この記事では、「区分求積法」についてわかりやすく説明していきます。
区分求積法の公式と証明、\(\log\) を使う問題の解き方も紹介していくので、この記事を通してぜひマスターしてくださいね。
区分求積法とは?
区分求積法とは、ある範囲の面積を無数の長方形の足し算として求めるテクニックです。
この「面積を無限に分割し、足し合わせる」という考え方は、積分の原点でもあります。
区分求積法の公式
区分求積法の公式は次のとおりです。
(準備)
\(f(x)\) が閉区間 \([a, b]\) で連続であるとき、この区間を \(n\) 等分すると、分点は \(x_0 (= a), x_1, x_2, \cdots, x_{n − 2}, x_{n − 1}, x_n (= b)\) となる。
区間の幅 \(\displaystyle \frac{b − a}{n} = \Delta x\) とおくと、任意の分点は \(x_k = a + k\Delta x\) と表せ、以下の関係式が成り立つ。
【公式①】
\begin{align} \color{red}{\lim_{n \to \infty} \sum_{k = 0}^{n − 1} f(x_k) \Delta x \,} & \color{red}{= \lim_{n \to \infty} \sum_{k = 1}^n f(x_k) \Delta x} \\ & \color{red}{= \int_a^b f(x) \,dx} \end{align}
【公式②】
特に \(\color{red}{a = 0, b = 1}\) のとき、
\(\displaystyle \Delta x = \frac{1}{n}\) , \(\displaystyle x_k = \frac{k}{n}\) より
\begin{align} \color{red}{\lim_{n \to \infty} \frac{1}{n} \sum_{k = 0}^{n − 1} f \left( \frac{k}{n} \right) \,} & \color{red}{ = \lim_{n \to \infty} \frac{1}{n} \sum_{k = 1}^n f \left( \frac{k}{n} \right)} \\& \color{red}{ = \int_0^1 f(x) \,dx} \end{align}
区分求積法を使うことで、和の極限(\(\lim\) と \(\sum\) を含んだ式)の問題を定積分の計算に落とし込めるというメリットがあります。
そのため、実践的に使いやすい公式②を重点的に覚えておきましょう。
区分求積法の証明
区分求積法がどのように成り立つかを証明します。
ここでは、公式②のパターン、\(y = f(x)\) の区間 \(0 \leq x \leq 1\) における面積を考えます。
(イメージしやすくするため、上記区間で常に \(f(x) \geq 0\) であるとします。)
\(y = f(x)\) と \(x\) 軸、および \(x = 0\), \(x = 1\) で囲まれた部分の面積を \(S\) とすると、
\(\displaystyle S = \int_0^1 f(x) \, dx\) …(*)
ここで、区間 \([0, 1]\) を \(n\) 等分すると、
分点は
\(x_0 (= 0), x_1, x_2, \cdots, x_{n − 2}, x_{n − 1}, x_n (= 1)\)
となる。
区間の幅は \(\displaystyle \frac{1 − 0}{n} = \frac{1}{n}\) であるから、任意の分点は \(\displaystyle \frac{k}{n}\) と表せる。
高さ \(\displaystyle f \left( \frac{k}{n} \right)\)、幅 \(\displaystyle \frac{1}{n}\) の長方形(面積 \(\displaystyle \frac{1}{n} f \left( \frac{k}{n} \right)\))を並べるとき、並べ方には次の \(2\) 通りがある。
(i) 左肩を \(y = f(x)\) に合わせる場合
→ \(k = 0, 1, 2, \cdots, n − 1\)
長方形の面積の和は
\(\displaystyle \frac{1}{n} \sum_{k = 0}^{n − 1} f \left( \frac{k}{n} \right)\) …①
(ii) 右肩を \(y = f(x)\) に合わせる場合
→ \(k = 1, 2, \cdots, n\)
長方形の面積の和は
\(\displaystyle \frac{1}{n} \sum_{k = 1}^n f \left( \frac{k}{n} \right)\) …②
①、②において \(n\) を無限に大きくすると (\(n \to \infty\))、両者の面積は \(S\) に限りなく近づく。
\(\displaystyle \lim_{n \to \infty} \frac{1}{n} \sum_{k = 0}^{n − 1} f \left( \frac{k}{n} \right) = S\)
\(\displaystyle \lim_{n \to \infty} \frac{1}{n} \sum_{k = 1}^n f \left( \frac{k}{n} \right) = S\)
したがって、
