この記事では、「平行四辺形」の定義や性質をできるだけわかりやすく解説していきます。
また、平行四辺形の面積の公式や、対角線の長さや角度を求める計算問題、さらには証明問題も説明していきますので、この記事を通してぜひマスターしてくださいね。
目次
平行四辺形の定義
平行四辺形とは、\(2\) 組の向かい合う辺がそれぞれ平行な四角形のことです。
まずはこの定義をしっかり覚えておきましょう。
平行四辺形の性質(定理)
平行四辺形には、次の \(3\) つの性質(定理)があります。
① \(2\) 組の向かい合う辺の長さが等しい
② \(2\) 組の向かい合う角が等しい
③ \(2\) 本の対角線が中点で交わる
言葉だけで覚えるのは難しいと思うので、図とともに理解しながら覚えておきましょう。
「定義」とは、その用語の意味のことで、基本的には \(1\) つの用語に対し \(1\) つの定義しかありません。
「定理」とは、用語の定義から導ける(= 証明できる)事実や性質のうち、特に重要なものを指します。
確認問題「辺の長さや角度を求める」
平行四辺形の性質が理解できたか、小中学レベルの問題で確認してみましょう。
以下の図において、次の長さや角の大きさを求めなさい。
ただし、四角形 \(\mathrm{ABCD}\) は平行四辺形である。
(1) 辺 \(\mathrm{AD}\)
(2) \(\angle \mathrm{D}\)
(3) \(\angle \mathrm{CDE}\)
平行四辺形の性質を理解していれば簡単に解けますね。
(1) 四角形 \(\mathrm{ABCD}\) は平行四辺形であるから、向かい合う辺の長さは等しい。
よって、
\(\mathrm{AD} = \mathrm{BC} = 7\)
答え: \(7 \, \mathrm{cm}\)
(2) 四角形 \(\mathrm{ABCD}\) は平行四辺形なので、向かい合う角の大きさは等しい。
よって、
\(\angle \mathrm{D} = \angle \mathrm{B} = 60^\circ\)
答え: \(60^\circ\)
(3)
(2) より、\(\angle \mathrm{D} = 60^\circ\)なので、
\(\begin{align} \angle \mathrm{CDE} &= 180^\circ − \angle \mathrm{D} \\ &= 180^\circ − 60^\circ \\ &= 120^\circ \end{align}\)
答え: \(120^\circ\)
平行四辺形の面積の公式
平行四辺形の面積を求める公式には次の \(2\) 通りがあります。
平行四辺形の底辺を \(a\)、高さを \(h\)、斜辺を \(b\)、底辺と斜辺のなす角を \(\theta\) とおくと、面積 \(S\) は
① \(\color{red}{S = ah}\)
② \(\color{red}{S = a b \sin\theta}\)
\((\text{面積}) = (\text{底辺}) \times (\text{高さ})\)
公式①は、中学で習いますね。公式②では高校で習う三角比の知識を使います。
\(2\) つの公式は本質的にはどちらも同じで、「\((\text{平行四辺形の面積}) = (\text{底辺}) \times (\text{高さ})\)」です。
公式②では、斜辺の長さ、および斜辺と底辺がなす角 \(\theta\) から、三角比を使って高さを求めているのです。
\(\displaystyle \sin \theta = \frac{\text{(高さ)}}{\text{(斜辺)}} = \frac{h}{b}\) より、
\(h = b \sin \theta\)
よって
わかっている長さや角度に応じて、公式①と②を使い分けるようにしましょう。
確認問題「平行四辺形の面積の求め方」
次の問題で、平行四辺形の面積の求め方を確認しましょう。
次の平行四辺形 \(\mathrm{ABCD}\) の面積を求めよ。
斜辺の長さと \(2\) 辺の間の角がわかっているので、三角比を使う公式②で面積を求めましょう。
底辺と斜辺のなす角を \(\theta\) とすると、
平行四辺形の面積 \(S\) は
\(S = \text{(底辺)} \times \text{(斜辺)} \times \sin \theta\)
であるから、
\(\begin{align} S &= 4 \times 2\sqrt{2} \times \sin 45^\circ \\ &= 4 \times 2\sqrt{2} \times \frac{1}{\sqrt{2}} \\ &= 4 \times 2 \\ &= 8 \end{align}\)
答え: \(\color{red}{8}\)
公式に当てはめるだけなので、とても簡単ですね!
