この記事では、「部分積分法」の公式の使い方とそのコツをわかりやすく解説していきます。
対数(\(\log\))を含む問題など、様々な問題の解き方をていねいに説明していくので、この記事を通してぜひマスターしてくださいね。
目次
部分積分法の公式
部分積分法とは、種類の異なる関数の積を積分するための計算テクニックです(例:\(\sin x \log x\) のような積の積分)。
- 不定積分の部分積分
\begin{align}\color{red}{\displaystyle \int f(x)g'(x) \ dx = f(x)g(x) − \int f'(x)g(x) \ dx}\end{align} - 定積分の部分積分
\begin{align}\color{red}{\displaystyle \int_a^b f(x)g'(x) \ dx = \left[f(x)g(x)\right]_a^b − \int_a^b f'(x)g(x) \ dx}\end{align}
(見切れる場合は横へスクロール)
かけ算された一方の関数をある関数の導関数 \(g'(x)\) とみて、式変形を行います。
部分積分法の公式の証明
部分積分法の公式は、「積の微分」の公式から導けます。
積の微分
\begin{align}\{f(x)g(x)\}’ = f'(x)g(x) + f(x)g'(x)\end{align}
この公式の両辺を積分して左辺と右辺を整理すれば、部分積分法の公式が得られます。
(見切れる場合は横へスクロール)
積の微分
\(\{f(x)g(x)\}’ = f'(x)g(x) + f(x)g'(x)\)
において、
両辺を積分すると
\(\displaystyle f(x)g(x) = \int f'(x)g(x) \ dx + \int f(x)g'(x) \ dx\)
移項すると、
\(\begin{align}\color{red}{\displaystyle \int f(x)g'(x) \ dx = f(x)g(x) − \int f'(x)g(x) \ dx}\end{align}\)
(証明終わり)
このように簡単に証明できました。
部分積分法の公式をうっかり忘れてしまったら、「積の微分」から思い出すといいですね。
「積の微分」を含むすべての微分公式を説明しています。
微分とは?微分のやり方と全公式をわかりやすく解説!
部分積分法の使い方
部分積分法を使うタイミングやコツを説明します。
部分積分法はいつ使う?
部分積分法は、次のような場面で有効です。
- 被積分関数(積分される関数)が、種類の異なる \(2\) つの関数の積である
- 積のうち、一方の関数を微分するとよりシンプルな関数になる
- 積のうち、もう一方の関数は積分しても複雑にならない
\(2\) つの関数の積はそのまま一気に積分することができないので、部分積分法を使うことを考えましょう(\(\displaystyle \int a(x)b(x) \ dx = A(x)B(x) + C\) は誤り)。
部分積分法のコツ
部分積分法を使うときは、「微分でシンプルになる方を \(f(x)\)、積分で複雑化しない方を \(g'(x)\) とみる」のが最大のコツです!
部分積分法の公式の右辺には、左辺の積 \(f(x)g'(x)\) と微積分の順序が入れ替わった形 \(f'(x)g(x)\) が積分対象として残ります。
この \(f'(x)g(x)\) が、元の積 \(f(x)g'(x)\) の積分よりもシンプルで、積分しやすい形になっていてほしいのです。
部分積分法の優先順位
部分積分法において、優先的に積分する関数 \(g'(x)\) に選ぶべき関数の種類は次のとおりです。
優先的に積分する関数 \(g'(x)\) にした方がよいのは…
① \(e^x\)、② \(\sin x, \cos x\)、③ \(x^n\)、④ \(\log x\)
この優先度を把握しておくと、部分積分がうまくいく組み合わせをすぐに作れますよ。
(例)(見切れる場合は横へスクロール)
\(\displaystyle \int \sin x \log x \ dx = −\int (\cos x)’ \log x \ dx\)
(\(\sin x\) を \(g'(x)\)、\(\log x\) を \(f(x)\) と見る)
\(\displaystyle \int 3x e^x \ dx = \int 3x (e^x)’ \ dx\)
(\(e^x\) を \(g'(x)\)、\(3x\) を \(f(x)\) と見る)
部分積分法のやり方
部分積分の具体的なやり方を、不定積分・定積分の両方について説明します。
① 部分積分法の不定積分のやり方
次の例題を通して、不定積分における部分積分の手順を説明します。
次の不定積分を求めよ。
\(\displaystyle \int (x + 2) \sin x \ dx\)
積をなす \(2\) つの関数のうち、どちらを微分する \(f(x)\)、積分する \(g'(x)\) とみるかを決定します。
\((x + 2)\) と \(\sin x\) の一方を微分、もう一方を積分したときに、どちらがよりシンプルになるかを考えると、
- \((x + 2)\) を微分、\(\sin x\) を積分
