この記事では、「高次方程式」について、因数分解の公式や因数定理を利用した解き方を解説していきます。
計算のコツもわかりやすく紹介していくので、ぜひこの記事を通してマスターしてくださいね!
目次
高次方程式とは?
高次方程式とは、次数が \(3\) 次以上の方程式のことです。
一般に、\(n\) 次の多項式 \(P(x)\) を用いて「\(P(x) = 0\)」の形で表せる方程式を「\(n\) 次方程式」といいます。
三次方程式以上が、高次方程式と見なされるということですね。
高次方程式の解き方
高次方程式を解くには、「因数分解の公式」や「因数定理」を利用して因数を見つけます。
例題を通して、それぞれの方法を解説していきます。
解き方① 因数分解の公式
まずは因数分解の公式を用いた解き方です。
高次方程式の問題では、三次方程式の問題が出題されることが圧倒的に多いです。
そのため、三次式・二次式の因数分解の公式、および二次方程式の解の公式は必ず覚えておきましょう。
(見切れる場合は横へスクロール)
二次式の因数分解
- \(\color{red}{a^2 + 2ab + b^2 = (a + b)^2}\)
- \(\color{red}{a^2 − 2ab + b^2 = (a − b)^2}\)
- \(\color{red}{a^2 − b^2 = (a + b)(a − b)}\)
- \(\color{red}{x^2 + (a + b)x + ab = (x + a)(x + b)}\)
- \(\color{red}{acx^2 + (ad + bc)x + bd = (ax + c)(cx + d)}\)
三次式の因数分解
- \(\color{red}{a^3 + b^3 = (a + b)(a^2 − ab + b^2)}\)
- \(\color{red}{a^3 − b^3 = (a − b)(a^2 + ab + b^2)}\)
- \(\color{red}{a^3 + 3a^2b + 3ab^2 + b^3 = (a + b)^3}\)
- \(\color{red}{a^3 − 3a^2b + 3ab^2 − b^3 = (a − b)^3}\)
二次方程式 \(ax^2 + bx + c = 0\) の解は
\begin{align}\color{red}{x = \displaystyle \frac{− b \pm \sqrt{b^2 − 4ac}}{2a}}\end{align}
(ただし、\(b^2 − 4ac \geq 0\))
例題を見てみましょう。
\(x^3 − 8 = 0\) を解きなさい。
公式 \(a^3 − b^3 = (a − b)(a^2 + ab + b^2)\) に当てはめられますね。
\(x^3 − 2^3\)
\(= (x − 2)(x^2 + 2x + 2^2)\)
\(= (x − 2)(x^2 + 2x + 4)\)
後ろの括弧の中は因数分解の公式に当てはまらないので、二次方程式の解の公式を使って答えを出しましょう。
\((x − 2)(x^2 + 2x + 4) = 0\) より
\(x = 2\), \(x^2 + 2x + 4 = 0\)
\(x^2 + 2x + 4 = 0\) において、解の公式より
\(\begin{align} x &= \frac{−1 \pm \sqrt{1^2 − 1 \cdot 4}}{1} \\ &= −1 \pm \sqrt{1 − 4} \\ &= −1 \pm \sqrt{−3} \\ &= −1 \pm \sqrt{3} i \end{align}\)
答え: \(\color{red}{x = 2, −1 \pm \sqrt{3} i}\)
一般に、係数が実数である三次方程式の解は、「\(3\) つの実数解」または「\(1\) つの実数解と \(2\) つの虚数解」となります。
学校では高次方程式の前に虚数の概念を習うので、虚数解も解に含めることが一般的です。
もう \(1\) 問見てみましょう。
\(8x^3 − 12x^2 + 6x − 1 = 0\)
三次の項と定数項が何かの \(3\) 乗になっている場合は、公式 \(a^3 \pm 3a^2 b + 3ab^2 + b^3 = (a \pm b)^3\) に当てはめられないかを必ずチェックしましょう。