平行四辺形の対角線・角度の求め方
平行四辺形の角度や対角線の長さを求める手順を、以下の例題で解説していきます。
平行四辺形 \(\mathrm{ABCD}\) において、\(\mathrm{AB} = \mathrm{CD} = 6 \ \text{cm}\)、\(\mathrm{AD} = \mathrm{BC} = 8 \ \text{cm}\) とする。
\(\angle \mathrm{A} = 120^\circ\) のとき、対角線 \(\mathrm{AC}\) の長さを求めよ。
底辺と斜辺、そして \(1\) つの角度がわかっています。
以下の \(4\) つのステップを通して、すべての角度、そして対角線の長さを明らかにしていきましょう。
まず最初に、上底(上の底辺)の頂点から垂線を下ろします。
頂点 \(\mathrm{A}\) から垂線を下ろし、辺 \(\mathrm{BC}\) の交点を \(\mathrm{H}\) とおきましょう。
平行四辺形の \(1\) つの角度がわかっていれば、ほかのすべての角度を求められます。
平行四辺形の向かい合う角は等しいので
\(\angle \mathrm{C} = \angle \mathrm{A} = 120^\circ\)
残りの \(\angle \mathrm{B}\) と \(\angle \mathrm{D}\) は、四角形の内角の和が \(360^\circ\) であることを利用して求めます。
\(\begin{align} \angle \mathrm{B} &= \angle \mathrm{D} \\ &= (360^\circ − 120^\circ \times 2) \div 2 \\ &= 60^\circ \end{align}\)
次に、平行四辺形の高さを求めておきましょう。
高さ \(\mathrm{AH}\) を求めるには、直角三角形 \(\mathrm{ABH}\) に注目します。
「\((\text{高さ}) = (\text{斜辺}) \times \sin \theta\)」で求めることができましたね。
\(\begin{align} \mathrm{AH} &= \mathrm{AB} \times \sin 60^\circ \\ &= 6 \times \frac{\sqrt{3}}{2} \\ &= 3\sqrt{3} \end{align}\)
また、直角三角形 \(\mathrm{ABH}\) の底辺 \(\mathrm{BH}\) も合わせて求めておきます。
\(\displaystyle \cos \theta = \frac{\mathrm{BH}}{\mathrm{AB}}\) より、
\(\begin{align} \mathrm{BH} &= 6 \times \cos 60^\circ \\ &= 6 \times \frac{1}{2} \\ &= 3 \end{align}\)
これで、対角線を求める準備が整いました。
\(\mathrm{AH}\) と \(\mathrm{BH}\) は三平方の定理でも求められます。
\(\mathrm{AH}^2 + \mathrm{BH}^2 = \mathrm{AB}^2\)
また、この問題のように有名な辺の比をもつ直角三角形(\(90^\circ\), \(60^\circ\), \(45^\circ\), \(30^\circ\) など)であれば、比の計算でも求めることができますね。
対角線の長さは、三平方の定理で求められます。
三平方の定理
直角三角形の直角を挟む \(2\) 辺が \(a, b\)、斜辺が \(c\) のとき
\begin{align}a^2 + b^2 = c^2\end{align}
三平方の定理とは?証明や計算問題、角度と辺の比の一覧これまで計算して出てきた値をどんどん図に書き込んでいきましょう。
求めたい対角線 \(\mathrm{AC}\) を含む三角形 \(\mathrm{AHC}\) に着目してみましょう。
直角三角形 \(\mathrm{AHC}\) において、三平方の定理より
\(\begin{align} \mathrm{AC}^2 &= \mathrm{AH}^2 + \mathrm{HC}^2 \\ &= (3\sqrt{3})^2 + 5^2 \\ &= 27 + 25 \\ &= 52 \end{align}\)
\(\mathrm{AC} > 0\) より
\(\mathrm{AC} = \sqrt{52} = 2\sqrt{13}\)
よって、対角線の長さ \(\mathrm{AC}\) は \(\color{red}{2\sqrt{13}}\) と求められました!
