この記事では、「角の二等分線」についてわかりやすく解説していきます。
内角・外角の二等分線それぞれについて、定理や性質、問題の解き方を説明していくので、ぜひこの記事を通してマスターしてくださいね!
目次
角の二等分線とは?
角の二等分線とは、その名の通り、ある角を二等分した線のことです。
角を内分する「内角の二等分線」と、外分する「外角の二等分線」の \(2\) 種類があります。
角の二等分線の定理
注目する角をはさむ \(2\) 辺と、角の二等分線によって分けられた底辺の比は一致し、これを「角の二等分線の定理」といいます。
内角でも外角でも同じ関係式ですが、二等分線と底辺との交点 \(\mathrm{D}\) は、内角の二等分線の場合は \(\triangle \mathrm{ABC}\) の中に、外角の二等分線の場合は \(\triangle \mathrm{ABC}\) の外にあります。
頂点や点の記号は問題によって違うので、記号で覚えるのではなく視覚的に理解しておきましょう。
角の二等分線の定理や性質は、内角外角ともに、その逆の命題も成り立ちます。
つまり、上記の比が成り立てば、ある角を分ける線分が「角の二等分線」であると示すこともできますね。
内角の二等分線の定理(証明と使い方)
内角の二等分線の定理とその証明、定理の使い方を説明します。
\(\triangle \mathrm{ABC}\) において、\(\angle \mathrm{A}\) の内角を二等分した線分と \(\mathrm{BC}\) の交点を \(\mathrm{D}\) とおくと、次の関係式が成り立つ。
\begin{align}\color{red}{\mathrm{AB} : \mathrm{AC} = \mathrm{BD} : \mathrm{CD}}\end{align}
内角の二等分線の定理は、「二等辺三角形の性質」と「平行線と比の性質」を用いて証明できます。
以下の図において、点 \(\mathrm{C}\) を通り、\(\mathrm{AD}\) と平行な直線と \(\mathrm{BA}\) の交点を \(\mathrm{E}\) とする。
仮定より、
\(\angle \mathrm{BAD} = \angle \mathrm{DAC}\) …①
\(\mathrm{AD} \ // \ \mathrm{EC}\) より、平行線の同位角は等しいので 、
\(\angle \mathrm{BAD} = \angle \mathrm{AEC}\) …②
同じく、平行線の錯角は等しいので、
\(\angle \mathrm{DAC} = \angle \mathrm{ACE}\) …③
①、②、③より、
\(\angle \mathrm{AEC} = \angle \mathrm{ACE}\)
となり、\(\triangle \mathrm{ACE}\) は \(\mathrm{AE} = \mathrm{AC}\) の二等辺三角形である。 …④
ここで、\(\triangle \mathrm{BCE}\) において、\(\mathrm{AD} \ // \ \mathrm{EC}\) より、
\(\mathrm{BD} : \mathrm{DC} = \mathrm{BA} : \mathrm{AE}\) …⑤
④、⑤より、
\(\mathrm{AB} : \mathrm{AC} = \mathrm{BD} : \mathrm{CD}\)
となり、内角の二等分線の定理が成立する。
(証明終わり)
\(\triangle \mathrm{ABC}\) において、\(\mathrm{AD}\) が \(\angle \mathrm{A}\) を二等分するとき、\(\mathrm{DC}\) の長さを求めなさい。
\(\mathrm{AD}\) が \(\angle \mathrm{A}\) の内角の二等分線になっているので、内角の二等分線の定理で辺の比を明らかにします。
角の二等分線の定理より、
\(\mathrm{AB} : \mathrm{AC} = \mathrm{BD} : \mathrm{CD}\)
よって、
\(\begin{align} \mathrm{BD} : \mathrm{DC} &= 9 : 6 \\ &= 3 : 2 \end{align}\)
よって、
\(\mathrm{DC} = \displaystyle \frac{2}{5} \mathrm{BC} = \frac{2}{5} \cdot 10 = 4\)
答え: \(\color{red}{\mathrm{DC} = 4}\)
外角の二等分線の定理(証明と使い方)
外角の二等分線の定理とその証明、定理の使い方を説明します。
\(\triangle \mathrm{ABC}\) において、\(\angle \mathrm{A}\) の外角を二等分した線分と \(\mathrm{BC}\) の延長の交点を \(\mathrm{D}\) とおくと、次の関係式が成り立つ。
\begin{align}\color{red}{\mathrm{AB} : \mathrm{AC} = \mathrm{BD} : \mathrm{CD}}\end{align}
辺の比の関係式は内角の二等分線とまったく同じなので、新たに暗記する必要はありませんね。
外角の二等分線の定理の場合も、基本的な証明の流れは内角の二等分線の定理と同じです。
