この記事では、「命題」の意味や問題の解き方をできるだけわかりやすく解説していきます。
命題の真偽の証明や、命題の逆・裏・対偶の関係についても説明しますので、この記事を通してぜひマスターしてくださいね。
目次
命題とは?
「命題」とは、正しいか、正しくないかが、明確に決まる文章や数式のことです。
例えば、以下の文章は正誤が明らかでしょうか。
(例)
- 「\(2\) は \(1\) よりも大きな数である」
- 「リンゴはおいしい」
- 「\(128\) は奇数である」
1 は、明らかに正しい文章ですね。よって命題です。
2 は命題ではありません。なぜなら、リンゴがおいしいと思うかどうかは、人によって違うからです。
また、\(128\) は偶数なので 3 は正しくありません。ですが、正しいか正しくないかが明確なので、この文章は命題といえます。
命題の真偽と反例
命題が正しいことを「真」、正しくないことを「偽」といいます。
命題が「偽」であることを示すには、その命題を満たさない具体的な例「反例」を \(1\) つ挙げます。
例えば、次のように命題の真偽を記述できます。
(例)
- 命題「\(2\) は \(1\) よりも大きな数である」は真である。
- 命題「\(x^2 = 9\) ならば \(x = 3\) である」は偽である。(反例: \(x = −3\))
命題の仮定と結論
数学における命題は、「\(p\) ならば \(q\) である」と表すことが多いです。
このとき、条件 \(p\) を「仮定」、条件 \(q\) を「結論」と呼びます。
命題は記号「\(\Rightarrow\)」を使って「\(\color{red}{p \Rightarrow q}\)」と表すこともできます。
命題と集合
命題を考えるときは、集合の考え方を利用するのが便利です。
条件 \(p\) を満たす数の集合 \(P\) と条件 \(q\) を満たす数の集合 \(Q\) の包含関係を考えることで、命題「\(p \Rightarrow q\)」の真偽を調べることができます。
条件の否定
ある条件 \(p\) の否定「\(p\) でない」は「\(\color{red}{\overline{p}}\)」と表します。
集合における「補集合 \(\overline{P}\)」と同じですね。
したがって、命題においてもドモルガンの法則が成り立ちます。
条件 \(p\), \(q\) について、以下が成り立つ。
\begin{align} \ \color{red}{\overline{\text{$p$ かつ $q \ \ \ $}} \iff \text{$\overline{p}$ または $\overline{q}$}} \end{align}
\begin{align} \color{red}{\overline{\text{$p$ または $q \ \ \ \ $}} \iff \text{$\overline{p}$ かつ $\overline{q}$}} \end{align}
また、「すべての〜について」「ある〜について」などの言葉が追加された条件を否定する場合は、次のような関係があります。
条件 \(p\), \(q\) について、以下が成り立つ。
\begin{align} \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \color{red}{\overline{\text{すべての $x$ について $p$}} \iff \text{ある $x$ について $\overline{p}$}} \end{align}
\begin{align} \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \color{red}{\overline{\text{ある $x$ について $p$}} \iff \text{すべての $x$ について $\overline{p}$}} \end{align}
(見切れる場合は横へスクロール)
「ドモルガンの法則」についても以下の記事で解説しています。
集合とは?数学記号の読み方や意味、計算問題の解き方
必要条件と十分条件
仮定 \(p\) と結論 \(q\) が包含関係にあるとき、それぞれに特別な呼び方があります。
命題「\(p \Rightarrow q\)」が真であるとき、
- \(\color{red}{p}\) は \(q\) であるための十分条件である
- \(\color{red}{q}\) は \(p\) であるための必要条件である
また、命題「\(p \Rightarrow q\)」「\(q \Rightarrow p\)」がともに真であるとき、
- \(\color{red}{p}\) は \(q\) であるための必要十分条件である
- \(\color{red}{q}\) は \(p\) であるための必要十分条件である
- \(p\) と \(q\) は同値である
命題の逆・裏・対偶
命題の重要用語、「逆」「裏」「対偶」について説明していきます。
命題「\(p \Rightarrow q\)」に対して、