→ \(1\) と \(−\cos x\) - \((x + 2)\) を積分、\(\sin x\) を微分
→ \(\displaystyle \frac{1}{2} x^2 + 2x\) と \(\cos x\)
前者の方がシンプルになりますね。
よって、\(f(x) = (x + 2)\)、\(g'(x) = \sin x\) としましょう。
\(g'(x)\) の積分形 \(g(x)\) を求めておき、\(g'(x)\) を「\(g(x)\) の微分」の形で表しておきます。
\(\sin x = (−\cos x)’\)
(\(\sin x\) を積分して、「\(−\cos x\) の微分」の形にしておく)
不定積分の部分積分法の公式 \(\displaystyle \int f(x)g'(x) \ dx = f(x)g(x) − \int f'(x)g(x) \ dx\) に問題の関数を当てはめ、答えを求めます。
なお、部分積分法に慣れるまでは、公式を見ながら計算することをオススメします。慣れると、スラスラ式変形ができますよ。
(見切れる場合は横へスクロール)
\(\displaystyle \int (x + 2) \sin x \ dx\)
\(= \displaystyle \int (x + 2) (−\cos x)’ \ dx\)
\(= (x + 2)(−\cos x) − \int (x + 2)’ (−\cos x) \ dx\)
\(\displaystyle = −(x + 2) \cos x + \int \cos x \ dx\)
\(= −(x + 2) \cos x + \sin x + C\)
(\(C\) は積分定数)
答え: \(\color{red}{−(x + 2) \cos x + \sin x + C}\)(\(C\) は積分定数)
このように、きれいに積分できましたね!
ちなみに、微分対象と積分対象を逆にしてしまうとそれ以上計算できなくなります。
(見切れる場合は横へスクロール)
\(\displaystyle \int (x + 2) \sin x \ dx\)
\(\displaystyle = \int \left( \frac{1}{2} x^2 + 2x \right)’ (\sin x) \ dx\)
\(\displaystyle = \left( \frac{1}{2} x^2 + 2x \right)\sin x − \int \left( \frac{1}{2} x^2 + 2x \right) (\sin x)’ \ dx\)
\(\displaystyle = \left( \frac{1}{2} x^2 + 2x \right)\sin x − \int \color{skyblue}{\left( \frac{1}{2} x^2 + 2x \right) \cos x} \ dx\) (結局積の積分のまま)
② 部分積分法の定積分のやり方
次の例題を通して、定積分における部分積分の手順を説明します。
次の定積分を求めよ。
\(\displaystyle \int_1^e x^3 \log x \ dx\)
定積分においても、考え方は不定積分と同じです。
ただし、部分積分と定積分を同時に行うと頭がこんがらがるので、
不定積分の状態で部分積分 → 積分できたら定積分の代入計算
の順番で進めるのがミスを減らすポイントです。
積をなす \(2\) つの関数のうち、どちらを微分する \(f(x)\)、積分する \(g'(x)\) とみるかを決定します。
片方を微分、もう一方を積分した形を確認すると、
- \(x^3\) を微分、\(\log x\) を積分
→ \(3x^2\) と \(x \log x − x\) - \(x^3\) を積分、\(\log x\) を微分
→ \(\displaystyle \frac{1}{4} x^4\) と \(\displaystyle \frac{1}{x}\)
前者は項が増えてしまうし、結局 \(\log x\) が残ったままです(そもそも \(\log x\) の積分公式を忘れているかもしれませんね)。
よって、今回は後者の組み合わせ \(f(x) = \log x\)、\(g'(x) = x^3\) で考えましょう。
\(g'(x)\) の積分形 \(g(x)\) を求めておき、\(g'(x)\) を「\(g(x)\) の微分」の形で表しておきます。
\(x^3 = \left(\displaystyle \frac{1}{4} x^4\right)’\)
(\(x^3\) を積分して、「\(\displaystyle \frac{1}{4} x^4\) の微分」の形にしておく)
ゴールは定積分ですが、まずは不定積分の状態で部分積分 \(\displaystyle \int f(x)g'(x) \ dx = f(x)g(x) − \int f'(x)g(x) \ dx\) を終わらせてしまいます。
\(\displaystyle \int x^3 \log x \ dx\)
\(\displaystyle = \int \left( \frac{1}{4} x^4 \right)’ \log x \ dx\)
\(\displaystyle = \frac{1}{4} x^4 \log x − \int \frac{1}{4} x^4 (\log x)’ \ dx\)