\begin{align} \lim_{n \to \infty} \frac{1}{n} \sum_{k = 0}^{n − 1} f \left( \frac{k}{n} \right) &= \lim_{n \to \infty} \frac{1}{n} \sum_{k = 1}^n f \left( \frac{k}{n} \right) \\ &= \int_0^1 f(x) \, dx \end{align}
が成り立つ。
(証明終わり)
このように示すことができました。
ちなみに、等分する数が同じならば、長方形をとる位置や個数を多少ずらしても和の極限は同じになります。
そのため、例えば以下の式も同様に成り立ちます。
\begin{align} \lim_{n \to \infty} \frac{1}{n} \sum_{k = 3}^{n + 10} f \left( \frac{k}{n} \right) = \int_0^1 f(x) \, dx \end{align}
区分求積法の使い方
区分求積法は、和の極限の問題で活用できます。
\(\lim\) と \(\sum\) を含んだ式が出てきたら、「区分求積法が使えないかな?」とアンテナを貼っておきましょう。
練習問題を通して、区分求積法を使う際のポイントを説明していきます。
練習問題①「和の極限」
次の極限値を求めよ。
\(\displaystyle \lim_{n \to \infty} \left( \frac{1^2}{n^3} + \frac{2^2}{n^3} + \cdots + \frac{n^2}{n^3} \right)\)
区分求積法を利用するには、次のように式変形するのがポイントです。
- 和を \(\sum\) で表す
- \(\sum\) の外に \(\displaystyle \frac{1}{n}\) を出す
- \(\sum\) の中に \(\displaystyle \frac{k}{n}\) のかたちを作る
そうすると、区分求積法の公式② \(\begin{align} \lim_{n \to \infty} \frac{1}{n} \sum_{k = 1}^n f \left( \frac{k}{n} \right) = \int_0^1 f(x) \,dx \end{align}\) を適用できるかたちとなり、\(\displaystyle \frac{k}{n}\) を \(x\) に対応させた関数の積分と見ることができます。
\(\displaystyle \frac{1^2}{n^3} + \frac{2^2}{n^3} + \cdots + \frac{n^2}{n^3}\)
\(\displaystyle= \sum_{k = 1}^n \frac{k^2}{n^3}\) (1. 和を \(\sum\) で表す)
\(\displaystyle= \frac{1}{n} \sum_{k = 1}^n \frac{k^2}{n^2}\) (2. \(\sum\) の外に \(\displaystyle \frac{1}{n}\) を出す)
\(\displaystyle = \frac{1}{n} \sum_{k = 1}^n \left( \frac{k}{n} \right)^2\) (3. \(\sum\) の中に \(\displaystyle \frac{k}{n}\) のかたちを作る)
よって、
\(\displaystyle \lim_{n \to \infty} \left( \frac{1^2}{n^3} + \frac{2^2}{n^3} + \cdots + \frac{n^2}{n^3} \right)\)
\(\displaystyle = \lim_{n \to \infty} \frac{1}{n} \sum_{k = 1}^n \left( \frac{k}{n} \right)^2\)
\(\displaystyle = \int_0^1 x^2 \, dx\)
\(\displaystyle = \left[ \frac{1}{3} x^3 \right]_0^1\)
\(\displaystyle = \frac{1}{3}\)
答え: \(\color{red}{\displaystyle \frac{1}{3}}\)
練習問題②「個数が n 個以外の和の極限」
次の極限値を求めよ。
\(\displaystyle \lim_{n \to \infty} \sum_{k = 1}^{2n} \frac{1}{3n + k}\)
和の個数に注目すると、\(1\) ~ \(2n\) の \(2n\) 個になっています。
このように、和が \(n\) 個でない場合も、積分区間に注意すれば区分求積法が使えます。
\(m\) が自然数のとき、
\begin{align} \color{red}{\lim_{n \to \infty} \frac{1}{n} \sum_{k = 1}^{mn} f \left( \frac{k}{n} \right) = \int_0^m f(x) \,dx} \end{align}
幅が \(\displaystyle \frac{1}{n}\) の長方形を、\(n\) 個ではなく \(mn\) 個、つまり \(0\) ~ \(1\) までではなく \(0\) ~ \(m\) までの範囲で足している、と考えるのですね。
\(\displaystyle \lim_{n \to \infty} \sum_{k = 1}^{2n} \frac{1}{3n + k}\)
\(\displaystyle = \lim_{n \to \infty} \frac{1}{n} \sum_{k = 1}^{2n} \frac{1}{3 + \frac{k}{n}}\)