点 \(\mathrm{C}\) を通り、直線 \(\mathrm{AD}\) に平行な直線と、辺 \(\mathrm{BA}\) との交点を \(\mathrm{E}\) とする。
また、線分 \(\mathrm{BA}\) の \(\mathrm{A}\) 側の延長上の点を \(\mathrm{F}\) とする。
仮定より、\(\angle \mathrm{FAD} = \angle \mathrm{DAC}\) …①
\(\mathrm{AD} \ // \ \mathrm{EC}\) より、平行線の同位角は等しいので、
\(\angle \mathrm{FAD} = \angle \mathrm{AEC}\) …②
同じく、平行線の錯角は等しいので、
\(\angle \mathrm{DAC} = \angle \mathrm{ACE}\) …③
①、②、③より、
\(\angle \mathrm{AEC} = \angle \mathrm{ACE}\)
よって、\(\triangle \mathrm{ACE}\) は \(\mathrm{AE} = \mathrm{AC}\) の二等辺三角形である。 …④
ここで、\(\triangle \mathrm{ABD}\) において、\(\mathrm{AD} \ // \ \mathrm{EC}\) より
\(\mathrm{BD} : \mathrm{CD} = \mathrm{BA} : \mathrm{EA}\) …⑤
④、⑤より、
\(\mathrm{AB} : \mathrm{AC} = \mathrm{BD} : \mathrm{CD}\)
となり、外角の二等分線の定理が成立する。
(証明終わり)
線分 \(\mathrm{AD}\) は \(\angle \mathrm{BAC}\) の外角の二等分線である。
\(\mathrm{AB} = 30\)、\(\mathrm{AC} = 18\)、\(\mathrm{BC} = 24\) であるとき、線分 \(\mathrm{CD}\) の長さを求めなさい。
\(\mathrm{AD}\) が \(\angle \mathrm{BAC}\) の外角の二等分線となっているので、外角の二等分線の定理が使えます。
どこの比が対応しているか間違えないように、わかった比を図に書き込んでいくのがポイントです。
角の二等分線の定理より、
\(\mathrm{AB} : \mathrm{AC} = \mathrm{BD} : \mathrm{CD}\)
\(30 : 18 = \mathrm{BD} : \mathrm{CD}\)
\(\mathrm{BD} : \mathrm{CD} = 5 : 3\) …①
ここで、\(\mathrm{BD} = \mathrm{BC} + \mathrm{CD}\) なので、
\(\mathrm{BD} = 24 + \mathrm{CD}\) …②
①、②より、
\((24 + \mathrm{CD}) : \mathrm{CD} = 5 : 3\)
\(5\mathrm{CD} = 3 (24 + \mathrm{CD})\)
\(5\mathrm{CD} = 3 \cdot 24 + 3\mathrm{CD}\)
\(2\mathrm{CD} = 3 \cdot 24\)
よって、\(\mathrm{CD} = 36\)
答え: \(\color{red}{\mathrm{CD} = 36}\)
角の二等分線の性質
角の二等分線には、次の \(2\) つの重要な性質があります。
性質① 二等分線と辺の比
角の二等分線の定理から、辺の比について次の公式が導けます。
\(\triangle \mathrm{ABC}\) の \(\angle \mathrm{A}\) の二等分線と辺 \(\mathrm{BC}\)(またはその延長線)との交点を \(\mathrm{D}\) とすると、
\begin{align}\color{red}{\mathrm{AB} \times \mathrm{CD} = \mathrm{AC} \times \mathrm{BD}}\end{align}
比例式において内項の積と外項の積は等しいので、角の二等分線の定理 \(\mathrm{AB} : \mathrm{AC} = \mathrm{BD} : \mathrm{CD}\) を積のかたちで表せば、この公式 \(\mathrm{AB} \times \mathrm{CD} = \mathrm{AC} \times \mathrm{BD}\) が得られますね。
性質② 二等分線の長さ
角の二等分線の長さは辺の長さを使って表せます。
\(\triangle \mathrm{ABC}\) の \(\angle \mathrm{A}\) の二等分線と辺 \(\mathrm{BC}\)(またはその延長線)との交点を \(\mathrm{D}\) とすると、
- 内角の二等分線の長さ
\begin{align}\color{red}{\mathrm{AD}^2 = \mathrm{AB} \times \mathrm{AC} − \mathrm{BD} \times \mathrm{CD}}\end{align} - 外角の二等分線の長さ
