この記事では「判別式 \(D\)」について、その意味やグラフ、公式をできるだけわかりやすく解説していきます。
また、\(4\) 分の \(D\) の使い方や簡単な問題も紹介していきますので、この記事を通してぜひマスターしてくださいね。
目次
判別式 D とは?【公式】
判別式 \(D\) とは、二次方程式の実数解の個数を調べる式です。
\(ax^2 + bx + c = 0\) \((a \neq 0)\) のとき、
\begin{align}\color{red}{D = b^2 − 4ac}\end{align}
具体的に \(D\) が何なのかというと、二次方程式の解の公式における根号(\(\bf{\sqrt{ }}\))の中身の部分です。
解の公式
\(ax^2 + bx + c = 0\) \((a \neq 0)\) のとき、
\begin{align}x = \displaystyle \frac{− b \pm \sqrt{\color{red}{b^2 − 4ac}}}{2a} = \displaystyle \frac{− b \pm \sqrt{\color{red}{D}}}{2a}\end{align}
判別式 \(D\) は \(\sqrt{ }\) の中身ですので、\(D\) の符号によって二次方程式 \(ax^2 + bx + c = 0\) の実数解の個数が決まります。
- \(D > 0\) のとき
\(\sqrt{D}\) は実数なので、実数解は \(x = \displaystyle \frac{− b + \sqrt{D}}{2a}\), \( \displaystyle \frac{− b − \sqrt{D}}{2a}\) の \(2\) 個。 - \(D = 0\) のとき
\(\sqrt{D} = 0\) なので、実数解は \(x = − \displaystyle \frac{b}{2a}\) の \(1\) 個(重解)。 - \(D < 0\) のとき
\(\sqrt{D}\) は実数ではない(根号の中が負の数 = 虚数)ので、\(x\) の実数解は \(0\) 個(存在しない)。
以上の性質をまとめると、以下のとおりです。
判別式 D と実数解の個数
- \(D > 0\) のとき
異なる \(2\) 個の実数解をもつ - \(D = 0\) のとき
\(1\) 個の実数解(重解)をもつ - \(D < 0\) のとき
実数解をもたない(\(0\) 個)
判別式 \(D\) の符号を調べるだけで、二次方程式が実数解を何個もつかがわかる、ということですね!
判別式 D と解の個数(実数解・虚数解)
なお、二次方程式の解の範囲を複素数まで広げると、判別式 \(D\) と解の個数の関係は次のようになります。
- \(D > 0\) のとき
異なる \(2\) 個の実数解をもつ - \(D = 0\) のとき
\(1\) 個の実数解(重解)をもつ - \(D < 0\) のとき
異なる \(2\) 個の虚数解をもつ
\(D < 0\) のときは \(\sqrt{D}\) が虚数となるので、二次方程式は \(2\) つの虚数解をもちます。
数 I までは「実数解が \(0\) 個」、数 II(虚数を習ったあと)では「虚数解が \(2\) 個」と表現が変わるので、混乱しないようにしましょう!
4 分の D 公式
二次方程式の \(x\) の係数が偶数のときは、\(D\) を \(\displaystyle \frac{1}{4}\) 倍して計算を楽にできます。
\(ax^2 + 2b’x + c = 0\) \((a \neq 0)\) の判別式は
\begin{align}\color{red}{\displaystyle \frac{D}{4} = b’ − ac}\end{align}
\(\displaystyle \frac{D}{4}\) は、次の計算から求められます。
\(ax^2 + bx + c = 0\) の \(b\) が偶数のとき、
\(b = 2b’\) とおくと、
\(\begin{align}D & = b ^2 − 4ac\\& = (2b’)^2 − 4ac\\& = 4b’ − 4ac\\& = \color{red}{4}(b’ − ac)\end{align}\)
よって、
\(\displaystyle \frac{D}{4} = b’ − ac\)
判別式 \(D\) において重要なのは \(D\) の符号(正、\(0\)、負)だけなので、\(D\) を \(\displaystyle \frac{1}{4}\) 倍しても問題ありません。
例えば、\(x^2 + 36x + 9 = 0\) の実数解を求めるとき、
\(\begin{align}D & = 36^2 − 4 \cdot 1 \cdot 9\\& = 1296 − 36\\& = 1260 > 0\end{align}\)
を計算するよりも、
\(\begin{align}\displaystyle \frac{D}{4} & = 18^2 − 1 \cdot 9\\& = 324 − 9\\& = 315 > 0\end{align}\)
を計算する方が、よっぽど楽ですよね。
ぜひ、活用してみてください!
