この記事では、「平行四辺形」の定義や条件、性質をできるだけわかりやすく解説していきます。
また、平行四辺形の面積の公式や、対角線の角度などの計算問題も紹介していきますので、この記事を通してぜひマスターしてくださいね。
目次
平行四辺形とは?【定義】
平行四辺形とは、 \(\bf{2}\) 組の向かい合う辺がそれぞれ平行な四角形のことです。
まずはこの定義をしっかり覚えておきましょう。
平行四辺形の性質(定理)
平行四辺形には、大きく \(3\) つの性質があります。
【性質①】2 組の向かい合う辺の長さが等しい
【性質②】2 組の向かい合う角が等しい
【性質③】2 本の対角線が中点で交わる
以上の \(3\) つです。言葉だけで覚えるのは難しいと思うので、図とともに理解しながら覚えておきましょう。
平行四辺形の条件
ある平面図形が平行四辺形であるための条件には、次の \(5\) つがあります。
このうちどれか \(1\) つでも条件を満たせば、その図形は平行四辺形と言えます。
【条件①】2 組の向かい合う辺が平行である
これは平行四辺形の定義と同じです。
【条件②】2 組の向かい合う辺の長さが等しい
これは定理(性質①と同じ)です。
【条件③】2 組の向かい合う角が等しい
これは定理(性質②と同じ)です。
【条件④】2 本の対角線が中点で交わる
これも定理(性質③と同じ)です。
【条件⑤】1 組の向かい合う辺が平行で、かつ長さが等しい
これも定理です。
以上の \(5\) つです。
\(5\) つも覚えるのは大変だな、と思ってしまいますね。
しかし、実は \(5\) つの条件のうち、①は平行四辺形の定義と同じで、②~④は平行四辺形の性質(定理)と同じです。つまり、新たに覚えるのは⑤だけということになりますね!
「定義」とは、その用語の意味のことで、基本的には \(1\) つの用語に対し \(1\) つの定義しかありません。
「定理」とは、用語の定義から導くこと(証明)ができる事実や性質のうち、特に重要なものを指します。
平行四辺形の面積の公式
平行四辺形の面積を求める公式には次の \(2\) 通りがあります。
平行四辺形の底辺を \(a\)、高さを \(h\)、斜辺を \(b\)、底辺と斜辺のなす角を \(\theta\) とおくと、面積 \(S\) は
- \(\color{red}{S = ah}\)
- \(\color{red}{S = a b \sin\theta}\)
\((\text{面積}) = (\text{底辺}) \times (\text{高さ})\)
公式 1 は、中学で習いますね。公式 2 では高校で習う三角比の知識を使います。
斜辺の長さと底辺とのなす角 \(\theta\) がわかれば、三角比の関係から高さが求められます。
\(\displaystyle \sin \theta = \frac{\text{(高さ)}}{\text{(斜辺)}} = \frac{h}{b}\) より、
\(h = b \sin \theta\)
よって
したがって、\(2\) つの公式は本質的にはどちらも同じということですね。
わかっている長さや角度に応じて、公式を使い分けるようにしましょう。
「三角比」については以下の記事で詳しく説明しています。

平行四辺形の面積の求め方【例題】
次の例題で、平行四辺形の面積を求める練習をしましょう。
次の平行四辺形 \(\mathrm{ABCD}\) の面積を求めよ。
斜辺の長さと \(2\) 辺の間の角がわかっているので、三角比を使って面積を求めましょう。
底辺と斜辺のなす角を \(\theta\) とすると、
平行四辺形の面積 \(S\) は
\(S = \text{(底辺)} \times \text{(斜辺)} \times \sin \theta\)
であるから、
\(\begin{align} S &= 4 \times 2\sqrt{2} \times \sin 45^\circ \\ &= 4 \times 2\sqrt{2} \times \frac{1}{\sqrt{2}} \\ &= 4 \times 2 \\ &= 8 \end{align}\)
答え: \(\color{red}{8}\)
公式に当てはめるだけなので、とても簡単ですね!
