この記事では、球の体積や表面積を求める公式と実際の求め方をできるだけわかりやすく解説していきます。
また、なぜ公式が成り立つかも証明していきますので、この記事を通してぜひマスターしてくださいね。
目次
球とは?
球とは、空間において、ある定点(中心)から等距離にある点の集まりのことを言います。立体図形のひとつで、ボールのようにどの角度から見ても円に見える立体です。
球の体積の公式
球の体積を求める公式は次のとおりです。
半径 \(r\) の球の体積を \(V\) とすると、
\begin{align}\displaystyle \color{red}{V =\frac{4}{3} \pi r^3}\end{align}
体積は半径 \(r\) を \(3\) 回かけるのがポイントです。
球の体積の公式には以下の有名な語呂合わせがあります。
「身 (\(3\)) の上に心 (\(4\)) 配 (\(\pi\)) アール (\(r\)) の \(3\) 乗」
公式を覚えるのが苦手な人は、語呂で覚えてもよいかもしれませんね。
球の体積の求め方
次の例題で、球の体積を求める手順を説明します。
次の球の体積を求めよ。
まず最初に、球の体積の公式を書き出しておきます。
半径が \(r\) である球の体積を \(V\) とおくと、
\(\displaystyle V = \frac{4}{3} \pi r^3\)
体積を求めるために必要な値は半径 \(r\) だけですね。
問題の図を見ると、\(r = 6\) とわかります。
あとは、この値を球の体積の公式に当てはめるだけです。
\(r = 6\) であるから、求める球の体積 \(V\) は
\(\begin{align} V &= \frac{4}{3} \pi \cdot 6^3 \\ &= \frac{4}{3} \pi \cdot 6 \cdot 6 \cdot 6 \\ &= 4\pi \cdot 2 \cdot 6 \cdot 6 \\ &= \color{red}{288\pi} \end{align}\)
今回の問題のように計算の途中で分数と乗数が混じって出てきた場合は、おもむろに \(6^3 = 216\) と計算をせず、\(6 \cdot 6 \cdot 6\) として計算式に残しておきましょう。そうすると他の数と約分でき、計算がぐんとしやすくなりますよ!
球の表面積の公式
次に、球の表面積を求める公式を確認しましょう。
半径 \(r\) の球の表面積を \(S\) とすると、
\begin{align}\color{red}{S = 4\pi r^2}\end{align}
表面積は半径 \(r\) を \(2\) 回かけるのがポイントです。
球の表面積の公式にも以下の有名な語呂合わせがあります。
「心 (\(4\)) 配 (\(\pi\)) アール (\(r\)) の \(2\) 乗」
球の表面積の求め方
次の例題を通して、球の表面積を求める手順を説明します。
次の球の表面積を求めよ。
まず最初に、球の表面積の公式を書き出しておきます。
半径が \(r\) である球の表面積を \(S\) とおくと、
\(S = 4\pi r^2\)
表面積を求めるために必要な値は \(r\)(半径)だけですね。
問題の図を見ると \(r = 4\) とわかるので、これを球の表面積の公式に当てはめればOKです。
\(r = 4\) であるから、求める球の表面積 \(S\) は
\(\begin{align} S &= 4\pi \cdot 4^2 \\ &= 4\pi \cdot 4 \cdot 4 \\ &= 4\pi \cdot 16 \\ &= \color{red}{64\pi} \end{align}\)
【発展】球の公式の証明(積分)
高校で習う積分の知識を使うと、球の体積、球の表面積の公式を証明することができます。
興味のある方は、一度目を通してみてください。
証明① 球の体積の公式
\(xy\) 平面上で、原点を中心とした半径 \(r\) の円の上半分を \(x\) 軸の回りに一回転させた立体が半径 \(r\) の球である。
半径 \(r\) の半円 \((x > 0)\) は \(y = \sqrt{r^2 − x^2}\) であるから、
\(\begin{align} V &= \int_{−r}^r \pi (\sqrt{r^2 − x^2})^2 \ dx \\ &= 2\pi \int_0^r (r^2 − x^2) \ dx \\ &= 2\pi \left[r^2 x − \frac{x^3}{3} \right]_0^r \\ &= \frac{4}{3} \pi r^3 \end{align}\)
したがって、半径 \(r\) の球の体積 \(V\) は \(\displaystyle \frac{4}{3} \pi r^3\)
(証明終わり)
証明② 球の表面積の公式
球の表面積の公式は、先ほどの体積の公式から導けます。
半径 \(t\) の球の表面積を \(S(t)\) と書く。
三次元空間において、原点からの距離が \(t\) 以上 \(t + \Delta t\) 以下の間にある部分(球殻)を考える。
\(\Delta t\) が十分小さいとき、この球殻の体積は
