この記事では、「組立除法」のやり方や原理をわかりやすく解説していきます。
組立除法を使うときのコツや注意点(分数の場合など)も説明していくので、ぜひこの記事を通してマスターしてくださいね!
目次
組立除法とは?
組立除法とは、多項式を一次式で割るときの簡単な計算方法のことをいいます。
\(ax^3 + bx^2 + cx + d \) \(= (x − k)(lx^2 + mx + n) + R\) のとき、
\(\color{red}{\left\{\begin{array}{l}l = a\\m = b + lk\\n = c + mk\\R = d + nk\end{array}\right.}\)
公式だけではよくわからないと思うので、次の章で組立除法のやり方を解説していきます!
組立除法のやり方【例題】
例題を通して、組立除法のやり方をステップごとに解説していきます。
\(x^3 − 3x^2 − 8x − 4\) を \(x − 2\) で割った商と余りを求めよ。
組立除法では、文字 (\(x\)) を省略し、以下の数字だけを取り出します。
- 整式の係数
- 割る一次式 \((x − k)\) の \(k\) の部分
それでは、組立除法の手順を確認しましょう。
まず、\(1\) 行目に整式の係数を並べます。
ここでは、\(1\)、\(−3\)、\(−8\)、\(−4\) ですね。
並べた係数の右側に、割る式 \((x − 2)\) の \(2\) を書き込み、L字で囲います。
また、\(1\) 行分の間隔を開けて横線を引いておきます。
ここからが組立除法の本番です。
左の数字から、縦に足し、右上に \(k\) 倍していきます。
一番左の数はそのまま線の下に下ろします。
下ろした数を \(k\) 倍、ここでは、\(2\) 倍して右上に書きます。
\(1\) 列目が終わったので、\(2\) 列目を縦に足して線の下に書きます。
その数を \(2\) 倍し、右上に書きます。
この作業を繰り返します。
一番右側まで行ったら計算は終わりです。
線の下に出た数のうち、右端が「余り」、それ以外が「商」の係数です。
商の次数は、右から定数項、\(1\) 次、\(2\) 次、\(3\) 次…となります。
よって、割り算の結果は
\(x^3 − 3x^2 − 8x − 4 \) \(= (x − 2)(x^2 − x − 10) − 24\)
商 \(\color{red}{x^2 − x − 10}\)、余り \(\color{red}{−24}\) と求められました!
以上が組立除法のやり方でした!慣れるとかなり時短になりますよ。
組立除法の使いどころ
組立除法のやり方を知っていると、割り算を筆算で書くよりもスピーディに解くことができて便利です。
具体的には、次の場面で役立ちます。
- 整式(多項式)の割り算
- 高次方程式の因数分解
組立除法のコツと注意点
ここで、組立除法のコツと注意点を説明します。
割る式は (x − k) に!(分数の割り算)
組立除法は、割る式が一次式で、かつ \(x\) の係数が \(1\) のときだけ使えるテクニックです。
よって、割る式が \((ax + b)\) の形の場合は、\(\displaystyle \left( x + \frac{b}{a} \right)\) に変形してから組立除法を使います。
\(x^3 + 2x^2 − 4x + 2\) を \(2x − 1\) で割ったときの商と余りを求めなさい。
割る式 \((2x − 1)\) を \(\displaystyle \left( x − \frac{1}{2} \right)\) として組立除法を使います。
組立除法の結果は、次のようになりました。
\(x^3 + 2x^2 − 4x + 2 \\\displaystyle = \left( x − \frac{1}{2} \right) \left( x^2 + \frac{5}{2}x − \frac{11}{4} \right) + \frac{5}{8}\)
しかし、これは答えではありません!
あくまでも、\((2x − 1)\) で割った結果を出さないといけませんね。
\(\displaystyle \left( x − \frac{1}{2} \right)\) を \(2\) 倍の \((2x − 1)\) に戻すには、商の部分から \(2\) 倍をもらってきます。
よって答えは、商 \(\color{red}{\displaystyle \frac{1}{2}x^2 + \frac{5}{4}x − \frac{11}{8}}\)、余り \(\color{red}{\displaystyle \frac{5}{8}}\) です。
このように、もし割る数を変形した場合は、最後に商の変形も必要です。
この作業を忘れる人も多いので、注意しましょう!
