この記事では、「トレミーの定理」についてできるだけわかりやすく解説していきます。
定理の証明や使い方、問題の解き方を説明していくので、ぜひこの記事を通してマスターしてくださいね!
目次
トレミーの定理とは?
トレミーの定理とは、円に内接する四角形の辺と対角線の長さに関する定理です。
四角形 \(\mathrm{ABCD}\) が円に内接しているとき、次の等式が成り立つ。
\begin{align}\color{red}{\mathrm{AC} \cdot \mathrm{BD} = \mathrm{AB} \cdot \mathrm{CD} + \mathrm{AD} \cdot \mathrm{BC}}\end{align}
対角線の積は、四角形の向かい合う辺同士の積の和と等しくなる、ということですね。
シンプルな定理なので、図とともに覚えておきましょう!
トレミーの定理の使い方【例題】
次の例題を通して、トレミーの定理の使い方を説明します。
四角形 \(\mathrm{ABCD}\) は円に内接している。このとき、\(\mathrm{AC}\) の長さを求めなさい。
円に内接する四角形の一方の対角線 \(\mathrm{AC}\) の長さだけがわかっていない状態ですね。
トレミーの定理に当てはめてみましょう。
トレミーの定理より、
\(\mathrm{AC} \cdot \mathrm{BD} = \mathrm{AB} \cdot \mathrm{CD} + \mathrm{AD} \cdot \mathrm{BC}\)
\(\begin{align}\mathrm{AC} \cdot \sqrt{46} &= 6 \cdot 4 + 4 \cdot 5 \\&= 24 + 20 \\&= 44\end{align}\)
よって、
\(\mathrm{AC} = \displaystyle \frac{44}{\sqrt{46}} = \frac{44\sqrt{46}}{46} = \frac{22\sqrt{46}}{23}\)
答え: \(\color{red}{\mathrm{AC} =\displaystyle \frac{22\sqrt{46}}{23}}\)
このように、「円に内接する四角形」「対角線の長さ」が関係する問題では、トレミーの定理が使えないかな?と疑ってみましょう。
トレミーの定理の証明
次に、トレミーの定理がどうして成り立つかを証明していきます。
円に内接する四角形 \(\mathrm{ABCD}\) について、以下の等式が成り立つことを証明せよ。
\begin{align}\mathrm{AC} \cdot \mathrm{BD} = \mathrm{AB} \cdot \mathrm{CD} + \mathrm{AD} \cdot \mathrm{BC}\end{align}
対角線によって分けられた三角形に「余弦定理」を適用することで、トレミーの定理が導かれます。
余弦定理
\(\triangle \mathrm{ABC}\) において
\begin{align}c^2=a^2 + b^2 – 2ab\cos \mathrm{C}\end{align}
(見切れる場合は横へスクロール) \(\mathrm{AB}\)、\(\mathrm{BC}\)、\(\mathrm{CD}\)、\(\mathrm{DA}\) をそれぞれ \(a\)、\(b\)、\(c\)、\(d\) とおき、\(\mathrm{AC}\)、\(\mathrm{BD}\) を \(x\)、\(y\) とする。 このとき、 \(\mathrm{AC} \cdot \mathrm{BD} = \mathrm{AB} \cdot \mathrm{CD} + \mathrm{AD} \cdot \mathrm{BC}\) すなわち \(xy = ac + bd\) が成り立つことを示す。 \(\triangle \mathrm{ABC}\) において、余弦定理より、 \(x^2 = a^2 + b^2 − 2ab \cos \mathrm{B} \ \text{…①}\) \(\triangle \mathrm{ADC}\) において、余弦定理より、 \(\begin{align} x^2 &= c^2 + d^2 − 2cd \cos (180^\circ − \angle \mathrm{B}) \\ &= c^2 + d^2 + 2cd \cos \mathrm{B} \ \text{…②} \end{align}\) ①、②より、 \(a^2 + b^2 − 2ab \cos \mathrm{B} = c^2 + d^2 + 2cd \cos \mathrm{B}\) \(2ab \cos \mathrm{B} + 2cd \cos \mathrm{B} = a^2 + b^2 − c^2 − d^2\) \((2ab + 2cd) \cos \mathrm{B} = a^2 + b^2 − c^2 − d^2\) よって \(\displaystyle \cos \mathrm{B} = \frac{a^2 + b^2 − c^2 − d^2}{2(ab + cd)} \ \text{…③}\) ③を①に代入すると、 \(\begin{align}x^2 &= a^2 + b^2 − \displaystyle \frac{2ab(a^2 + b^2 − c^2 − d^2)}{2(ab + cd)}\\&= \displaystyle \frac{(a^2 + b^2)(ab + cd) − ab(a^2 + b^2 − c^2 − d^2)}{ab + cd}\\&= \displaystyle \frac{a^2cd + b^2cd +abc^2 + abd^2}{ab + cd}\\&= \displaystyle \frac{ac(ad + bc) + bd(bc + ad)}{ab + cd}\\&= \displaystyle \frac{(ad + bc)(ac + bd)}{ab + cd} \ \text{…④}\end{align}\) 同様に、 \(\triangle \mathrm{BCD}\) において、余弦定理より \(y^2 = b^2 + c^2 − 2bc \cos \mathrm{C} \ \text{…⑤}\) \(\triangle \mathrm{ABD}\) において、余弦定理より、 \(\begin{align} y^2 &= a^2 + d^2 − 2ad \cos (180^\circ − \angle \mathrm{C}) \\ &= a^2 + d^2 + 2ad \cos \mathrm{C} \ \text{…⑥} \end{align}\) ⑤、⑥より、 \(b^2 + c^2 − 2bc \cos \mathrm{C} = a^2 + d^2 + 2ad \cos \mathrm{C}\) \(2ad \cos \mathrm{C} + 2bc \cos \mathrm{C} = b^2 + c^2 − a^2 − d^2\) \((2ad + 2bc) \cos \mathrm{C} = b^2 + c^2 − a^2 − d^2\) よって \(\displaystyle \cos \mathrm{C} =\frac{b^2 + c^2 − a^2 − d^2}{2(ad + bc)} \ \text{…⑦} \) ⑦を⑤に代入すると、 \(\begin{align}y^2 &= b^2 + c^2 − \displaystyle \frac{2bc(b^2 + c^2 − a^2 − d^2)}{2(ad + bc)}\\&= \displaystyle \frac{(b^2 + c^2)(ad + bc) − bc(b^2 + c^2 − a^2 − d^2)}{ad + bc}\\&= \displaystyle \frac{ab^2d + ac^2d + a^2bc + bcd^2}{ad + bc}\\&= \displaystyle \frac{ac(ab + cd) + bd(ab + cd)}{ad + bc}\\&= \displaystyle \frac{(ab + cd)(ac + bd)}{ad + bc} \ \text{…⑧} \end{align}\) よって、④、⑧より \(\begin{align}x^2 y^2 &= \displaystyle \frac{(ad + bc)(ac + bd)}{ab + cd} \cdot \frac{(ab + cd)(ac + bd)}{ad + bc}\\&= (ac + bd)^2\end{align}\) \(xy > 0\)、\(ac + bd > 0\) より、 \(xy = ac + bd\) となり、トレミーの定理 \(\mathrm{AC} \cdot \mathrm{BD} = \mathrm{AB} \cdot \mathrm{CD} + \mathrm{AD} \cdot \mathrm{BC}\) が成立する。 (証明終わり) トレミーの定理を使う問題に挑戦してみましょう! 図において、四角形 \(\mathrm{ABCD}\) は円に内接している。このとき、\(\mathrm{AC}\) の長さを求めなさい。 