\(8x^3 − 12x^2 + 6x − 1 = 0\)
\((2x)^3 − 3(2x)^2 \cdot 1 + 3(2x) \cdot 1^2 − 1^3 = 0\)
\((2x − 1)^3 = 0\)
よって、\(\displaystyle x = \frac{1}{2}\)
答え: \(\color{red}{\displaystyle x = \frac{1}{2}}\)
解き方② 因数定理
次に、「因数定理」を用いた高次方程式の解き方です。
整式 \(P(x)\) が \((x − a)\) を因数にもつ \(\iff P(a) = 0\)
因数定理を使うと、因数分解の公式が使えない場合でも最初の因数を見つけることができます。
例題を見てみましょう。
\(x^3 − 3x^2 − 8x − 4 = 0\) を解きなさい。
定数項が \(−4\) のため、何かの \(3\) 乗とは考えにくく、因数分解の公式には当てはまらなそうです。
このような場合に因数定理を利用して最初の因数を探します。
適当な値を \(x\) に代入してもいいですし、因数の見つけ方のコツを使ってもよいです。
\(P(x) = x^3 − 3x^2 − 8x − 4\) とおく。
\(P(x) = 0\) になる \(x\) の値を考えると、
\(\begin{align} P(−1) &= (−1)^3 − 3(−1)^2 − 8(−1) − 4 \\ &= −1 − 3 + 8 − 4 = 0 \end{align}\)
因数定理より、\(P(x)\) は \((x + 1)\) を因数にもつ。
最初の因数がわかったので、\(P(x)\) をその因数で割り算します。
ここで示すように筆算で割り算をしてもいいですし、組立除法を用いてもよいです。
\(P(x)\) を \((x + 1)\) でくくると、
\(P(x) = (x + 1)(x^2 − 4x − 4) = 0\)
\(x + 1 = 0\) より \(x = −1\)
また、\(x^2 − 4x − 4 = 0\) において、解の公式より
\(\begin{align} x &= \frac{2 \pm \sqrt{(−2)^2 − 1 \cdot (−4)}}{1} \\ &= 2 \pm \sqrt{4 + 4} \\ &= 2 \pm 2\sqrt{2} \end{align}\)
よって、\(x = −1, 2 \pm 2\sqrt{2}\)
答え: \(\color{red}{x = −1, 2 \pm 2\sqrt{2}}\)
因数定理についてより詳しく説明しています。
因数定理とは?使い方や因数の見つけ方をわかりやすく解説!
高次方程式を解くコツ
高次方程式を解く際に手間を減らせる計算のコツを紹介していきます。
因数の見つけ方
因数定理を利用する場合、\(P(a) = 0\) となる \(a\) を探すことになります。
このとき、式の中で最も次数の高い項の係数と、定数項に着目すると効率的に見つけられます。
高次方程式 \(P(x) = 0\) を満たす有理数の解 \(x\) は、
\begin{align}\color{red}{\displaystyle \pm \frac{\text{定数項の約数}}{\text{最も次数の高い項の係数の約数}}}\end{align}
に限られる。
例えば三次方程式 \(P(x) = ax^3 + bx^2 + cx + d\) なら、「\(\displaystyle \pm \frac{d \text{ の約数} \ \ }{a \text{ の約数}\ \ }\)」のどれかから解が見つかります。
以下の記事では、例題も交えて詳しく説明しています。
因数定理とは?使い方や因数の見つけ方をわかりやすく解説!
組立除法(整式の割り算)
整式の割り算で時短になる計算テクニックに、「組立除法」があります。
筆算において文字を省略する方法で、慣れておくと楽に計算できるようになります。
(例)\(x^3 − 3x^2 − 8x − 4\) を \(x + 1\) で割る場合
詳しいやり方や原理については、以下の記事で説明しています。
組立除法とは?やり方や原理をわかりやすく解説!
