この記事では、「ヘロンの公式」やその証明についてわかりやすく解説していきます。
また、ヘロンの公式の四角形バージョンである「ブラーマグプタの公式」についても説明しますので、ぜひこの記事を通してマスターしてくださいね!
目次
ヘロンの公式とは?
ヘロンの公式とは、三角形の \(3\) 辺の長さを用いてその三角形の面積を求める公式です。
三角形の \(3\) 辺をそれぞれ \(a\), \(b\), \(c\)、三角形の面積を \(S\) とすると、
\begin{align}\color{red}{S = \sqrt{s(s − a)(s − b)(s − c)}}\end{align}
ただし、\(\color{red}{\displaystyle s = \frac{a + b + c}{2}}\)
ヘロンの公式の使い方【例題】
以下の例題を通して、ヘロンの公式の使い方を説明します。
図の \(\triangle \mathrm{ABC}\) の面積を求めなさい。
\(\triangle \mathrm{ABC}\) において、\(3\) 辺の長さはそれぞれ \(a = 8\)、\(b = 4\)、\(c = 6\) ですね。
まずは \(s\) の値を求めてから、ヘロンの公式にそれぞれの値を代入します。
\(\begin{align} s &= \frac{a + b + c}{2} \\ &= \frac{8 + 6 + 4}{2} \\ &= 9 \end{align}\)
\(\triangle \mathrm{ABC}\) の面積を \(S\) とおくと、
\(\begin{align} S &= \sqrt{s(s − a)(s − b)(s − c)} \\ &= \sqrt{9(9 − 8)(9 − 4)(9 − 6)} \\ &= \sqrt{9 \cdot 1 \cdot 5 \cdot 3} \\ &= 3\sqrt{15} \end{align}\)
答え: \(\color{red}{3\sqrt{15}}\)
このように三角形の \(3\) 辺の長さがわかっている場合は、ヘロンの公式で簡単に面積を求められます。
ただし、公式の中に根号を含むことから、辺の長さが無理数(\(\sqrt{2}\) など)の場合には計算が難しくなります。
その場合は別の方法で面積を求めましょう。
ヘロンの公式の証明
ヘロンの公式が成り立つことを証明します。
\(3\) 辺の長さがそれぞれ \(a\), \(b\), \(c\) の三角形の面積 \(S\) が
\begin{align}S = \sqrt{s(s − a)(s − b)(s − c)}\end{align}
(ただし、\(\displaystyle s = \frac{a + b + c}{2}\))
となることを証明せよ。
ヘロンの公式は、三角形の面積の公式「\(\displaystyle S = \frac{1}{2} bc \sin \mathrm{A}\)」をもとに導けます。
三角比の相互関係と余弦定理を用いて \(\sin \mathrm{A}\) を辺の長さで表現するのがポイントです。
- 三角比の相互関係
\begin{align}\sin^2 \mathrm{A} + \cos^2 \mathrm{A} = 1\end{align} - 余弦定理(変形バージョン)
\begin{align}\cos \mathrm{A} = \frac{b^2 + c^2 − a^2}{2bc}\end{align} - 三角比を用いた三角形の面積公式
\begin{align}\displaystyle S = \frac{1}{2} bc \sin \mathrm{A}\end{align}
(見切れる場合は横へスクロール)
\(\sin^2 \mathrm{A} + \cos^2 \mathrm{A} = 1\) より、
\(\sin^2 \mathrm{A} = 1 − \cos^2 \mathrm{A}\)
三角形の内角は \(0^\circ\) より大きく \(180^\circ\) より小さいため、 \(\sin \mathrm{A} > 0\) であるから、
\(\color{salmon}{\sin \mathrm{A} = \sqrt{1 − \cos^2 \mathrm{A}}}\)
また、余弦定理より
\(\color{orange}{\displaystyle \cos \mathrm{A} = \frac{b^2 + c^2 − a^2}{2bc}}\)
三角形の面積の公式より、