\((\text{表面積}) \times (\text{厚さ}) = S(t) \, \Delta t\)
とみなせる。
このような球殻を \(t = 0\) から \(t = r\) まで足し合わせたものが半径 \(r\) の球であり、体積は \(\displaystyle \frac{4}{3} \pi r^3\) である。
よって、\(\Delta t\) を限りなく \(0\) に近づけると、球殻の体積について以下の式が成り立つ。
\(\displaystyle \int_0^r S(t) \, dt = \frac{4}{3} \pi r^3\)
上記式において、両辺を \(r\) で微分すると
\(S(r) = 4\pi r^2\)
が成り立つ。
したがって、半径 \(r\) の球の表面積は \(4\pi r^2\) である。
(証明終わり)
球の計算問題
最後に、球の計算問題に挑戦してみましょう。
計算問題①「半径から体積と表面積を求める」
半径 \(\displaystyle \frac{7}{2} \ \mathrm{cm}\) の球の体積と表面積を求めなさい。
球の体積と表面積を求める基本問題です。
体積と表面積の公式を書き出し、\(r\)(半径)の値を当てはめて計算しましょう。
半径 \(r\) の球の体積 \(V\) は
\(\displaystyle V = \frac{4}{3} \pi r^3\)
\(\displaystyle r = \frac{7}{2} \, (\mathrm{cm})\) より
\(\begin{align} V &= \frac{4}{3} \pi \cdot \frac{7}{2} \cdot \frac{7}{2} \cdot \frac{7}{2} \\ &= \frac{1}{3} \pi \cdot 7 \cdot 7 \cdot \frac{7}{2} \\ &= \frac{343}{6} \pi \, (\mathrm{cm^3})\end{align}\)
半径 \(r\) の球の表面積 \(S\) は
\(S = 4\pi r^2\)
\(\displaystyle r = \frac{7}{2} \, (\mathrm{cm})\) より
\(\begin{align} S &= 4\pi \cdot \frac{7}{2} \cdot \frac{7}{2} \\ &= \pi \cdot 7 \cdot 7 \\ &= 49\pi \, (\mathrm{cm^2})\end{align}\)
答え:
体積 \(\displaystyle \frac{343}{6} \pi \, \mathrm{cm^3}\)、表面積 \(49\pi \, \mathrm{cm^2}\)
計算問題②「円柱状の水槽に鉄球を入れる」
底面の半径 \(4\ \mathrm{cm}\)、高さ \(10\ \mathrm{cm}\) の円柱状の水槽の高さ \(8\ \mathrm{cm}\) まで水が入っている。この水槽に半径 \(3\ \mathrm{cm}\) の鉄球を入れたとき、水槽からあふれる水の量を求めよ。
一見複雑に思えますが、焦らず問題文の中からわかることをどんどん見つけていきましょう。
鉄球の体積を \(V_1\) とすると、半径は \(3\) であるから
\(\begin{align} V_1 &= \frac{4}{3} \pi \cdot 3^3 \\ &= \frac{4}{3} \pi \cdot 3 \cdot 3 \cdot 3 \\ &= 4\pi \cdot 3 \cdot 3 \\ &= 36\pi \ (\mathrm{cm}^3) \text{ …①}\end{align}\)
次に、水槽の水が入っていない空間の体積を \(V_2\) とすると、底面の半径 \(4\ \mathrm{cm}\)、高さ \(10 − 8 = 2\ \mathrm{cm}\) の円柱の体積に等しいから
\(\begin{align} V_2 &= 4^2 \pi \ (\mathrm{cm}^2) \cdot 2 \ (\mathrm{cm})\\ &= 32\pi \ (\mathrm{cm}^3) \text{ …②}\end{align}\)
鉄球を入れて水が「あふれる」ということは、鉄球の体積 \(V_1\) の方が水の入っていない空間の体積 \(V_2\) よりも大きいということである。
よって、あふれる水の量 \(V_3\) は
(鉄球の体積 \(V_1\)) − (水がない空間の体積 \(V_2\) )
で求められる。
①、②より、
\(\begin{align} V_3 &= V_1 − V_2 \\ &= 36\pi \ (\mathrm{cm}^3) − 32\pi \ (\mathrm{cm}^3)\\ &= 4\pi \ (\mathrm{cm}^3)\end{align}\)
答え: \(4\pi \, \mathrm{cm^3}\)
以上で問題も終わりです!
立体図形はできるだけシンプルに考えることが大切です。
まずは公式を正確に覚えることから。それだけで解ける問題がたくさんありますよ!