対角線 \(2\) 本とも長さがわからないように見えますが、角度の情報を使うと \(1\) 本の長さはすぐにわかります。 もう \(1\) 本の長さを、トレミーの定理を使って求めましょう。 \(\angle \mathrm{A} = 120^\circ\) より、\(\angle \mathrm{C} = 60^\circ\) よって、\(\triangle \mathrm{BCD}\) は正三角形なので、 \(\mathrm{BD} = 13\) 四角形 \(\mathrm{ABCD}\) において、トレミーの定理より \(\mathrm{AC} \cdot \mathrm{BD} = \mathrm{AB} \cdot \mathrm{CD} + \mathrm{AD} \cdot \mathrm{BC}\) \(\mathrm{AC} \cdot 13 = 8 \cdot 13 + 7 \cdot 13\) \(13\mathrm{AC} = 13 \cdot 15\) \(\mathrm{AC} = 15\) 答え: \(\mathrm{AC} = 15\) 半径が \(1\) の円 \(\mathrm{O}\) がある。 円 \(\mathrm{O}\) の中心から点 \(\mathrm{P}\) までの距離は \(\sqrt{7}\) で、点 \(\mathrm{P}\) から引いた円 \(\mathrm{O}\) の \(2\) つの接線の接点を点 \(\mathrm{A}\)、\(\mathrm{B}\) とする。 このとき、\(\mathrm{AB}\) の長さを求めなさい。 四角形とその対角線に関係する問題ですね。 四角形が円に内接していれば、トレミーの定理が使えますよ。 \(\triangle \mathrm{AOP}\) において、三平方の定理より \(\begin{align} \mathrm{AP}^2 &= \mathrm{PO}^2 − \mathrm{AO}^2 \\ &= \sqrt{7}^2 − 1^2 \\ &= 6 \end{align}\) \(\mathrm{AP} > 0\) より、\(\mathrm{AP} = \sqrt{6}\) また、点 \(\mathrm{A}\)、\(\mathrm{B}\) は円 \(\mathrm{O}\) の接点なので、 \(\angle \mathrm{OAP} = \angle \mathrm{OBP} = 90^\circ\) よって、四角形 \(\mathrm{OAPB}\) において 向かい合う角の和が \(180^\circ\) なので、 四角形 \(\mathrm{OAPB}\) は円に内接している。 ゆえに、四角形 \(\mathrm{OAPB}\) において、トレミーの定理より \(\mathrm{AB} \cdot \mathrm{OP} = \mathrm{AP} \cdot \mathrm{OB} + \mathrm{BP} \cdot \mathrm{OA}\) \(\mathrm{AB} \cdot \sqrt{7} = \sqrt{6} \cdot 1 + \sqrt{6} \cdot 1 = 2\sqrt{6}\) よって \(\displaystyle \mathrm{AB} = \frac{2\sqrt{6}}{\sqrt{7}} = \frac{2\sqrt{42}}{7}\) 答え: \(\displaystyle \frac{2\sqrt{42}}{7}\) 一辺の長さが \(2\) の正五角形の対角線の長さを求めなさい。 トレミーの定理は、円に内接する四角形において用いる公式です。 正五角形の中の四角形に注目してみましょう。 正五角形 \(\mathrm{ABCDE}\) の対角線の長さを \(x\) とする。 四角形 \(\mathrm{BCDE}\) において、トレミーの定理より \(\mathrm{BD} \cdot \mathrm{CE} = \mathrm{BE} \cdot \mathrm{CD} + \mathrm{BC} \cdot \mathrm{DE}\) \(x^2 = 2x + 4\) \(x^2 − 2x − 4 = 0\) \(x > 0\) より、 \(x = 1 + \sqrt{5}\) 答え: \(1 + \sqrt{5}\) 以上で問題も終わりです! トレミーの定理は、図形の問題でふと「あれ?使えるぞ!」ということがあります。 位置関係を間違えないよう、図とともに覚えておきましょう!トレミーの定理の計算問題
計算問題①「円に内接する四角形の対角線の長さ」
計算問題②「ある点から円に引いた接線がなす四角形」
計算問題③「正五角形の対角線の長さ」