\(\begin{align}S &= \frac{1}{2} bc \color{salmon}{\sin \mathrm{A}}\\\\&= \frac{1}{2} bc \color{salmon}{\sqrt{1 − \cos^2 \mathrm{A}}}\\\\&= \frac{1}{2} bc \sqrt{(1 + \color{orange}{\cos \mathrm{A}})(1 − \color{orange}{\cos \mathrm{A}})}\\\\&= \frac{1}{2} bc \sqrt{\left( 1 + \color{orange}{\frac{b^2 + c^2 − a^2}{2bc}} \right) \left( 1 − \color{orange}{\frac{b^2 + c^2 − a^2}{2bc}} \right)}\\\\&= \frac{1}{2} bc \sqrt{\frac{2bc + b^2 + c^2 − a^2}{2bc} \cdot \frac{2bc − b^2 − c^2 + a^2}{2bc}}\\\\&= \frac{1}{4} \sqrt{(b^2 + 2bc + c^2 − a^2) \{a^2 − (b^2 − 2bc + c^2) \}}\\\\&= \frac{1}{4} \sqrt{\{(b + c)^2 − a^2\} \{a^2 − (b − c)^2\}}\\\\&= \frac{1}{4} \sqrt{\{(b + c) + a\} \{(b + c) − a\} \{a + (b − c)\} \{a − (b − c)\}}\\\\&= \frac{1}{4} \sqrt{(b + c + a)(b + c − a)(a − b + c)(a + b − c)}\\\\&= \frac{1}{4} \sqrt{(a + b + c)(− a + b + c)(a + b − c)(a − b + c)}\end{align}\)
ここで、\(\displaystyle s = \frac{a + b + c}{2}\) より
\(\left\{\begin{array}{l}a + b + c = 2s\\−a + b + c = 2s − 2a = 2(s − a)\\a − b + c = 2s − 2b = 2(s− b)\\a + b − c = 2s − 2c = 2(s − c)\end{array}\right.\)
であるから、
\(\begin{align}S &= \frac{1}{4} \sqrt{(a + b + c)(− a + b + c)(a − b + c)(a + b − c)}\\\\&= \frac{1}{4} \sqrt{2s \cdot 2(s − a) \cdot 2(s − b) \cdot 2(s − a)}\\\\&= \frac{1}{4} \sqrt{16s(s − a)(s − b)(s − a)}\\\\&= \color{red}{\sqrt{s(s − a)(s − b)(s − c)}}\end{align}\)
したがって、ヘロンの公式が成り立つ。
(証明終わり)
いかがでしたか?
\(s\) に変形するまでの計算が大変でしたが、\(3\) 辺の長さで三角形の面積が求められることが確かめられましたね。
ブラーマグプタの公式(四角形版)
実は、ヘロンの公式には四角形バージョンがあり、「ブラーマグプタの公式」といいます。
ヘロンの公式はどんな三角形にも当てはまりますが、ブラーマグプタの公式は円に内接する四角形限定です。
円に内接する四角形の \(4\) 辺をそれぞれ \(a\), \(b\), \(c\), \(d\)、四角形の面積を \(S\) とすると、
\begin{align}\color{red}{S = \sqrt{(s − a)(s − b)(s − c)(s − d)}}\end{align}
ただし、\(\color{red}{\displaystyle s = \frac{a + b + c + d}{2}}\)
ヘロンの公式がどんな三角形でも成り立つのは、三角形は必ず外接円をもつからです。
よって、ヘロンの公式でもブラーマグプタの公式でも、円に内接することは共通条件です。
また、ブラーマグプタの公式において一辺の長さ \(d\) を \(0\) とするとヘロンの公式と一致しますね。
ブラーマグプタの公式の使い方【例題】
以下の例題でブラーマグプタの公式の使い方を説明します。
図の四角形 \(\mathrm{ABCD}\) が円に内接しているとき、その面積を求めなさい。
円に内接する四角形 \(\mathrm{ABCD}\) の \(4\) 辺の長さがわかっているので、ブラーマグプタの公式が使えます。
まず \(s\) の値を求め、ブラーマグプタの公式にそれぞれの値を代入します。
\(\begin{align} s &= \frac{a + b + c + d}{2} \\ &= \frac{5 + 3 + 4 + 8}{2} \\ &= \frac{20}{2} \\ &= 10 \end{align}\)