判別式と二次関数のグラフの関係
判別式 \(D\) は二次方程式の実数解の個数を判別する式ですが、実は「二次関数のグラフが \(x\) 軸と何個の共有点をもつか」を調べることもできます。
二次関数 \(y = ax^2 + bx + c\) と \(x\) 軸 \((y = 0)\) との共有点の個数は、\(ax^2 + bx + c = 0\) の判別式 \(D\) の実数解の個数に等しい。
- \(D > 0\) のとき
異なる \(2\) 個の共有点をもつ - \(D = 0\) のとき
\(1\) 個の共有点をもつ(\(x\) 軸と接する) - \(D < 0\) のとき
共有点をもたない(\(0\) 個)
なぜそうなるかは、実際に共有点を求めるプロセスからわかります。
二次関数 \(y = ax^2 + bx + c\) と \(x\) 軸 \((y = 0)\) の交点を求めるには、両者の式を連立します。
\(\left\{\begin{array}{l}y = ax^2 + bx + c\\y = 0\end{array}\right.\)
これはつまり、\(ax^2 + bx + c = 0\) の実数解を求めることと同じになりますね。
したがって、判別式 \(D\) を利用できるのです。
判別式の練習問題
では、さっそく判別式の簡単な問題を解いてみましょう。
練習問題①「実数解の個数を求める」
\(3x^2 − 6x + 4 = 0\)
実数解の個数のみを聞かれているので、わざわざ二次方程式を解く必要はありません。
判別式 \(D\) を計算すればわかりますね。
また、\(x\) の係数が偶数なので、 \(\displaystyle \frac{D}{4}\) の公式が使えます。
\(3x^2 − 6x + 4 = 0\) の判別式を \(D\) とおくと、
\(\begin{align}\displaystyle \frac{D}{4} &= (−3)^2 − 3 \cdot 4 \\&= 9 − 12 \\&= − 3 < 0\end{align}\)
\(\displaystyle \frac{D}{4} < 0\) より、実数解の個数は \(0\) 個。
答え: \(0\) 個
練習問題②「x 軸との共有点を求める」
\(y = x^2 − 5x + 1\)
判別式 \(D\) を計算すれば \(x\) 軸との共有点の個数がわかるのでしたね。
\(y = x^2 − 5x + 1\) と \(x\) 軸 \((y = 0)\) との共有点の個数は、\(x^2 − 5x + 1 = 0\) の実数解の個数に等しい。
\(x^2 − 5x + 1 = 0\) の判別式を \(D\) とおくと、
\(\begin{align}D &= (−5)^2 − 4 \cdot 1 \cdot 1 \\&= 25 − 4 \\&= 21 > 0\end{align}\)
\(D > 0\) より、\(y = x^2 − 5x + 1\) と \(x\) 軸との共有点の個数は \(2\) 個。
答え: \(2\) 個
判別式の応用問題
最後に、少し難易度の高い \(2\) 問を解いてみましょう。
応用問題①「定数を含む二次方程式の実数解」
二次方程式 \(x^2 − 2x + k − 3 = 0\) の実数解の個数を調べよ。
定数 \(k\) の値によって判別式 \(D\) の符号も変わってくるので、それぞれを場合分けして考えましょう。
\(x^2 − 2x + k − 3 = 0\) の判別式を \(D\) とおくと、
\(\begin{align}\displaystyle \frac{D}{4} &= (− 1)^2 − 1 \cdot (k − 3)\\&= 1 − (k − 3)\\&= 1 − k + 3\\&= − k + 4\end{align}\)
(i) \(D > 0\)、すなわち \(− k + 4 > 0\) のとき
\(− k > − 4\) より
\(k < 4\)
このとき、実数解の個数は \(2\) 個。
(ii) \(D = 0\)、すなわち \(− k + 4 = 0\) のとき
\(− k = − 4\) より
\(k = 4\)
このとき、実数解の個数は \(1\) 個。
(iii) \(D < 0\)、すなわち \(− k + 4 < 0\) のとき
\(− k < − 4\) より
\(k > 4\)
このとき、実数解の個数は \(0\) 個。
答え:
\(k < 4\) のとき \(2\) 個
\(k = 4\) のとき \(1\) 個
\(k > 4\) のとき \(0\) 個
応用問題②「定数を含む二次関数と x 軸との共有点」
二次関数 \(y = x^2 − 6x + k\) のグラフと \(x\) 軸の共有点の個数を求めよ。
二次関数の問題ですが、解き方は応用問題①と同じです。
判別式 \(D\) の符号で場合分けしましょう。
\(y = x^2 − 6x + k\) と \(x\) 軸 \((y = 0)\) との共有点の個数は、\(x^2 − 6x + k = 0\) の実数解の個数に等しい。
\(x^2 − 6x + k = 0\) の判別式を \(D\) とおくと、
\(\begin{align}\displaystyle \frac{D}{4} &= (− 3)^2 − 1 \cdot k \\&= 9 − k\end{align}\)
(i) \(D > 0\)、すなわち \(9 − k > 0\) のとき
\(9 > k\) より
\(k < 9\)
このとき、共有点の個数は \(2\) 個。
(ii) \(D = 0\)、すなわち \(9 − k = 0\) のとき
\(k = 9\)
このとき、共有点の個数は \(1\) 個。
(iii) \(D < 0\)、すなわち \(9 − k < 0\) のとき
\(9 < k\) より
\(k > 9\)
このとき、共有点の個数は \(0\) 個。
答え:
\(k < 9\) のとき \(2\) 個
\(k = 9\) のとき \(1\) 個
\(k > 9\) のとき \(0\) 個
以上で、すべての問題は終わりです!
判別式 \(D\) は二次方程式や二次関数の分野でよく登場する重要な式なので、しっかりと理解しておきましょう。