一見難しいように思いますが、解き方の流れはだいたい決まっています。
垂線を下ろして、対角線が斜辺となる直角三角形を作ることを覚えておきましょう!
平行四辺形の証明問題
ここでは、ある図形が平行四辺形になるための条件と、証明問題の解き方を説明します。
平行四辺形になる条件
ある平面図形が平行四辺形であるための条件には、次の \(5\) つがあります。
① \(2\) 組の向かい合う辺が平行である
② \(2\) 組の向かい合う辺の長さが等しい
③ \(2\) 組の向かい合う角が等しい
④ \(2\) 本の対角線が中点で交わる
⑤ \(1\) 組の向かい合う辺が平行で、かつ長さが等しい
このうちどれか \(1\) つでも条件を満たせば、その図形は平行四辺形と言えます。
\(5\) つも覚えるのは大変だな、と思ってしまいますね。
しかし、実は \(5\) つの条件のうち、①は平行四辺形の定義と同じで、②~④は平行四辺形の性質(定理)と同じです。つまり、新たに覚えるのは⑤だけということになりますね!
証明問題「平行四辺形であることの証明」
それでは、平行四辺形の条件を使って証明問題に挑戦してみましょう。
四角形 \(\mathrm{ABCD}\) の対角線の交点を \(\mathrm{O}\) とする。このとき、 \(\mathrm{AB} \ // \ \mathrm{DC}\)、\(\mathrm{AO} = \mathrm{CO}\) ならば、四角形 \(\mathrm{ABCD}\) は平行四辺形となることを証明しなさい。
まずは、四角形 \(\mathrm{ABCD}\) が平行四辺形であるためのどの条件に当てはまるかを考えましょう。
問題文中に \(\mathrm{AB} \ // \ \mathrm{DC}\) という条件があるので、以下の \(2\) つに絞れます。
- \(2\) 組の向かい合う辺がそれぞれ平行である
→ \(\mathrm{AB} \ // \ \mathrm{DC}\)、\(\mathrm{AD} \ // \ \mathrm{BC}\) - \(1\) 組の向かい合う辺が平行で、かつ長さが等しい
→ \(\mathrm{AB} \ // \ \mathrm{DC}\)、\(\mathrm{AB} = \mathrm{DC}\)
問題文にある \(\mathrm{AO} = \mathrm{CO}\) という条件から、\(\mathrm{AO}\) を含む三角形 \(\mathrm{ABO}\) と、\(\mathrm{CO}\) を含む三角形 \(\mathrm{COD}\) の合同を示すことができれば、\(\mathrm{AB} = \mathrm{DC}\) が示せそうです。
\(\triangle \mathrm{AOB}\) と \(\triangle \mathrm{COD}\) において、
仮定から
\(\mathrm{AO} = \mathrm{CO}\) …①
\(\mathrm{AB} \ // \ \mathrm{DC}\) …②
②より、平行線の錯角は等しいから
\(\angle \mathrm{BAO} = \angle \mathrm{DCO}\) ……③
対頂角は等しいから
\(\angle \mathrm{AOB} = \angle \mathrm{COD}\) ……④
①、③、④より、\(1\) 組の辺とその両端の角がそれぞれ等しいから、
\(\triangle \mathrm{AOB} \equiv \triangle \mathrm{COD}\)
合同な図形では対応する辺は等しいから、
\(\mathrm{AB} = \mathrm{CD}\) …⑤
②、⑤より、\(1\) 組の対辺が等しく、かつ平行であるから、四角形 \(\mathrm{ABCD}\) は平行四辺形である。
(証明終わり)
以上で平行四辺形の内容はすべて終わりです!
覚えることが多く感じると思いますが、内容が重なり合う部分も多いです。
図と一緒に理解を深めて、さまざまな問題に対応できるようにしてくださいね。
なお、平行四辺形の作図方法については以下の記事で説明しています。
四角形(ひし形・平行四辺形・台形)の書き方(作図)まとめ!