\(\displaystyle = \int_0^2 \frac{1}{3 + x} \, dx\)
\(\displaystyle = \left[ \log(3 + x) \right]_0^2\)
\(= \log 5 − \log 3\)
\(\displaystyle = \log \frac{5}{3}\)
答え: \(\color{red}{\displaystyle \log \frac{5}{3}}\)
練習問題③「積の極限(log をとる)」
次の極限値を求めよ。
\(\displaystyle \lim_{n \to \infty} \frac{1}{n} \sqrt[n]{(2n + 1)(2n + 2)\cdots(3n)}\)
和ではなく「積の極限」なので、このままでは \(\sum\) で表すことができません。
このような問題では、両辺の自然対数 \((\log)\) をとります。
そうすると、対数の性質によって積を和に変換できます。
対数 \((\log)\) をとることで区分求積法を使えるのは、式に次のようなものが含まれるパターンです。
- \(n\) の式の積
- \(n\) の式の階乗(\(n!\) など)
- 順列 \(\mathrm{P}\) や組み合わせ \(\mathrm{C}\)
(→ 階乗で表せるから)
答えから \(\log\) を外し忘れないように注意しましょう。
(見切れる場合は横へスクロール)
\(\displaystyle A = \frac{1}{n} \sqrt[n]{(2n + 1)(2n + 2)\cdots(3n)}\)
とおくと、
\(\begin{align}A &= \sqrt[n]{\frac{(2n + 1)(2n + 2)…(3n)}{n^n}}\\&= \sqrt[n]{\frac{2n + 1}{n} \cdot \frac{2n + 2}{n} \cdots \frac{2n + n}{n}}\\&= \sqrt[n]{\left( 2 + \frac{1}{n} \right) \left( 2 + \frac{2}{n} \right) \cdots \left( 2 + \frac{n}{n} \right)}\\&= \left\{ \left( 2 + \frac{1}{n} \right) \left( 2 + \frac{2}{n} \right) \cdots \left( 2 + \frac{n}{n} \right) \right\}^{\frac{1}{n}}\end{align}\)
ここで、両辺の自然対数をとると、
\(\displaystyle \log A\)
\(\displaystyle = \log \left\{\left(2 + \frac{1}{n}\right) \left(2 + \frac{2}{n}\right) \cdots \left(2 + \frac{n}{n}\right) \right\}^{\frac{1}{n}}\)
\(\displaystyle = \frac{1}{n} \log \left\{\left(2 + \frac{1}{n}\right) \left(2 + \frac{2}{n}\right) \cdots \left(2 + \frac{n}{n}\right)\right\}\)
\(\displaystyle = \frac{1}{n} \left\{\log \left(2 + \frac{1}{n} \right) + \log \left(2 + \frac{2}{n}\right) + \cdots + \log \left(2 + \frac{n}{n}\right)\right\}\)
\(\displaystyle = \frac{1}{n} \sum_{k = 1}^n \log \left( 2 + \frac{k}{n} \right)\)
よって、
\(\displaystyle \lim_{n \to \infty} \log A\)
\(\displaystyle = \lim_{n \to \infty} \frac{1}{n} \sum_{k = 1}^n \log \left( 2 + \frac{k}{n} \right)\)
\(\displaystyle = \int_0^1 \log(2 + x) \, dx\)
\(\displaystyle = \left[ (2 + x) \log(2 + x) \right]_0^1 − \int_0^1 \frac{2 + x}{2 + x} \,dx\)
(部分積分法)
\(\displaystyle = 3\log 3 − 2\log 2 − \int_0^1 1 \,dx\)
\(= 3\log 3 − 2\log 2 − [x]_0^1\)
\(= 3\log 3 − 2\log 2 − 1\)
\(= \log 27 − \log 4 − \log e\)
\(\displaystyle = \log \frac{27}{4e}\)
したがって、求める極限値は
\(\displaystyle \lim_{n \to \infty} A = \frac{27}{4e}\)
答え: \(\color{red}{\displaystyle \frac{27}{4e}}\)
以上で問題も終わりです!
公式が複雑に見える区分求積法ですが、考え方を理解すれば使うのはそれほど難しくありません。
基本を押さえて、いろいろな問題に対応できるようにしましょう!