平行四辺形の対角線・角度の求め方【例題】
次に、平行四辺形の角度や対角線の長さを求める方法を、以下の例題で解説していきます。
平行四辺形 \(\mathrm{ABCD}\) において、\(\mathrm{AB} = \mathrm{CD} = 6 \ \text{cm}\)、\(\mathrm{AD} = \mathrm{BC} = 8 \ \text{cm}\) とする。
\(\angle \mathrm{A} = 120^\circ\) のとき、対角線 \(\mathrm{AC}\) の長さを求めよ。
底辺と斜辺、そして \(1\) つの角度がわかっています。
以下の \(4\) つのステップを通して、すべての角度、そして対角線の長さを明らかにしていきましょう。
まず最初に、上底(上の底辺)の頂点から垂線を下ろします。
頂点 \(\mathrm{A}\) から垂線を下ろし、辺 \(\mathrm{BC}\) の交点を \(\mathrm{H}\) とおきましょう。
平行四辺形の \(1\) つの角度がわかっていれば、ほかのすべての角度を求められます。
平行四辺形の向かい合う角は等しいので
\(\angle \mathrm{C} = \angle \mathrm{A} = 120^\circ\)
残りの \(\angle \mathrm{B}\) と \(\angle \mathrm{D}\) は、四角形の内角の和が \(360^\circ\) であることを利用して求めます。
\(\begin{align} \angle \mathrm{B} &= \angle \mathrm{D} \\ &= (360^\circ − 120^\circ \times 2) \div 2 \\ &= 60^\circ \end{align}\)
次に、平行四辺形の高さを求めておきましょう。
高さ \(\mathrm{AH}\) を求めるには、直角三角形 \(\mathrm{ABH}\) に注目します。
「\((\text{高さ}) = (\text{斜辺}) \times \sin \theta\)」で求めることができましたね。
\(\begin{align} \mathrm{AH} &= \mathrm{AB} \times \sin 60^\circ \\ &= 6 \times \frac{\sqrt{3}}{2} \\ &= 3\sqrt{3} \end{align}\)
また、直角三角形 \(\mathrm{ABH}\) の底辺 \(\mathrm{BH}\) も合わせて求めておきます。
\(\displaystyle \cos \theta = \frac{\mathrm{BH}}{\mathrm{AB}}\) より、
\(\begin{align} \mathrm{BH} &= 6 \times \cos 60^\circ \\ &= 6 \times \frac{1}{2} \\ &= 3 \end{align}\)
これで、対角線を求める準備が整いました。
\(\mathrm{AH}\) と \(\mathrm{BH}\) は三平方の定理でも求められます。
\(\mathrm{AH}^2 + \mathrm{BH}^2 = \mathrm{AB}^2\)
また、この問題のように有名な辺の比をもつ直角三角形(\(90^\circ\), \(60^\circ\), \(45^\circ\), \(30^\circ\) など)であれば、比の計算でも求めることができますね。
対角線の長さは、三平方の定理で求められます。
三平方の定理
直角三角形の直角を挟む \(2\) 辺が \(a, b\)、斜辺が \(c\) のとき
\begin{align}a^2 + b^2 = c^2\end{align}

これまで計算して出てきた値をどんどん図に書き込んでいきましょう。
求めたい対角線 \(\mathrm{AC}\) を含む三角形 \(\mathrm{AHC}\) に着目してみましょう。
直角三角形 \(\mathrm{AHC}\) において、三平方の定理より
\(\begin{align} \mathrm{AC}^2 &= \mathrm{AH}^2 + \mathrm{HC}^2 \\ &= (3\sqrt{3})^2 + 5^2 \\ &= 27 + 25 \\ &= 52 \end{align}\)
\(\mathrm{AC} > 0\) より
\(\mathrm{AC} = \sqrt{52} = 2\sqrt{13}\)
よって、対角線の長さ \(\mathrm{AC}\) は \(\color{red}{2\sqrt{13}}\) と求められました!
一見難しいように思いますが、解き方の流れはだいたい決まっています。
垂線を下ろして、対角線が斜辺となる直角三角形を作ることを覚えておきましょう!
