この記事では、「期待値」の意味や公式をできるだけわかりやすく解説していきます。
例題や計算問題を通して、期待値の求め方をていねいに説明していきますので、この記事を通してしっかりマスターしてくださいね!
期待値とは?
期待値とは、ある試行を行ったときにその結果として得られる数値の平均値のことです。
例えば、宝くじを買ったときに当選する金額は人によってバラバラですが、その「宝くじを買った人全員の当選金額の平均値」が期待値です。
ある試行の期待値がわかれば、それをやってみる価値があるのかを判断する基準にできますよね。
期待値の公式
期待値は、確率変数がとる値を確率によって重み付けした値の和として求められます(「重み付け」とはかけ算すること)。
ある試行において、確率変数 \(X\) のとりうる値を \(x_1, x_2, ・・・, x_n\)、\(X\) がその値をとる確率をそれぞれ \(p_1, p_2, ・・・, p_n\) とすると、この確率変数の期待値 \(E[X]\) は
\begin{align}\color{red}{E[X] = x_1p_1 + x_2p_2 + ・・・ + x_np_n}\end{align}
期待値は、その名前のとおり、確率変数がとると「期待」される値を意味します。
そのため、期待値を意味する英語「Expected Value」の頭文字をとって、「\(E[\text{確率変数}]\)」で表されることが多いです。
【補足】確率変数と確率分布
期待値を求める上で理解が必要な、「確率変数」と「確率分布」について補足しておきます。
例えば、サイコロを振って出る目は \(1\), \(2\), \(3\), \(4\), \(5\), \(6\) のどれかであり、それぞれの目が出る確率は \(\displaystyle \frac{1}{6}\) です。
言い方を変えれば、「サイコロを振って出る目は、\(\displaystyle \frac{1}{6}\) ずつの確率で \(1\) 〜 \(6\) の値をとる」といえますね。
したがって、「サイコロを振って出る目」=「確率変数」です。
また、サイコロを振るという試行では、確率変数のとる値(\(1\) 〜 \(6\))にそれぞれ \(\displaystyle \frac{1}{6}\) という確率が対応しているので、「確率分布」を表せます。
期待値を求める際には、このような確率分布表をまとめるとわかりやすいです。
期待値の求め方【例題】
ここでは、期待値を求める手順を以下の例題を通して説明します。
サイコロを \(1\) 個振ったときに出る目の期待値を計算せよ。
期待値は、たった 3 ステップで計算できます。
まずは、「確率変数 \(X\)」と「\(X\) がとりうる値」を考えます。
何が「確率変数」なのかは、問題文を見ればわかります。「〇〇の期待値を求めよ」の〇〇がまさに確率変数です!
つまり、この問題では「サイコロを \(1\) 個振ったときに出る目」を確率変数 \(X\) とおけばよいですね。
サイコロを \(1\) 個振ったときに出る目を確率変数 \(X\) とおくと、
\(X\) がとりうる値は \(1, 2, 3, 4, 5, 6\)
次に、「確率変数 \(X\) が各値をとる確率」をそれぞれ求め、確率分布を明らかにします。
サイコロを \(1\) 個振る場合、どの目が出る確率も \(\displaystyle \frac{1}{6}\) ですね。
サイコロの場合は簡単ですが、ここで確率計算が必要になる問題も多いので、慎重に計算しましょう。
確率を求めたら、確率分布表に結果をまとめるとわかりやすいです。
このとき、すべての確率変数に対応する確率を足し合わせると \(1\) になることを必ず確認しましょう。
\(1\) になっていなければ、なんらかの確率変数を見落としているか、確率の計算ミスをしている可能性があります。
確率分布がわかったら、あとは期待値の公式に値を当てはめるだけです。
期待値は、確率変数の各値とその確率をかけて、それらの和を求めればよいのでしたね。
\(E[X]\)
\(= 1 \cdot \displaystyle \frac{1}{6} + 2 \cdot \displaystyle \frac{1}{6} + 3 \cdot \displaystyle \frac{1}{6} \) \(+ \ 4 \cdot \displaystyle \frac{1}{6} + 5 \cdot \displaystyle \frac{1}{6} + 6 \cdot \displaystyle \frac{1}{6}\)
\(= \displaystyle \frac{1 + 2 + 3 + 4 + 5 + 6}{6}\)
\(= \displaystyle \frac{21}{6}\)
\(= 3.5\)
答え: \(3.5\)
簡単ですね!