\(\displaystyle = \frac{1}{4} x^4 \log x − \int \frac{1}{4} x^4 \cdot \frac{1}{x} \ dx\)
\(\displaystyle = \frac{1}{4} x^4 \log x − \int \frac{1}{4} x^3 \ dx\)
\(\displaystyle = \frac{1}{4} x^4 \log x − \frac{1}{16} x^4 + C\)
\(\displaystyle = \color{salmon}{\frac{1}{16} x^4 (4 \log x − 1) + C}\)
(\(C\) は積分定数)
右辺の第二項がシンプルになり、無事に全体を積分できましたね!
あとは当初の定積分に戻って、代入計算を行うだけです。
積分の工程は済んでいるので気が楽ですね。
\(\displaystyle \int x^3 \log x \ dx = \frac{1}{16} x^4 (4 \log x − 1) + C\)
であるから、
\(\displaystyle \int_1^e x^3 \log x \ dx\)
\(= \left[\displaystyle \frac{1}{16} x^4 (4 \log x − 1) \right]_1^e\)
\(\displaystyle= \frac{1}{16} \{e^4 (4 \log e − 1) − 1^4 (4 \log 1 − 1)\}\)
\(\displaystyle = \frac{1}{16} \{e^4 (4 \cdot 1 − 1) − 1(4 \cdot 0 − 1)\}\)
\(\displaystyle = \frac{1}{16} \{e^4 (4 − 1) − 1(0 − 1)\}\)
\(\displaystyle = \frac{1}{16} (3e^4 + 1)\)
答え: \(\displaystyle \color{red}{\frac{1}{16} (3e^4 + 1)}\)
\(\log e = 1\)、\(\log 1 = 0\) がわからない人は以下の記事をご覧ください。
自然対数 ln、自然対数の底 e とは?定義や微分積分公式
部分積分法の練習問題
練習問題を通して、部分積分法の使い方をマスターしましょう。
練習問題①「\(\displaystyle \int 2x e^{2x} \ dx\)」
次の不定積分を求めよ。
\(\displaystyle \int 2x e^{2x} \ dx\)
\(e\) のべき乗は積分しても指数が変わらないので、\(e^{2x}\) を積分する方向で考えましょう。
ただし、\(e^{2x}\) は \(e^{□}\) と \(□ = 2x\) の合成関数であることに注意します。
\((e^{2x})’ = e^{2x} \cdot (2x)’ = 2e^{2x}\) より、
\(2x e^{2x} = x \cdot 2e^{2x} = x (e^{2x})’\)
よって、
\(\displaystyle \int 2x e^{2x} \ dx\)
\(\displaystyle = \int x (e^{2x})’ \ dx\)
\(\displaystyle= x e^{2x} − \int (x)’ e^{2x} \ dx\)
\(\displaystyle = x e^{2x} − \int e^{2x} \ dx\)
\(\displaystyle = x e^{2x} − \frac{1}{2} e^{2x} + C\)
(\(C\) は積分定数)
答え:
\(\color{red}{\displaystyle x e^{2x} − \frac{1}{2} e^{2x} + C}\) (\(C\) は積分定数)
練習問題②「部分積分法で \(\displaystyle \int \log x \ dx\)」
\(\displaystyle \int \log x \ dx\) を、部分積分法を利用して求めよ。
一見、単一の関数なので部分積分ができないように感じますね。
しかしながら、\(\log x = 1 \cdot \log x\) と見るとどうでしょうか。
\(\log x = 1 \cdot \log x = (x)’ \log x\)
より、
\(\displaystyle \int \log x \ dx\)
\(\displaystyle = \int (x)’ \log x \ dx\)
\(\displaystyle = x \log x − \int x (\log x)’ \ dx\)
\(\displaystyle = x \log x − \int x \cdot \frac{1}{x} \ dx\)
\(\displaystyle = x \log x − \int 1 \ dx\)
\(= x \log x − x + C\)
(\(C\) は積分定数)
答え:
\(\color{red}{x \log x − x + C}\) (\(C\) は積分定数)
\(\log x\) の積分公式を忘れてしまったときは、この問題のように部分積分法で簡単に導くことができますね!