文字の置き換え
\(4\) 次以上の高次方程式など、一見因数分解できない式に見えても、文字の置き換えで因数分解できることがあります。
以下の例題で説明します。
\(x^4 − 2x^2 + 1 = 0\) を解きなさい。
\(ax^4 + bx^2 + c = 0\) のかたちの式を「複二次式」といい、文字を置き換えると因数分解できる場合があります。
四次の項が何かの二次の項になるように文字を置き換えます。
ここでは、\(x^2 = X\) と置き換えられますね。
\(x^2 = X\) と置くと
\(x^4 − 2x^2 + 1 = 0\)
\(X^2 − 2X + 1 = 0\)
\(X^2 − 2X + 1 = 0\) を解くと、
\((X − 1)^2 = 0\)
\(X = 1\)
このように、文字の置き換えによってスッキリ因数分解できました。
\(X\) は自分で勝手に作った文字なので、最後に置き換えた文字を必ず元に戻します。
\(X = x^2\) より
\(x^2 = 1\)
よって、\(x = \pm 1\)
答え: \(\color{red}{x = \pm 1}\)
このように文字を置き換えて次数を減らすことで、簡単に因数分解できましたね。
似ている文字だと混乱するという人は、\(x^2 = A\) などまったく違う文字で置き換えてもいいですね。
高次方程式の計算問題
それでは、高次方程式の計算問題を解いてみましょう。
計算問題①「三次方程式を解く」
\(27x^3 + 8 = 0\) を解きなさい。
三次式の因数分解の公式が利用できそうですね。
\(a^3 + b^3 = (a + b)(a^2 − ab + b^2)\) を利用して、
\(27x^3 + 8 = 0\)
\((3x + 2) \{(3x)^2 − 3x \cdot 2 + 2^2\} = 0\)
\((3x + 2)(9x^2 − 6x + 4) = 0\)
\(3x + 2 = 0\) より \(\displaystyle x = −\frac{2}{3}\)
また、 \(9x^2 − 6x + 4 = 0\) において、解の公式より
\(\begin{align} x &= \frac{3 \pm \sqrt{9 − 9 \cdot 4}}{9} \\ &= \frac{3 \pm \sqrt{−27}}{9} \\ &= \frac{3 \pm 3\sqrt{−3}}{9} \\ &= \frac{3 \pm 3\sqrt{3} i}{9} \\ &= \frac{1 \pm \sqrt{3} i}{3} \end{align}\)
答え: \(\displaystyle x = −\frac{2}{3}, \displaystyle \frac{1 \pm \sqrt{3} i}{3}\)
計算問題②「四次方程式を解く」
\(x^4 − 5x^2 + 6 = 0\) を解きなさい。
複二次式 \(ax^4 + bx^2 + c = 0\) の形になっていますね!
文字を置き換えて因数分解しましょう。
\(x^2 = X\) とおくと、
\(x^4 − 5x^2 + 6 = X^2 − 5X + 6\) となる。
\(X^2 − 5X + 6 = 0\) を解くと、
\((X − 2)(X − 3) = 0\)
\(X = 2\), \(3\)
置き換えた文字を元に戻すと、\(X = x^2\) より
\(x^2 = 2\), \(3\)
\(x = \pm \sqrt{2}\), \(\pm \sqrt{3}\)
答え: \(x = \pm \sqrt{2}, \pm \sqrt{3}\)
計算問題③「三次方程式を解く」
\(x^3 − 3x^2 − 6x + 8 = 0\) を解きなさい。
一見因数分解の公式が使えそうですが、二次の項、一次の項がうまく処理できません。
因数定理を使いましょう。
\(P(x) = x^3 − 3x^2 − 6x + 8\) とおくと、
因数定理より
\(\begin{align} P(1) &= 1^3 − 3 \cdot 1^2 − 6 \cdot 1 + 8 \\ &= 1 − 3 − 6 + 8 = 0 \end{align}\)
よって、\(P(x)\) は \((x − 1)\) を因数にもつので、
\(\begin{align}P(x) &= (x − 1)(x^2 − 2x − 8) \\ &= (x − 1)(x + 2)(x − 4) \end{align}\)
\((x − 1)(x + 2)(x − 4) = 0\) より
\(x = 1\), \(−2\), \(4\)
答え: \(x = 1, −2, 4\)
以上で問題も終わりです!
高次方程式は、問題に応じて最適な解法を考える必要があります。
様々な解き方・コツを身につけて、どんな問題にも対応できるようにしましょう!