この記事では、「因数分解」について、その公式や計算方法をできるだけわかりやすく解説していきます。
この記事を通して、ぜひ因数分解をマスターしてくださいね!
目次
因数分解とは?
因数分解とは、ある数(または多項式)を約数(因数)の積に分解することです。
つまり、大きい数字を約数のかけ算で表すこと、これが因数分解です。
多項式では、約数のことを「因数」と呼びます。
多項式を因数同士のかけ算に分解するから「因数分解」、シンプルですね。
ちなみに、「因数分解」の逆は「展開」です。
因数分解ができると、二次以上の方程式を解くのに役立ちます。
因数分解の公式
ここでは、因数分解の \(2\) 乗の公式および \(3\) 乗の公式を確認していきます。
2 乗の公式
二次式を因数分解する公式は以下の通りです。
① \(\color{red}{a^2 + 2ab + b^2 = (a + b)^2}\)
② \(\color{red}{a^2 − 2ab + b^2 = (a − b)^2}\)
③ \(\color{red}{a^2 − b^2 = (a + b)(a − b)}\)
④ \(\color{red}{x^2 + (a + b)x + ab = (x + a)(x + b)}\)
⑤ \(\color{red}{acx^2 + (ad + bc)x + bd = (ax + c)(cx + d)}\)
(見切れる場合は横へスクロール)
公式① ~ ④ は丸暗記、公式⑤ の形は後ほど説明するたすきがけで解くのがオススメです。
3 乗の公式
三次式を因数分解する公式は以下の通りです。
⑥ \(\color{red}{a^3 + b^3 = (a + b)(a^2 − ab + b^2)}\)
⑦ \(\color{red}{a^3 − b^3 = (a − b)(a^2 + ab + b^2)}\)
⑧ \(\color{red}{a^3 + 3a^2b + 3ab^2 + b^3 = (a + b)^3}\)
⑨ \(\color{red}{a^3 − 3a^2b + 3ab^2 − b^3 = (a − b)^3}\)
公式⑥と⑦、⑧と⑨は符号が入れ替わっているだけなので、式のかたちと符号に着目して覚えましょう。
公式を暗記するのが苦手な人は、手を動かして覚えましょう。
因数分解された式を何度も何度も展開して、展開式の項や符号を頭に叩き込みます。
自分の手で展開してみると、展開式と因数の関係が理解できるようになります。
たすきがけ
因数分解には、公式に当てはめて解く方法と、たすきがけで解く方法の \(2\) 通りがあります。
先ほど説明した公式のうち、公式⑤は頭の中で考えるのがやや難しいため、たすきがけを利用して解くのがオススメです。
たすきがけでは係数や定数項に着目し、特有の筆算式を作ります。
因数分解のやり方
ここでは、因数分解を行う手順を説明します。
問題の展開式を見たとき、まずは各項に同じ数がかかっていないかを確認しましょう。
一見公式⑤のかたちに見える式でも、共通因数をくくったら別の公式に当てはめられるかもしれません。
(例)
\(\color{salmon}{2}x^2 + \color{salmon}{12}x + \color{salmon}{18} \\= \color{salmon}{2(}x^2 + 6x + 9\color{salmon}{)}\)
共通因数をくくり出したあとの式で、先頭の項が何かの \(2\) 乗または \(3\) 乗である場合は公式に当てはまる可能性が高いです。
公式に当てはまる場合は、そのまま解きましょう。
(例)
\(2x^2 + 12x + 18\)
\(= 2(\color{salmon}{x^2 + 6x + 9})\)
↓ 公式① \(a^2 + 2ab + b^2 = (a + b)^2\) を適用
\(= 2\color{salmon}{(x + 3)^2}\)
\(2\) 乗の式の場合、多くの式が公式⑤に当てはまるはずです。
公式①〜④ではなさそうだ…と思ったら、たすきがけをしてみましょう。
(例)
\(6x^2 + 15x + 6\)
\(= 3(2x^2 + 5x + 2)\)
