この記事では、「重解」の意味や問題の解き方をできるだけわかりやすく解説していきます。
二次方程式が重解をもつための条件や、公式を利用した重解の簡単な求め方を紹介していきます。この記事を通してぜひマスターしてくださいね。
目次
重解とは?
重解とは、高次方程式の \(2\) つ以上の解が同じになる(= 解が重なる)ことです。
一般に、\(n\) 次方程式は \(n\) 個の解をもちますが、そのうちのいくつかの解が同じ値となるとき、その解を「重解」と呼びます。
二次方程式を例に考えてみましょう。
(例1)
\(x^2 − 5x + 6 = 0\)
\((x − 2) (x − 3) = 0\)
\(x = 2, 3\)
この二次方程式の解は \(2\) と \(3\) の \(2\) つです。
では、次の二次方程式はどうでしょうか。
(例2)
\(x^2 − 4x + 4 = 0\)
\((x − 2)^2 = 0\)
\(x = 2\)
\(2\) つの解は共に \(2\) となります。
このような場合に、「二次方程式が重解をもつ」といいます。
二次方程式は通常 \(2\) 個の解をもつので、それらが等しいときに「重解」と呼ぶのですね。
重解と二重解の違いについて
高次方程式において、\(k\) 個の解が同じになることを「\(k\) 重解」といいます。
\(2\) 個の解が同じなら「二重解」、\(3\) 個の解が同じなら「三重解」…といった感じです。
なお、二次方程式では「二重解」以外ありえないので、「二」は省略して単に「重解」と呼ぶことが多いです。
(例)
- \((x − 1)^2 = 0\)
→ 重解 \(x = 1\) をもつ二次方程式 - \((x − 1)^2(x + 2) = 0\)
→ 二重解 \(x = 1\) をもつ三次方程式 - \((x − 1)^3 = 0\)
→ 三重解 \(x = 1\) をもつ三次方程式 - \((x − 1)^4(x + 3)(x + 5) = 0\)
→ 四重解 \(x = 1\) をもつ六次方程式
二次方程式の重解の公式
ここでは、二次方程式の重解の公式を説明します。
二次方程式 \(ax^2 + bx + c = 0\) \((a \neq 0)\) が重解をもつとき、その解は
\begin{align}\color{red}{x = − \displaystyle \frac{b}{2a}}\end{align}
二次方程式の重解は、係数 \(a\) と \(b\) で簡単に表すことができるのですね。
なぜ重解が上記のように求められるのかは、解の公式を見ればわかります。
解の公式
二次方程式 \(ax^2 + bx + c = 0\) \((a \neq 0)\) の解は、
\begin{align}x = \displaystyle \frac{− b \pm \sqrt{b^2 − 4ac}}{2a} = \displaystyle \frac{− b \pm \sqrt{D}}{2a}\end{align}
解の公式における \(\sqrt{ }\) の中身 \(b^2 − 4ac\) を「判別式 \(D\)」といい、この値が実数解の個数を決めます。
判別式 \(D\) の値が \(0\) のとき、実数解の個数は \(1\) 個、すなわち重解をもちます。
二次方程式 \(ax^2 + bx + c = 0\) \((a \neq 0)\) の解 \(x = \displaystyle \frac{− b \pm \sqrt{D}}{2a}\) について、
- \(D > 0\) のとき
\(\sqrt{D}\) は実数、よって実数解は
\(x = \displaystyle \frac{− b + \sqrt{D}}{2a}, \frac{− b − \sqrt{D}}{2a}\) の \(2\) つ - \(D = 0\) のとき
\(\sqrt{D} = 0\) 、よって実数解は
\(x = \displaystyle − \frac{b}{2a}\) の \(1\) つ(= 重解) - \(D < 0\) のとき
\(\sqrt{D}\) は虚数、よって実数解は存在しない。
だから、重解は必ず \(x = − \displaystyle \frac{b}{2a}\) になるのですね。
重解の求め方【例題】
実際に例題を見ながら、二次方程式の重解の求め方を理解していきましょう。
例題①「\(x^2 + 22x + 121 = 0\) の重解を求める」
次の二次方程式は重解をもちます。その解を求めなさい。
\(x^2 + 22x + 121 = 0\)
重解をもつことがわかっているので、重解の公式 \(x = − \displaystyle \frac{b}{2a}\) を使って解を求めます。
\(x^2 + 22x + 121 = 0\) が重解をもつので、
\(x = − \displaystyle \frac{22}{2 \cdot 1} = − 11\)
答え: \(− 11\)
検算のため、二次方程式を因数分解してみましょう。
\(x^2 + 22x + 121 = 0\)
\((x + 11)(x + 11) = 0\)
\(x = − 11\)
確かに \(− 11\) が重解になっていますね!
