この記事では「比例」の意味や比例定数の求め方、使う記号についてできるだけわかりやすく解説していきます。
また、グラフを書くときのポイントや計算問題の解き方なども紹介していきますので、この記事を通してぜひマスターしてくださいね。
目次
比例とは?
比例とは、\(2\) つの数の比が一定となる関係のことです。
\(2\) つの数について、一方が \(2\) 倍、 \(3\) 倍となると、もう一方の数も \(2\) 倍、\(2\) 倍となるとき、その \(2\) つの数は「比例関係にある」といいます。
比例の定義
比例関係にある \(2\) つの数は次の式で表すことができます。
\(y\) が \(x\) に比例するとき、\(0\) でない定数 \(a\) を用いて次の式で表される。
\begin{align}\color{red}{y = ax}\end{align}
このとき、\(a\) を比例定数という。
比例関係の例
例えば、下の表のリボンの長さと代金は比例関係にあります。
リボンが \(1 \, \mathrm{m}\) のときの代金が \(50\) 円です。リボンの長さが \(2\) 倍の \(2 \, \mathrm{m}\) になると、代金も \(2\) 倍の \(100\) 円になっていますね。
代金をリボンの長さでそれぞれ割り算してみると、「\(50\)」という一定の値(= 定数)になります。
これが「比例定数」です。
これを用いて \(2\) つの数の比例関係を式に表すと
\(\text{(代金)} = 50 \times \text{(リボンの長さ)}\)
この式を言葉で説明すれば、「代金はリボンの長さに比例し、このときの比例定数は \(50\) である」となります。
比例関係にある \(2\) つの数は、どちらを主語にしても式が立てられます。
ただし、どちらを主語と見るかによって比例定数は異なるので、実際に問題に取り組むときには注意しましょう。
「代金」を主語にすると、
\(\text{(代金)} = \color{red}{50} \times \text{(リボンの長さ)}\)
「代金がリボンの長さに比例する」
「リボンの長さ」を主語にすると、
\(\text{(リボンの長さ)} = \color{red}{\displaystyle \frac{1}{50}} \times \text{(代金)}\)
「リボンの長さが代金に比例する」
比例の記号
比例関係は次の記号で表すことができます。
\(y\) が \(x\) に比例するとき、比例記号「\(∝\)」を用いて
\begin{align}\color{red}{y ∝ x}\end{align}
と表せる。
先ほどの「代金がリボンの長さに比例する」は、比例記号を用いて
\(\text{(代金)} ∝ \text{(リボンの長さ)}\)
と表せます。
必ず主語を左側におくのがルールです。
問題を解いていく中で出てくることは少ないかもしれませんが、いきなり出てきてもあせらないように覚えておきましょう!
比例定数の求め方【例題】
それでは、簡単な例題を通して比例定数を求める方法を説明していきます。
比例定数を求めれば、自ずと比例の式もわかりますね。
比例の式は \(y = ax\) なので、ここに \(x = 4 , y = 8\) を代入しましょう。
\(y = ax\) とおくと、
\(8 = 4a\)
\(\color{red}{a = 2}\)
したがって答えは、比例定数 \(2\)、比例の式 \(y = 2x\) となります。
簡単ですね!
比例のグラフの書き方
比例のグラフは、以下のように必ず原点を通る直線で表されます。
ここでは、比例のグラフをきれいに、簡単に書く方法を紹介していきます。
\(y = \displaystyle \frac{4}{5} x\) のグラフを書け。
まずは、グラフを書くための準備をしましょう。
\(x\) 軸、\(y\) 軸を書き、原点 \(\mathrm{O}\) を記入します。
先ほど述べたように、比例のグラフは必ず原点を通る直線になります。
原点 \((0, 0)\) に点を打ちましょう。
原点の座標はわかっているので、グラフが通るもう \(1\) 点を探しましょう。
このとき選ぶ座標はどこでもいいのですが、\((x, y)\) ともに整数となる座標がオススメです。
\(\displaystyle \frac{4}{5}\) の分母が \(5\) なので、 \(x\) が \(5\) の倍数であれば \(y\) も整数になりますね。
\(y = \displaystyle \frac{4}{5} x\) に \(x = 5\) を代入すると
\(y = \displaystyle \frac{4}{5} \cdot 5 = 4\)
よって \(y = \displaystyle \frac{4}{5} x\) は点 \((5, 4)\) を通る。
\((5, 4)\) に点を打ちましょう。
このとき、\(x\) 軸、\(y\) 軸上に数値を書くのを忘れないようにしましょう。
数値を書いていないと、不正解とみなされることがあります!