\(\begin{array}{rr} 1 2 →& 4 \\ 2 1 →& 1 \\ \hline 2 2 \color{white}{→}& 5 \end{array}\)
よって
\(3(2x^2 + 5x + 2)\)
\(= 3\color{salmon}{(x + 2)(2x + 1)}\)
二次式で、かつ項数が \(3\) つ以下の場合はここまでで確実に解けるはずです。
「二次式だけど項が \(4\) つ以上ある…」「三次式で、公式に当てはまらない…」「まさかの四次式…」などの場合は、次のステップへ進みます。
式の中に似たかたちの部分があれば、そこを別の文字で置き換えてあげると公式に当てはまることがあります。
置き換えを利用したら、因数分解後に元のかたちに戻すことを忘れないように注意しましょう。
(例)
\((2x − y)^2 + 4(2x − y) + 3\)
\(\color{salmon}{2x − y = A}\) とおくと、
\((\color{salmon}{2x − y})^2 + 4(\color{salmon}{2x − y}) + 3\)
\(= \color{salmon}{A}^2 + 4\color{salmon}{A} + 3\)
\(= (\color{salmon}{A} + 1)(\color{salmon}{A} + 3)\)
↓ 元に戻す(\(A = 2x − y\))
\(= (\color{salmon}{2x − y} + 1)(\color{salmon}{2x − y} + 3)\)
複数の文字が含まれ、かつ項数が多い式の場合、最高次数の低い文字について整理してあげると因数分解できることがあります。
(例)
\(3x^3 + 21x^2 + x\color{salmon}{y} + 7\color{salmon}{y}\)
↓ \(x\) の最高次数 \(3\)、\(y\) の最高次数 \(1\) なので
\(y\) について整理
\(= \color{salmon}{y}(x + 7) + (3x^3 + 21x^2)\)
↓ \(y\) の含まれていない項を因数分解
\(= y(x + 7) + \color{salmon}{3x^2(x + 7)}\)
↓ 共通項でくくる
\(= \color{salmon}{(x + 7)}(3x^2 + y)\)
以上の流れで考えると、どんな問題でもうまく因数分解できるはずです。
説明ばかりではいまいちわからない部分もあると思いますので、さっそく問題を解いてみましょう。
因数分解の計算問題
それでは、計算問題を通して公式の使い方を確認しましょう。
計算問題①「二次式の因数分解」
次の式を因数分解せよ。
\(9x^2 − 12x + 4\)
「\(x^2\)に係数がついているから公式⑤でたすきがけだ!」…と思うのはストップです!
\(x^2\) の係数と定数項が何かの \(\bf{2}\) 乗で、かつ \(x\) の係数が偶数の場合は、公式①または公式②に当てはまるかもしれません。
因数分解の公式
① \(a^2 + 2ab + b^2 = (a + b)^2\)
② \(a^2 − 2ab + b^2 = (a − b)^2\)
\(9x^2 − 12x + 4\)
\(= (3x)^2 − 2 \cdot 3x \cdot 2 + 2^2\)
\(= (3x − 2)^2\)
答え: \(9x^2 − 12x + 4 = (3x − 2)^2\)
計算問題②「二次式の因数分解」
いろんな問題を解いていきましょう。
次の式を因数分解せよ。
\(12x^2 − 75y^2\)
係数が大きいと身構えてしまいますが、あわてず、まずは共通因数でくくり出せないか検討してみましょう。
\(12x^2 − 75y^2\)
\(= 3(4x^2 − 25y^2)\)
\(= 3\{(2x)^2 − (5y)^2\}\)
\(= 3(2x + 5y)(2x − 5y)\)
答え: \(12x^2 − 75y^2 = 3(2x + 5y)(2x − 5y)\)
計算問題③「三次式の因数分解」
\(3\) 乗の式も解いてみましょう。
次の式を因数分解せよ。
\(x^3 + 27\)
典型的な \(3\) 乗公式の問題ですね。暗記がものを言います…!