- 「\(q \Rightarrow p\)」を逆
- 「\(\overline{p} \Rightarrow \overline{q}\)」を裏
- 「\(\overline{q} \Rightarrow \overline{p}\)」を対偶
と言う。
元の命題に対して、仮定と結論を交換した命題が逆です。
また、仮定と結論を両方とも否定した命題が裏です。
最後に、仮定と結論を両方とも否定し、かつ交換した命題が対偶です。
命題の逆・裏・対偶の真偽
ある命題とその対偶の真偽は必ず一致するという性質があります。
一方で、命題の真偽とその逆・裏の真偽は必ずしも一致しません。
命題「\(p \Rightarrow q\)」が真であるとき、その対偶「\(\overline{q} \Rightarrow \overline{p}\)」も真である。
命題「\(p \Rightarrow q\)」が偽であるとき、その対偶「\(\overline{q} \Rightarrow \overline{p}\)」も偽である。
一方、命題「\(p \Rightarrow q\)」が真であっても、その逆「\(q \Rightarrow p\)」や裏「\(\overline{p} \Rightarrow \overline{q}\)」は必ずしも真とは限らない。
ちなみに、ある命題の逆と裏は互いに対偶の関係にあるので、逆と裏の真偽は一致します。
対偶証明法
対偶証明法は、命題とその対偶の関係性を利用した証明方法です。
命題とその対偶の真偽が一致することを利用した間接証明法。
元の命題が「\(p \Rightarrow q\)」のとき、
対偶「\(\overline{q} \Rightarrow \overline{p}\)」
が成り立つことを示す。
元の命題を直接証明するのが難しいときには、その対偶を考えてみるのも \(1\) つの手です。
命題の練習問題
それでは、ここまでの知識を使う問題を解いてみましょう。
練習問題①「命題の真偽と反例を答える」
次の命題の真偽を答えなさい。また、偽の場合は反例を示しなさい。
(1) 「\(1, 3, 5\) は偶数ではない」
(2) 「\(x^2 = 25\) ならば、\(x = 5\) である」
仮定に当てはまるすべての場合において、結論が正しいか、正しくないかを調べます。
\(1\) つでも正しくない反例があれば、その命題は偽になります。
(1) 「\(1, 3, 5\) は偶数ではない」
\(1, 3, 5\) は奇数なので、「偶数ではない」という結論は正しい。
よって、この命題は真。
答え: 真
(2) 「\(x^2 = 25\) ならば、\(x = 5\) である」
仮定「\(x^2 = 25\)」を満たす \(x\) は
\(x = 5\) または \(−5\)
であるから、この命題は偽である。
答え: 偽(反例: \(x = −5\))
練習問題②「自然数の命題の真偽を調べる」
次の命題が真であるか偽であるかを答えなさい。ただし、\(a, m, n\) は自然数である。
(1) \(a\) が \(6\) の倍数ならば、\(a\) は \(3\) の倍数である。
(2) \(m + n\) が偶数ならば、\(m, n\) はともに偶数である。
先に反例がないか具体的な例を思い浮かべるとスムーズです。
どうやら真でありそうだと思ったら、条件をうまく数式で表現して確かめてみましょう。
(1) 「\(a\) が \(6\) の倍数ならば、\(a\) は \(3\) の倍数である」
\(a\) は自然数かつ \(6\) の倍数なので、自然数 \(k\) を用いて \(a\) は次の式で表すことができる。
\(\begin{align}a &= 6k\\&= 3 \cdot 2k\end{align}\)
よって \(a\) は \(3\) の倍数である。
答え: 真
(2) 「\(m + n\) が偶数ならば、\(m, n\) はともに偶数である」
\(2\) つの自然数を足して偶数になるのは、ともに偶数であるか、あるいはともに奇数の場合である。
したがって、命題「\(m + n\) が偶数ならば、\(m, n\) はともに偶数である。」は偽。
(反例:\(m = 1, n = 1\))
答え: 偽
練習問題③「命題の逆・裏・対偶を答える」
次の命題の逆、裏、対偶を答えなさい。
(1) 「\(2\) は偶数である」
(2) 「\(x^2 = 25\) ならば、\(x = 5\) である」
命題の逆・裏・対偶を書き出すときは、元の命題の真偽についてはひとまず考えないことにしましょう。
いっぺんに考えると、頭がこんがらがってしまいます。
(1) 「\(2\) は偶数である」
- 逆:仮定と結論を交換するので、「偶数は \(2\) である」
- 裏:仮定と結論を否定するので、「\(2\) でなければ偶数でない」
- 対偶:仮定と結論を否定して交換するので、「偶数でなければ \(2\) でない」
元の命題「\(2\) は偶数である」は明らかに真なので、対偶は真。
逆「偶数は \(2\) である」は偽(反例:\(4\))。
逆が偽なので、裏「\(2\) でなければ偶数でない」も偽(反例:\(4\))。