最後に、原点ともう \(1\) 点を通る直線を引けば、比例のグラフの完成です。
このとき、直線を座標平面の端から端まで引いてあげるようにしてください。
座標平面の途中で終わっていると、範囲の限定された(= 定義域のある)グラフだと勘違いされてしまいます。
比例のグラフは必ず直線となるため、グラフの「傾き」および「変化の割合」がどこまで行っても一定です。
これらの値は、必ず比例定数に等しいことを覚えておきましょう。
\begin{align}\ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ (\text{傾き}) = (\text{変化の割合}) = (\text{比例定数})\end{align}
変化の割合
\(x\) の変化量に対する \(y\) の変化量の割合。
\begin{align}(\text{変化の割合}) = \displaystyle \frac{(y \ \text{の変化量})}{(x \ \text{の変化量})}\end{align}
比例の計算問題
まずは基本的な問題でここまで学習したことを確認してみましょう。
計算問題①「比例の式を求め、グラフを書く」
\(y\) は \(x\) に比例し、\(x = 3\) のとき \(y = 6\) である。
このとき、次の問いに答えよ。
(1) 比例定数と比例の式を求めよ。
(2) \(x = − 4\) のとき \(y\) の値を求めよ。
(3) グラフを書け。
比例の式を求めるには、「わかっている \(x\) と \(y\) の値を式に代入して、比例定数 \(a\) を求める」のがポイントでしたね。
また、比例のグラフを書くには原点ともう \(1\) 点の座標がわかればいいので、(3) では問題文に出てくる \(x\) と \(y\) の値を利用しましょう。
(1)
\(y = ax\) とおく。
\(x = 3 , y = 6\) を代入すると
\(6 = a \cdot 3\)
\(a = 2\)
よって比例定数は \(2\)
比例の式は \(y = 2x\)
答え: 比例定数 \(2\)、比例の式 \(y = 2x\)
(2)
(1) で求めた比例の式 \(y = 2x\) に \(x = − 4\) を代入して、
\(y = 2 \cdot (− 4) = − 8\)
答え: \(y = − 8\)
(3)
答え:
計算問題②「分数を含む比例の式」
\(y\) は \(x\) に比例し、\(x = 5\) のとき \(y = − \displaystyle \frac{10}{3}\) である。
このとき、次の問いに答えよ。
(1) 比例定数と比例の式を求めよ。
(2) \(x = − 9\) のとき \(y\) の値を求めよ。
(3) グラフを書け。
\(x\) と \(y\) の値が分数でも、解き方は先ほどとまったく同じです。
グラフを書くときに分数の座標を使ってもいいのですが、点を打つ位置にちょっと悩みますよね。
(2) で整数の座標が求まるので、そちらの座標を利用しましょう。
(1)
\(y = ax\) とおく。
\(x = 5 , y = −\displaystyle \frac{10}{3}\) を代入すると
\(− \displaystyle \frac{10}{3} = a \cdot 5\)
\(a = \displaystyle \frac{− \displaystyle \frac{10}{3}}{5} = − \displaystyle \frac{10}{3} \cdot \displaystyle \frac{1}{5} = − \displaystyle \frac{2}{3}\)
よって、比例定数は \(− \displaystyle \frac{2}{3}\)、比例の式は \(y = − \displaystyle \frac{2}{3} x\)
答え: 比例定数 \(− \displaystyle \frac{2}{3}\)、 比例の式 \(y = − \displaystyle \frac{2}{3} x\)
(2)
(1) で求めた比例の式 \(y = − \displaystyle \frac{2}{3} x\) に \(x = − 9\) を代入して
\(y = − \displaystyle \frac{2}{3} \cdot (− 9) = 6\)
答え: \(y = 6\)
(3)
答え:
比例の応用問題
最後に、応用問題を解いてみましょう。
比例の定義やグラフを書く時のポイントなどをしっかりと押さえれば、きっと解けるはずです!