期待値の計算問題
それでは、実際にいくつかの計算問題を解いていきましょう。
計算問題①「3 枚の硬貨を同時に投げる」
(1) \(3\) 枚の硬貨を同時に投げるとき,表が \(2\) 枚出る確率を求めよ。
(2) \(3\) 枚の硬貨を同時に投げるとき、表が出る枚数の期待値を計算せよ。
(2) で求めたいのは「表が出る枚数の期待値」なので、表が出る枚数を確率変数 \(X\) とします。
表が出る枚数ごとの確率を調べて確率分布表を作り、最後に期待値の公式に当てはめましょう。
全事象を \(U\) とすると、起こりうる事象はそれぞれ以下のとおり。
\(A\) : \(3\) 枚とも裏
\(B\) : \(1\) 枚が表で \(2\) 枚が裏
\(C\) : \(2\) 枚が表で \(1\) 枚が裏
\(D\) : \(3\) 枚とも表
各硬貨の出方は表になるか裏になるかの \(2\) 通りなので、全事象 \(U\) の場合の数は
\(n(U) = 2 \times 2 \times 2 = 8\)(通り)
(1) \(3\) 枚の硬貨を投げて表が \(2\) 枚出る場合の数は、
\(n(C) = {}_3 \mathrm{C}_2= \displaystyle \frac{3 \cdot 2}{2 \cdot 1}= 3\)
したがって、求める確率は
\(P(C) = \displaystyle \frac{n(C)}{n(U)}= \displaystyle \frac{3}{8}\)
答え: \(\displaystyle \frac{3}{8}\)
(2)「\(3\) 枚とも裏」が出る場合の数は、「\(3\) 枚とも表」が出る場合の数と等しいので
\(n(A) = n(D) = {}_3 \mathrm{C}_3 = 1\)(通り)
また、「\(1\) 枚が表で \(2\) 枚が裏」が出る場合の数は「\(2\) 枚が表で \(1\) 枚が裏」が出る場合の数と等しいので
\(n(B) = n(C) = 3\)(通り)
したがって、各事象が起こる確率は、
\(P(A) = P(D) = \displaystyle \frac{1}{8}\)
\(P(B) = P(C) = \displaystyle \frac{3}{8}\)
確率変数 \(X\) を表が出る枚数とすると、
\(X(A) = 0\), \(X(B) = 1\), \(X(C) = 2\), \(X(D) = 3\)
である。
求めたい期待値は、
\(E[X]\)
\(= X(A)P(A) + X(B)P(B) \) \(+ \ X(C)P(C) + X(D)P(D)\)
\(= 0 \cdot \displaystyle \frac{1}{8} + 1 \cdot \displaystyle \frac{3}{8} \) \(+ \ 2 \cdot \displaystyle \frac{3}{8} + 3 \cdot \displaystyle \frac{1}{8}\)
\(= \displaystyle \frac{0 + 3 + 6 + 3}{8}\)
\(= \displaystyle \frac{12}{8}\)
\(= \displaystyle \frac{3}{2}\)
答え: \(\displaystyle \frac{3}{2}\)
計算問題②「サイコロを 4 回投げる」
(1) サイコロを \(1\) 回投げるとき、\(3\) の倍数が出る確率を求めよ。
(2) サイコロを \(4\) 回投げるとき、\(3\) の倍数が出る回数の期待値を求めよ。
(2) で求めたいのは「\(3\) の倍数が出る回数の期待値」なので、\(3\) の倍数が出る回数を確率変数 \(X\) とします。
\(3\) の倍数が出る回数ごとの確率を調べ、期待値を求めましょう。
(1)
サイコロを投げて出る目のうち、 \(3\) の倍数は \(3 , 6\) の \(2\) 通りであるから、求めたい確率は
\(\displaystyle \frac{2}{6} = \displaystyle \frac{1}{3}\)
答え: \(\displaystyle \frac{1}{3}\)
(2)
サイコロを \(4\) 回投げたとき、\(3\) の倍数が出る回数は \(0\) 〜 \(4\) 回のいずれかである。
\(3\) の倍数が \(0, 1, 2, 3, 4\) 回出る事象をそれぞれ \(A , B , C , D , E\) で表すと、それぞれの確率変数 \(X\) は
\(X(A) = 4\), \(X(B) = 3\), \(X(C) = 2\), \(X(D) = 1\), \(X(E) = 0\)
(1) より、
\(1\) 回の試行で \(3\) の倍数の目が出る確率は \(\displaystyle \frac{1}{3}\)、
\(3\) の倍数以外の目が出る確率は \(1 − \displaystyle \frac{1}{3} = \displaystyle \frac{2}{3}\) であるから、
