この記事では、「必要条件」「十分条件」の意味や違いをできるだけわかりやすく解説していきます。
また、例題を通して条件を見分ける方法を見ていきます。この記事を通してぜひマスターしてくださいね!
目次
必要条件・十分条件とは?
必要条件・十分条件とは、ある命題をなす \(2\) つの条件(仮定と結論)が、お互いにとってどのような関係にあるのかを示す概念です。
命題「\(p \Rightarrow q\)」が真であるとき、
- \(\color{red}{p}\) は \(q\) であるための十分条件である
- \(\color{red}{q}\) は \(p\) であるための必要条件である
という。
また、命題「\(p \Rightarrow q\)」「\(q \Rightarrow p\)」がともに真であるとき、
- \(\color{red}{p}\) は \(q\) であるための必要十分条件である
- \(\color{red}{q}\) は \(p\) であるための必要十分条件である
- \(p\) と \(q\) は同値である
という。
命題「\(p \Rightarrow q\)」が真である、つまり「条件 \(p\) を満たすものであれば、必ず条件 \(q\) も満たす」わけですから、集合 \(P\) は集合 \(Q\) の中の一部分であると言えます。
このような包含関係があるので、
- \(p\) であれば \(q\) であることが十分に言える
( \(p\) は \(q\) の十分条件である) - \(q\) であることは \(p\) であるために必要である
(\(q\) は \(p\) の必要条件である)
といえます。
また、命題「\(p \Rightarrow q\)」およびその逆「\(q \Rightarrow p\)」が真である場合、「条件 \(p\) と条件 \(q\) がまったく同じ条件である」=「集合 \(P\) と \(Q\) が完全に一致する」ということです。
このような場合には、
- \(p\) と \(q\) は同値である
(\(p\) は \(q\) の必要十分条件である、かつ \(q\) は \(p\) の必要十分条件である)
といえます。
必要条件・十分条件の覚え方
「結局どっちがどっちだっけ…」と混乱してしまう人のために、必要・十分条件の関係性を覚えるテクニックを \(1\) つ紹介します。
ズバリ、「じゅう ⇒ よう」という語呂を覚えておきましょう。
命題「\(p \Rightarrow q\)」が真であるとき、「十分条件 ⇒ 必要条件」という関係性になります。
ただし、逆の命題「\(q \Rightarrow p\)」の真偽をチェックすることも忘れずに!
どうしても迷ってしまったときに思い出してくださいね。
必要条件・十分条件の見分け方
実際の問題の中で必要条件と十分条件を見分けるには、問題で与えられた \(2\) つの条件 \(p\), \(q\) について命題「\(p \Rightarrow q\)」と、その逆 「\(q \Rightarrow p\)」の真偽を調べます。
そして、\(p\) を主語にとると、次のように判断できます。
①「\(p \Rightarrow q\)」が真で「\(q \Rightarrow p\)」が偽であれば、\(p\) は \(q\) であるための十分条件
②「\(p \Rightarrow q\)」が偽で「\(q \Rightarrow p\)」が真であれば、\(p\) は \(q\) であるための必要条件
③「\(p \Rightarrow q\)」が真で「\(q \Rightarrow p\)」も真であれば、\(p\) は \(q\) であるための必要十分条件
④「\(p \Rightarrow q\)」が偽で「\(q \Rightarrow p\)」も偽であれば、\(p\) は \(q\) であるための必要条件でも十分条件でもない
必要条件・十分条件の例①
具体的な例を見ながら、さらに理解を深めましょう。
日本人は人間である
(日本人 ⇒ 人間)
この命題は明らかに真です(日本人って人間ですよね??)。
それでは、この命題の逆の真偽はどうでしょうか。
「人間であれば、日本人である(人間 ⇒ 日本人)」
この命題は偽です。
人間には、日本人だけではなく、アメリカ人、中国人などさまざまな人がいます。
以上から、条件「人間」が条件「日本人」を包み込む関係であることがわかりました。
この場合、
- 日本人は人間であるための十分条件
- 人間は日本人であるための必要条件
といえます。
ある人が日本人であれば、その人は人間であると十分に言えますよね。
反対に、ある人が人間であることは、その人が日本人であるために絶対に必要なことですね。
このように、\(2\) つの条件の関係性を整理することで、必要条件か十分条件かが見えてきます。
必要条件・十分条件の例②
それでは、次の命題はどうでしょうか。
\(A\):干支(十二支)に対応する動物は、\(B\):鼠・牛・虎・兎・龍・蛇・馬・羊・猿・鶏・犬・猪である
(\(A \Rightarrow B\))
干支の十二支に対応する動物は、ね(鼠)・うし(牛)・とら(虎)・う(兎)・たつ(龍)・み(蛇)・うま(馬)・ひつじ(羊)・さる(猿)・とり(鶏)・いぬ(犬)・い(猪)でしたね。
上記 \(12\) 種類以外の動物は干支に含まれないので、命題は確かに真です。
命題を逆向きに考えてみても、
「\(B\):鼠・牛・虎・兎・龍・蛇・馬・羊・猿・鶏・犬・猪は、\(A\):干支(十二支)に対応する動物である(\(B \Rightarrow A\))」
となり、これも真です。
どちらの命題も真なので、条件 \(\bf{A}\) と条件 \(\bf{B}\) は等しい(同値である)ことがわかりました。
この場合、
- \(\color{red}{A}\) は \(B\) の必要十分条件である
- \(\color{red}{B}\) は \(A\) の必要十分条件である
と言えます。
このように、\(2\) つの条件が完全に一致することもあります。
したがって、ある命題「\(p \Rightarrow q\)」が真だからといって「\(p\) は十分条件で \(q\) は必要条件だ!」と安易に決めつけないように注意しましょう。
例題「必要・十分・必要十分のどれか?」