\(x^3 + 27\)
\(= x^3 + 3^3\)
\(= (x + 3)(x^2 − 3x + 3^2)\)
\(= (x + 3)(x^2 − 3x + 9)\)
答え: \(x^3 + 27 = (x + 3)(x^2 − 3x + 9)\)
計算問題④「二次式、たすきがけの利用」
どんどんいきます。
次の式を因数分解せよ。
\(4x^2 − 11x + 6\)
\(2\) 乗の式だけど、公式①〜④ではなさそう…
そんなときはそう!たすきがけで解いてみましょう。
\(4x^2 − 11x + 6\)
\(\begin{array}{rr} 1 −2 → & −8 \\ 4 −3 → & −3 \\ \hline 4 6 \color{white}{→} &−11 \end{array}\)
よって
\(4x^2 − 11x + 6 = (x − 2)(4x − 3)\)
答え: \(4x^2 − 11x + 6 = (x − 2)(4x − 3)\)
因数分解の応用問題
ここまでで、因数分解の典型的な問題は押さえられたかと思います。
最後に、少しだけ難易度が上がった問題を \(3\) 問解いてみましょう。
応用問題①「部分的に因数分解された二次式」
次の式を因数分解せよ。
\((a + b)(a + b − 2) − 15\)
この問題、とりあえず式を展開しなきゃと素直に展開するとドツボにはまります。
似たかたちの部分があれば、別の文字で置き換えることをまず検討しましょう。
\(a + b = X\) とおくと、
\((a + b)(a + b − 2) − 15\)
\(= X(X − 2) − 15\)
\(= X^2 − 2X − 15\)
\(= (X − 5)(X + 3)\)
\(= (a + b − 5)(a + b + 3)\)
答え:
\((a + b)(a + b − 2) − 15\) \( = (a + b − 5)(a + b + 3)\)
応用問題②「文字が 2 つの二次式」
次の式を因数分解せよ。
\(2x^2 + xy − y^2 − x + 5y − 6\)
複数の文字が含まれ、かつ項数が多い式…ですね。
この場合は、最高次数が低い文字について式を整理します。
この問題では \(x, y\) の最高次数は共に \(2\) なので、どちらについて整理しても構いません。
\(x\) について降べきの順に整理すると、
\(2x^2 + xy − y^2 − x + 5y − 6\)
\(= 2x^2 + (y − 1)x − (y^2 − 5y + 6)\)
\(= 2x^2 + (y − 1)x − (y − 2)(y − 3)\)
\(\begin{array}{rr} 2 −(y − 3) →& −y + 3 \\ 1 (y − 2) →& 2y − 4 \\ \hline 2 −(y − 2)(y − 3) \color{white}{→}& y − 1 \end{array}\)
\(2x^2 + (y − 1)x − (y − 2)(y − 3)\)
\(= \{2x − (y − 3)\}\{x + (y − 2)\}\)
\(= (2x − y + 3)(x + y − 2)\)
答え:
\(2x^2 + xy − y^2 − x + 5y − 6\) \( = (2x − y + 3)(x + y − 2)\)
応用問題③「文字が 3 つの二次式」
次の式を因数分解せよ。
\(a^2(b − c) + b^2(c − a) + c^2(a − b)\)
文字が \(3\) 種類も登場しました…。とはいえ、やることは変わりません。
どれか一文字について式を整理し、因数分解を試みましょう。
この問題では、\(a, b, c\) の最高次数が同じなので、どの文字について整理しても構いません。
\(a\) に着目して式を整理すると、
\(a^2(b − c) + b^2(c − a) + c^2(a − b)\)
\(= (b − c)a^2 + b^2c − ab^2 + ac^2 −bc^2\)
\(= (b − c)a^2 − (b^2 − c^2)a + b^2c − bc^2\)
\(= (b − c)a^2 − (b + c)(b − c)a + bc(b − c)\)
\(= (b − c)\{a^2 − (b + c)a + bc\}\)
\(= (b − c)(a − b)(a − c)\)
\(= −(a − b)(b − c)(c − a)\)
答え:
\(a^2(b − c) + b^2(c − a) + c^2(a − b)\) \( = −(a − b)(b − c)(c − a)\)
以上で応用問題も終わりです!
因数分解は実践あるのみです。
この記事の問題や手持ちの問題集を何回も反復して、因数分解をマスターしてくださいね!
すみまさん、教えてください。
最後の問題なのですが、
(a-b)(b-c)(a-c)では、×ですか?
返信が遅くなってしまい申し訳ありません。
(a-b)(b-c)(a-c)でも間違いではありません。
数式の記述では、文字がきれいに循環するように書く(a→b→c→aなど)のが慣習的に好まれ、「輪環の順」といいます。
降べきの順、昇べきの順などもあるように、数学において式の見栄えを整えることは重視されるので、こうした問題を通して慣れておくといいかもしれませんね。
今後ともどうぞ当サイトをよろしくお願いいたします。