この記事では、「たすき掛け」の意味ややり方をできるだけわかりやすく解説していきます。
豊富な計算問題でたすき掛けによる因数分解を説明していくので、ぜひこの記事を通してマスターしてくださいね!
目次
たすき掛けとは?
たすき掛け(たすきがけ)とは、二次式を因数分解するためのテクニックの \(1\) つです。
\(Ax^2 + Bx + C = (ax + b)(cx + d)\) と因数分解できるとき、\(a\), \(b\), \(c\), \(d\) を以下の図のように求める方法を「たすき掛け」という。
【復習】二次式の因数分解とたすき掛け
二次式の因数分解には、次の \(5\) つの公式がありましたね。
このうち、\(5\) つ目の公式でたすき掛けが役に立ちます。
二次式の因数分解の公式
- \(a^2 + 2ab + b^2 = (a + b)^2\)
- \(a^2 − 2ab + b^2 = (a − b)^2\)
- \(a^2 − b^2 = (a + b)(a − b)\)
- \(x^2 + (a + b)x + ab = (x + a)(x + b)\)
- \(\color{red}{acx^2 + (ad + bc)x + bd}\) \(\color{red}{= (ax + b)(cx + d)}\)
公式 \(1\) 〜 \(4\) のかたちなら、\(a\), \(b\) に当てはまる値が比較的簡単に思い浮かびますが、公式 \(5\) のかたちだと、複数の値のかけ合わせを考える必要があります。
このような状況で、たすき掛けを使います。
たすき掛けのやり方【手順】
次の例題を通して、たすき掛けの具体的な手順を解説していきます。
\(4x^2 + 12x + 5\) を因数分解しなさい。
定数項 \(5\) は平方数(整数の \(2\) 乗)でないので、因数分解の公式 \(1\) 〜 \(4\) には当てはまりません。
そこで、たすき掛けを試します。
たすき掛けを始める準備として、まずは横線を引き、その下に「\(\bf{x^2}\) の係数」→「定数項」→「\(\bf{x}\) の係数」の順に数字を並べます。
今回の問題 \(4x^2 + 12x + 5\) では「\(4\)」→ 「\(5\)」→ 「\(12\)」の順ですね。
かけ合わせると \(x^2\) の係数になる \(2\) つの整数の組み合わせを考えます。
例題では、かけ合わせて「\(4\)」になる \(2\) 数なので \((1, 4)\), \((2, 2)\), \((−1, 4)\), \((−2, 2)\) のペアが考えられますね。
マイナス同士のペアを見落とさないように注意しましょう!
同様に、かけ合わせると定数項になる \(2\) つの整数の組み合わせを考えます。
例題における定数項は「\(5\)」ですので、\((1, 5)\), \((−1, −5)\) のペアが考えられます。
STEP.2、STEP.3 のペアの候補から \(1\) つずつ書き出し、斜め同士をかけ合わせます(「たすき掛け」の言葉の由来です)。
このとき、かけ合わせた \(2\) つの答えを足すと「\(x\) の係数」になるようなペアを見つけます。
見つかるまで、数のペアを組み替えて試してみましょう。
このペアではないようなので、ほかを試します。
\((2, 2)\), \((1, 5)\) の組み合わせでうまくいきましたね。
見つかるまで、とにかく候補のペアでたすき掛けを試しましょう。
慣れてくると、不思議とすぐに正解のペアが思いつくようになりますよ。
筆算に当てはまる数のペアが見つかったら、もう因数分解はできたも同然です。
斜め同士でかけ算した \(4\) 数のうち、上側と下側がそれぞれ因数の係数部分となります。
よって答えは、\(4x^2 + 12x + 5 = \color{red}{(2x + 1)(2x + 5)}\) となります。
以上がたすき掛けのやり方でした!