次数のズレに注意!
整式の係数を取り出して並べるときは、必ず次のようにしてください。
- 降べきの順に並べる
- 抜けている次数の場所は空ける
(係数が \(0\) と考える)
\(4 − x^3 + x\) を \(x − 1\) で割ったときの商と余りを求めなさい。
この問題で、次のように並べるのは誤りです。
正しくは、整式を降べきの順に並べ、抜けている次数の場所を空けながら係数を並べます。
答えも、係数と次数の対応をよく確認してくださいね。
あわてていると意外と見落とすので、しっかりチェックしましょう。
組立除法はなぜ使える?【原理】
ここでは、組立除法のしくみと原理について解説していきます。
\(ax^3 + bx^2 + cx + d\) を \(x − k\) で割った商を \(lx^2 + mx + n\)、余りを \(R\) とすると、
\(ax^3 + bx^2 + cx + d \) \(= (x − k)(lx^2 + mx + n) + R\)
とおける。
この式の右辺を展開して整理すると、
\((x − k)(lx^2 + mx + n) + R \) \(= \) \(lx^3 + (m − lk)x^2 + (n − mk)x + R − nk\)
ここで、左辺と右辺の係数を比較すると、
\(\left\{\begin{array}{l}a = l\\b = m − lk\\c = n − mk\\d = R − nk\end{array}\right.\)
商の係数 \(l, m, n\) と余り \(R\) に着目すると、
\(\color{red}{\left\{\begin{array}{l}l = a\\m = b + lk\\n = c + mk\\R = d + nk\end{array}\right.}\)
つまり、商の係数と余りに着目して数字をうまく並べたのが組立除法の配置ということですね。
組立除法の練習問題
最後に、因数分解の問題を通して組立除法の練習をしましょう。
練習問題「四次式の因数分解」
次の式を因数分解せよ。
\(2x^4 − 3x^3 − x^2 − 3x + 2\)
四次式の因数分解です。
因数定理を利用して因数を見つけ、組立除法してみましょう。
因数定理
- 整式 \(P(x)\) が \((x − a)\) を因数にもつ \(\iff P(a) = 0\)
- 整式 \(P(x)\) が \((ax + b)\) を因数にもつ \(\iff P \left(−\displaystyle \frac{b}{a}\right) = 0\)
\(P(x) = 2x^4 − 3x^3 − x^2 − 3x + 2\) とおくと、
\(\begin{align}P(2) &= 2 \cdot 2^4 − 3 \cdot 2^3 − 2^2 − 3 \cdot 2 + 2 \\&= 32 − 24 − 4 − 6 + 2\\&= 0\end{align}\)
より、\(P(x)\) は \((x − 2)\) を因数にもつ。
よって \(P(x) = (x − 2)(2x^3 + x^2 + x − 1)\)
\(Q(x) = 2x^3 + x^2 + x − 1\) とおくと、
\(\begin{align}Q\left(\displaystyle \frac{1}{2}\right) &= 2 \left(\displaystyle \frac{1}{2}\right)^3 + \left(\displaystyle \frac{1}{2}\right)^2 + \displaystyle \frac{1}{2} − 1 \\&= \displaystyle \frac{1}{4} + \displaystyle \frac{1}{4} + \displaystyle \frac{1}{2} − 1\\&= 0\end{align}\)
より、\(Q(x)\) は \(\left(x − \displaystyle \frac{1}{2}\right)\) を因数にもつ。
よって
\(\begin{align}Q(x) &= \left(x − \displaystyle \frac{1}{2}\right)(2x^2 + 2x + 2) \\&= (2x − 1)(x^2 + x + 1)\end{align}\)
したがって、
\(\begin{align}P(x) &= (x − 2)Q(x) \\&= (x − 2)(2x − 1)(x^2 + x + 1)\end{align}\)
答え: \(\color{red}{(x − 2)(2x − 1)(x^2 + x + 1)}\)
以上で組立除法の解説は終わりです!
慣れれば筆算の割り算より圧倒的に早く計算できるので、しっかりとマスターしておきましょう!