\(\begin{align}P(A) &= {}_4 \mathrm{C}_0 \times \left(\displaystyle \frac{2}{3}\right)^4\\\\&= 1 \times \displaystyle \frac{16}{81}\\\\&= \displaystyle \frac{16}{81}\end{align}\)
\(\begin{align}P(B) &= {}_4 \mathrm{C}_1 \times \displaystyle \frac{1}{3} \times \left(\displaystyle \frac{2}{3}\right)^3\\\\&= 4 \times \displaystyle \frac{1}{3} \times \displaystyle \frac{8}{27}\\\\&= \displaystyle \frac{32}{81}\end{align}\)
\(\begin{align}P(C) &= {}_4 \mathrm{C}_2 \times \left(\displaystyle \frac{1}{3}\right)^2 \times \left(\displaystyle \frac{2}{3}\right)^2\\\\&= \displaystyle \frac{4 \cdot 3}{2 \cdot 1} \times \displaystyle \frac{1}{9} \times \displaystyle \frac{4}{9}\\\\&= 6 \times \displaystyle \frac{1}{9} \times \displaystyle \frac{4}{9}\\\\&= \displaystyle \frac{24}{81}\end{align}\)
\(\begin{align}P(D) &= {}_4 \mathrm{C}_3 \times \left(\displaystyle \frac{1}{3}\right)^3 \times \displaystyle \frac{2}{3}\\\\&= {}_4 \mathrm{C}_1 \times \displaystyle \frac{1}{27} \times \displaystyle \frac{2}{3}\\\\&= 4 \times \displaystyle \frac{1}{27} \times \displaystyle \frac{2}{3}\\\\&= \displaystyle \frac{8}{81}\end{align}\)
\(\begin{align}P(E) &= {}_4 \mathrm{C}_4 \times \left(\displaystyle \frac{1}{3}\right)^4\\\\&= 1 \times \displaystyle \frac{1}{81}\\\\&= \displaystyle \frac{1}{81}\end{align}\)
したがって、求める期待値は
\(E[X]\)
\(= X(A)P(A) + X(B)P(B) + X(C)P(C)\) \(+ \ X(D)P(D) + X(E)P(E)\)
\(= \left(\displaystyle \frac{16}{81} \times 0\right) + \left(\displaystyle \frac{32}{81} \times 1\right) + \left(\displaystyle \frac{24}{81} \times 2\right)\) \(+ \left(\displaystyle \frac{8}{81} \times 3\right) + \left(\displaystyle \frac{1}{81} \times 4\right)\)
\(= 0 + \displaystyle \frac{32}{81} + \displaystyle \frac{48}{81} + \displaystyle \frac{24}{81} + \displaystyle \frac{4}{81}\)
\(= \displaystyle \frac{108}{81}\)
\(= \displaystyle \frac{4}{3}\)
答え: \(\displaystyle \frac{4}{3}\)
期待値が \(\displaystyle \frac{4}{3}\) であることから、サイコロを \(4\) 回投げて \(3\) の倍数が出る回数は「約 \(1.3\) 回」と期待できます。
もし \(3\) 回以上 \(3\) の倍数を出さなければいけない勝負をするとしたら、なかなか分の悪い勝負になりそうですね。
もちろん勝つ可能性は \(0\) ではありません。
以上で練習問題は終わりです。
期待値は確率が理解できていればさほど難しくないので、しっかりマスターしてくださいね!