答え:
- 逆「偶数は \(2\) である」は偽(反例:\(4\))
- 裏「\(2\) でなければ偶数でない」は偽(反例:\(4\))
- 対偶「偶数でなければ \(2\) でない」は真
(2) 「\(x^2 = 25\) ならば、\(x = 5\) である」
- 逆:「\(x = 5\) ならば、\(x^2 = 25\) である」
- 裏:「\(x^2 = 25\) でなければ、\(x = 5\) でない」
- 対偶:「\(x = 5\) でなければ、\(x^2 = 25\) でない」
元の命題「\(x^2 = 25\) ならば、\(x = 5\) である」は偽(反例:\(−5\))なので、対偶も偽。
逆「\(x = 5\) ならば、\(x^2 = 25\) である」は明らかに真であるから、裏も真。
答え:
- 逆「\(x = 5\) ならば、\(x^2 = 25\) である」は真
- 裏「\(x^2 = 25\) でなければ、\(x = 5\) でない」は真
- 対偶「\(x = 5\) でなければ、\(x^2 = 25\) でない」は偽(反例:\(−5\))
命題の証明問題
最後に、命題を証明する問題を解いてみましょう。
証明問題①「偶奇、余りの命題」
次の各命題について、正しい場合は証明し、正しくない場合は反例を挙げよ。
ただし、\(a, b\) は自然数とする。
(1) \(a, b\) がともに奇数であるとき、\(3a + 2b\) は偶数である。
(2) \(a\) は \(5\) で割ると \(1\) 余る数、\(b\) は \(5\) で割ると \(3\) 余る数ならば、\(a^2 + b^2\) は \(5\) で割り切れる数である。
「奇数」や「\(5\) で割ると \(1\) 余る数」などの言葉を数式で表すのがポイントです。
数式で表して計算し、命題が正しいことを証明するか、証明できない場合は反例を示すようにしましょう。
(1) 「\(a, b\) がともに奇数であるとき、\(3a + 2b\) は偶数である」
\(a, b\) は奇数なので、\(0\) 以上の整数 \(m, n\) を用いて次の式で表すことができる。
\(a = 2m + 1\) …①
\(b = 2n + 1\) …②
①、②より、
\(3a + 2b\)
\(= 3(2m + 1) + 2(2n + 1)\)
\(= 6m + 3 + 4n + 2\)
\(= 6m + 4n + 5\)
\(= 2(3m + 2n + 2) + 1\)
\(m、n\) は \(0\) 以上の整数であるから、\(2(3m + 2n + 2) + 1\) は奇数である。
したがって、どのような奇数 \(a, b\) であっても \(3a + 2b\) は奇数となり、命題は正しくない。
答え: 命題は正しくない(反例:\(a = 1、b = 1\))
(2) 「\(a\) は \(5\) で割ると \(1\) 余る数、\(b\) は \(5\) で割ると \(3\) 余る数ならば、\(a^2 + b^2\) は \(5\) で割り切れる数である」
\(a, b\) は \(5\) で割るとそれぞれ \(1, 3\) が余る数なので、\(0\) 以上の整数 \(m n\) を用いて次の式で表すことができる。
\(a = 5m + 1\) …①
\(b = 5n + 3\) …②
①、②より、
\(a^2 + b^2\)
\(= (5m + 1)^2 + (5n + 3)^2\)
\(= (25m^2 + 10m + 1) + (25n^2 + 30n + 9)\)
\(= 25m^2 + 10m + 25n^2 + 30n + 10\)
\(= 5(5m^2 + 2m + 5n^2 + 6n + 2)\)
よって、\(a^2 + b^2\) は \(5\) の倍数であり、\(5\) で割り切れる。
答え: 命題は正しい
証明問題②「5 の倍数でないことの証明」
次の命題を証明せよ。
\(n\) を整数とすると、\(n^3\) が \(5\) の倍数でないならば、\(n\) は \(5\) の倍数ではない。
仮定と結論がともに「〜でない」と否定型になっていると、数式で表すのが少し厄介ですね。
そんなときは、対偶証明法を使ってみましょう。
与えられた命題の対偶は以下となる。
「\(n\) を整数とすると、\(n\) が \(5\) の倍数ならば、\(n^3\) は \(5\) の倍数である。」
\(n\) が \(5\) の倍数なので、整数 \(m\) を用いて、
\(n = 5m\)
と表せる。
このとき、
\(\begin{align}n^3 &= (5m)^3\\&= 125m^3\\&= 5(25m^3)\end{align}\)
よって、\(n^3\) は \(5\) の倍数である。
命題の対偶が真なので、元の命題が真であることが証明された。
(証明終わり)
以上で証明問題も終わりです!
命題にはさまざまな数学用語が登場して、理解するのが少し大変だったかもしれません。
用語の意味を意識しながら繰り返し問題を解いて、しっかりマスターしてくださいね!