次の例題を通して、見分け方をマスターしましょう。
次の条件 \(p\) は、結論 \(q\) であるための必要条件、十分条件、あるいは必要十分条件のどれであるかを答えなさい。
(1) \(p\):\(3\)、\(q\):奇数
(2) \(p\):\(x = 0\)、\(q\):\(x^2 = 0\)
(3) \(p\):直角三角形、\(q\):\(2\) つの角度が \(20^\circ, 70^\circ\) の三角形
命題「\(p \Rightarrow q\)」とその逆 「\(q \Rightarrow p\)」の真偽を調べましょう。
まずは、「具体的な反例がないかな?」と疑ってみると判断しやすいですよ。
(1) \(p\):\(3\)、\(q\):奇数
命題「\(3 \Rightarrow\) 奇数」は明らかに真である。
また、命題の逆「奇数 \(\Rightarrow 3\)」は偽である(反例:\(5\))。
つまり、「\(p \Rightarrow q\)」が真、「\(q \Rightarrow p\)」が偽であるから、\(p\) は \(q\) の十分条件である。
(2) \(p\):\(x = 0\)、\(q\):\(x^2 = 0\)
命題「\(x = 0 \Rightarrow x^2 = 0\)」について、
\(x = 0\) の両辺を \(2\) 乗すると確かに \(x^2 = 0\) となるので、真である。
また、命題の逆「\(x^2 = 0 \Rightarrow x = 0\)」について、
\(2\) 乗して \(0\) になる数は \(0\) しかないので、これも真である。
つまり、「\(p \Rightarrow q\)」が真、「\(q \Rightarrow p\)」も真であるから、\(p\) は \(q\) の必要十分条件である。
(3) \(p\):直角三角形、\(q\):\(2\) つの角度が \(20^\circ, 70^\circ\) の三角形
元の命題「直角三角形 ⇒ \(2\) つの角度が \(20^\circ, 70^\circ\) の三角形」は偽である(反例:\(2\) つの角度が \(45^\circ, 45^\circ\) の直角三角形)。
また、命題の逆「\(2\) つの角度が \(20^\circ, 70^\circ\) の三角形 ⇒ 直角三角形」について、
\(2\) つの角度が \(20^\circ, 70^\circ\) のとき、残りの角度は \(90^\circ\) であるから、この三角形は直角三角形である。よってこの命題は真である。
つまり、「\(p \Rightarrow q\)」が偽、「\(q \Rightarrow p\)」が真であるから、\(p\) は \(q\) の必要条件である。
必要条件・十分条件の練習問題
さらに練習を重ねて、必要条件・十分条件への理解を深めましょう。
練習問題「2 つの命題の関係性を答える」
次の『』に最も適する語句を(ア)〜(エ)から選びなさい。
ただし、\(x, y\) は実数とします。
(1) \(x = y\) は \(x^2 = y^2\) であるための『』。
(2) \(xy > 0\) は \(x > 0\) であるための『』。
(3) \(x(y^2 + 1) = 0\) は \(x = 0\) であるための『』。
(4) \(x + y > 4\) は \(x > 2\) かつ \(y > 2\) であるための『』。
(ア) 必要十分条件である
(イ) 必要条件であるが十分条件ではない
(ウ) 十分条件であるが必要条件ではない
(エ) 必要条件でも十分条件でもない
与えられた命題とその逆の命題の真偽を確認し、条件同士の関係性を明らかにしましょう。
(1) \(x = y\) は \(x^2 = y^2\) であるための『』。
「\(x = y \Rightarrow x^2 = y^2\)」は明らかに真。
「\(x^2 = y^2 \Rightarrow x = y\)」 は偽。(反例:\(x = 1, y = −1\))
よって、\(x = y\) は \(x^2 = y^2\) であるための『十分条件であるが、必要条件ではない』。
答え: (ウ)
(2) \(xy > 0\) は \(x > 0\) であるための『』。
「\(xy > 0 \Rightarrow x > 0\)」は偽。(反例:\(x = − 1, y = − 1\))
「\(x > 0 \Rightarrow xy > 0\)」 は偽。(反例:\(x = 1, y = − 1\))
よって、\(xy > 0\) は \(x > 0\) であるための『必要条件でも十分条件でもない』。
答え: (エ)
(3) \(x(y^2 + 1) = 0\) は \(x = 0\) であるための『』。
「\(x(y^2 + 1) = 0 \Rightarrow x = 0\)」について、
\(y^2 + 1\) は常に正なので、\(x(y^2 + 1) = 0\) が成り立つとき \(x = 0\) であり、真。
「\(x = 0 \Rightarrow x(y^2 + 1) = 0\)」について、
\(x = 0\) ならば \(x(y^2 + 1)\) は必ず \(0\) になるので、真。
よって、\(x(y^2 + 1) = 0\) は \(x = 0\) であるための『必要十分条件である』。
答え: (ア)
(4) \(x + y > 4\) は \(x > 2\) かつ \(y > 2\) であるための『』。
「\(x + y > 4 \Rightarrow x > 2\) かつ \(y > 2\)」は偽。(反例:\(x = 1, y = 4\))
「\(x > 2\) かつ \(y > 2 \Rightarrow x + y > 4\)」は真。
よって、\(x + y > 4\) は \(x > 2\) かつ \(y > 2\) であるための『必要条件であるが十分条件ではない』。
答え: (イ)
以上で練習問題も終わりです!
必要条件と十分条件は、どっちがどっちかゴチャゴチャになりやすい概念ですよね。
そんなときは、\(2\) つの条件の包含関係を図示してみたり、「じゅう ⇒ よう」の語呂を思い出したりしましょう。
何回も練習問題などを解いていけば、必ずマスターできるようになりますよ!