例題②「\(x^2 − x + \displaystyle \frac{1}{4} = 0\) の重解を求める」
もう一問見てみましょう。
次の二次方程式は重解をもちます。その解を求めなさい。
\(x^2 − x + \displaystyle \frac{1}{4} = 0\)
同様に、公式に当てはめます。
\(x^2 − x + \displaystyle \frac{1}{4} = 0\) が重解をもつので、
\(x = − \displaystyle \frac{− 1}{2 \cdot 1} = \displaystyle \frac{1}{2}\)
答え: \(\displaystyle \frac{1}{2}\)
これも、検算のため因数分解してみましょう。
\(x^2 − x + \displaystyle \frac{1}{4} = 0\)
\(\displaystyle \left( x − \frac{1}{2} \right)\left(x − \frac{1}{2}\right) = 0\)
\(x = \displaystyle \frac{1}{2}\)
\(\displaystyle \frac{1}{2}\) が重解になっていることが検算できましたね。
重解の練習問題
それでは、実際に問題を解いてみましょう。
練習問題①「k の値と重解の値を求める」
次の二次方程式が重解をもつとき、\(k\) の値と重解の値を求めなさい。
\(x^2 − 10x + k = 0\)
二次方程式が重解をもつ、すなわち判別式 \(D = 0\) になることを利用して \(k\) を求めます。
その後、重解の公式を使って重解を求めましょう。
\(x^2 − 10x + k = 0\) …①
① は重解をもつので判別式 \(D\) は \(0\) となる。
\(D = 10^2 − 4 \cdot 1 \cdot k = 0\)
\(100 − 4k = 0\)
よって \(k = 25\)
①に \(k = 25\) を代入すると、
\(x^2 − 10x + 25 = 0\)
この方程式は重解をもつので、重解の公式より
\(x = − \displaystyle \frac{− 10}{2 \cdot 1} = 5\)
答え: \(k = 25\)、重解は \(5\)
練習問題②「m の値と重解の値を求める」
次の二次方程式が重解をもつとき、\(m\) の値と重解の値を求めなさい。
\(4x^2 + mx + m − 3 = 0\)
この問題も練習問題①と同じ流れで解くことができます。
二次方程式に定数が含まれるとき、定数が \(1\) つに定まるとは限りません。
複数の値がある場合は場合分けして、それぞれの重解を求めましょう。
\(4x^2 + mx + m − 3 = 0\) …①
① は重解をもつので、判別式 \(D\) は \(0\) となる。
\(D = m^2 − 4 \cdot 4 \cdot (m − 3) = 0\)
\(m^2 − 16m + 48 = 0\)
\((m − 12) (m − 4) = 0\)
\(m = 12, 4\)
(i) \(m = 12\) のとき
①の方程式に \(m = 12\) を代入すると、
\(4x^2 + 12x + 9 = 0\)
この方程式は重解をもつので、重解の公式より
\(x = − \displaystyle \frac{12}{2 \cdot 4} = − \displaystyle \frac{3}{2}\)
(ii) \(m = 4\) のとき
① の方程式に \(m = 4\) を代入すると、
\(4x^2 + 4x + 1 = 0\)
この方程式は重解をもつので、
\(x = − \displaystyle \frac{4}{2 \cdot 4} = − \displaystyle \frac{1}{2}\)
答え:
\(m = 12\) のとき重解は \(− \displaystyle \frac{3}{2}\)
\(m = 4\) のとき重解は \(− \displaystyle \frac{1}{2}\)
以上で練習問題も終わりです!
二次方程式では、重解は \(2\) つの解が同じ値になる特別なケースで、判別式は \(D = 0\) になります。
また、重解は公式を使って簡単に求めることができましたね。
この \(2\) つの重要なポイントをしっかり押さえて、ぜひ重解をマスターしてくださいね!