練習問題③「2 回部分積分する」
次の定積分を求めよ。
\(\displaystyle \int_0^1 x^2 e^x \ dx\)
\(e^x\) は積分してもそのままなので、こちらを積分する方針でいいですね。
しかし、\(1\) 回部分積分しただけでは、右辺に積の積分が残ったままになります。
そこで、もう一度部分積分して \(x\) の次数を下げ、積の積分を解消しましょう。
\(\displaystyle \int x^2 e^x \ dx\)
\(\displaystyle = \int x^2 (e^x)’ \ dx\)
\(\displaystyle = x^2 e^x − \int (x^2)’ e^x \ dx\)
\(\displaystyle = x^2 e^x − 2\int x e^x \ dx\)
\(\displaystyle = x^2 e^x − 2\int x (e^x)’ \ dx\)
\(\displaystyle = x^2 e^x − 2 \left( x e^x − \int x’ e^x \ dx \right)\)
\(\displaystyle = x^2 e^x − 2x e^x + 2 \int e^x \ dx\)
\(= x^2 e^x − 2x e^x + 2e^x + C\)
\(= e^x (x^2 − 2x + 2) + C\)
(\(C\) は積分定数)
よって、
\(\displaystyle \int_0^1 x^2 e^x \ dx\)
\(\displaystyle = \left[e^x (x^2 − 2x + 2)\right]_0^1\)
\(= e(1 − 2 + 2) − 1 \cdot 2\)
\(= e − 2\)
答え: \(\color{red}{e − 2}\)
練習問題④「部分積分の無限ループ」
次の不定積分を求めよ。
\(\displaystyle \int e^x \cos x \ dx\)
指数関数 \(e^x\) と三角関数(\(\sin x\) または \(\cos x\))の積は少しやっかいです。
部分積分を繰り返しても \(e^x \sin x\) と \(e^x \cos x\) がループしてしまい、一向に積の積分を解消できません。
このようなときは、求めたい式を \(\displaystyle \int e^x \cos x \ dx = I\) などと文字でおき、\(I\) が出てきたところで計算を止めるとうまくいきます。
\(\displaystyle \int e^x \cos x \ dx = I\) とおく。
\(I\)
\(\displaystyle = \int e^x \cos x \ dx\)
\(\displaystyle = \int e^x (\sin x)’ \ dx\)
\(\displaystyle = e^x \sin x − \int (e^x)’ \sin x \ dx\)
\(\displaystyle = e^x \sin x + \int e^x (−\sin x) \ dx\)
\(\displaystyle = e^x \sin x + \int e^x (\cos x)’ \ dx\)
\(\displaystyle = e^x \sin x + e^x \cos x − \int (e^x)’ \cos x \ dx\)
\(\displaystyle = e^x \sin x + e^x \cos x − \int e^x \cos x \ dx\)
\(= e^x \sin x + e^x \cos x − I\)
\(I = e^x \sin x + e^x \cos x − I\)
より、
\(2I = e^x (\sin x + \cos x)\)
したがって、積分定数を \(C\) とすると、
\(\displaystyle I = \frac{1}{2} e^x (\sin x + \cos x) + C\)
答え:
\(\color{red}{\displaystyle \frac{1}{2} e^x (\sin x + \cos x) + C}\)(\(C\) は積分定数)
この手の問題では、最後に積分定数を忘れないように注意しましょう!
以上で問題も終わりです。
部分積分法は一見使いにくそうな公式ですが、積の積分を解消する重要なテクニックです。
コツを押さえて、必ずマスターしましょうね!