平行四辺形の練習問題
それでは、平行四辺形の練習問題に挑戦してみましょう。
練習問題「辺の長さや角度を求める」
以下の図において、次の長さや角の大きさを求めなさい。
ただし、四角形 \(\mathrm{ABCD}\) は平行四辺形である。
(1) 辺 \(\mathrm{AD}\)
(2) \(\angle \mathrm{D}\)
(3) \(\angle \mathrm{CDE}\)
平行四辺形の性質をしっかりと理解していれば簡単に解けますよ!
(1) 四角形 \(\mathrm{ABCD}\) は平行四辺形であるから、向かい合う辺の長さは等しい。
よって、
\(\mathrm{AD} = \mathrm{BC} = 7\)
答え: \(7 \, \mathrm{cm}\)
(2) 四角形 \(\mathrm{ABCD}\) は平行四辺形なので、向かい合う角の大きさは等しい。
よって、
\(\angle \mathrm{D} = \angle \mathrm{B} = 60^\circ\)
答え: \(60^\circ\)
(3)
(2) より、\(\angle \mathrm{D} = 60^\circ\)なので、
\(\begin{align} \angle \mathrm{CDE} &= 180^\circ − \angle \mathrm{D} \\ &= 180^\circ − 60^\circ \\ &= 120^\circ \end{align}\)
答え: \(120^\circ\)
平行四辺形の証明問題
最後に、今回学んできた知識を整理しながら証明問題を解いてみましょう!
証明問題「平行四辺形であることの証明」
四角形 \(\mathrm{ABCD}\) の対角線の交点を \(\mathrm{O}\) とする。このとき、 \(\mathrm{AB} \ // \ \mathrm{DC}\)、\(\mathrm{AO} = \mathrm{CO}\) ならば、四角形 \(\mathrm{ABCD}\) は平行四辺形となることを証明しなさい。
まずは、四角形 \(\mathrm{ABCD}\) が平行四辺形であるためのどの条件に当てはまるかを考えましょう。
問題文中に \(\mathrm{AB} \ // \ \mathrm{DC}\) という条件があるので、以下の \(2\) つに絞れます。
- \(2\) 組の向かい合う辺がそれぞれ平行である
→ \(\mathrm{AB} \ // \ \mathrm{DC}\)、\(\mathrm{AD} \ // \ \mathrm{BC}\) - \(1\) 組の向かい合う辺が平行で、かつ長さが等しい
→ \(\mathrm{AB} \ // \ \mathrm{DC}\)、\(\mathrm{AB} = \mathrm{DC}\)
問題文にある \(\mathrm{AO} = \mathrm{CO}\) という条件から、\(\mathrm{AO}\) を含む三角形 \(\mathrm{ABO}\) と、\(\mathrm{CO}\) を含む三角形 \(\mathrm{COD}\) の合同を示すことができれば、\(\mathrm{AB} = \mathrm{DC}\) が示せそうです。
\(\triangle \mathrm{AOB}\) と \(\triangle \mathrm{COD}\) において、
仮定から
\(\mathrm{AO} = \mathrm{CO}\) …①
\(\mathrm{AB} \ // \ \mathrm{DC}\) …②
②より、平行線の錯角は等しいから
\(\angle \mathrm{BAO} = \angle \mathrm{DCO}\) ……③
対頂角は等しいから
\(\angle \mathrm{AOB} = \angle \mathrm{COD}\) ……④
①、③、④より、\(1\) 組の辺とその両端の角がそれぞれ等しいから、
\(\triangle \mathrm{AOB} \equiv \triangle \mathrm{COD}\)
合同な図形では対応する辺は等しいから、
\(\mathrm{AB} = \mathrm{CD}\) …⑤
②、⑤より、\(1\) 組の対辺が等しく、かつ平行であるから、四角形 \(\mathrm{ABCD}\) は平行四辺形である。
(証明終わり)
以上で平行四辺形の内容はすべて終わりです!
覚えることが多く感じると思いますが、内容が重なり合う部分も多いです。
図と一緒に理解を深めて、さまざまな問題に対応できるようにしてくださいね。
なお、「平行四辺形の作図方法」については以下の記事で説明しています。