二次方程式の問題で、必ずたすき掛けがうまくいくとは限りません。
たすき掛けできない場合は、きれいなかたちに因数分解できないことを意味しています。
そのようなときは、因数分解をあきらめて解の公式を使うようにしましょう。
二次方程式や解の公式については、以下の記事を参考にしてください。
二次方程式とは?計算問題の解き方をわかりやすく解説
たすき掛けの計算問題
それでは、因数分解の計算問題でたすき掛けをマスターしましょう!
計算問題①「\(3x^2 − 14x + 15\)」
\(3x^2 − 14x + 15\) を因数分解しなさい。
\(x^2\) の係数も定数項も平方数でないので、たすき掛けを試しましょう。
たすき掛けのやり方を \(1\) つ \(1\) つ確認しながら解いてみてくださいね。
かけて \(3\) になる数の組み合わせは
\((1, 3)\), \((−1, −3)\)
かけて \(15\) になる数の組み合わせは
\((1, 15)\), \((−1, −15)\), \((3, 5)\), \((−3, −5)\)
\((1, 3)\)、\((−3, −5)\) の組み合わせでたすき掛けすると、
よって、
\(3x^2 − 14x + 15 = (x − 3)(3x − 5)\)
答え: \(\color{red}{(x − 3)(3x − 5)}\)
計算問題②「\(3x^2 − 4xy + y^2 + 2x − 6y − 16\)」
\(3x^2 − 4xy + y^2 + 2x − 6y − 16\) を因数分解しなさい。
\(x\), \(y\) の \(2\) 変数が含まれる二次式です。
\(x\) の二次式とみて整理すると、定数項が \(y\) の二次式となり、因数分解できます。
たすき掛けする際は、\(y\) は変数ではなくただの数字として扱うのがポイントです。
\(x\) について整理すると、
\(3x^2 − 4xy + y^2 + 2x − 6y − 16\)
\(= 3x^2 + (−4y + 2)x + y^2 − 6y − 16\)
\(= 3x^2 + (−4y + 2)x + (y + 2)(y − 8)\)
\(x\) の二次式とみて、たすき掛けを行う。
かけて \(3\) になる数の組み合わせは
\((1, 3)\), \((−1, −3)\)
かけて \((y + 2)(y − 8)\) になる数の組み合わせは
\((y + 2, y − 8)\), \((−(y + 2), −(y − 8))\)
\((1, 3)\)、\((−(y + 2), −(y − 8))\) の組み合わせでたすき掛けすると
よって、
\(3x^2 + (−4y + 2)x + (y + 2)(y − 8)\)
\(= \{x − (y + 2)\} \{3x − (y − 8)\}\)
\(= (x − y − 2)(3x − y + 8)\)
答え: \(\color{red}{(x − y − 2)(3x − y + 8)}\)
計算問題③「\(2(x^2 + y^2) + 4xy − 5(x + y) − 3\)」
\(2(x^2 + y^2) + 4xy − 5(x + y) − 3\) を因数分解しなさい。
まずは展開して、\(x\) の二次式とみて整理しましょう。
そうすると、定数項の部分(\(y\) の二次式)、全体(\(x\) の二次式)の \(2\) か所がたすき掛けで因数分解できます。
\(x\) について整理すると、
\(2(x^2 + y^2) + 4xy − 5(x + y) − 3\)
\(= 2x^2 + 2y^2 + 4xy − 5x − 5y − 3\)
\(= 2x^2 + (4y − 5)x + 2y^2 − 5y − 3\) …(*)
ここで、定数項 \(2y^2 − 5y − 3\) について、
\(2y^2 − 5y − 3 = (y − 3)(2y + 1)\)
よって、
(*) \(= 2x^2 + (4y − 5)x + (y − 3)(2y + 1)\)
ここで、全体を \(x\) の二次式とみてたすき掛けすると
(*)
\(= \{x + (y − 3)\} \{2x + (2y + 1)\}\)
\(= (x + y − 3)(2x + 2y + 1)\)
答え: \(\color{red}{(x + y − 3)(2x + 2y + 1)}\)
以上で問題も終わりです!
たすき掛けは、因数分解する際にとても便利なテクニックです。
この記事でしっかりと復習して、必ずマスターしておきましょうね!