.75}{1} = \displaystyle \frac{3.75 \times 100}{1 \times 100} = \displaystyle \frac{375}{100} = \displaystyle \frac{15}{4}\) より、
\(3.75\) の逆数は \(\displaystyle \frac{4}{15}\)
(確認)
\(3.75 \times \displaystyle \frac{4}{15} = \displaystyle \frac{15}{4} \times \displaystyle \frac{4}{15} = 1\)
答え: \(\displaystyle \frac{4}{15}\)
逆数の応用問題
最後の仕上げとして、少し難易度の高い \(2\) 問を解いてみましょう。
応用問題①「約数の逆数の和を求める」
\(200\) の約数には、 \(1, 2, …, 100, 200\) などがありますが、すべての約数を書き出すのは大変です。
実は、「約数の総和に関する公式」を用いれば、すべての約数を求めなくてもこの問題を解くことができます。
約数の総和の公式
自然数 \(N\) が \(N = p^a \times q^b \times \cdots \times r^c\) と素因数分解できるとき、
(\(N\) の正の約数の総和)
\(= (1 + p^1 + p^2 + \cdots + p^a)\)\((1 + q^1 + q^2 + \cdots + q^b)\)\( \cdots (1 + r^1 + r^2 + \cdots + r^c)\)
約数とは?約数の個数や総和の求め方、約数表、計算問題
\(200\) の約数は、\(1, 2, \cdots, 100, 200\) であるから、
\(200\) の約数の逆数の総和は
\(\displaystyle \frac{1}{1} + \displaystyle \frac{1}{2} + \cdots +\displaystyle \frac{1}{100} +\displaystyle \frac{1}{200}\)
と表せる。
分母を \(200\) で通分すると、
\(\displaystyle \frac{1}{1} + \displaystyle \frac{1}{2} + \cdots +\displaystyle \frac{1}{100} +\displaystyle \frac{1}{200}\)
\(= \displaystyle \frac{200 + 100 + \cdots + 2 + 1}{200}\) …①
このとき、①の分子の総和は \(200\) の約数の総和である。
ここで、\(200\) を素因数分解すると \(200 = 2^3 \times 5^2\) であるから、
(\(200\) の約数の総和)
\(= (2^0 + 2^1 + 2^2 + 2^3)(5^0 + 5^1 + 5^2)\)
\(= (1 + 2 + 4 + 8)(1 + 5 + 25)\)
\(= 15 × 31\)
\(= 465\)
①より、
\(\displaystyle \frac{200 + 100 + \cdots + 2 + 1}{200}\)
\(= \displaystyle \frac{465}{200}\)
\(= \displaystyle \frac{93}{40}\)
したがって、\(200\) の約数の逆数の総和は \(\displaystyle \frac{93}{40}\)
答え: \(\displaystyle \frac{93}{40}\)
応用問題②「速さの比から時間の比を求める」
時速 \(60 \, \mathrm{km}\) の自動車と時速 \(15 \, \mathrm{km}\) の自転車で、家から駅に向かったときにかかる時間の比を求めよ。
進む距離が同じとき、時間の比は速さの比の逆数になります。
単位を見てみると、距離の単位は \(\mathrm{km}\)、時間の単位は \(\mathrm{h}\)、速さの単位は \(\mathrm{km / h}\) です。
速さの逆数は \(\mathrm{h / km}\)、このとき、距離 \(\mathrm{km}\) が一定なので試しに \(1\) とおくと \(\mathrm{h} / 1 = \bf{\mathrm{h}}\) になり、時間と同じになりますね。
自動車と自転車の速さの比は、\(60 : 15 = 4 : 1\)
時間の比は速さの比の逆数であるから、自動車と自転車の時間の比は
\(\displaystyle \frac{1}{4} : \displaystyle \frac{1}{1} =\displaystyle \frac{1}{4} \times 4 : \displaystyle \frac{1}{1} \times 4 = 1 : 4\)
答え: \(1 : 4\)
以上で、すべての問題は終わりです!
逆数は、ある数を分数に変形できてしまえば、簡単に求められます。
とても大事な概念なので、よく慣れて、理解しておきましょう!