\begin{align}\color{red}{\mathrm{AD}^2 = \mathrm{BD} \times \mathrm{CD} − \mathrm{AB} \times \mathrm{AC}}\end{align}
外角の公式では、内角の公式と項の順序が逆になっていることに注意しましょう。
角の二等分線の応用問題
最後に、角の二等分線の応用問題に挑戦しましょう。
応用問題①「2 組の二等分線から辺の比を求める」
\(\triangle \mathrm{ABC}\) において、\(\mathrm{AD}\) は \(\angle \mathrm{A}\) の内角の二等分線であり、\(\mathrm{BE}\) は \(\angle \mathrm{B}\) の二等分線である。
このとき、\(\mathrm{AF} : \mathrm{FD}\) を求めなさい。
どちらも内角の二等分線ですね。
求めたい辺の比を出すには、どの三角形に注目すればよいかを考えましょう。
\(\angle \mathrm{A}\) において、角の二等分線の定理より
\(\mathrm{AB} : \mathrm{AC} = \mathrm{BD} : \mathrm{DC}\)
\(10 : 6 = \mathrm{BD} : \mathrm{DC}\)
\(\mathrm{BD} : \mathrm{DC} = 5 : 3\)
\(\begin{align} \mathrm{BD} &= \frac{5}{8} \mathrm{BC} \\&= \frac{5}{8} \cdot 12 \\ &= \frac{15}{2} \end{align}\)
また、\(\angle \mathrm{B}\) において、角の二等分線の定理より
\(\mathrm{BA} : \mathrm{BD} = \mathrm{AF} : \mathrm{FD}\)
\(\displaystyle 10 : \frac{15}{2} = \mathrm{AF} : \mathrm{FD}\)
したがって、
\(\mathrm{AF} : \mathrm{FD} = 4 : 3\)
答え: \(4 : 3\)
応用問題②「内角と外角の二等分線から辺の長さを求める」
\(\triangle \mathrm{ABC}\) において、\(\angle \mathrm{C} = 90^\circ\)、\(\mathrm{AB} = 5\)、\(\mathrm{BC} = 3\) で \(\angle \mathrm{A}\) の内角の二等分線と \(\mathrm{BC}\) の交点を \(\mathrm{D}\)、\(\angle \mathrm{A}\) の外角の二等分線と \(\mathrm{BC}\) の延長との交点を \(\mathrm{E}\) とする。
このとき、\(\mathrm{DE}\) の長さを求めなさい。
内角の二等分線と外角の二等分線があります。
両方に定理を適用して解いていきましょう。
\(\triangle \mathrm{ABC}\) において、三平方の定理より
\(\begin{align} \mathrm{AC}^2 &= \mathrm{AB}^2 − \mathrm{BC}^2 \\ &= 5^2 − 3^2 \\ &= 25 − 9 \\ &= 16 \end{align}\)
\(\mathrm{AC} > 0\) より、\(\mathrm{AC} = 4\)
また、\(\angle \mathrm{A}\) において、内角の二等分線の定理より
\(\mathrm{AB} : \mathrm{AC} = \mathrm{BD} : \mathrm{CD}\)
\(\mathrm{BD} : \mathrm{CD} = 5 : 4\)
よって、
\(\begin{align} \mathrm{CD} &= \frac{4}{9} \mathrm{BC} \\ &= \frac{4}{9} \cdot 3 \\ &= \frac{4}{3} \end{align}\)
また \(\angle \mathrm{A}\) において、外角の二等分線の定理より
\(\mathrm{AB} : \mathrm{AC} = \mathrm{BE} : \mathrm{CE}\)
すなわち
\(\mathrm{BE} : \mathrm{CE} = 5 : 4\)
であるから、
\(\mathrm{BC} : \mathrm{CE} = 1 : 4\)
\(\mathrm{BC} = 3\) より、
\(3 : \mathrm{CE} = 1 : 4\)
\(\mathrm{CE} = 12\)
したがって、
\(\begin{align}\mathrm{DE} &= \mathrm{DC} + \mathrm{CE} \\ &= \frac{4}{3} + 12 \\ &= \frac{40}{3} \end{align}\)
答え: \(\displaystyle \frac{40}{3}\)
以上で問題も終わりです!
角の二等分線について理解は深まりましたか?
定理や性質を意外と忘れがちなので、図とともに、しっかりと覚えておきましょう!
わかりやすい!
この度はコメントいただきありがとうございます。
当サイト記事がお役に立てておりましたら何よりです。
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