\(\begin{align} S &= \sqrt{(s − a)(s − b)(s − c)(s − d)} \\ &= \sqrt{(10 − 5)(10 − 3)(10 − 4)(10 − 8)} \\ &= \sqrt{5 \cdot 7 \cdot 6 \cdot 2} \\ &= 2\sqrt{105} \end{align}\)
答え: \(\color{red}{2\sqrt{105}}\)
ブラーマグプタの公式の証明
ブラーマグプタの公式についても証明してみましょう。
円に内接する四角形 \(\mathrm{ABCD}\) の \(4\) 辺の長さがそれぞれ \(a\), \(b\), \(c\), \(d\) のとき、 面積 \(S\) が
\begin{align}S = \sqrt{(s − a)(s − b)(s − c)(s − d)}\end{align}
(ただし、\(\displaystyle s = \frac{a + b + c + d}{2}\))
と表せることを証明せよ。
四角形を \(2\) つの三角形に分けて、三角形の面積の公式「\(\displaystyle S = \frac{1}{2} bc \sin \mathrm{A}\)」で面積を表します。
ヘロンの公式の証明と同様、三角比の相互関係と余弦定理を用いて三角比を辺の長さで表現すれば証明できます。
(見切れる場合は横へスクロール)
\(\angle \mathrm{ABC} = \theta\) とおくと、\(\angle \mathrm{ADC} = 180^\circ − \theta\) と表せる。
\(\begin{align} \sin \angle \mathrm{ADC} &= \sin (180^\circ − \theta) \\ &= \sin \theta \end{align}\)
四角形 \(\mathrm{ABCD}\) の面積 \(S\) は
\(\begin{align} S &= \triangle \mathrm{ABC} + \triangle \mathrm{ADC} \\ &= \frac{1}{2} ab \sin \theta + \frac{1}{2} cd \sin \theta \\ &= \frac{1}{2} (ab + cd) \sin \theta \ \text{…①}\end{align}\)
\(\sin^2 \theta + \cos^2 \theta = 1\) より、
\(\sin^2 \theta = 1 − \cos^2 \theta\)
\(0^\circ < \theta < 180^\circ\) より \(\sin \theta > 0\) であるから
\(\color{salmon}{\sin \theta = \sqrt{1 − \cos^2 \theta}} \ \text{…②}\)
また、\(\triangle \mathrm{ABC}\) において、余弦定理より
\(\mathrm{AC}^2 = a^2 + b^2 − 2ab \cos \theta \ \text{…③}\)
\(\triangle \mathrm{ADC}\) において、余弦定理より
\(\begin{align} \mathrm{AC}^2 &= c^2 + d^2 − 2cd \cos(180^\circ − \theta) \\ &= c^2 + d^2 + 2cd \cos \theta \ \text{…④}\end{align}\)
③、④より
\(a^2 + b^2 − 2ab \cos \theta = c^2 + d^2 + 2 cd \cos \theta\)
\(2ab \cos \theta + 2cd \cos \theta = a^2 + b^2 − c^2 − d^2\)
\(2(ab + cd) \cos \theta = a^2 + b^2 − c^2 − d^2\)
\(\color{orange}{\displaystyle \cos \theta = \frac{a^2 + b^2 − c^2 − d^2}{2(ab + cd)}} \ \text{…⑤}\)
①、②、⑤より
\(\begin{align}S &= \frac{1}{2} (ab + cd) \color{salmon}{\sin \theta}\\\\&= \frac{1}{2} (ab + cd) \color{salmon}{\sqrt{1 − \cos^2 \theta}}\\\\&= \frac{1}{2} (ab + cd) \sqrt{1 − \left\{ \color{orange}{\frac{a^2 + b^2 − c^2 − d^2}{2(ab+ cd)}} \right\}^2 }\\\\&= \frac{1}{2} (ab + cd) \sqrt{\frac{4(ab + cd)^2 − (a^2 + b^2 − c^2 − d^2)^2}{4(ab + cd)^2}}\\\\&= \frac{1}{4} \sqrt{4(ab + cd)^2 − (a^2 + b^2 − c^2 − d^2)^2}\\\\&= \frac{1}{4} \sqrt{\{2(ab + cd) + (a^2 + b^2 − c^2 − d^2)\} \{2(ab+ cd) − (a^2 + b^2 − c^2 − d^2)\}}\\\\&= \frac{1}{4} \sqrt{\{(a^2 + 2ab + b^2) − (c^2 − 2cd + d^2)\} \{−(a^2 − 2ab + b^2) + (c^2 + 2cd + d^2)\}}\\\\&= \frac{1}{4} \sqrt{\{(a + b)^2 − (c − d)^2\} \{−(a − b)^2 + (c + d)^2\}}\\\\&= \frac{1}{4} \sqrt{(a + b + c − d)(a + b − c + d)(a − b + c + d)(−a + b + c + d)}\end{align}\)
ここで、\(2s = a + b + c + d\) より
\(\left\{\begin{array}{l}a + b + c − d = 2s − 2d = 2(s − d)\\a + b − c + d = 2s − 2c = 2(s − c)\\a − b + c + d = 2s − 2b = 2(s − b)\\−a + b + c + d = 2s − 2a = 2(s − a)\end{array}\right.\)
であるから、
\(\begin{align}S &= \frac{1}{4} \sqrt{(a + b + c − d)(a + b − c + d)(a − b + c + d)(−a + b + c + d)}\\\\&= \frac{1}{4} \sqrt{2(s − d) \cdot 2(s − c) \cdot 2(s − b) \cdot 2(s − a)}\\\\&= \frac{1}{4} \sqrt{16(s − a)(s − b)(s − c)(s − d)}\\\\&= \color{red}{\sqrt{(s − a)(s − b)(s − c)(s − d)}}\end{align}\)
となり、ブラーマグプタの公式が成り立つ。
(証明終わり)
ヘロンの公式の計算問題
それでは、ヘロンの公式やブラーマグプタの公式を使う計算問題に挑戦しましょう!
計算問題①「三角形の面積を求める」
\(\triangle \mathrm{ABC}\) の面積を求めなさい。
\(3\) 辺がわかっていて、かつそれらの値がすべて整数のときは、ヘロンの公式を利用すると計算が早いですね!
\(a = 7\), \(b = 6\), \(c = 5\) より
\(\begin{align} s &= \frac{a + b + c}{2} \\ &= \frac{7 + 6 + 5}{2} \\ &= 9 \end{align}\)
ヘロンの公式より
\(\begin{align} S &= \sqrt{s(s − a)(s − b)(s − c)} \\ &= \sqrt{9(9 − 7)(9 − 6)(9 − 5)} \\ &= \sqrt{9 \cdot 2 \cdot 3 \cdot 4} \\ &= 6\sqrt{6} \end{align}\)
答え: \(\color{red}{6\sqrt{6}}\)
計算問題②「円に内接する四角形の面積を求める」
以下の四角形 \(\mathrm{ABCD}\) の面積を求めなさい。
円に内接する四角形の \(4\) 辺の長さがわかっていて、その値がすべて整数のときは、ブラーマグプタの公式を利用して解くのが最速です!
\(a = 6\), \(b = 5\), \(c = 4\), \(d = 3\) より、
\(\begin{align} s &= \frac{a + b + c + d}{2} \\ &= \frac{6 + 5 + 4 + 3}{2} \\ &= \frac{18}{2} \\ &= 9 \end{align}\)
ブラーマグプタの公式より、
\(\begin{align} S &= \sqrt{(s − a)(s − b)(s − c)(s − d)} \\ &= \sqrt{(9 − 6)(9 − 5)(9 − 4)(9 − 3)} \\ &= \sqrt{3 \cdot 4 \cdot 5 \cdot 6} \\ &= 6\sqrt{10} \end{align}\)
答え: \(\color{red}{6\sqrt{10}}\)
以上で問題も終わりです!
ヘロンの公式について理解が深まりましたか?
使えるときは限られますが、覚えておくと面積の計算が確実に早くできますよ!
さまざまな三角形の面積公式をまとめています。
三角形の面積公式まとめ!求め方をわかりやすく解説