応用問題①「体積と質量の文章題」
(1) \(120 \,\mathrm{ml}\) で \(180 \,\mathrm{g}\) の薬品があります。この薬品の体積を \(x \,\mathrm{ml}\)、質量を \(y \,\mathrm{g}\) として、\(x\) と \(y\) の関係式を答えなさい。
(2) (1) の式をグラフに表しなさい。
問題文の中には比例という言葉は出てきませんが、実はこれも比例の問題です。
ある物質の体積が \(2\) 倍になれば、質量も \(2\) 倍になりますよね。つまり、薬品の体積と質量には比例関係があります。
(1)
薬品の質量はその体積に比例するため、\(y = ax\) とおける。
\(y = 180\) \((\mathrm{g})\) のとき \(x = 120\) \((\mathrm{ml})\) であるから、
\(180 = a \cdot 120\)
\(a = \displaystyle \frac{180}{120} = \displaystyle \frac{3}{2}\)
よって
\(y = \displaystyle \frac{3}{2} x\)
答え: \(y = \displaystyle \frac{3}{2} x\)
(2)
答え:
応用問題②「水槽に水を入れる文章題」
\(40 \, \mathrm{L}\) 入る水槽に毎分 \(4 \, \mathrm{L}\) ずつ水を入れる。水を入れた時間を \(x\) 分、水槽にたまった水の量を \(y \, \mathrm{L}\) とするとき、次の問いに答えなさい。
(1) \(x\) の変域を求めなさい。
(2) \(x\) と \(y\) の関係式を求めなさい。
(3) \(x\) と \(y\) の関係をグラフで表しなさい。
「変域」の意味を確認して、問題を解いていきましょう。
変域
変数がとれる値の範囲のこと。
例えば \(x\) が \(0\) 以上 \(3\) 以下の範囲に限られるとき、
「\(x\) の変域は \(0\) 以上 \(3\) 以下である」といい、数式では「\(0 \leq x \leq 3\)」と書き表す。
(1)
\(40 \, \mathrm{L}\) の水槽に毎分 \(4 \, \mathrm{L}\) ずつ水を入れるので、満水までの時間は
\(40 \, (\mathrm{L}) \div 4 \, (\mathrm{L}/\text{分}) = 10 \ (\text{分})\)
したがって、\(x\) の変域は \(0 \leq x \leq 10\)
答え: \(0 \leq x \leq 10\)
(2)
\(\text{水槽の水の量} \ (\mathrm{L})\) \(= 1 \ \text{分間に入れる水の量} \ (\mathrm{L}/\text{分}) \times \text{時間} \ (\text{分})\)
の関係が成り立つので、
\(y = 4x\)
答え: \(y = 4x\)
(3)
\(y = 4x\) \((0 \leq x \leq 10)\) より、
\(y\) の変域は \(0 \leq y \leq 40\)
したがってグラフは次のとおり。
答え:
変域のあるグラフを書く際は、変域の外を実線で書かないように注意しましょう。
今回のグラフでは、点 \((0, 0)\) から点 \((10, 40)\) の間がグラフの変域になるので、それ以外の部分は破線にするか、消しゴムで消しておきます。
おつかれさまでした、これで応用問題も終了です!
比例の考え方はとても重要なので、たくさん問題を解いてマスターしましょう!
比例と対をなす関係、「反比例」については以下の記事で説明しています。
反比例とは?式やグラフの書き方、記号、問題の解き方